編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-30

民泊・宿泊業を複数物件や大型施設で展開するほど、固定資産税・所得税・消費税以外にも気になる税目が出てきます。その一つが「事業所税」です。事業所税は一般的にはあまり知られていない地方税(目的税)ですが、人口30万人以上の政令指定都市などで宿泊事業を行う場合、床面積や従業者数が一定の基準を超えると申告・納付義務が発生します。この記事では、事業所税の仕組みと課税される都市・免税点のしくみを整理し、小規模な民泊オーナーから複数物件を展開する事業者まで、自分が対象になるかどうかを判断するための情報を実務目線でまとめています。税務上の最終判断は、税理士または課税都市の担当課にご確認いただくことを強くお勧めします。

この記事でわかること

  • 事業所税とは何か——固定資産税・個人事業税とどう違うのか
  • どの都市で課されるか——人口30万人以上の指定都市等に限定される理由
  • 資産割(床面積1平方メートルあたり600円)の計算方法
  • 従業者割(従業者給与総額の0.25%)の計算方法
  • 免税点(床面積1000平方メートル・従業者100人)の具体的な意味
  • 小規模民泊と大型施設の境目——複数物件展開でどう変わるか
  • 申告・納付の流れと、まず相談すべき窓口
minpaku-jigyoshozei-2026 Step1 事業所税を把握する

Contents

結論先出し——小規模民泊には基本的に事業所税はかからない

結論から先にお伝えします。住宅1〜2室程度の小規模な民泊(住宅宿泊事業)は、事業所税の免税点を超えることはほぼなく、申告義務が生じないケースが大半です。

事業所税が課税の対象となり得るのは、以下の2つの条件が重なった場合に限られます。

  • 物件の所在地が「事業所税の課税団体(指定都市等)」に該当する
  • 事業所等の床面積の合計が1000平方メートルを超える、または従業者数が100人を超える(どちらか一方でも超えた場合)

現状の民泊環境でいえば、1〜5室程度のワンフロア型民泊施設や住宅宿泊事業であれば、床面積合計が1000平方メートルを超えることはまずありません。また従業者数100人超という基準も、清掃スタッフを含めた全従業者を合算しても小規模オーナーには遠い数字です。

一方、旅館業や特区民泊として大型の宿泊施設を運営している場合、または複数物件を集積的に展開して床面積合計や従業者規模が大きくなってきた場合には、注意が必要です。「指定都市等で」かつ「免税点を超えたとき」に初めて課税対象となります。この2つの条件が重なるかどうかが判断の分かれ目です。

以下では、事業所税の仕組みを体系的に解説していきます。

はじめ君

はじめ君
事業所税って聞いたことがなかったのですが、民泊でも関係あるんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
1〜2室の小規模民泊であれば、免税点(床面積1000平方メートル超など)を超えることはほぼないため、実務上は関係が生じないケースがほとんどです。複数物件を大規模展開する際は確認が必要になります。

事業所税とは——他の税金との違いを整理する

事業所税は、都市環境の整備・改善のための財源を確保することを目的とした地方税(目的税)です。地方税法第701条の30以下に根拠が置かれており、一定の人口規模以上の都市(指定都市等)だけが課税権限を持つ税目です。

民泊オーナーが通常意識する主な税金と比べると、事業所税はやや特殊な位置づけです。以下に整理します。

税目 課税主体 課税標準 目的
固定資産税 市町村(都道府県) 土地・建物・償却資産の評価額 普通税(一般財源)
個人事業税 都道府県 事業所得(一部290万円控除後) 普通税(一般財源)
所得税 課税所得(収入−経費) 普通税(一般財源)
事業所税 指定都市等 事業所の床面積・従業者給与総額 目的税(都市環境整備)

表から分かるように、事業所税は「利益・収入」ではなく「事業所の床面積または従業者給与総額」に対して課税される点が最大の特徴です。利益がゼロ(赤字)であっても、床面積が免税点を超えて指定都市等内の事業所を持つ場合は課税の対象となる場合があります。これが、他の税目とは異なる実務上の注意点です。

また、事業所税は「都市計画税」と混同されることがあります。都市計画税は土地・建物の所有に対して課されるのに対し、事業所税は「その場所で事業を行っていること」に対して課されます。賃貸物件で民泊を運営している場合でも、事業所税は借主(事業主)側に申告義務が生じる場合があります(後述する免税点を超える場合)。

総務省 地方税制度「事業所税」
(2026-05-30取得)

事業所税の概要・課税団体・課税標準・税率・免税点等について総務省が公式に解説しているページ。制度の根拠となる地方税法第701条の30以下についての制度説明が記載されています。

総務省 地方税制度「様々な税(事業所税を含む目的税等)」
(2026-05-30取得)

目的税の体系の中での事業所税の位置づけを確認できる総務省の制度解説ページ。固定資産税・個人事業税などとの分類上の違いが整理されています。

e-Gov法令検索(地方税法)
(2026-05-30取得)

地方税法の全文を確認できる政府の公式法令検索サービス。事業所税の課税根拠は地方税法第701条の30〜第701条の78に規定されています。「地方税法」で検索し第701条の30以下を参照してください。

はじめ君

はじめ君
赤字でも事業所税がかかる場合があるというのは怖いですね。それはなぜですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
事業所税は利益ではなく「床面積」と「給与総額」が課税標準だからです。都市のインフラ整備費用として、事業所を置く事業者全体に応分に負担していただく目的税という性格上、収益とは切り離されています。

課税される都市——人口30万人以上の「指定都市等」とはどこか

事業所税は日本全国すべての自治体が課税しているわけではありません。地方税法の規定により、課税できる団体は限られています。具体的には以下の通りです。

  • 指定都市(政令指定都市)20市
  • 首都圏整備法に規定する既成市街地などを有する市(東京都特別区・横浜市・川崎市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市等)
  • 人口が概ね30万人以上であって、政令で指定する市町村

2026年5月時点で事業所税の課税団体として機能しているのは、主に以下のような都市です(代表例)。

都市 人口規模(目安) 備考
東京都(特別区部) 約970万人 都が課税主体(各区ではない)
横浜市 約378万人 政令指定都市
大阪市 約280万人 政令指定都市
名古屋市 約232万人 政令指定都市
京都市 約146万人 政令指定都市
神戸市 約152万人 政令指定都市
福岡市 約163万人 政令指定都市
札幌市 約196万人 政令指定都市

この表はあくまで代表例です。課税団体かどうかは、物件の所在する市区町村の税務担当部署(法人市民税・事業所税担当課)に問い合わせるのが確実です。

重要なのは、課税団体でない都市(多くの中小都市・地方都市)では事業所税は存在しないという点です。例えば、人口5万人の地方都市で民泊を行っている場合、事業所税の課税対象とはならない可能性が高いです。

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課税都市かどうかは物件所在地で確認を

「東京都で民泊しているから関係ある」「地方都市だから関係ない」と判断する前に、物件が所在する市区町村が事業所税の課税団体かどうかを確認してください。東京都の場合は都が課税主体であり、特別区内の事業者は都税事務所への申告になります。政令指定都市以外の市でも、政令指定を受けている場合は課税団体になります。最終的な確認先は物件所在地の市区町村税務担当課または都税事務所です。

はじめ君

はじめ君
東京都内で民泊を始めようとしています。東京はどこに申告することになりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部
東京都特別区内の事業所については、東京都(都税事務所)が課税主体となります。ただし、免税点を超えない小規模な民泊であれば申告義務自体が生じない場合がほとんどです。詳細は事業所の管轄都税事務所にご確認ください。

資産割——床面積1平方メートルあたり600円の仕組み

事業所税は「資産割」と「従業者割」の2つの課税方式から構成されています。まず資産割について解説します。

資産割の課税標準と税率

資産割は、事業所等の床面積(平方メートル)に対して課税されます。税率は地方税法により統一されており、1平方メートルあたり600円です。

計算式は以下のとおりです。

資産割税額 = 事業所等の床面積合計(平方メートル)× 600円

例として、床面積500平方メートルの宿泊施設を東京都特別区内で運営している場合:

  • 床面積合計: 500平方メートル
  • 免税点(1000平方メートル)未満のため: 資産割は課税されない

同じ事業者が複数物件を持ち、床面積合計が1200平方メートルになった場合:

  • 床面積合計: 1200平方メートル
  • 免税点(1000平方メートル)超過のため: 課税対象
  • 資産割税額: 1200 × 600円 = 720,000円

床面積の計算範囲

資産割の課税標準となる「床面積」には、宿泊スペースだけでなく共用部・廊下・倉庫・事務所なども含まれます。また、同一の事業主が複数の事業所(物件)を指定都市等内に持つ場合は、原則としてそれらの床面積を合算して判定します。これが複数物件展開で注意が必要な理由のひとつです。

免税点(1000平方メートル)の意味

事業所等の床面積の合計が1000平方メートル以下であれば、資産割の免税点以下となり申告義務は生じない扱いとなります。この「1000平方メートル」という基準は、中小規模の事業者を保護するための免税点です。戸建住宅の民泊なら床面積は100〜200平方メートル程度、ワンルームマンションなら20〜40平方メートル程度が一般的なので、単一物件での民泊であれば免税点を超えることはほぼないといえます。

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複数物件の合算に注意

同一事業主が持つ複数の民泊物件の床面積は合算して判定します。例えば、大阪市内に10室×平均50平方メートルの民泊物件があれば、合計500平方メートルで免税点未満。しかし20室まで拡張すると合計1000平方メートルとなり、免税点ちょうどになります。さらに1室でも追加すると課税対象となる可能性があります。事業拡張時には床面積の合計を把握しておくことを推奨します。

はじめ君

はじめ君
民泊で使っている部屋の面積だけを計算すればいいですか?廊下や共用部も含むのでしょうか?
民泊学校 編集部</p>
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<div class=民泊学校 編集部
原則として事業所等として使用している全体の床面積(共用部・廊下・倉庫含む)が課税標準となります。ただし、住居部分と事業所部分が混在する場合の按分計算など詳細は課税都市の担当課または税理士にご確認ください。