編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-27

民泊物件を宿泊だけに使うのはもったいない、と感じているオーナーは少なくありません。平日の空き時間帯や、宿泊予約が入りにくいシーズンに物件を撮影スタジオ・ロケ地として貸し出すことで、稼働率を高めながら副収入を得る手法が近年注目されています。YouTube・SNS向けの動画コンテンツ制作需要の拡大や、商業撮影・スチール撮影の需要増加を背景に、スペースマーケットやインスタベースといったレンタルスペース専門プラットフォームへの掲載件数も増えています。ただし、民泊(住宅宿泊事業)の届出と、撮影スタジオとしての時間貸しとでは法的な整理がまったく異なります。また、管理規約・用途地域・保険・税務など、複数の観点から事前確認が必要です。本記事では、民泊物件を撮影スタジオ・ロケ地として活用するための実務的な手順を、公式ソースに基づいて解説します。

この記事でわかること

  • 撮影スタジオ・ロケ地としての時間貸しと、民泊(宿泊貸し出し)の法的な違い
  • 撮影目的の時間貸しに必要な事前確認事項(管理規約・用途地域・消防設備)
  • 撮影スタジオ向けの物件設備の整え方と追加アイテムの優先順位
  • 料金設定の考え方と、レンタルスペースプラットフォームの活用方法
  • 利用規約・損害リスク・保険の整備ポイント
  • 撮影収入の税務・確定申告の基本的な考え方
  • 宿泊と撮影を組み合わせた複合収益モデルの組み立て方

Contents

撮影スタジオ・ロケ地としての需要と市場

近年、YouTube・TikTok・Instagramといったプラットフォームの普及により、個人クリエイターから中小企業のマーケティング担当者まで、撮影場所を時間単位で借りたいという需要が拡大しています。特に都市部では「ナチュラルな生活感のある部屋」「白壁フラット」「リノベーション済みのおしゃれな空間」といった物件への問い合わせが増えており、民泊物件は格好のロケ地候補になっています。

撮影スタジオやロケ地としての民泊活用を自然光、生活感、予約導線で整理した図
撮影利用は、自然光・生活感・予約導線を確認し、宿泊利用との違いを分けます。

撮影需要は大きく以下のカテゴリに分かれます。

  • 個人・クリエイター向け: YouTube動画撮影、SNS投稿用のポートレート撮影、コスプレ・衣装撮影
  • ビジネス向け(商業撮影): 商品カタログ、ECサイト用商品写真、企業PR動画
  • メディア・制作会社向け: テレビCM・映画・ドラマのロケ、ウェブコマーシャル
  • 教育・セミナー向け: オンライン講座の収録、ウェビナー用スタジオ
  • ライブ配信向け: ゲーム配信、音楽配信、ビジネストーク配信

宿泊貸し出し(民泊)との大きな違いは「利用目的」と「利用時間帯」です。宿泊であれば夜間を含む長時間の利用が前提となりますが、撮影スタジオとしての貸し出しは基本的に日中の数時間単位が中心です。この特性を生かすと、宿泊予約がない平日日中に撮影枠を設けるという形で稼働率を補完することができます。

また、宿泊需要はシーズンや曜日によって波があるのに対し、撮影需要は比較的通年安定しており、特定のコンテンツ制作シーズン(新商品発売前・SNSキャンペーン時期など)にピークが来ることもあります。こうした需要の補完性が、民泊物件のロケ地活用を検討する理由の一つとなっています。

はじめ君

はじめ君

民泊物件って、撮影用に貸し出すと宿泊と違う客層が来るんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

はい、客層はかなり異なります。撮影ユーザーはクリエイターや法人担当者が多く、平日日中の短時間利用が主流です。宿泊の「泊まる人」とは使い方が根本的に違うため、利用規約や備品の準備も別途整備する必要があります。

民泊物件を撮影スタジオとして貸し出す場合、まず押さえておきたいのが「住宅宿泊事業法の対象は宿泊である」という点です。

住宅宿泊事業法は「宿泊」が対象

住宅宿泊事業法(2018年施行)は、「人を宿泊させる事業」を届出制で規制する法律です。ここでいう「宿泊」とは、宿泊者が施設を生活の本拠として使用せず、かつ施設を管理する者が宿泊料金を受け取る形態を指します。

民泊制度ポータルサイト(国土交通省観光庁)
(2026-05-27取得)

住宅宿泊事業法の概要、届出制度の仕組み、「宿泊」の定義について解説されています。撮影などの非宿泊利用は同法の対象外とされており、別途の賃貸借契約等が適用されます。

一方、撮影スタジオとして時間貸しをする行為は「宿泊」に該当しません。これは、民泊届出の有無にかかわらず、住宅宿泊事業法の規制対象外です。したがって、撮影目的の時間貸しだけを行う場合は、住宅宿泊事業法上の新たな届出は原則として必要ありません。

撮影目的の時間貸しは「賃貸借(一時使用)」として扱われる

撮影目的の時間貸しは、法的には「建物の一時使用賃貸借」または「場所提供契約」に近い性格を持ちます。宿泊契約ではないため旅館業法の適用も受けません。ただし、事業として継続的に行う場合は、税務上の「事業所得」または「雑所得」として申告義務が生じます(後述の税務セクション参照)。

用途地域・管理規約での制限確認が必要

法律上は届出不要であっても、物件の立地や管理規約によって制限がある場合があります。具体的には以下を確認することが実務上の出発点となります。

  • 用途地域: 「第一種低層住居専用地域」等では、業務用途の利用に自治体の確認が必要なケースがあります
  • マンション管理規約: 区分所有建物の場合、管理組合の許諾が必要なことがあります
  • 建物賃貸借契約(借家の場合): 転貸・目的外使用を禁じている場合は家主への事前確認が必要です
  • 建築基準法上の用途: 「住宅」として建てられた建物を「撮影スタジオ」として営業用途で継続使用する場合は用途変更手続きが必要になる可能性があります
!確認が必要なポイント

マンション・アパートで撮影貸し出しを行う場合、管理組合や管理会社、オーナー(借家の場合)への事前確認と書面による許諾取得が不可欠です。規約違反が発覚すると契約解除のリスクがあります。自治体や行政書士への確認もあわせて行うことをお勧めします。最終的な判断は必ず専門家にご相談ください。

はじめ君

はじめ君

民泊届出を持っている物件なら、撮影用に貸し出してもOKですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

民泊届出は「宿泊」用途の許可です。撮影貸し出しは宿泊に該当しないため、別途の確認が必要です。特に管理規約や建物賃貸借契約の制約に注意し、まず管理組合や家主に確認することが実務上の第一歩です。

撮影スタジオ向けの物件設備

撮影スタジオとしての貸し出しを検討する際、物件の「見た目」と「機能性」の両面から設備を整えることが、予約獲得につながります。ここでは、撮影用途で特に重視される設備要素を解説します。

撮影スタジオ向け民泊設備を自然光、背景、搬入動線、備品管理で整理した図
撮影向け設備は、光・背景・搬入動線・備品管理を事前に設計します。

白壁・フローリング・大きな窓(自然光)の重要性

撮影ユーザーが最も重視するのは「光環境」です。自然光が入る大きな窓、白やオフホワイトの壁、明るいフローリングは、撮影物件の検索で上位に来る条件です。カーテン・ブラインドの制御性(遮光・採光の切り替え)も、照明の自由度を左右する重要な要素です。

物件の内装を変更できる場合は、濃いウォールカラーから白や薄いグレーへの塗り替えが最も費用対効果の高い投資になる場合があります。また、反射光を抑えたいユーザーのために、窓に貼るフィルム(フロスト加工)のオプションを用意しておくことも差別化になります。

撮影機材置き場・電源タップ・暗幕対応

業務用カメラ・照明機材・三脚・レフ板など、撮影機材は大型のものが多く、持ち込みスペースの確保が求められます。機材を一時置きできる広さ(6畳以上の余白)があると好まれます。また、スタジオ照明用の電源を複数用意できるよう、大容量テーブルタップ(定格15A以上)を提供しているかどうかも選定基準の一つになっています。

暗幕対応(遮光カーテンの設置)があると、光量を完全にコントロールしたいポートレートや商品撮影のユーザーから好評を得られます。自前で暗幕を用意するのが難しい場合は「暗幕なし」と明記しつつ、遮光ブラインドで代替できる旨を案内する方法もあります。

追加で揃えると良いアイテム

下記のアイテムは必須ではありませんが、競合他物件との差別化に役立つオプション設備です。導入コストと需要をふまえて優先順位をつけるのが現実的です。

アイテム 用途 導入コスト目安 需要度
背景紙(白・グレー) 商品撮影・ポートレート 1〜3万円程度
照明スタンド(レンタル付き) 屋内スタジオ撮影全般 3〜10万円程度 中〜高
スチールラック(小道具置き) 機材整理・収納 5,000〜1万円程度
グリーン(観葉植物) 内装の雰囲気づくり 5,000〜3万円程度
フルレングスミラー(全身鏡) ファッション・コスプレ撮影 1〜3万円程度 中〜高
Wi-Fi(高速・安定) ライブ配信・クラウドアップロード 月3,000〜6,000円程度

上記の金額はあくまで目安です。購入ルートや商品グレードによって大きく変動しますので、実際の導入時は複数の業者・店舗で比較検討してください。

はじめ君

はじめ君

撮影スタジオとして貸すなら、まず何を揃えるべきですか?優先順位が知りたいです。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

最初は「白壁・自然光・高速Wi-Fi」の3点から入るのが現実的です。背景紙や照明は需要が確認できてから追加するのがコストを抑えるコツです。追加設備は利用者の声を聞きながら段階的に整えていくと無駄がありません。

料金設定と予約管理

撮影スタジオとしての料金設定は、宿泊料金とはまったく異なるロジックで組み立てる必要があります。時間単位の貸し出しが基本となるため、1時間あたりの単価設定が収益の根幹を決めます。

時間貸し料金の相場感

スペースマーケットやインスタベースといったプラットフォームに掲載されている撮影スタジオの料金は、物件の立地・広さ・設備によって幅があります。以下は2026年5月時点でプラットフォームで確認できる傾向の一例です(個別の物件状況により異なります)。

利用時間帯 都市部(東京・大阪中心部)の目安 地方都市の目安 備考
1時間 2,000〜6,000円程度 1,000〜3,000円程度 設備充実度で上下
半日(4〜5時間) 8,000〜25,000円程度 4,000〜12,000円程度 時間割引が多い
1日(8〜10時間) 15,000〜50,000円程度 8,000〜25,000円程度 商業撮影は高め

上記はあくまで参考値であり、実際の収益を保証するものではありません。類似物件の掲載状況を確認した上で、競合と差別化できる価格帯を設定することが重要です。

宿泊料金との組み合わせ(宿泊+撮影パック)

民泊として夜間に宿泊者を受け入れ、日中の空き時間に撮影スタジオとして貸し出す「ハイブリッド運用」は、稼働率を最大化するうえで効果的な手法の一つです。ただし、宿泊者のチェックアウトと撮影予約の入室の間にバッファ時間(清掃・原状回復の時間)を確保することが実務上の必須事項です。最低1〜2時間のバッファを設けることを推奨します。

一方、「撮影利用後に宿泊も可能」という形のパックプランを提供しているオーナーもいます。機材の持ち込みや照明セッティングを残したまま宿泊させることはリスクが高いため、この場合は撮影終了後に物件を一度原状回復させるルールを利用規約に明記することが重要です。

予約プラットフォームの選択肢

撮影スタジオとしての貸し出しには、Airbnbではなくレンタルスペース専用プラットフォームを活用するのが一般的です。代表的なプラットフォームとその特性は以下のとおりです。

  • スペースマーケット: 国内最大級のスペースシェアプラットフォーム。撮影スタジオカテゴリが充実。
  • インスタベース: 時間貸しスペース特化。カテゴリ検索が使いやすく、撮影用途のユーザーが多い。
  • コモン: 商業撮影・映像制作向け物件に強みを持つ比較的新しいプラットフォーム。
  • 自前の予約フォーム: Google フォームや予約システムを活用し、プラットフォーム手数料(一般的に利用料の15〜30%程度)を抑える方法もあります。

各プラットフォームの手数料率・保険制度・サポート体制は定期的に変更されることがあります。最新の条件は各プラットフォームの公式サイトで直接ご確認されることをお勧めします。

はじめ君

はじめ君

宿泊と撮影を同じ日に組み合わせるとき、時間管理で気をつけることは?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

チェックアウト後の清掃・原状回復に最低1〜2時間のバッファを確保することが現実的です。撮影終了後の片付け・清掃時間も同様です。予約システムでブロック時間を設定し、二重予約が起きない仕組みを作ることが先決です。

利用規約と損害リスクの管理

撮影スタジオとして貸し出す場合、宿泊貸し出しとは異なるリスクが存在します。特に「物件の損傷」「撮影内容の問題」「著作権・肖像権トラブル」の3点は事前に利用規約で整備しておくことが重要です。

撮影利用の規約を禁止事項、人数上限、原状回復、保険確認で整理した図
撮影利用では、人数・時間・原状回復・損害時の扱いを書面で明確にします。

撮影内容の申告義務

個人の趣味撮影と商業撮影では、物件への負荷や二次利用のリスクが大きく異なります。利用規約には「撮影目的・用途の事前申告義務」を明記し、商業撮影(CM・広告・ECサイト等)の場合は料金を別途設定する方法が一般的です。商業撮影に対しては個人撮影より割増料金を設けているオーナーも少なくありません。

また、成人向けコンテンツ・宗教的コンテンツ・特定の政治的メッセージを含む撮影など、オーナーとして承認しない撮影内容をあらかじめ規約に列挙しておくことで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

物件損傷時の賠償・保険の確認

撮影機材の移動中に壁や床を傷つけるケースや、照明器具の熱による焦げ・変色などのリスクは、宿泊貸し出しより高い傾向があります。事前に以下の点を整備することが重要です。

  • 入退室時の物件状態確認(写真記録を双方で残す)
  • 損害発生時の賠償範囲と上限の明記
  • オーナー側の保険(火災保険・施設賠償責任保険等)で撮影用途がカバーされているかの確認

民泊用のホスト保険(Airbnb ホスト保護保険等)は、撮影スタジオとしての利用をカバーしない場合が多いです。撮影利用に対応した施設賠償責任保険に別途加入することを検討する価値があります。保険の詳細については保険会社に直接ご確認ください。

著作権・肖像権への注意

撮影場所を提供するオーナーは、撮影物の著作権・肖像権に対して直接的な責任を負うわけではありませんが、以下のリスクに注意が必要です。

  • 物件の内装・デザインが第三者の著作物を含む場合(有名キャラクターのポスター等)、それを背景に含む商業写真がトラブルになる可能性があります
  • 第三者が写り込んだ写真を無断で使用するトラブル(撮影者側の責任ですが、貸主として巻き込まれるリスクがあります)
!撮影内容によっては別途許可が必要

公道や隣地が映り込む撮影、ドローンを使用する空撮、公共の場所を背景に含むロケ撮影などは、別途行政・施設管理者の許可が必要なことがあります。また、未成年が被写体となる場合は保護者の同意書の確認義務が生じる場合があります。これらの判断は案件ごとに異なるため、弁護士や行政書士への相談をお勧めします。

はじめ君

はじめ君

撮影スタジオとして貸したとき、物件を傷つけられた場合は誰が責任を取るんですか?
民泊学校 編集部</div>
<div class=民泊学校 編集部

基本的に利用者(撮影者)が損害賠償責任を負いますが、規約に明記がないと回収が難しくなります。入退室時の写真記録、賠償上限の明記、施設賠償責任保険への加入を組み合わせることで、リスクを軽減することが現実的な対策です。