編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-02

賃貸物件で民泊を始めようとするとき、多くの方が最初につまずくのが「大家(貸主)や管理会社から転貸の承諾を取り付ける」というステップです。住宅宿泊事業法に基づく届出では、賃借物件の場合に「貸主の承諾を証する書面」の提出が求められます。この書面が揃わなければ行政受付すら始まりません。本記事では、契約書・管理規約の転貸禁止条項の確認から、大家・管理会社への依頼の進め方、承諾書に最低限記載すべき事項の整理、定期借家契約での特別な注意点、さらに断られた場合の現実的な選択肢まで、賃借人が自分で民泊を始めたいときの実務プロセスを順を追って解説します。

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この記事でわかること

  • 住宅宿泊事業届出に「貸主の承諾を証する書面」が必要な根拠
  • 賃貸借契約書・管理規約で転貸禁止条項を確認する手順
  • 大家・管理会社への承諾依頼メールの書き方と交渉で有効な訴求点
  • 承諾書に最低限記載すべき事項(記載例つき)
  • 定期借家契約での特別な注意点
  • 承諾を断られた場合の現実的な選択肢3つ
  • 行政書士・弁護士への相談が有効な場面

Contents

なぜ賃貸物件で民泊をするには「貸主の承諾」が必要か

賃貸物件で民泊を行う場合、法的な手続きの入口として最初に押さえておきたいのが、住宅宿泊事業法(民泊新法)上の届出要件です。

住宅宿泊事業法第3条は届出に必要な書類のひとつとして、届出住宅が賃借物件である場合に「賃貸借契約において転貸が認められていることを証する書面」または「貸主の承諾を証する書面」の提出を求めています。これは国土交通省・民泊制度ポータルサイトのFAQでも明示されており、この書面なしに届出を受理してもらうことは、現行の運用上できないと理解しておく必要があります。

国土交通省 民泊制度ポータルサイト FAQ(届出書類・貸主の承諾)
(2026-06-02取得)

賃借物件で住宅宿泊事業を届け出る場合に必要な「貸主の承諾を証する書面」に関するFAQを掲載。

一方、民法第612条は「賃借人は、貸主の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない」と規定しています。民泊のためにゲストを住戸に泊まらせる行為が「転貸」に該当するかどうかについては解釈の余地がありますが、実務上は賃貸借契約書の転貸禁止条項と貸主の意向の双方を確認したうえで進めることが、後々のトラブルを避けるための現実的なルートです。無断で民泊を始めた場合の契約解除リスクについては別記事「民泊の賃貸借契約と転貸の論点」で詳しく解説していますので、法的論点と合わせてご確認ください。

つまり、承諾取得は単なる行政手続き上の要件に留まらず、民事上の契約違反リスクを回避するうえでも欠かせないステップです。承諾なしに民泊を開始した場合、契約解除・明渡し請求のリスクが生じる可能性があることを念頭に置いておく必要があります。

はじめ君

はじめ君

貸主の承諾書がなければ届出が受理されないということですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

現状の届出運用では、賃借物件の場合に承諾書(または転貸可の契約書条項の写し)の提出が必要とされています。受理条件は自治体により細部が異なる場合があるため、届出先の窓口に事前確認することをお勧めします。

契約書・管理規約の転貸禁止条項を確認する

大家に承諾依頼をする前に、まず自分が手元に持っている書類を読み込むことが先です。確認すべき書類は主に2種類あります。

1. 賃貸借契約書(個別契約)

賃貸借契約書には多くの場合、以下のような転貸禁止条項が入っています。

  • 「賃借人は、貸主の書面による承諾なく、本物件を第三者に転貸してはならない」
  • 「住宅宿泊事業その他の反復継続的な宿泊サービスへの利用を禁止する」(近年増加)
  • 「民泊・ゲストハウス・簡易宿所としての利用を禁止する」(明示型)

まず「転貸」「転貸禁止」「第三者への使用」「住宅宿泊事業」「民泊」といったキーワードで契約書を通読します。転貸禁止の条項があっても、それは「貸主の承諾なしの転貸を禁止」している場合がほとんどで、承諾を得れば転貸できる構造になっているケースが多いです。ただし「一切の転貸を禁止する」「民泊目的の使用を禁止する」という明示的な禁止条項がある場合は、別途折衝が必要になります。

2. 管理規約(分譲マンションの場合)

分譲マンションの賃貸物件の場合、賃貸借契約書のほかに、その物件が従う管理組合の管理規約も確認が必要です。管理規約に「住宅宿泊事業の禁止」が明記されている場合、貸主(区分所有者)が個人的に承諾しても、管理規約上の制約が残るため、届出の要件である「使用制限がないこと」を満たせない可能性があります。

!注意

分譲マンションでは、貸主(区分所有者)の承諾だけでなく、管理組合の管理規約でも民泊が制限されていないかを確認する必要があります。管理規約は管理組合または管理会社に写しを請求できます。管理規約の確認方法については区分所有マンションの民泊開業ガイドも参照してください。

3. 定期借家契約か普通借家契約かを確認する

契約書で「定期建物賃貸借契約(定期借家契約)」と記載されている場合は、後述の「定期借家での注意点」セクションを合わせてご確認ください。定期借家では契約期間・用途の制限が普通借家より厳格に設定されていることが多く、民泊運営との整合性を丁寧に確認することを推奨します。

はじめ君

はじめ君

管理会社に確認するとき、民泊をやりたいと言っていいのでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

まずは管理規約の写し・契約書の確認だけを管理会社に依頼し、内容を理解したうえで承諾依頼を出す順序が現実的です。先に状況を把握してから交渉に臨むほうが、双方にとって話が整理しやすくなります。

大家・管理会社への承諾依頼の進め方

契約書と管理規約を確認し、転貸を明示的に禁止する条項がないこと、あるいは「貸主の承諾があれば可」という構成になっていることを確認したら、いよいよ貸主・管理会社への承諾依頼に入ります。

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ステップ1: 書面(メール)で正式依頼を出す

口頭ではなく、メールまたは書面で依頼することが重要です。理由は2点あります。第一に、承諾の証拠として後で提出・保管できるためです。第二に、相手(貸主・管理会社)が社内で確認・検討する際に、内容を正確に伝えられるためです。

依頼メールのポイントは次の通りです。

  • 目的を明確に書く: 住宅宿泊事業法に基づく届出を行いたいこと、そのために「貸主の承諾を証する書面」が必要なことを最初に明示する
  • 運営の具体的な内容を示す: 年間最大180日の範囲内であること、ゲストは自己責任で受け入れること、専門業者への管理委託を検討していることなど
  • 物件・建物への配慮策を示す: 損害保険の付保、清掃・衛生管理の徹底、騒音・ゴミルールの遵守など
  • 返答期限を設けすぎない: 「ご検討のほどよろしくお願いします」程度に留め、プレッシャーをかけない

ステップ2: 交渉で有効な訴求点

貸主・管理会社が承諾に踏み切れない理由として多いのは「物件が傷む」「近隣トラブルが怖い」「法的に問題があるかわからない」という3点です。それぞれに対応する訴求点を準備しておくと、交渉がスムーズになる場合があります。

貸主・管理会社の懸念 有効な訴求・対応策
物件が傷む・原状回復費用が増える 民泊向け損害保険(または Airbnb AirCover)への加入を明示。清掃業者を毎回入れる体制を説明する
近隣住民からのクレームが怖い ハウスルール(騒音・ゴミ分別等)を書面で示す。深夜チェックインを禁止するなど運営上の制約を示す
法的・行政的に問題があるか不安 住宅宿泊事業法に基づく届出済み(または届出予定)であること、180日上限ルール・消防設備要件などを説明する資料を添付する
外国人ゲストへの不安 宿泊者名簿の作成・保管義務(住宅宿泊事業法第8条)があることを伝え、本人確認の仕組みを説明する
建物の管理規約との整合性 管理組合の管理規約で禁止されていないことを先に確認・提示する。禁止されていれば管理組合への手続きが先になる

ステップ3: 管理会社経由での手続き

賃貸管理会社が間に入っている場合、承諾の最終決定権は貸主(大家)本人にありますが、管理会社が窓口として事前スクリーニングを行います。管理会社の担当者が難色を示しても、「貸主本人に確認していただけないでしょうか」と依頼することは可能です。ただし管理会社が「建物全体の方針として民泊は不可」と判断しているケースでは、貸主に直接話が届かないことがあるため、この点は事前に確認しておくとよいでしょう。

また、管理会社の中には民泊運営の管理代行まで行う「住宅宿泊管理業者」として登録している会社もあります。そのような会社では、転貸承諾と同時に管理委託の提案を受けることもあります。管理委託契約・サブリース契約の詳細については「民泊 サブリース・マスターリース 完全ガイド」も参考にしてください。

はじめ君

はじめ君

大家さんが民泊OKと言ってくれましたが、口頭の合意でも届出に使えますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

届出に必要なのは「書面」ですので、口約束は行政への提出書類として使えません。メールでの同意確認や、署名・捺印入りの承諾書を取得する流れが現実的です。

承諾書に最低限記載すべき事項

貸主から承諾の意向を得たら、「承諾を証する書面」として都道府県(または委任を受けた自治体)の窓口に提出できる書式を作成します。法定の書式はなく、各行政窓口の判断によりますが、実務上以下の事項が記載されていれば受理されるケースが多いとされています。

!注意

承諾書の書式・記載要件は届出先の自治体によって異なります。作成前に管轄の届出窓口(都道府県または政令市の住宅宿泊事業担当課)への事前確認を強く推奨します。行政書士に書類作成を依頼することも有効な選択肢です。

承諾書の記載項目例

項目 記載内容の例 備考
文書タイトル 「住宅宿泊事業に関する転貸承諾書」または「貸主の承諾書」 明確なタイトルをつける
物件の特定 住所(地番まで)、建物名・部屋番号 届出住宅と一致させる
貸主・借主の氏名 貸主(法人なら名称・代表者)と賃借人(届出者)の氏名または名称 住宅宿泊事業を行う賃借人が「届出者」
承諾の内容 「住宅宿泊事業法に基づく届出のうえ、同住宅を住宅宿泊事業に使用することを承諾します」 「転貸を承諾する」旨が明確に読み取れること
作成日 承諾書の作成年月日 届出前の日付であること
貸主の署名・捺印 貸主(または委任を受けた管理会社)の署名と押印 法人の場合は代表者印または担当者名・会社印

上記はあくまで一般的な記載例です。窓口によっては指定書式を用意している自治体もあるため、届出予定の都道府県・政令市の担当窓口に事前確認することを強く推奨します。届出書類全体の確認方法については「住宅宿泊事業の届出書類完全ガイド」も参照してください。

メール承諾の場合の扱い

貸主がメールで承諾の意向を示した場合、そのメールを印刷して添付資料とするケースもあります。ただし、メールの場合は①貸主本人のアドレスから送信されていること、②物件の特定情報・承諾の意思が明記されていること、の2点が確認できることが前提になります。実務上は後日の疑義を避けるためにも、署名・捺印入りの承諾書を別途作成してもらうほうが安全です。

はじめ君

はじめ君

承諾書のひな形は自治体からもらえますか?
民泊学校 編集部</p>
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一部の自治体では指定書式を公開していますが、多くは「これを参考に作成してください」というスタイルです。届出先の担当窓口に確認するのが最も確実です。