編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-21

住宅宿泊事業法(以下「民泊法」)第9条は、民泊を運営するすべての届出住宅に対して宿泊者名簿の作成・保存を義務付けています。とりわけ外国人ゲストを受け入れる家主不在型の民泊では、対面での本人確認が難しいため、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔本人確認の仕組みが制度上認められています。しかし「スマートロックを設置したから大丈夫」「顔写真を1枚送ってもらえばOK」という誤解が広がっており、これらは法令上の要件を満たしていません。本記事では住宅宿泊事業法第9条の義務内容から、ICT本人確認の法的要件・手順・注意点・よくある失敗例まで、実務に直結する情報を整理します。

この記事でわかること

  • 住宅宿泊事業法第9条の宿泊者名簿作成義務の全体像(日本人・外国人の違い)
  • ICT本人確認が法律上認められた条件(顔認識+旅券スキャンの両方が必要な理由)
  • 対面確認との違い、家主不在型でICTが必要になる背景
  • スマートロックがICT本人確認の代替にならない理由
  • 旅館業法のICT代替との相違点
  • 宿泊者名簿の記録保存に必要な情報と保存期間
  • 外国人ゲストの旅券確認拒否時の対処、実務フロー
  • よくある失敗例7パターンと対策

【結論先出し】ICT本人確認に必要な2つの要件

住宅宿泊事業法施行規則が認めるICT本人確認は、①顔認識(ゲストがカメラに顔を写す)②旅券等の撮影・送信の両方を満たす必要があります。顔認識のみ、旅券送付のみ、スマートロックのみでは法的要件を充足しません。最終的な要件の適否は、必ず届出先の自治体または行政書士にご確認ください。

民泊本人確認ICT Step1 住宅宿泊事業法第9条の本人確認義務(外国人は旅券確認必須)とICT本人確認が認められた法的根拠を把握する

Contents

住宅宿泊事業法第9条とは——宿泊者名簿の作成義務の全体像

民泊法第9条第1項は「住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿を作成し、これを保存しなければならない」と定めています。この規定は旅館業法に準拠する形で設けられており、住宅宿泊事業を届け出た事業者(届出住宅のホスト)は全員が対象です。民泊サービスを日常的に自宅で行う家主居住型であっても、家主が不在の家主不在型であっても例外はありません。

記録が必要な項目:日本人ゲストと外国人ゲストで異なる

宿泊者名簿に記載すべき内容は、住宅宿泊事業法施行規則第9条に基づき設定されています。日本人ゲストと外国人ゲストでは必要な記録項目が異なる点が実務上の重要ポイントです。

項目 日本人ゲスト 外国人ゲスト(外国人旅客)
氏名 必要 必要
住所 必要 必要(国籍・旅券番号も追加)
連絡先(電話など) 必要 必要
国籍 不要 必要
旅券番号 不要 必要
旅券確認(本人確認) 規定の確認方法で実施 旅券等の呈示・スキャン必須

外国人ゲストについては「旅券等の呈示を求めること」が施行規則上の要件となっており、氏名・住所だけでなく国籍・旅券番号の記録が義務付けられています。このため、単に「名前とメールアドレスを収集している」だけでは法的要件を満たしません。

観光庁 民泊制度ポータルサイト(2026-05-21取得)
住宅宿泊事業法に基づく届出・本人確認・宿泊者名簿に関する公式情報を掲載。

住宅宿泊事業法(e-gov.go.jp)(2026-05-21取得)
第9条「宿泊者名簿」の条文。第1項で作成・保存義務、第2項で確認方法が規定されている。

はじめ君

はじめ君

日本人ゲストだけを受け入れる場合は、旅券確認しなくていいんですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

現状の施行規則では、外国人旅客(外国人ゲスト)には旅券等の呈示が必要ですが、日本人ゲストの場合は住所・氏名・連絡先の記録で足りるとされています。ただし自治体の上乗せ条例がある場合もあるため、届出先の自治体窓口で最新の要件をご確認ください。

ICT本人確認とは——法律上の定義と認められた条件

2020年(令和2年)の住宅宿泊事業法施行規則改正によって、外国人ゲストに対する旅券確認にICTを活用することが正式に認められました。この改正の背景には、家主不在型の民泊が増加する中で、対面での本人確認が現実的に困難なケースが多いという実態があります。

ICT本人確認の法的要件:2つの要素が必須

民泊制度ポータルが公表しているICT本人確認の要件は、以下の2つの要素を両方満たすことが前提となっています。どちらか一方だけでは要件を充足しないとされています。

ICT本人確認に必要な2つの要素

  1. 顔認識:ゲスト本人がスマートフォン等のカメラに顔を向け、リアルタイムまたは録画で顔を確認できる手段(ビデオ通話・顔認証アプリ等)
  2. 旅券等の撮影・送信:旅券(パスポート)またはその他の証明書をゲストが撮影し、事業者に送信する(または画面共有する)方法での内容確認

重要なのは「顔認識」と「旅券スキャン」の両方が揃って初めてICT本人確認が成立するという点です。例えばAirbnbのメッセージ機能でゲストが旅券画像を1枚送ってくるだけ、またはスマートロックのアクセスコードを送るだけでは、この要件を満たしません。

「顔認識」の具体的な方法

顔認識の実施方法として現状広く使われているのは次のような手段です。ただし各ツール・サービスが施行規則上の要件を充足するかどうかは、導入前に自治体または専門の行政書士に確認することが現実的です。

  • ビデオ通話(ZoomやFaceTime等):チェックイン前にホストとゲストがビデオ通話を行い、ゲストの顔と旅券をその場で確認する方法。対面に近い確認が可能。
  • 本人確認サービス(eKYCツール):ゲストがスマートフォンから顔写真と旅券を撮影・送信し、AI照合または担当者確認を経て本人性を確認するサービス。
  • 民泊特化の本人確認ASP:民泊・旅館業向けに開発されたサービスで、顔認証・旅券スキャン・宿泊者名簿自動生成をセットで提供するもの。

住宅宿泊事業法施行規則(e-gov.go.jp)(2026-05-21取得)
第9条に旅券の呈示に代わる確認方法としてのICT利用が規定されている。2020年改正による追加事項。

注意:顔認識のみ(旅券確認なし)または旅券送付のみ(顔認識なし)では、施行規則上のICT本人確認要件を満たしません。両方の要素が必要です。実務での判断は必ず届出先自治体または行政書士にご確認ください。

はじめ君

はじめ君

ゲストにAirbnbのメッセージでパスポート写真を送ってもらえば、それでICT確認は完了しますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅券画像の送付だけでは「顔認識」の要件が欠けるため、ICT本人確認の要件を充足しないとされています。顔認識(ビデオ通話等でゲスト本人の顔を確認)と旅券スキャンの両方が必要です。この解釈の最終確認は届出先の自治体窓口でお願いします。

対面確認との比較——家主不在型でICTが重要になる理由

民泊の運営形態は大きく「家主居住型」と「家主不在型」の2種類に分類されます。旅券確認の実務上の難しさは、この2つの形態で大きく異なります。

比較項目 対面確認(家主居住型等) ICT確認(家主不在型等)
実施タイミング チェックイン時(現地) チェックイン前(遠隔・事前)
旅券確認 実物を直接確認 撮影画像・スキャンによる確認
顔確認 直接目視 ビデオ通話または顔認証
鍵の受け渡し 手渡し スマートロック・キーボックスで代替
記録保存 紙・デジタル両対応 デジタルデータで保存

家主居住型であれば、ホスト自身がチェックイン時に旅券の実物を確認し、その場で名簿を記入することが可能です。一方、家主不在型(ホストが別の場所に居住し、物件に常駐しない形態)では、物理的に対面確認が困難です。このため家主不在型においては、施行規則が認めるICT本人確認の手段が実務上重要な位置を占めることになります。

また、Airbnbなどのプラットフォームを通じた予約では、ゲストがチェックイン当日に突然現れるケースや深夜のチェックインも発生します。そうした状況でも確実に本人確認を完了させるためには、チェックイン前の事前ICT確認フローを標準化しておくことが現実的な対応です。

はじめ君

はじめ君

家主居住型でも ICT 確認を使っていいんですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

現状の施行規則ではICT確認の利用を家主居住型に限定する規定はなく、家主居住型でも活用できます。ただし、対面確認が可能な状況でICTを使う場合でも、記録要件は同様です。実務での採用可否は届出先自治体にご確認ください。

民泊本人確認ICT Step2 ICT本人確認の2要件(顔認識+旅券スキャン両方必須)・スマートロックとの違い(スマートロック≠本人確認)を確認する

スマートロックとICT本人確認の関係——よくある誤解を解消する

民泊運営者の間で広く見られる誤解に「スマートロックを設置すれば本人確認も済む」というものがあります。この誤解は、スマートロックと旅券確認の役割を混同したことから生じており、実務上のリスクがあります。

スマートロックが対応する義務は「鍵管理」

住宅宿泊事業法施行規則が定める家主不在型の義務には、鍵の受け渡し管理があります。スマートロック(電子錠)は、この「鍵の受け渡しを非対面で安全に実施する手段」として有効です。具体的には、チェックコードをゲストにメッセージで送信し、ゲストはコードを入力することで入室できます。これにより、物理的な鍵の受け渡しが不要になり、深夜・早朝チェックインにも対応できます。

しかしスマートロックは「誰でも正しいコードを知っていれば入室できる仕組み」にすぎず、入室した人物が旅券に記載された本人であるかを確認する機能は持っていません。スマートロックのアクセス履歴は「いつ・どのコードで入室があったか」を記録するものであり、旅券番号・国籍・顔との照合といった宿泊者名簿の記録要件を充足するものではないのです。

手段 対応する義務 本人確認(旅券確認)の代替になるか
スマートロック 鍵の受け渡し管理(非対面・遠隔) ならない
キーボックス 鍵の受け渡し管理 ならない
ICT本人確認(顔認識+旅券スキャン) 旅券確認・宿泊者名簿の記録 なる(施行規則の要件を満たす場合)
ビデオ通話(顔+旅券同時確認) 旅券確認・宿泊者名簿の記録 なる(施行規則の要件を満たす場合)

つまり正しい実務の流れは「ICT本人確認(顔認識+旅券スキャン)でゲストの本人性を事前に確認・記録し、その後にスマートロックのアクセスコードをゲストに送る」という順序です。スマートロックのコード発行が本人確認の代わりになるわけではなく、あくまで本人確認完了後の入室手段です。

はじめ君

はじめ君

スマートロックのアクセスログが残るから、それが本人確認の証拠になると思っていました。

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

スマートロックのログはあくまで「入室があった事実」を示すものです。誰がそのコードを使ったかを旅券レベルで特定するものではないため、宿泊者名簿の記録要件を満たしません。ICT本人確認は別途実施が必要です。

旅館業法でのICT代替との違い——民泊法との比較

民泊(住宅宿泊事業法)と旅館業法は、ともに宿泊施設に関する法律ですが、本人確認・宿泊者名簿に関する規定の細部は異なります。同じ「ICT本人確認」という言葉が使われていても、それぞれの法律下での要件を混同しないよう注意が必要です。

旅館業法における宿泊者名簿とICT

旅館業法第6条(宿泊者名簿)でも外国人宿泊者の旅券確認が義務付けられており、2018年以降の改正でICTを活用した確認方法が認められるようになりました。厚生労働省の通達では「ビデオ通話による確認」「本人確認サービスの利用」が代替手段として例示されています。

ただし旅館業法の場合は、許可営業(旅館・ホテル・簡易宿所)が対象であり、サービスの実施方法や省令上の細部が民泊法と異なる場合があります。自身の物件が「旅館業の許可取得施設」なのか「住宅宿泊事業の届出施設」なのかを正確に把握した上で、それぞれの根拠法令を確認することが基本です。

比較項目 住宅宿泊事業法(民泊) 旅館業法(旅館・簡易宿所等)
根拠法令 住宅宿泊事業法第9条・施行規則 旅館業法第6条・施行規則
対象施設 届出住宅(年180日以内) 許可施設(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)
ICT確認の根拠 住宅宿泊事業法施行規則(2020年改正) 旅館業法施行規則(2018年改正含む)
主管省庁 観光庁 厚生労働省
運用上限 年180日(自治体条例でさらに短縮の場合あり) 日数制限なし(許可条件による)

旅館業法の取扱いについては関連記事「旅館業法 ICT本人確認ガイド」もご参照ください。本記事では住宅宿泊事業法(民泊法)の範囲に限定して解説を続けます。

はじめ君

はじめ君

民泊法と旅館業法で同じ「ICT確認」でも、細かいルールが違うんですね。どちらで判断すればいいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

届出住宅(年180日の民泊)なら住宅宿泊事業法、旅館業の許可施設なら旅館業法が適用されます。自分の施設がどちらに当たるか分からない場合は、物件所在地の自治体の担当窓口または行政書士にご相談ください。

宿泊者名簿の記録・保存義務——何をどう保存すべきか

ICT本人確認を実施した後は、その結果を宿泊者名簿として記録・保存する義務があります。保存方法や保存期間について基本的な事項を整理します。

保存すべき情報(外国人ゲストの場合)

  • 氏名(旅券記載のアルファベット表記を含む)
  • 住所(旅券記載の国籍・現住所)
  • 連絡先(メールアドレスまたは電話番号)
  • 国籍
  • 旅券番号(パスポートナンバー)
  • 宿泊期間(チェックイン・チェックアウト日時)
  • ICT確認の実施記録(確認日時・確認方法)

保存期間と形式

住宅宿泱事業法施行規則の規定では、宿泊者名簿は宿泊日から3年間保存することが求められています。保存形式は紙でもデジタルデータでも認められていますが、都道府県知事(または保健所設置市等)から求めがあった場合に速やかに提示できる状態で保管することが実務上求められます。

実務メモ:ICT確認の記録に含めておくと望ましい情報

  • 旅券の顔写真ページのスキャン画像(PDF・JPEG等)
  • 顔認識を実施した日時とツール名(例:「ビデオ通話にて確認、2026-05-21 14:30」)
  • 旅券の有効期限
  • 同伴者がいる場合は全員分の情報

なお、旅券スキャン画像などの個人情報を含むデータを保管する際は、個人情報保護法上の適切な管理(アクセス制限・暗号化・漏洩防止策)も求められます。クラウドストレージや民泊管理ツールを利用する場合は、そのサービスのセキュリティポリシーと利用規約を事前に確認してください。

はじめ君

はじめ君

宿泊者名簿の保存はどのくらいの期間が必要ですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

施行規則では「宿泊日から3年間」とされています。都道府県知事から閲覧を求められた場合に速やかに提示できる状態を維持してください。保存形式(紙・デジタル)は問いませんが、デジタルの場合はバックアップも重要です。

外国人ゲスト対応の注意点——旅券拒否・言語対応・対処法

外国人ゲストへのICT本人確認では、旅券の提示を拒否されるケースや、言語の壁によって手順が伝わらないケースが発生することがあります。これらの状況に備えた事前準備が重要です。

旅券確認を拒否された場合の対処

住宅宿泱事業法第9条では、旅券の呈示に応じないゲストへの対応について「事業者は確認を求めることができる」という構造になっています。ゲストが旅券確認を強く拒否する場合の実務上の対処としては次のような段階的なアプローチが現実的です。

  1. 理由の丁寧な説明:「日本の法律で宿泊者名簿への旅券情報の記録が求められています」と英語または多言語で案内する。
  2. 代替手段の提案:ビデオ通話による直接確認が難しければ、旅券の特定ページのみを撮影して送付してもらう方法を提案する。
  3. 宿泊拒否の判断:どうしても確認に応じてもらえない場合は、ホストとして宿泊をお断りすることも選択肢です。宿泊者名簿の不備は行政処分の対象となる可能性があるため、適法な確認ができない場合のリスクを冷静に判断してください。

宿泊拒否を判断する際は、正当な理由のない差別的な拒否にならないよう注意が必要です。「法令上の義務である旅券確認に応じてもらえないため」という理由であれば、正当な理由による宿泊拒否と説明できる余地がありますが、最終的な判断は弁護士や自治体窓口への相談を推奨します。

多言語対応の重要性

ICT本人確認の手順をゲストに正しく理解してもらうためには、英語をはじめとする多言語でのコミュニケーションが有効です。チェックイン前のメッセージテンプレートとして以下の言語での案内を準備しておくと、スムーズな運用につながります。

  • 英語(English):グローバル対応の基本
  • 中国語(简体字):中国・台湾からの訪日客対応
  • 韓国語(한국어):韓国からの訪日客対応
  • タイ語・インドネシア語:東南アジアからの増加に備えて

民泊学校の「多言語案内生成ツール」では、チェックイン案内文を複数言語で自動生成できます。本人確認の説明文も含めた案内テンプレートをご活用ください。

はじめ君

はじめ君

外国人ゲストから「なぜパスポートを送らないといけないのか」と聞かれたらどう答えればいいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

「Under Japanese law (Minpaku Act Article 9), we are required to verify a​nd record passport information for all foreign guests. This is a legal requirement, not optional.(日本の住宅宿泊事業法第9条の法的義務です)」と英語で案内するのが現実的です。事前のメッセージテンプレートとして準備しておきましょう。

実務フロー——予約からチェックアウトまでのICT本人確認の流れ

ICT本人確認を民泊運営に組み込む際の標準的なフローを整理します。この流れを予約確認メッセージにテンプレートとして組み込んでおくことで、ゲストへの説明コストを減らしながら法的要件を充足できます。

ICT本人確認 標準フロー(外国人ゲスト)

  1. 予約確認後(即時):予約確認メッセージに「チェックイン前日までに本人確認を実施します」と記載。手順(顔認識方法・旅券送付先)を案内。
  2. チェックイン前日まで:ゲストに旅券の指定ページ(顔写真・氏名・旅券番号のページ)を撮影して送付してもらう。
  3. ビデオ通話実施:ゲストとビデオ通話を行い、本人の顔と旅券を同時に確認する(または顔認証サービスを利用)。
  4. 宿泊者名簿の作成:氏名・国籍・旅券番号・住所・連絡先・確認日時を記録。旅券スキャン画像とともに3年間保存。
  5. スマートロックのコード発行:本人確認完了後に入室コードをゲストへ送信。確認前のコード発行は避ける。
  6. チェックイン当日:ゲストが到着・入室。必要に応じてフォローアップメッセージを送る。
  7. チェックアウト後:名簿データをバックアップ。3年後まで安全に保管。

上記のフローで重要なのは、ステップ3「ビデオ通話実施」とステップ5「コード発行」の順序です。実務上、コードを先に送ってしまい、その後に本人確認が完了しないまま宿泊が始まってしまうケースが見られます。コードの発行タイミングを「本人確認完了後」に設定することが法的要件の充足上重要です。

また、同伴者がいる場合は代表者だけでなく全員の情報が必要です(施行規則の規定上、宿泊する全員が宿泊者名簿の対象です)。グループ予約では代表者に同伴者全員のパスポート情報も送ってもらう旨を事前に案内しておくことをお勧めします。

はじめ君

はじめ君

グループ予約の場合、全員のパスポートを集めるのは難しそうですが、代表者だけでもよいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

法的には宿泊する全員が名簿対象のため、全員分の情報収集が原則です。実務では予約前のルールとして「グループ予約は全員分のパスポート情報が必要」とプロフィールやハウスルールに明記しておくことで、ゲスト側の心構えができます。

よくある失敗例——リスクになる7つのパターン

ICT本人確認の実務では、善意での対応が制度上の不備につながることがあります。以下に頻繁に見られる失敗パターンを整理します。これらのパターンに心当たりがある場合は、届出先自治体または行政書士にご相談いただくことをお勧めします。

失敗パターン 問題点 適切な対応
① 旅券画像の送付のみ(顔認識なし) ICT確認の要件(顔+旅券の両方)を充足しない ビデオ通話または顔認証サービスで顔確認を追加する
② 顔認識のみ(旅券確認なし) 旅券番号・国籍の記録ができず名簿要件を満たさない 旅券スキャンを必ず併せて実施する
③ スマートロック設置で本人確認済みと思い込む 鍵管理義務と旅券確認義務は別の義務 ICT確認を別途実施し、完了後にコードを発行する
④ 宿泊者名簿の記録が代表者のみ 同伴の外国人全員の旅券情報が必要 グループ予約では全員分の情報を事前収集する
⑤ 本人確認完了前にコードを発行する 確認前に入室されると事後確認が困難になる 確認完了を条件にコードを発行するフローに変更する
⑥ 旅券スキャン画像を即削除する 3年間の保存義務に違反する可能性がある セキュリティを確保した上で3年間保存する
⑦ 自治体の上乗せ条例を確認していない 自治体によってはより厳しい確認義務が課される 届出先自治体の担当窓口で最新の条例を確認する

このうち特に見落とされがちなのが⑦の自治体の上乗せ条例です。住宅宿泱事業法は全国共通の最低基準を設けていますが、各自治体はその上乗せ条例として、より厳格な確認方法・追加の記録項目・提出義務などを定める場合があります。条例の内容は物件所在地によって異なるため、届出先自治体の住宅宿泊事業担当窓口への確認が実務上の必須ステップとなります。

はじめ君

はじめ君

失敗パターンのうち、一番多いのはどれですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

実務上よく見られるのは③「スマートロック設置で本人確認済み」という誤解と、①「旅券送付のみで顔確認なし」の2パターンです。本人確認は法令上の義務であり、チェックリストで仕組み化しておくことをお勧めします。

民泊本人確認ICT Step3 記録保存義務・実務フロー(予約確認→チェックイン前ICT→記録保存)で本人確認体制を完成させる

行政書士・自治体窓口への相談が必要な場合

ICT本人確認の運用を整備するにあたり、以下のような場合は届出先の自治体担当窓口または民泊・旅館業に詳しい行政書士への相談が現実的な選択肢です。本記事の解説はあくまで一般的な制度の概要であり、個別の物件・自治体・運営形態に応じた最終的な判断は、専門家へのご確認をお願いします。

  • 現在導入しているツールやフローが施行規則の要件を充足しているか確認したい
  • 自治体の上乗せ条例が何を求めているか不明確な場合
  • 既存の宿泊者名簿の記録内容に不備がないか見直したい場合
  • 複数物件を管理しており、一括の運用フロー設計が必要な場合
  • 外国人ゲストの旅券確認拒否時の対応方針を整理したい場合

観光庁 住宅宿泊事業法の概要・Q&A(mlit.go.jp)(2026-05-21取得)
住宅宿泊事業の届出・本人確認・宿泊者名簿に関する観光庁の公式Q&A。制度全般の確認に活用できる。

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はじめ君

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自分で整えたICT確認フローが正しいか不安な場合は、まずどこに相談すればいいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

まず届出先の自治体(都道府県の住宅宿泊事業担当窓口)への問い合わせが基本です。自治体の判断を文書で確認できると安心です。より詳細な運用設計が必要な場合は、民泊・旅館業専門の行政書士への相談が現実的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 日本人ゲストにもICT本人確認は必要ですか?

現状の住宅宿泱事業法施行規則上、ICT本人確認(顔認識+旅券スキャン)の要件は主に外国人ゲストの旅券確認に関する規定です。日本人ゲストの場合は氏名・住所・連絡先の記録が必要ですが、旅券確認に相当する手続きは求められていません。ただし自治体の上乗せ条例によって異なる場合があるため、届出先自治体への確認を推奨します。

Q2. 旅券の有効期限が切れていた場合はどうすればよいですか?

有効期限切れの旅券は法的な渡航書類として機能しておらず、日本への入国時点では原則として使用できません。現実的には、外国人が日本国内に滞在している時点では有効な旅券または在留カードを所持しているはずです。旅券が有効期限切れの場合は、在留カード(居住者の場合)での確認が可能かどうかを含め、自治体または行政書士にご相談ください。

Q3. Airbnbのゲスト身分証明機能だけでICT確認は完了しますか?

Airbnbには「身分証明書の確認」機能があり、ゲストがプラットフォームに身分証を登録する仕組みです。ただし、このプラットフォーム機能が住宅宿泱事業法施行規則が求める「事業者自身による旅券確認」の要件を充足するかどうかについては、観光庁および届出先自治体の判断によります。現時点では、ホスト自身が旅券情報を確認・記録する運用を別途維持することが安全側の対応とされています。最終判断は届出先自治体にご確認ください。

Q4. スマートロックのメーカーが「本人確認機能付き」と宣伝している場合は?

「本人確認機能付きスマートロック」と表示されていても、その機能の法的位置付けは製品によって異なります。顔認証センサーや旅券スキャン連携機能を持つ製品であっても、住宅宿泱事業法施行規則上の要件を充足するかどうかは、製品仕様と規則の照合が必要です。導入前に製品メーカーに確認するとともに、届出先自治体への事前確認を実施することをお勧めします。

Q5. ビデオ通話ができない場合(ゲストが接続できない等)の代替手段はありますか?

ビデオ通話が技術的に困難な場合の代替手段として、「自撮り写真と旅券の同時撮影」(本人が顔と旅券を同じ写真フレームに収めて送付する方法)が検討される場合があります。ただし、この方法が施行規則上の「顔認識」要件を満たすかどうかについては解釈が分かれる可能性があります。代替手段の採用前に必ず届出先自治体へ確認してください。

Q6. 宿泊者名簿を外部の民泊管理ソフトで管理してもよいですか?

民泊管理ソフト(PMS)を活用した名簿管理は実務上広く行われています。ただし、そのソフトが法定項目を全て記録できること、3年間の保存が可能であること、自治体からの閲覧要求時に速やかに提示できることが条件となります。ソフトのサービス終了やデータ消失リスクに備え、定期的なエクスポートとバックアップを実施することをお勧めします。

Q7. 本人確認を怠った場合にはどのような処分がありますか?

住宅宿泱事業法では、宿泊者名簿の不作成・虚偽記載・未保存等の違反に対して、都道府県知事による業務改善命令や、場合によっては届出の効力停止・取消しの規定があります。また宿泊者名簿は立入検査の対象であり、検査への不対応も処分対象となる可能性があります。具体的な処分の内容・基準は自治体の裁量を含むため、届出先自治体または行政書士への確認を推奨します。

まとめ

住宅宿泊事業法第9条に基づく宿泊者名簿の作成・保存は、民泊を届け出た全ての事業者に課される義務です。外国人ゲストを受け入れる場合は、旅券番号・国籍の記録と旅券の確認が必要であり、家主不在型を中心に、ICT(顔認識+旅券スキャンの両方)による遠隔確認が現実的な手段として施行規則上認められています。

よくある誤解として「スマートロック設置=本人確認完了」「旅券送付のみで顔確認なし」「顔認識のみで旅券未確認」といったパターンがありますが、これらはいずれも施行規則上の要件を充足しない可能性があります。ICT本人確認は顔認識と旅券スキャンの2要素が揃って初めて成立し、それぞれが独立した義務ではなく、セットで実施することが求められます。

本記事の内容はあくまで制度の一般的な概要であり、個別の物件・自治体条例・運営形態によって要件の詳細が異なる場合があります。導入するツールや運用フローが法的要件を充足しているかどうかの最終的なご確認は、届出先の自治体担当窓口または民泊・旅館業に詳しい行政書士にご相談ください。

観光庁 民泊制度ポータルサイト:住宅宿泊事業者向け情報(2026-05-21取得)
届出住宅の事業者向けに、本人確認・宿泊者名簿・ICT活用に関する官公庁の情報がまとめられている。


📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は 2026-05-21 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

当サイトでは、上記の専門家・自治体への確認窓口を 運営代行業者の選び方 で案内しています。
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本記事の情報は予告なく変更される可能性があります。掲載情報の利用により生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。