編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-02

民泊を開業したら、チェックイン当日からすぐに「宿泊者名簿(旅行者名簿)」の作成・保存が法的に義務づけられます。住宅宿泊事業法・旅館業法いずれの形態でも名簿の整備は必須であり、外国人ゲストについてはパスポートの確認と写しの保存まで求められます。罰則規定も設けられており、違反が発覚した場合は行政指導から業務停止・罰金に至るケースも考えられます。本記事では、開業直前のホストやインバウンド対応を強化したいホストに向けて、記載すべき項目・保存期間・電子保存の取扱い・無人チェックインでの対応まで、法令条文をベースに実務的な解説をまとめています。

この記事でわかること

  • 宿泊者名簿の法的根拠(住宅宿泊事業法・旅館業法施行規則)と義務の全体像
  • 名簿に記載しなければならない項目(日本人・外国人それぞれ)
  • 外国人宿泊者に対するパスポート確認義務と写しの保存義務の範囲
  • 無人チェックイン・ICT機器を使った本人確認の可否と実務上の留意点
  • 名簿の保存期間(法定年数)と電子保存が認められる条件
  • 違反した場合の罰則(条文ベース)と行政指導の流れ
  • 専門家・自治体への確認が必要な判断ポイント
minpaku-shukuhakusha-meibo-2026 Step1 名簿を作る

Contents

結論:宿泊者名簿は「作るだけ」では足りない——確認・保存・提示の3義務を理解する

多くのホストが「名簿を書いてもらえばいい」と思いがちですが、実際には次の3つの義務が一体になっています。

  1. 作成義務:チェックイン時に所定項目を記録した名簿を作成する
  2. 保存義務:定められた期間、名簿を保管し続ける
  3. 提示義務:都道府県・保健所など所管行政の求めに応じて速やかに提示できる状態にしておく

住宅宿泊事業(民泊新法)では住宅宿泊事業法第13条および同法施行規則が根拠となり、旅館業(簡易宿所・旅館ホテル)では旅館業法施行規則(昭和23年厚生省令第9号)第4条が根拠となります。

住宅宿泊事業では「届出住宅に宿泊させる場合には宿泊者名簿を備え付け、宿泊者の氏名その他国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない」と定めており、旅館業でも「宿泊者名簿を備え付けること」が許可の基準として定められています。

e-Gov 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)
(2026-06-02取得)

第13条に宿泊者名簿の備え付け義務が規定されています。名簿記載事項の詳細は同法施行規則に委任されています。

はじめ君

はじめ君

名簿ってチェックイン時にゲストに書いてもらうだけじゃないんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

書いてもらうだけでなく、「記載された名簿を一定期間保存し、行政に提示できる体制」まで整えて初めて義務を果たしたことになります。外国人ゲストはパスポートの確認・写しの保存も加わります。

住宅宿泊事業・旅館業で記載が必要な項目一覧

住宅宿泊事業法施行規則と旅館業法施行規則では、記載すべき事項が定められています。以下の表で2制度を比較します。

記載項目 住宅宿泊事業法(民泊新法) 旅館業法施行規則
氏名 必須 必須
住所 必須 必須
職業 必須 必須
宿泊日 必須(宿泊年月日) 必須(宿泊年月日)
宿泊数 必須 必須
外国人の国籍 必須(外国人のみ) 必須(外国人のみ)
外国人の旅券番号 必須(外国人のみ) 必須(外国人のみ)
連絡先(電話番号等) 施行規則で規定 施行規則で規定

職業については「会社員」「自営業」などの大まかな区分でよいとされていますが、記載そのものを省略することはできません。実務上は、日本語・英語の両方が書かれた様式を用意し、ゲストに記入してもらうと確認の手間が省けます。

なお、OTAの予約情報(Airbnb・Booking.com等の予約詳細)には「氏名・連絡先」は含まれますが、「職業・住所」は含まれない場合が多いため、OTA情報だけで名簿を構成することには慎重な判断が必要です。最終的な取扱いは管轄の都道府県または保健所に確認することを推奨します。

!注意

OTAの予約情報は名簿の代替として認められない場合があります。「職業」「住所(都市・国名だけでなく詳細住所)」が取れないケースでは、チェックイン時に別途記入を求めるか、ICTシステムで補完する体制が現実的です。所管の都道府県に事前確認することを強くお勧めします。

はじめ君

はじめ君

Airbnbの予約情報をそのまま名簿として使えばいいですよね?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

氏名・連絡先は取れますが、「住所」「職業」はOTAの予約情報には含まれない場合が多い点に注意が必要です。名簿の法定項目を全て満たしているかどうか、所管窓口に事前確認することをお勧めします。

外国人宿泊者のパスポート確認義務——何を確認し何を保存するか

外国人宿泊者に対しては、日本人宿泊者と比べてより厳格な本人確認が求められています。旅館業法施行規則第4条および住宅宿泊事業法の関係省令では、旅券(パスポート)の提示を受けてその番号と国籍を名簿に記載することが義務づけられています。

e-Gov 旅館業法施行規則(昭和23年厚生省令第9号)
(2026-06-02取得)

第4条に宿泊者名簿の記載事項が規定されています。外国人については旅券番号・国籍の記載が必要と定められています。

「確認」だけでなく「写しの保存」についても実務上の留意点があります。旅館業法においては旅券の写しを保存することが求められており、住宅宿泊事業においても旅行者の旅券番号・国籍を記載した名簿と共に写し(または画像データ)を保存することが実務的な対応として推奨されています。ただし、写し保存の義務の有無・範囲については施行規則の解釈が自治体によって運用方針が異なる場合があるため、届出先の都道府県窓口で事前に確認してください。

パスポート確認の実務フロー(外国人ゲストの場合)

  1. チェックイン時にパスポートの提示を依頼する
  2. パスポートの写しをスキャン・スマートフォンで撮影する(または専用機器で複写)
  3. 旅券番号・国籍を名簿に転記または確認する
  4. 写しを宿泊者名簿とセットで保管する(電子データの場合はバックアップも)
  5. ゲストに写しを取ることを事前に(予約確認メール等で)告知する
i補足

パスポート写しの取得は個人情報(特定の外国人個人の識別情報)の収集にあたります。個人情報保護法の観点から、取得目的の明示・安全管理措置・漏洩防止体制の整備が必要です。写しは施錠できる場所またはアクセス制限されたクラウドストレージに保管し、不要になった時点での廃棄ルールも定めておくことが実務上の適切な対応とされています。

近年はインバウンドゲストが急増しており、チェックイン時にパスポートを提示してもらう習慣がないゲストも一定数います。予約確認メールや自動メッセージに「チェックイン時にパスポートの確認をさせていただきます」と英語・中国語・韓国語等で案内しておくことで、当日のスムーズな対応につながります。

はじめ君

はじめ君

外国人ゲストにパスポートを見せてもらうのは失礼ではないか、と少し心配です。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

ホテルや旅館でも同様の確認は法律上義務づけられており、海外からのゲストも多くは慣れています。「日本の法律で義務づけられています(Required by Japanese Law)」と事前に案内しておくと、当日の誤解を防ぎやすくなります。
minpaku-shukuhakusha-meibo-2026 Step2 本人確認する

無人チェックイン・ICT機器での本人確認——法的可否と実務上の注意点

スマートロックと暗証番号の組み合わせや、タブレット端末を使ったセルフチェックインは、ホスト側の省力化・24時間対応という観点で広く使われるようになっています。旅館業においては、令和5(2023)年の旅館業法改正と関連告示で「ICT機器を活用した対面によらない本人確認」が一定の条件のもとで認められました。

国土交通省 民泊制度ポータルサイト
(2026-06-02取得)

住宅宿泊事業法に基づく各種手続き・ガイドラインが掲載されています。宿泊者名簿、ICT活用チェックインに関する関連通知の索引としても利用できます。

旅館業(簡易宿所)でのICT本人確認

旅館業法改正後の運用では、外国人宿泊者に対してもICT機器を用いた旅券確認が一定の条件下で可能とされています。具体的には以下のような要件が想定されています。

  • ゲストがタブレットやPCのカメラ越しにパスポートを提示する、またはパスポート画像をアップロードする
  • ホストまたは委託先が画像の確認・照合を行い、旅券番号・国籍を名簿に記載する
  • 本人確認の記録(実施日時・確認者)を保存する
  • フロントの「常時存在義務」は緩和されているが、緊急時の対応体制(24時間連絡できる体制等)は維持する
!注意

ICT活用に関するルールの詳細(許容される確認手段・記録方法・保存形式)は、都道府県・保健所の窓口によって運用の解釈が異なる場合があります。ICT本人確認の導入を検討する場合は、届出先の都道府県または保健所に事前に相談することを強くお勧めします。

住宅宿泊事業(民泊新法)でのICT本人確認

住宅宿泊事業においても、国土交通省・厚生労働省の住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)で、ICTを活用した本人確認の取扱いが示されています。現行のガイドラインでは、対面によらない本人確認を行う場合でも、宿泊者名簿の法定記載事項(氏名・住所・職業・宿泊日・宿泊数、外国人は国籍・旅券番号)を確実に収集・記録しなければならないとされています。

実務的には、以下のような流れが考えられます。

  1. 予約確認メール等でオンラインフォームへの入力を案内
  2. ゲストがフォームから氏名・住所・職業・宿泊日を入力
  3. 外国人の場合はパスポート画像をアップロード
  4. チェックイン前日までにホスト(または管理業者)が確認・名簿として記録
  5. スマートロックの解錠コードをゲストに送付

この方法を採用する場合でも、収集した情報が名簿として適切に記録・保存されているかを定期的に確認することが重要です。「入力フォームが届いたから大丈夫」という認識のまま放置すると、データが散逸して行政の確認要求に対応できなくなるリスクがあります。詳しいオペレーション手順については、民泊チェックイン・チェックアウト実務完全ガイドも参考にしてください。

はじめ君

はじめ君

スマートロックで完全無人にしたら、外国人のパスポート確認はどうすればいいんでしょう?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

チェックイン前にオンラインでパスポート画像をアップロードしてもらい、ホスト側が確認・記録する方法が実務上取られています。ただし運用の細部は都道府県窓口で事前に確認することが現実的です。

宿泊者名簿の保存期間——法定年数と電子保存の取扱い

名簿を作成したら、定められた期間、保存し続ける義務があります。

法定保存期間

住宅宿泊事業法の関係省令では、宿泊者名簿の保存期間について定めが設けられています。現行の運用では、宿泊者名簿は作成した日から3年間保存することが原則とされています。旅館業においても同様に、旅館業法施行規則上の名簿保存義務があり、一般的に3年間の保存が求められています。

i補足

保存期間の起算日は「宿泊日」から3年となる場合が多いとされていますが、都道府県の条例や行政解釈によって細部の取扱いが異なる場合があります。正確な起算日・保存年数については届出先の都道府県窓口または行政書士にご確認ください。

電子保存が認められる条件

宿泊者名簿は紙媒体での保存が原則ですが、電子データでの保存も一定の条件下で認められています。電子保存を行う場合は次の点に注意が必要です。

  1. 改ざん防止措置:後から内容を書き換えられないシステム(ログが残る管理システム等)を使用することが求められます
  2. 可読性の確保:保存期間中はいつでも内容が読み取れる状態を維持する(ソフトウェアの廃止・バージョンアップによって読めなくなるリスクに注意)
  3. バックアップ:データ消失・ハードウェア障害に備え、定期的にバックアップを取ること
  4. アクセス制限:第三者が名簿を閲覧・取得できないよう適切なアクセス制御を施すこと

民泊管理ソフト(PMS:プロパティ・マネジメント・システム)を使用している場合、宿泊者情報がシステム上に記録されることが多いですが、「その記録が法定の名簿として扱えるか」は事前に確認が必要です。システム側が出力するCSVやPDFが名簿代替として認められるかどうかも、所管窓口への確認が現実的です。

なお、電子帳簿保存法(電帳法)は宿泊者名簿には直接適用されませんが、名簿管理の電子化を進める際は個人情報保護法の安全管理義務(法第23条)との整合性も確認してください。

保存方法 主なメリット 主な注意点
紙の名簿(バインダー) 直感的・機器不要・行政確認時に即提示可 保管スペース・火災・水害リスク・郵送コスト
電子データ(スプレッドシート等) 検索性・複数物件管理が容易 改ざん防止・バックアップ体制の整備が必要
PMSシステム上での保存 予約と名簿の一元管理・自動記録 所管窓口での「名簿代替」可否確認が必要
クラウドストレージ(PDF保存) リモートアクセス・場所を選ばない管理 アクセス権限管理・セキュリティ設定の徹底
はじめ君

はじめ君

名簿ってどのくらいの期間とっておけばいいんですか?3年?5年?
民泊学校 編集部</a>” /></p>
<div class=民泊学校 編集部

住宅宿泊事業・旅館業ともに、現行の運用では宿泊日から3年間の保存が原則とされています。ただし自治体によって細部の解釈が異なる場合があるため、届出先窓口での確認が安全です。