編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-30

民泊・旅館業を運営していると、「この予約、断ってもよいのだろうか」「このゲストに帰ってもらえるか」といった判断を迫られる場面が必ず出てきます。しかし、宿泊施設の宿泊拒否は自由にできるわけではなく、旅館業法や障害者差別解消法によって厳しく制限されています。一方で2023年(令和5年)6月に成立し、同年12月13日に施行された改正旅館業法により、迷惑行為(カスタマーハラスメント的な過重要求の繰り返し)を行う宿泊者への拒否が一定の条件のもとで可能になりました。本記事では、どのような場合に宿泊・予約を合法的に断れるのか、断ってはいけないのか、拒否時に求められる記録・説明義務まで、2026年時点の実務的な判断軸を整理します。

この記事でわかること

  • 旅館業法第5条の原則と、改正(令和5年12月施行)で変わった点
  • 宿泊拒否が認められる具体的なケース(迷惑客・定員超過・感染症・本人確認不可 等)
  • 断ることが認められないケース(差別的拒否・障害者差別解消法との関係)
  • 拒否する際の記録義務・説明義務の具体的な内容
  • 民泊(住宅宿泊事業)と旅館業(簡易宿所)での扱いの違い
  • OTA(Airbnb等)での予約拒否・キャンセルとプラットフォーム規約の関係
  • 判断に迷ったときのセルフチェックフローと専門家相談の活用法
minpaku-refusal-rules-2026 Step1 宿泊拒否の基本原則を把握する

結論先出し:宿泊拒否は「原則禁止・例外許可」の構造

旅館業を営む事業者は、旅館業法第5条によって宿泊拒否が原則として禁止されています。これは公衆衛生と宿泊の機会均等を守るための規定であり、単純に「嫌いなゲストだから」「なんとなく不安だから」という理由では断ることができないとされています。

一方で、令和5年12月13日施行の改正旅館業法によって、迷惑行為を繰り返す宿泊者への拒否が明文化されました。これにより、事業者側にとって長年の課題であった「カスタマーハラスメント的な過重要求の繰り返しへの対応」に一定の法的根拠が与えられた形です。ただし、「断れる」条件は具体的に定められており、それを記録する義務も課されました。

民泊(住宅宿泊事業)については旅館業法の直接適用外ですが、一般社会通念上の不当差別は禁止されており、実務上は旅館業法の判断基準を参照しながら対応することが現実的です。OTAのプラットフォーム規約上も、差別的なキャンセルはアカウント停止リスクにつながります。

以下では、各ケースを法的根拠とともに詳しく整理します。

旅館業法改正 特設ページ(厚生労働省)(2026-05-30取得)

令和5年6月成立・12月13日施行の改正旅館業法の全体像。宿泊拒否制限の見直し、感染症対応、迷惑行為への対応強化など主要改正点を網羅したポータルページ。

宿泊拒否制限(旅館業法第5条関係)(厚生労働省)(2026-05-30取得)

改正旅館業法第5条の詳細解説。迷惑行為を理由とした宿泊拒否の条件、記録義務、差別的拒否の禁止、障害者差別解消法との関係など、実務に直結する情報を掲載。

旅館業のページ(厚生労働省)(2026-05-30取得)

旅館業法の基本情報・施行規則・通知・Q&A等を集約したページ。改正前後の法令テキスト、許可基準、衛生管理に関する最新資料へのリンクを含む。

i民泊制度ポータルについて

住宅宿泊事業(民泊)の法令・届出・条例については、国土交通省・観光庁の民泊制度ポータルサイト(https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/)も参照してください。旅館業法とは別の根拠法令ですが、宿泊者対応の考え方は共通する部分が多くあります。(2026-05-30取得)

はじめ君

はじめ君
予約が入ったとき、どんな理由でも断れないんですか?それだと困ります。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
旅館業法が適用される施設は「原則拒否禁止・例外として断れる」構造です。定員超過・迷惑行為・感染症対応など法定の要件に当てはまる場合は断ることができる場合があります。ただし差別的な拒否は禁止されており、断る際には記録も必要です。

旅館業法第5条の基本原則:宿泊を断れない理由とは

旅館業法第5条は「旅館業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、宿泊を拒んではならない」と定めています。この条文の構造は「拒否の原則禁止+例外列挙」です。つまり、旅館業者に宿泊者を受け入れる義務(受入義務)を原則として課しているのが法の建付けです。

なぜこのような義務が存在するかというと、旅館業は公衆衛生の維持と国民の旅行における宿泊機会の保障という公共的な役割を担っているからです。「なんとなく嫌い」「外国人だから不安」「障害者の方だから手間がかかりそう」といった恣意的・主観的な理由での拒否は、公衆衛生および社会的公平性の観点から認められないとされています。

改正前の旧法においては、断ることができる事由として主に以下が挙げられていました。

  • 宿泊客が伝染性疾患にかかっている場合
  • 風紀を乱す行為をするおそれがあると認められる場合
  • 施設に余裕がない場合(定員超過・満室)
  • 宿泊者が暴力団関係者・反社会的勢力に該当する場合

改正旅館業法(令和5年12月13日施行)では、これらに加えて「宿泊者が迷惑行為(不当な要求の繰り返しなど)を行うおそれがある場合」が新たに明文化されました。同時に、障害を理由とする拒否が不当差別として禁止されることも明確化されています。

!注意:旅館業法の適用対象を確認

旅館業法は「旅館業」(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)に適用されます。住宅宿泊事業(民泊)は住宅宿泊事業法の適用であり、旅館業法の直接適用はありません。ただし、実務上の対応指針として旅館業法の考え方が参照されるケースが多いため、民泊オーナーも本記事の内容を把握しておくことが現実的です。

はじめ君

はじめ君
旅館業法の「受入義務」は、民泊でも同じように守らなければならないのでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
民泊(住宅宿泊事業)には旅館業法第5条は直接適用されませんが、差別的な拒否は障害者差別解消法や消費者契約法上の問題となる場合があります。実務上、旅館業法の基準を参考に対応方針を定めることが現実的とされています。

改正旅館業法第5条で断れるようになったこと:迷惑行為対応の明文化

2023年(令和5年)6月に成立した旅館業法の改正は、「カスタマーハラスメント(カスハラ)的な過重要求への対応強化」が大きな柱のひとつです。改正前は「風紀を乱す行為をするおそれがある」という曖昧な文言のみでの対応を余儀なくされていましたが、改正後は「迷惑行為を繰り返す宿泊者への拒否」が法律上明示されました。

具体的に拒否できる行為として法令・通達等で整理されているのは、概ね以下のとおりです(個別の判断は保健所・自治体・弁護士等にご確認ください)。

  • 他の宿泊者や従業員に対して暴行・脅迫・傷害を加える行為
  • 施設内で著しく粗暴な言動を繰り返す行為
  • 正当な理由なく旅館業者の業務を妨害する行為
  • 合理的な範囲を超えた要求を執拗・反復的に行う行為(例:深夜の不合理な要求の繰り返し、根拠のない金銭補償要求など)
  • 施設の設備・備品等を故意に損傷・破損する行為

ここで重要なのは「繰り返し」や「正当な理由のない執拗な要求」という要素です。1回のクレームや苦情を告げることは当然の権利であり、それだけで拒否の根拠にはなりません。あくまで、通常の接客対応の範囲を明らかに超えた行為が繰り返される場合に、拒否が検討できる場合があるという構造です。

また、改正によって宿泊を断った場合の記録義務も新設されました。どのような行為を理由に断ったか、いつ・誰に断ったか、どのような説明を行ったかを記録・保持することが求められます。この義務があることで、事後的なトラブルや行政への報告に備えることができます。記録の様式・保管期間については保健所・所轄自治体の指導に従うことが求められる場合があります。

!「迷惑行為」の認定は慎重に

何が「合理的な範囲を超えた要求」に当たるかは個別事案ごとの判断になります。宿泊者側に正当な不満がある場合まで「迷惑行為」として拒否することは法の趣旨に反するおそれがあります。拒否の判断に迷う場合は、保健所・自治体・弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

はじめ君

はじめ君
1回でも暴言を吐いたゲストは次回から断れますか?それとも複数回必要ですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
厚生労働省の整理では「繰り返しの迷惑行為」が要件のひとつとして示されています。1回の発言だけで次回予約を一律拒否できるかは個別判断が必要です。行為の内容・程度・経緯を記録したうえで、保健所または専門家にご確認いただくことが現実的です。

断ってはいけないこと:差別的拒否の禁止と障害者差別解消法

改正旅館業法では、宿泊拒否が可能なケースを明文化する一方で、不当な差別的取扱いを理由とする拒否は明確に禁止されています。特に重要なのは障害を理由とした拒否です。

障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、障害を理由とした「不当な差別的取扱い」を禁止し、事業者に対して「合理的配慮の提供」を義務づけています(2024年4月1日以降は民間事業者にも努力義務から法的義務へ格上げ)。旅館業者・民泊事業者もこの対象となります。

改正旅館業法の施行通知等においても、以下のような理由による拒否は不当差別に当たるおそれがあるとして整理されています。

  • 障害があること(身体障害・精神障害・知的障害・発達障害 等)を理由とした拒否
  • 国籍・人種・民族的出身を理由とした拒否(差別)
  • 宗教・信条を理由とした拒否(差別)
  • 性別・性自認・性的指向を理由とした拒否(差別)
  • 介護犬・盲導犬・聴導犬等の補助犬同伴を理由とした拒否(身体障害者補助犬法による)

特に補助犬(盲導犬・介護犬・聴導犬)の同伴拒否は、身体障害者補助犬法第10条により宿泊施設に対して明確に禁止されています。「犬アレルギーがある他の宿泊者がいる」「衛生上の問題がある」といった場合でも、代替手段(部屋の隔離等)を検討するなど合理的配慮の提供が求められます。一方的な拒否は法令違反となる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

なお「外国人」であることを一律の理由とした拒否は、国籍差別として不当拒否に当たるとされています。外国語対応ができないことへの不安は理解できますが、「日本語が通じないから断る」という対応は差別と評価される場合があります。多言語チェックイン案内の活用や通訳アプリの準備など、現実的な合理的配慮を検討することが求められる方向です。

!差別的拒否に関する行政処分・罰則

不当な差別的拒否を繰り返した場合、旅館業法に基づく行政指導・許可取消しの対象となる場合があります。また障害者差別解消法の観点から行政機関から助言・指導・勧告が行われることもあります。具体的な行為が問題かどうかは、保健所・自治体・弁護士等の専門家にご確認ください。

はじめ君

はじめ君
盲導犬を連れたゲストの予約を断ることはできないということですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

身体障害者補助犬法第10条により、宿泊施設は補助犬の同伴を拒否できないとされています。アレルギー等の事情がある場合も代替対応を検討する方向が求められます。詳細は保健所・自治体へご確認ください。

迷惑客・カスハラ対応の実務:記録・説明・退去要請の手順

改正旅館業法の施行後、迷惑行為への対応が法的に整備されましたが、実務では「どう記録し、どう断るか」という具体的な手順が重要です。以下は、実務上の参考的な手順として整理したものです(個別の対応は保健所・自治体・弁護士・行政書士等の専門家に相談のうえ決定することを推奨します)。

ステップ1:迷惑行為の記録

チェックイン前・滞在中を問わず、以下を可能な範囲で記録します。

  • 日時・場所(電話/メール/対面/OTAメッセージ等)
  • 行為の内容(できるだけ具体的に。録音や録画は事前告知と法令確認が必要)
  • 対応した担当者名
  • 相手に行った説明の内容(何を・どのように伝えたか)

記録を残すことは、後日のトラブル(クレーム・訴訟・行政への申し立て)に備えるうえで非常に重要です。特に改正旅館業法では拒否理由の記録・保持が義務化されており、行政から確認を求められた際に提示できる状態にしておく必要があります。

ステップ2:宿泊者への説明

断る際には、拒否の理由を具体的に説明することが求められています。「なんとなく」「気分で」といった対応は法の趣旨に反します。「〇〇という行為が、当館の規約第〇条に違反するため、ご宿泊をお断りしています」という形での説明が望ましいとされています。説明の内容も記録に残します。

ステップ3:退去要請・警察への通報の検討

チェックイン後に迷惑行為が判明した場合、まず口頭で注意し、改善がない場合に退去を要請します。退去に応じない場合や暴力・脅迫が伴う場合は、警察への通報(110番)を検討します。宿泊者が宿泊料を支払い済みであっても、迷惑行為を繰り返す場合は旅館業法の拒否事由に当たるとされている場合があるため、一方的な不当退去とはならないケースがあります。ただし個別判断が必要なため、弁護士への相談を強く推奨します。

規約・ハウスルールの整備

あらかじめ宿泊規約やハウスルールに「禁止行為・違反した場合の対応(退去・拒否等)」を明記しておくことで、トラブル時の根拠を明確にできます。OTAの場合はゲストへの事前開示として予約ページや自動メッセージに記載する運用が現実的です。

はじめ君

はじめ君
迷惑なゲストを記録なしで断ったら、何か問題になることはありますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
改正旅館業法では拒否理由の記録義務が課されており、記録なしでの拒否は行政確認時に対応できなくなるおそれがあります。また、宿泊者から「差別的拒否だ」と主張されたとき、根拠の記録がないと対抗しにくくなります。記録の習慣化が重要です。

感染症対応による宿泊拒否:改正で変わった考え方

旧旅館業法において「伝染性疾患にかかっている場合」は宿泊を断ることができる事由とされていました。新型コロナウイルス感染症の流行期に、この条文をめぐって様々な問題が生じたことを背景に、改正旅館業法では感染症対応に関する考え方が見直されています。

改正後の整理として重要なのは以下の点です。

  • 新型インフルエンザ等感染症・指定感染症等に感染している宿泊者は、一定の条件のもとで宿泊を断ることができる場合があるとされています
  • 一方で「発熱があるだけ」「ちょっと咳が出る」といった段階で一律に断ることは、医療情報に基づかない恣意的な排除として問題になる場合があります
  • 特に「外国人だから感染症リスクが高い」という誤った認識に基づく拒否は、国籍差別として不当拒否になる可能性があります

感染症対応で宿泊拒否を検討する場合は、保健所・医師の指示・厚生労働省の最新ガイドラインを確認したうえで対応することが求められます。「感染症だから断れる」と単純に判断せず、対象の感染症が法定感染症に該当するか、感染の事実が医療的に確認されているかなどを確認することが現実的です。

!感染症を理由とした拒否は慎重に

感染症対応の拒否判断は、感染症法・旅館業法・障害者差別解消法(精神疾患等を含む)が複合的に関係します。個別の状況での判断は、所轄保健所または弁護士・行政書士等の専門家にご確認ください。

はじめ君

はじめ君
チェックイン時に熱があるゲストへの対応はどうすればよいですか?断ることはできますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
発熱だけでは法定の拒否事由に当たるかの判断が難しい場合があります。感染症法上の対象疾患か、医師の診断があるか等を踏まえた判断が必要です。所轄保健所へ事前に相談し、施設の対応方針を定めておくことが現実的です。

本人確認・定員超過・無断キャンセル:その他の拒否事由の整理

迷惑行為・差別禁止・感染症以外にも、実務でよく問題になる拒否・断りのケースを整理します。

定員超過・満室

旅館業法第5条第1号に「施設が満員であるとき」は拒否できると明記されています。定員・客室数を超える場合は断ることができる場合があります。この場合は拒否の記録(満室であった事実の記録)を残しておくことが望ましいとされています。

本人確認ができない場合

旅館業法施行規則により、宿泊者の氏名・住所・国籍等の確認が事業者に義務づけられています。宿泊者が正当な理由なく本人確認書類の提示を拒否する場合や、虚偽の情報を提供した場合は、法令上の義務を果たせないことを根拠に宿泊を断ることができる場合があるとされています。ただし「確認を嫌がっただけ」で一律に断ることには慎重を要します。

無断キャンセル(ノーショー)への事前対応

ノーショーそのものは「断る」問題ではなく「キャンセル料・損害賠償」の問題です。ただし、過去に繰り返しノーショーを行った宿泊者の再予約を断ることが「迷惑行為の繰り返し」として拒否事由に当たるかどうかは、個別の状況による判断が必要です。OTAプラットフォームのキャンセルポリシーも確認が必要です。

未成年者の単独宿泊

未成年者の単独宿泊については、旅館業法に直接の規定はありませんが、民法上の保護者の同意・宿泊施設の安全管理義務の観点から、保護者の同意確認を求める対応が実務上行われています。親権者への連絡確認が取れない場合の対応は施設の規約で事前に定めておくことが望ましいとされています。

深夜の飛び込みチェックイン

営業時間外・チェックイン締め切り後の受付拒否は、施設の営業規則・ハウスルールとして定めたうえで、事前に周知されている場合に認められる場合があります。ただし、施設に余裕があるにもかかわらず特定のゲストにだけ深夜対応を拒否する場合は、差別的取扱いとして問題になるおそれがあります。

はじめ君

はじめ君
パスポートを見せてくれないゲストは断ることができますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
外国人宿泊者のパスポート確認は旅館業法施行規則に基づく義務です。提示を拒否されると法定確認義務が果たせないため、宿泊を断ることができる場合があるとされています。ただし国籍差別とならないよう全ての外国人宿泊者に同様の対応をとることが前提です。

拒否時の記録義務・説明義務:改正旅館業法の新設ルール

改正旅館業法で新たに整備された重要なルールのひとつが、宿泊拒否時の記録義務・説明義務です。以前は「断ること自体の根拠」は法律に定められていても、「どう記録するか」「何を説明するか」については明確な規定が不十分でした。改正によりこの点が整備されました。

記録義務の内容

宿泊を拒否した場合、以下を記録・保持することが求められます(詳細は保健所・自治体のガイダンスに従ってください)。

  • 拒否した日時
  • 拒否した相手(宿泊申込者)の識別に必要な情報(氏名等)
  • 拒否の理由(具体的な事由:旅館業法第5条のどの号に該当するか)
  • 宿泊者への説明の内容
  • 対応した担当者(旅館業者側)

これらの記録は、行政機関による立入検査・指導の際に確認を求められる場合があります。また、宿泊者から不当拒否として申し立てがあった際の反証としても機能します。

説明義務の内容

拒否する際は宿泊者に対して拒否の理由を説明することが求められています。「断れる場合に該当するから断った」という事実を宿泊者に伝えることで、無用な誤解や感情的なトラブルを防ぐ効果も期待できます。ただし、拒否理由の説明中に差別的な発言・言動が含まれないよう注意が必要です。

記録書式のサンプル(参考)

記録項目 内容例
日時 2026年○月○日 ○時○分
申込者氏名 ○○ ○○(または予約番号)
拒否事由(法令上の根拠) 旅館業法第5条第○号(迷惑行為の繰り返し)
具体的行為の内容 ○月○日・○日に○○という行為を繰り返した(内容を具体的に記載)
宿泊者への説明内容 「○○という行為が当館規約に違反するためお断りしている」旨を口頭で説明
担当者名 担当: ○○(施設名)
i書式・保管期間は自治体によって異なる場合があります

記録の様式・保管期間については旅館業法施行規則・省令・都道府県の条例・保健所の指導によって異なる場合があります。施設所在地の保健所または自治体の担当窓口にご確認ください。

はじめ君

はじめ君
拒否の記録はどのくらいの期間保管しておけばよいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
保管期間は施行規則・自治体条例によって異なる場合があります。一般的には行政処分の時効や民事訴訟の消滅時効(3〜5年程度)を念頭に保管する事業者が多いようですが、施設所在地の保健所に確認するのが確実です。

民泊(住宅宿泊事業)とOTA規約での宿泊拒否・予約キャンセルの実務

住宅宿泊事業(民泊)は旅館業法の直接適用対象ではなく、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づきます。そのため旅館業法第5条の「受入義務」は直接かかりませんが、実務上は旅館業法の考え方を参照しながら運用することが現実的とされています。

住宅宿泊事業法上の拒否規制

住宅宿泊事業法には旅館業法第5条のような明示的な受入義務規定はありませんが、以下の点に留意が必要です。

  • 障害者差別解消法は住宅宿泊事業者にも適用されます
  • 消費者契約法上、不当な条件での契約拒絶は問題になる場合があります
  • OTAの利用規約で差別的なキャンセルが禁止されており、違反するとアカウント停止リスクがあります

Airbnb等OTAの予約拒否・キャンセルポリシー

Airbnb等の主要OTAは、独自の「差別禁止ポリシー」を設けています。人種・国籍・民族・宗教・性別・性的指向・障害等を理由にした予約拒否・キャンセルは、プラットフォーム規約違反とされており、発覚した場合はアカウント停止・掲載削除の対象になります。

OTA経由の予約キャンセルで認められる事由の例として、各プラットフォームが示しているのは概ね以下のとおりです(各プラットフォームの最新規約を必ず確認してください)。

  • 緊急事態・自然災害・施設の損壊等のホスト側の不可抗力
  • ゲストによる規約違反行為(ハウスルール違反・虚偽情報での予約等)
  • 旅行者側の明らかな詐欺的行為

「なんとなく嫌だ」「外国人だから対応できない」「前回トラブルがあった」といった理由でのキャンセルは、OTA側の審査で問題とされる場合があります。OTAのキャンセルポリシー変更は頻繁に行われるため、定期的に最新の利用規約を確認する習慣が重要です。

民泊でのカスハラ対応

民泊事業者がOTA経由で迷惑なゲストへの対応を求める場合、まずはOTAの「カスタマーサポート・解決センター」への報告を活用することが現実的です。多くの主要OTAは、迷惑行為・ハウスルール違反のゲストへの対応として、キャンセル手数料免除・ゲストの評価レビュー・アカウント停止申請等の機能を提供しています。

minpaku-refusal-rules-2026 Step2 断れる/断れないを見極める
はじめ君

はじめ君
民泊でも差別的な予約拒否をするとどうなりますか?法律で罰せられますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
民泊(住宅宿泊事業)は旅館業法の直接適用外ですが、障害者差別解消法違反として行政指導を受ける場合や、OTA規約違反でアカウント停止になる場合があります。また、民事上の損害賠償請求リスクも否定できません。差別的な対応は厳に避けてください。

拒否の可否を判断するための比較表

区分 主な根拠 旅館業(簡易宿所) 民泊(住宅宿泊事業)
定員超過・満室 旅館業法第5条第1号 断れる場合がある 施設の容量上の合理的理由として断れる場合がある
法定感染症への感染 旅館業法第5条第2号 対象感染症に該当する場合、断れる場合がある 保健所の指示に従った対応が現実的
迷惑行為の繰り返し(カスハラ等) 改正旅館業法第5条 条件を満たす場合、断れる場合がある(記録義務あり) OTA規約・ハウスルール違反として対応。記録を残す
本人確認拒否(外国人のパスポート拒否等) 旅館業法施行規則(本人確認義務) 義務を果たせない場合、断れる場合がある 同様に義務を果たせない場合の対応として参照
障害を理由とした拒否 障害者差別解消法・改正旅館業法 禁止(不当差別的取扱いに当たる) 禁止(同法の適用あり)
国籍・人種・民族を理由とした拒否 改正旅館業法・憲法原理 禁止(差別的拒否に当たる) 禁止。OTA規約でも禁止
補助犬(盲導犬等)同伴を理由とした拒否 身体障害者補助犬法第10条 禁止(法律で明確に禁止) 禁止(同法の適用あり)
「なんとなく不安」「対応が面倒」等の主観的理由 旅館業法第5条の原則 断れない(法定事由に該当しない) 断れない(OTA規約違反にもなりうる)

旅館業(簡易宿所)と住宅宿泊事業(民泊)の比較

比較項目 旅館業(簡易宿所) 民泊(住宅宿泊事業)
根拠法令 旅館業法 住宅宿泊事業法
許可または届出 都道府県知事等の許可が必要 都道府県知事等への届出で可
営業日数の制限 制限なし 年間180日以内(自治体により短縮条例あり)
受入義務(宿泊拒否制限) 旅館業法第5条で明確に規定(原則禁止・例外許可) 直接規定なし。ただし差別禁止法は適用される
迷惑行為への拒否根拠 改正旅館業法第5条で明文化(令和5年12月施行) OTA規約・ハウスルール・民法を組み合わせた対応
記録義務 改正旅館業法で新設(拒否理由の記録・保持) 直接の記録義務なし(自主的な記録を推奨)
保健所の関与 所轄保健所が許可・監督・指導 届出先・衛生管理の相談窓口として機能

宿泊拒否の可否セルフチェックフロー

断るべきか迷ったときに活用できる判断の目安です。これはあくまで参考的なフローであり、最終的な判断は保健所・自治体・弁護士・行政書士等の専門家にご確認ください。

  1. 施設の定員・客室に余裕はあるか?
    余裕がない(満室)→ 断ることができる場合がある。余裕がある → 次のステップへ。
  2. 法定感染症への感染が医療的に確認されているか?
    確認されている → 保健所に相談したうえで対応を決める。未確認 → 次のステップへ。
  3. 本人確認書類の提示を正当な理由なく拒否しているか?
    拒否している → 法定義務を果たせないとして断れる場合がある。提示している → 次のステップへ。
  4. 繰り返しの迷惑行為(暴力・脅迫・過重要求の反復等)があるか?
    記録がある → 改正旅館業法の要件を確認し、記録を揃えたうえで断ることを検討。記録がない → 今回は対応し記録を開始する。
  5. 断る理由は障害・国籍・人種・宗教・性別等を主な根拠にしていないか?
    していない → 上記1〜4のいずれかを根拠に断ることが検討できる場合がある。
    している → 断ることができない(不当差別的取扱いに当たるおそれがある)。
  6. 断る場合に記録・説明の準備ができているか?
    できている → 記録を残したうえで断ることが検討できる。
    できていない → 記録・説明の準備をしてから判断する。
!このフローはあくまで参考です

実際の拒否判断は個別の状況・施設形態・自治体条例により大きく異なります。「断れる」「断れない」の最終判断は、必ず施設所在地の保健所・自治体の担当窓口、または弁護士・行政書士等の専門家にご相談ください。

失敗事例と教訓:こんな対応が問題になりやすい

実際の現場では、善意や習慣的な対応が「違法な拒否」「差別的取扱い」として問題になるケースがあります。以下は、事業者が陥りやすい失敗パターンと、そこから学べる教訓を整理したものです(いずれも実際の事案を参考に一般化した例示であり、特定の事案を指すものではありません)。

失敗事例1:「外国語が話せないから」と外国人ゲストを断った

語学への不安から、外国籍のゲストの予約を一律に断ったケース。これは国籍・民族的出身を理由とした差別的取扱いに当たるおそれがあります。多言語チェックイン案内ツールや翻訳アプリを活用して合理的配慮を提供することが求められます。「外国語が話せない」は拒否の正当理由にはなりにくいとされています。

失敗事例2:車椅子ユーザーに「バリアフリー未整備」を理由に一律拒否

施設のバリアフリー対応が不十分であることを理由に、車椅子ユーザーの宿泊申込を即座に断ったケース。障害者差別解消法上の「合理的配慮」として、代替手段(1階の客室を提供する・スタッフが補助する等)の検討が求められます。バリアフリーが不十分であることを説明したうえで「対応できる範囲で受け入れる努力」をしないままの拒否は問題になる場合があります。

失敗事例3:過去のクレームを理由に「感情的に」断った

以前に小さなクレームを受けた宿泊者の再予約を、記録もなく主観的判断で拒否したケース。改正旅館業法の「迷惑行為の繰り返し」を根拠とするためには、行為の内容・頻度・程度の記録が必要です。記録なしの感情的な拒否は、宿泊者から「差別的拒否」として申し立てられるリスクがあります。

失敗事例4:「精神障害者は危険」という誤解から精神疾患をもつゲストを断った

根拠のない偏見から、精神疾患を告知した宿泊者の申込を断ったケース。これは障害を理由とした不当差別的取扱いに当たります。精神疾患があることは、それ自体が宿泊拒否の正当事由にはなりません。合理的配慮の提供が求められる方向です。

失敗事例5:OTAでゲストの国籍を確認した後に「満室」と虚偽連絡でキャンセル

実際には空室があるにもかかわらず、予約者の氏名や国籍を確認した後に「満室になった」とキャンセルしたケース。OTAのシステムは空室状況を記録しており、虚偽の満室申告は規約違反として調査対象になる場合があります。差別的キャンセルとして認定された場合、アカウント停止・掲載削除のリスクがあります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 旅館業法第5条の「受入義務」は、民泊(住宅宿泊事業)にも適用されますか?

民泊(住宅宿泊事業)は住宅宿泊事業法の適用であり、旅館業法第5条の受入義務は直接には適用されません。ただし、障害者差別解消法はすべての事業者に適用されるため、差別的な拒否は民泊でも問題となる場合があります。また、OTAの差別禁止ポリシーはプラットフォーム利用規約として民泊ホストにも適用されます。詳細は住宅宿泊事業の届出先自治体・保健所にご確認ください。

Q2. 改正旅館業法(令和5年12月施行)で具体的に何が変わりましたか?

主な変更点は3つです。1つ目は、迷惑行為(不当要求の繰り返し等)を行う宿泊者への拒否が法律上明文化されたこと。2つ目は、障害を理由とした拒否が不当差別として明確に禁止されたこと。3つ目は、宿泊拒否をした場合の記録義務・説明義務が新設されたことです。改正前と比べて、事業者側の権利(迷惑客への対応)と義務(記録・説明)がいずれも整備された形です。詳細は厚生労働省の改正案内ページをご確認ください。

Q3. 感染症にかかったゲストを断る場合、医師の診断書は必要ですか?

法令上の明確な規定はありませんが、「法定感染症への感染」という拒否事由を主張するためには、何らかの医療的根拠があることが望ましいとされています。「発熱がある」「咳が出ている」だけでは判断が難しい場合があります。感染症対応の拒否を検討する場合は、事前に所轄保健所に相談のうえ対応方針を定めておくことが現実的です。

Q4. 盲導犬・介護犬を理由に断ることは一切できませんか?

身体障害者補助犬法第10条により、旅館・ホテル等の宿泊施設は補助犬の同伴を拒否できないとされています。アレルギーを持つ他の宿泊者がいる場合など、特別な事情がある場合も、代替措置(部屋の配置変更・清掃の工夫等)を検討することが求められる方向です。一方的な拒否は法令違反となる可能性があるため、具体的な対応は保健所・自治体・弁護士にご相談ください。

Q5. 記録義務はどの程度の書式・保管期間が必要ですか?

法令上の様式・保管期間は旅館業法施行規則・都道府県の条例・保健所の指導によって異なる場合があります。最低限「日時・相手・拒否事由・説明内容・担当者名」を記録し、行政指導の時効や民事訴訟の消滅時効を踏まえた期間(少なくとも数年)保管しておくことを推奨する事業者が多いようです。施設所在地の保健所に具体的な指示を求めることが確実です。

Q6. OTAで外国人ゲストの予約を断る方法はありますか?

OTAは国籍・民族的出身を理由とした予約拒否を規約で禁止しています。「外国人だから」という理由での拒否は、プラットフォーム規約違反としてアカウント停止になるリスクがあります。語学への不安は、多言語対応ツール・翻訳アプリ・施設の多言語案内整備などで対応することが現実的です。民泊学校のツールページ(/tools/#operations)では多言語案内の自動生成機能も提供しています。

Q7. 過去にトラブルがあったゲストの再予約を断ることはできますか?

過去の迷惑行為の記録があれば、改正旅館業法(旅館業の場合)または施設のハウスルール(民泊の場合)を根拠に、再予約を断ることが検討できる場合があります。ただし、過去のトラブルの内容・程度・記録の有無によって判断が変わります。記録なしで「なんとなく嫌い」という理由での断りは問題になるおそれがあります。具体的な判断は保健所・弁護士・行政書士にご相談ください。

まとめ:宿泊拒否は「根拠・記録・説明」の3点セット

旅館業・民泊における宿泊拒否・予約拒否は、「原則禁止・例外許可」の構造が基本です。令和5年12月に施行された改正旅館業法により、迷惑行為への拒否が法的に明文化された一方で、差別的拒否の禁止と記録義務も明確化されました。

実務上の鉄則は「根拠・記録・説明」の3点セットです。断る場合は法令上の拒否事由に該当することを確認し(根拠)、行為の内容・日時・対応を記録し(記録)、宿泊者に理由を説明する(説明)という手順を踏むことが求められます。障害・国籍・人種等を理由とした拒否は、旅館業法・障害者差別解消法・身体障害者補助犬法・OTA規約のいずれかで禁止されており、厳に避ける必要があります。

「断れるケースかどうか」の判断に迷う場合は、施設所在地の所轄保健所・自治体の担当窓口、または弁護士・行政書士等の専門家にご相談ください。個別の事案・施設形態・地域条例によって判断が異なる場合があります。本記事の内容は2026年5月30日時点の情報に基づいており、法令改正等によって変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省の旅館業法改正特設ページ(https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/)でご確認ください。


⚠️ 本記事は2026-05-30時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

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本記事は 2026-05-30 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
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  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
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  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

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民泊学校 編集部。運営者は2015年からAirbnbでの民泊運用に携わり、複数物件の運営経験をもとに、公式ソースの確認・専門家への確認導線・実務目線の3つを軸に記事を編集しています。