編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-30

民泊・旅館業を運営していると、「この予約、断ってもよいのだろうか」「このゲストに帰ってもらえるか」といった判断を迫られる場面が必ず出てきます。しかし、宿泊施設の宿泊拒否は自由にできるわけではなく、旅館業法や障害者差別解消法によって厳しく制限されています。一方で2023年(令和5年)6月に成立し、同年12月13日に施行された改正旅館業法により、迷惑行為(カスタマーハラスメント的な過重要求の繰り返し)を行う宿泊者への拒否が一定の条件のもとで可能になりました。本記事では、どのような場合に宿泊・予約を合法的に断れるのか、断ってはいけないのか、拒否時に求められる記録・説明義務まで、2026年時点の実務的な判断軸を整理します。

この記事でわかること

  • 旅館業法第5条の原則と、改正(令和5年12月施行)で変わった点
  • 宿泊拒否が認められる具体的なケース(迷惑客・定員超過・感染症・本人確認不可 等)
  • 断ることが認められないケース(差別的拒否・障害者差別解消法との関係)
  • 拒否する際の記録義務・説明義務の具体的な内容
  • 民泊(住宅宿泊事業)と旅館業(簡易宿所)での扱いの違い
  • OTA(Airbnb等)での予約拒否・キャンセルとプラットフォーム規約の関係
  • 判断に迷ったときのセルフチェックフローと専門家相談の活用法
minpaku-refusal-rules-2026 Step1 宿泊拒否の基本原則を把握する

Contents

結論先出し:宿泊拒否は「原則禁止・例外許可」の構造

旅館業を営む事業者は、旅館業法第5条によって宿泊拒否が原則として禁止されています。これは公衆衛生と宿泊の機会均等を守るための規定であり、単純に「嫌いなゲストだから」「なんとなく不安だから」という理由では断ることができないとされています。

一方で、令和5年12月13日施行の改正旅館業法によって、迷惑行為を繰り返す宿泊者への拒否が明文化されました。これにより、事業者側にとって長年の課題であった「カスタマーハラスメント的な過重要求の繰り返しへの対応」に一定の法的根拠が与えられた形です。ただし、「断れる」条件は具体的に定められており、それを記録する義務も課されました。

民泊(住宅宿泊事業)については旅館業法の直接適用外ですが、一般社会通念上の不当差別は禁止されており、実務上は旅館業法の判断基準を参照しながら対応することが現実的です。OTAのプラットフォーム規約上も、差別的なキャンセルはアカウント停止リスクにつながります。

以下では、各ケースを法的根拠とともに詳しく整理します。

旅館業法改正 特設ページ(厚生労働省)(2026-05-30取得)

令和5年6月成立・12月13日施行の改正旅館業法の全体像。宿泊拒否制限の見直し、感染症対応、迷惑行為への対応強化など主要改正点を網羅したポータルページ。

宿泊拒否制限(旅館業法第5条関係)(厚生労働省)(2026-05-30取得)

改正旅館業法第5条の詳細解説。迷惑行為を理由とした宿泊拒否の条件、記録義務、差別的拒否の禁止、障害者差別解消法との関係など、実務に直結する情報を掲載。

旅館業のページ(厚生労働省)(2026-05-30取得)

旅館業法の基本情報・施行規則・通知・Q&A等を集約したページ。改正前後の法令テキスト、許可基準、衛生管理に関する最新資料へのリンクを含む。

i民泊制度ポータルについて

住宅宿泊事業(民泊)の法令・届出・条例については、国土交通省・観光庁の民泊制度ポータルサイト(https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/)も参照してください。旅館業法とは別の根拠法令ですが、宿泊者対応の考え方は共通する部分が多くあります。(2026-05-30取得)

はじめ君

はじめ君
予約が入ったとき、どんな理由でも断れないんですか?それだと困ります。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
旅館業法が適用される施設は「原則拒否禁止・例外として断れる」構造です。定員超過・迷惑行為・感染症対応など法定の要件に当てはまる場合は断ることができる場合があります。ただし差別的な拒否は禁止されており、断る際には記録も必要です。

旅館業法第5条の基本原則:宿泊を断れない理由とは

旅館業法第5条は「旅館業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、宿泊を拒んではならない」と定めています。この条文の構造は「拒否の原則禁止+例外列挙」です。つまり、旅館業者に宿泊者を受け入れる義務(受入義務)を原則として課しているのが法の建付けです。

なぜこのような義務が存在するかというと、旅館業は公衆衛生の維持と国民の旅行における宿泊機会の保障という公共的な役割を担っているからです。「なんとなく嫌い」「外国人だから不安」「障害者の方だから手間がかかりそう」といった恣意的・主観的な理由での拒否は、公衆衛生および社会的公平性の観点から認められないとされています。

改正前の旧法においては、断ることができる事由として主に以下が挙げられていました。

  • 宿泊客が伝染性疾患にかかっている場合
  • 風紀を乱す行為をするおそれがあると認められる場合
  • 施設に余裕がない場合(定員超過・満室)
  • 宿泊者が暴力団関係者・反社会的勢力に該当する場合

改正旅館業法(令和5年12月13日施行)では、これらに加えて「宿泊者が迷惑行為(不当な要求の繰り返しなど)を行うおそれがある場合」が新たに明文化されました。同時に、障害を理由とする拒否が不当差別として禁止されることも明確化されています。

!注意:旅館業法の適用対象を確認

旅館業法は「旅館業」(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)に適用されます。住宅宿泊事業(民泊)は住宅宿泊事業法の適用であり、旅館業法の直接適用はありません。ただし、実務上の対応指針として旅館業法の考え方が参照されるケースが多いため、民泊オーナーも本記事の内容を把握しておくことが現実的です。

はじめ君

はじめ君
旅館業法の「受入義務」は、民泊でも同じように守らなければならないのでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
民泊(住宅宿泊事業)には旅館業法第5条は直接適用されませんが、差別的な拒否は障害者差別解消法や消費者契約法上の問題となる場合があります。実務上、旅館業法の基準を参考に対応方針を定めることが現実的とされています。

改正旅館業法第5条で断れるようになったこと:迷惑行為対応の明文化

2023年(令和5年)6月に成立した旅館業法の改正は、「カスタマーハラスメント(カスハラ)的な過重要求への対応強化」が大きな柱のひとつです。改正前は「風紀を乱す行為をするおそれがある」という曖昧な文言のみでの対応を余儀なくされていましたが、改正後は「迷惑行為を繰り返す宿泊者への拒否」が法律上明示されました。

具体的に拒否できる行為として法令・通達等で整理されているのは、概ね以下のとおりです(個別の判断は保健所・自治体・弁護士等にご確認ください)。

  • 他の宿泊者や従業員に対して暴行・脅迫・傷害を加える行為
  • 施設内で著しく粗暴な言動を繰り返す行為
  • 正当な理由なく旅館業者の業務を妨害する行為
  • 合理的な範囲を超えた要求を執拗・反復的に行う行為(例:深夜の不合理な要求の繰り返し、根拠のない金銭補償要求など)
  • 施設の設備・備品等を故意に損傷・破損する行為

ここで重要なのは「繰り返し」や「正当な理由のない執拗な要求」という要素です。1回のクレームや苦情を告げることは当然の権利であり、それだけで拒否の根拠にはなりません。あくまで、通常の接客対応の範囲を明らかに超えた行為が繰り返される場合に、拒否が検討できる場合があるという構造です。

また、改正によって宿泊を断った場合の記録義務も新設されました。どのような行為を理由に断ったか、いつ・誰に断ったか、どのような説明を行ったかを記録・保持することが求められます。この義務があることで、事後的なトラブルや行政への報告に備えることができます。記録の様式・保管期間については保健所・所轄自治体の指導に従うことが求められる場合があります。

!「迷惑行為」の認定は慎重に

何が「合理的な範囲を超えた要求」に当たるかは個別事案ごとの判断になります。宿泊者側に正当な不満がある場合まで「迷惑行為」として拒否することは法の趣旨に反するおそれがあります。拒否の判断に迷う場合は、保健所・自治体・弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

はじめ君

はじめ君
1回でも暴言を吐いたゲストは次回から断れますか?それとも複数回必要ですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
厚生労働省の整理では「繰り返しの迷惑行為」が要件のひとつとして示されています。1回の発言だけで次回予約を一律拒否できるかは個別判断が必要です。行為の内容・程度・経緯を記録したうえで、保健所または専門家にご確認いただくことが現実的です。

断ってはいけないこと:差別的拒否の禁止と障害者差別解消法

改正旅館業法では、宿泊拒否が可能なケースを明文化する一方で、不当な差別的取扱いを理由とする拒否は明確に禁止されています。特に重要なのは障害を理由とした拒否です。

障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、障害を理由とした「不当な差別的取扱い」を禁止し、事業者に対して「合理的配慮の提供」を義務づけています(2024年4月1日以降は民間事業者にも努力義務から法的義務へ格上げ)。旅館業者・民泊事業者もこの対象となります。

改正旅館業法の施行通知等においても、以下のような理由による拒否は不当差別に当たるおそれがあるとして整理されています。

  • 障害があること(身体障害・精神障害・知的障害・発達障害 等)を理由とした拒否
  • 国籍・人種・民族的出身を理由とした拒否(差別)
  • 宗教・信条を理由とした拒否(差別)
  • 性別・性自認・性的指向を理由とした拒否(差別)
  • 介護犬・盲導犬・聴導犬等の補助犬同伴を理由とした拒否(身体障害者補助犬法による)

特に補助犬(盲導犬・介護犬・聴導犬)の同伴拒否は、身体障害者補助犬法第10条により宿泊施設に対して明確に禁止されています。「犬アレルギーがある他の宿泊者がいる」「衛生上の問題がある」といった場合でも、代替手段(部屋の隔離等)を検討するなど合理的配慮の提供が求められます。一方的な拒否は法令違反となる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

なお「外国人」であることを一律の理由とした拒否は、国籍差別として不当拒否に当たるとされています。外国語対応ができないことへの不安は理解できますが、「日本語が通じないから断る」という対応は差別と評価される場合があります。多言語チェックイン案内の活用や通訳アプリの準備など、現実的な合理的配慮を検討することが求められる方向です。

!差別的拒否に関する行政処分・罰則

不当な差別的拒否を繰り返した場合、旅館業法に基づく行政指導・許可取消しの対象となる場合があります。また障害者差別解消法の観点から行政機関から助言・指導・勧告が行われることもあります。具体的な行為が問題かどうかは、保健所・自治体・弁護士等の専門家にご確認ください。

はじめ君

はじめ君
盲導犬を連れたゲストの予約を断ることはできないということですか?
民泊学校 編集部</div>
<div class=民泊学校 編集部
身体障害者補助犬法第10条により、宿泊施設は補助犬の同伴を拒否できないとされています。アレルギー等の事情がある場合も代替対応を検討する方向が求められます。詳細は保健所・自治体へご確認ください。