高圧送電線の下の土地(線下地)で民泊・旅館業を始める前の確認 2026年版|地役権・区分地上権・離隔距離による建築制限・線下補償料・財産評価27-5・電磁界の規制
編集:民泊学校 編集部|公開日:2026年6月21日|最終更新日:2026年6月21日
高圧の送電線が上空を通る土地——いわゆる「線下地(せんかち)」は、周辺の相場より安く出ていることがあります。「安く買えるなら民泊に」と考えたくなりますが、線下地の取得には、特有の確認が必要です。送電線の下の土地には、電力会社との間に地役権や区分地上権が設定され、建物の高さが制限されていることがあり、しかも「線下補償料」を前の所有者がすでに一括で受け取っていると、買主は補償を受けられないこともあります。さらに、鉄塔や電線の景観、電磁界への心理的な敬遠が、民泊の集客や出口(再売却)に影響することもあります。この記事は、線下地を取得・契約する前のデューデリジェンス(調査)に絞って、民法・電気事業法・国税庁の評価通達などの公式情報をもとに整理します。土地と建物が別の所有になる権利関係は土地・建物の別所有の確認、土地の権利は底地・貸宅地の確認もあわせてご覧ください。
この記事でわかること
- 送電線の下の安い土地「線下地」という視点
- 線下地の権利——地役権と区分地上権(登記の確認)
- 建築・高さの制限——送電線からの離隔距離
- 線下補償料——前所有者が受領済みなら買主は受けられない
- 相続税の評価減——線下地が安い理由(評価通達27-5)
- 電磁界の規制と心理的敬遠——出口への影響
- 取得前のDDチェックと、専門家への確認のしかた

Contents
送電線の下の安い土地——「線下地」という視点
物件を探していると、高圧の送電線が上空を通る土地が、周辺より安く出ていることがあります。こうした土地を「線下地」と呼びます。安さは魅力ですが、その安さには理由があります。送電線の下では、電線との安全な距離(離隔距離)を確保するために、建物の高さが制限されることがあり、土地の使い方に縛りがかかっているのです。さらに、その縛りは、電力会社との間で設定された「権利」として、登記に記録されていることがあります。
取得前のデューデリジェンスでこの視点が大切なのは、「どんな権利が設定され、建物の高さがどこまで制限されるか」「線下補償料は誰が受け取っているか」「電磁界や景観が、民泊の集客や将来の売却にどう影響するか」が、線下地の価値と使い方を左右するからです。安さだけで判断すると、「建てたい規模の民泊が建てられない」「補償も受けられない」「出口で売りにくい」といった誤算につながります。安く買えること自体は魅力ですが、その安さが「使い方の制限」とセットになっている点を見落とさないことが肝心です。以下、権利・建築制限・補償・評価・電磁界の順に見ていきます。
線下地の権利——地役権と区分地上権
送電線の下の土地には、電力会社(送電線を所有・使用する電気事業者)との間で、土地の利用を制限する権利が設定されていることがあります。代表的なのが、次の2つです。
- 地役権(民法第280条以下):他人の土地(承役地)を、自分の土地や事業のために利用する権利。送電線の場合、土地の上空に建築の制限などをかける形で設定されます。
- 区分地上権(民法第269条の2):土地の上下の一定の範囲(たとえば「地上○メートルから上」)を区切って設定される地上権。送電線が通る上空の範囲を対象に設定されます。
これらの権利は、登記簿の「乙区」(所有権以外の権利を記録する欄)に登記されていることがあります。取得前のデューデリジェンスでは、登記簿の乙区に地役権・区分地上権が登記されていないか、登記されている場合は、その内容(建物の高さ制限など)と、対象となる範囲(地役権図面)を必ず確認します。権利の内容によって、その土地に建てられる建物の高さ・規模が決まってきます。なお、電力会社が土地を使用する根拠としては、これらの私法上の権利のほか、電気事業法第4編「土地等の使用」(第58条以下)にもとづく公的な仕組みもあります。ただし、民間の線下地の補償・利用制限は、私法上の地役権・区分地上権の契約が中心です。いずれにしても、取得前には登記と契約の内容を確かめることが出発点です。
よく混同されるのが、「線下地(送電線が上空を通るだけの土地)」と「鉄塔敷地(鉄塔そのものが建っている土地)」の違いです。鉄塔の脚が建っている土地は、その部分が物理的に使えず、より強い制限がかかります。一方、線下地は上空を電線が通るだけで、地面そのものは庭や駐車場などに使える場合もあります。どちらなのか、地役権・区分地上権がどの範囲にかかっているのかは、地役権図面や登記の内容で具体的に確認する必要があります。「送電線が近い」というだけで判断せず、自分が取得しようとする土地が、電線の真下なのか、鉄塔の敷地なのか、その範囲はどこまでかを、図面で押さえましょう。
(2026-06-21取得)
地役権(第280条以下)と区分地上権(第269条の2)の根拠条文。地役権は他人の土地を自分の便益のために利用する権利、区分地上権は土地の上下の一定範囲を区切って設定する地上権で、送電線の線下地で設定される権利の私法上の根拠となる。
(2026-06-21取得)
第4編「土地等の使用」(第58条以下)の根拠条文。電気事業者が送電線等のために他人の土地を使用する際の公用負担・損失補償の枠組みを定める。ただし民間の線下地の補償は私法上の地役権・区分地上権契約が中心で、これは別系統の公的な仕組みであることを確認できる。
建築・高さの制限——送電線からの離隔距離
線下地で建物の高さが制限される根本的な理由は、送電線と建物との間に、安全のための距離(離隔距離)を確保する必要があるからです。これは、「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成9年通商産業省令第52号)などにもとづくものです。一般に、使用電圧が高いほど、確保すべき離隔距離は大きくなります。たとえば、使用電圧35,000ボルト以下では電線から3メートル以上を確保し、35,000ボルトを超えると、電圧に応じてさらに距離が加算され、より大きな離隔距離が必要になります(高圧の送電線ほど、必要な距離は大きくなります)。その分、送電線の直下や近くでは、建物の高さが抑えられたり、建てられなかったりします。
具体的な離隔距離は、送電線の使用電圧(鉄塔やがいしの規模などから推定)や、電線との接近のしかたによって変わり、電気設備の技術基準の解釈などで細かく定められています。そのため、その線下地で実際に何メートルまでの建物が建てられるかは、電力会社や、送電線に詳しい専門家に確認するのが確実です。民泊・旅館として、ロフトや屋上、増築などで高さを使いたい場合は、この離隔距離による高さの上限が、計画の制約になります。建物の高さ制限全般は建物の高さ制限(高度地区・斜線・日影)の確認もあわせてご覧ください。
(2026-06-21取得)
架空電線と建造物等との離隔距離や、電界・磁界に関する技術基準を定める省令。送電線の下の建築制限や離隔距離、電磁界の規制(第27条・第27条の2)の一次根拠。具体的な離隔距離は電圧・接近状態で変わる。
線下補償料——前所有者が受領済みなら買主は受けられない
送電線が上空を通ることで土地の利用が制限される対価として、電力会社は線下地の所有者に「線下補償料」を支払うのが一般的です。国有地を対象にした例では、財務省の通達(蔵管第487号)が、土地利用の制限率を乗じて補償額を算定する方式を定めています。この線下補償料は、毎年支払われる(年払い)こともあれば、将来の分をまとめて一括で支払われていることもあります。
取得前のデューデリジェンスで注意したいのが、この補償の「受け取り方」と「承継」です。前の所有者が、すでに将来分の補償料を一括で受け取っている場合、その土地を買った人(買主)は、原則として新たに補償を受けられないことがあります。「線下地は補償がもらえるから」と期待して取得しても、すでに前所有者が受領済みだと、その期待は外れます。取得前には、線下補償の契約があるか、その名義は誰か、補償は年払いか一括受領済みか、買主に承継されるのかを、電力会社や売主に確認することが大切です。

(2026-06-21取得)
国有地の上空・地下に電気事業者が特別高圧線等を通す際の地上権等の設定と、線下補償料の算定(土地利用制限率を乗じる方式など)を定める通達。線下補償の実務的な算定根拠を示す一次情報。
相続税の評価減——線下地が安い理由
線下地が相場より安いのには、税務上の評価の面からも理由があります。相続税・贈与税の評価では、送電線のための区分地上権に準ずる地役権が設定された土地(承役地)は、その制限の度合いに応じて評価額が下げられます。国税庁の取扱いによれば、家屋の建築が全くできない場合は100分の50(その地域の借地権割合とのいずれか高い方)、家屋の構造・用途などに制限を受ける場合は100分の30を控除して評価する、とされています(財産評価基本通達27-5にもとづく取扱い)。
これは裏を返せば、線下地は、税務評価の上でも、利用の制限に応じてしっかり減価しているということです。市場でも、その制限を反映して安く取引される傾向があります。取得前には、その土地が建築をどこまで制限されているか(全く建てられないのか、構造・用途の制限なのか)を確認し、安さが制限に見合ったものかを冷静に判断することが大切です。相続や名義移転に関わる評価の取扱いは個別事情で異なるため、税理士に確認してください。
(2026-06-21取得)
送電線等のための区分地上権に準ずる地役権が設定された宅地の相続税評価について、家屋の建築が全くできない場合は100分の50(その地域の借地権割合とのいずれか高い方)、構造・用途等に制限を受ける場合は100分の30を控除する旨を示す国税庁の一次情報(財産評価基本通達27-5)。
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区分地上権に準ずる地役権の評価を定める通達27-5の本文。家屋の建築が全くできない場合は100分の50、構造・用途等に制限を受ける場合は100分の30を控除する旨が記載され、線下地が税務評価でも減価していることの一次根拠となる。
もう一つ、取得後に効いてくるのが、将来の活用・建て替えの幅が狭まるという点です。線下地は、地役権・区分地上権による高さ制限があるため、いま建っている建物を増築したり、より大きな宿泊棟に建て替えたりする余地が限られます。「最初は小さく始めて、軌道に乗ったら増築」という出口戦略を描いていても、送電線の離隔距離が壁になって、思うように拡張できないことがあります。取得前に、その土地で将来どこまでの規模の建物が建てられるのか(増築・建て替えの上限)まで見込んでおくと、運営を始めてからの誤算を避けられます。
電磁界の規制と心理的敬遠——出口への影響
送電線の下というと、電磁界(電界・磁界)の健康への影響を気にする人もいます。これについては、公的な規制と見解を、中立に押さえておくことが大切です。経済産業省などの公的情報によれば、電界については1976年から(地上1メートルで3キロボルト毎メートル以下)、磁界については2011年から、国際的なガイドライン(ICNIRP)に準拠した200マイクロテスラ以下の規制値が、電気設備に関する技術基準を定める省令で定められています。送電線はこの基準を満たすよう設計・管理されています。実際の送電線下の磁界の実測値は、基準を大きく下回るのが一般的です。
健康への影響について、当サイトは断定的な評価を行いません。規制値の範囲内であるという公的な事実を示すにとどめます。ただし、取得前のデューデリジェンスでは、「事実としての安全性」とは別に、買い手や宿泊客が抱く心理的な敬遠も考慮に入れる必要があります。鉄塔や電線が見える立地は、民泊のアイキャッチ写真や宿泊体験の印象に影響することがあり、将来その物件を売却する(出口)ときに、買い手が限られて流動性が下がることもあります。安さの裏にある、この出口のしにくさも、取得の判断材料に含めておきましょう。

(2026-06-21取得)
電界の規制(1976年導入・地上1mで3kV/m以下)、磁界の規制(2011年導入・200µT以下、ICNIRP/WHOのガイドラインに準拠)を、電気設備に関する技術基準を定める省令(第27条・第27条の2)にもとづいて示す、所管官庁(経済産業省)の一次情報。
取得前のDDチェックと専門家への確認
線下地の取得前デューデリジェンスでは、次の点を一つずつ確認していきます。①登記簿の乙区に、地役権・区分地上権が登記されていないか。登記されている場合はその内容(建物の高さ制限など)と、地役権図面による対象範囲。②送電線の使用電圧と、必要な離隔距離による建築可否・高さの上限。③線下補償の契約の有無・名義・年払いか一括受領済みか・買主への承継。④相続税の評価減(建築不可なら50%、構造用途制限なら30%)と、実勢価格の整合。⑤重要事項説明で、これらがどう開示されるか。これらは、線下地に特有の、見落としやすいチェック項目です。
仲介を通じて取得する場合、地役権・区分地上権などの登記された権利は、重要事項説明の対象になります。重要事項説明書に、土地に設定された地役権・区分地上権の記載がないか、また登記簿(乙区)の写しで、その内容を必ず確認してください。ただし、線下補償料の契約が今後も買主に引き継がれるのか、前所有者が一括で受領済みなのかといった「補償の中身」までは、重要事項説明だけではわからないことがあります。登記に表れる権利の確認に加えて、電力会社や売主に、補償契約の名義・受領状況・承継の可否を直接確かめることが大切です。「登記に何も書いていないから問題ない」と早合点せず、契約や図面まで踏み込んで確認しましょう。
線下地の権利・補償・建築制限は、専門性が高く、登記や送電線の規模の読み取りも必要です。登記簿・地役権図面の確認は土地家屋調査士・司法書士、建築の可否は電力会社・建築士、補償は電力会社、税の評価は税理士に確認しながら進めてください。「送電線の下だから安い」という表面だけで判断せず、建てたい規模の民泊が建てられるか、補償は受けられるか、出口で売りやすいかを、取得の判断材料として確かめましょう。物件選び全般の考え方は民泊の物件選び、仲介業者の選び方は民泊 不動産仲介・物件紹介業者の選び方もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 送電線の下の土地は、安ければ買って民泊にしてよいですか?
安さには理由があります。送電線の下では離隔距離の確保で建物の高さが制限され、地役権・区分地上権が設定されていることがあります。線下補償を前所有者が一括受領済みだと買主は受けられないことも。建てたい規模が建つか、補償・出口はどうかを、登記・電力会社・建築士・税理士に確認してから判断してください。
Q2. 線下地には、どんな権利が設定されていますか?
電力会社との間で、地役権(民法第280条以下)や区分地上権(民法第269条の2)が設定され、登記簿の乙区に登記されていることがあります。これらは土地の上空の利用や建物の高さに制限をかけるものです。取得前に、乙区の登記の有無と内容、地役権図面による対象範囲を確認してください。
Q3. 送電線の下では、どれくらいの高さまで建てられますか?
送電線との離隔距離を確保する必要があり、使用電圧が高いほど大きな距離が求められます。一例として、使用電圧35,000ボルト以下では電線から3メートル以上を確保し、35,000ボルトを超えると電圧に応じてさらに距離が加算されます。実際に何メートルまで建てられるかは電圧や接近状態で変わるため、電力会社・建築士に確認してください。
Q4. 線下地を買えば、線下補償料はもらえますか?
必ずしももらえるとは限りません。線下補償料は年払いのこともあれば、将来分を前所有者が一括で受領済みのこともあります。一括受領済みの場合、買主は原則として新たに補償を受けられないことがあります。取得前に、補償契約の有無・名義・年払いか一括済みか・承継の可否を、電力会社や売主に確認してください。
Q5. 線下地が安いのは、税金の評価とも関係しますか?
関係します。相続税・贈与税の評価では、送電線のための区分地上権に準ずる地役権がある宅地は、家屋の建築が全くできない場合は100分の50(その地域の借地権割合との高い方)、構造・用途等に制限を受ける場合は100分の30を控除して評価されます(財産評価基本通達27-5)。制限に応じて減価しているということです。取扱いは税理士に確認してください。
Q6. 送電線の電磁界は、健康に影響しますか?
当サイトは健康影響について断定的な評価は行いません。公的な事実として、電界は地上1メートルで3キロボルト毎メートル以下、磁界は200マイクロテスラ以下という規制値(国際的なガイドラインに準拠)が定められ、送電線はこれを満たすよう管理されています。実測値は基準を大きく下回るのが一般的です。気になる点は経済産業省などの公的情報を確認してください。
Q7. 線下地は、将来売りにくいですか?
出口(売却)では、買い手が送電線を敬遠して限られ、流動性が下がることがあります。事実としての安全性とは別に、心理的な敬遠は残るためです。鉄塔や電線の景観が、民泊のアイキャッチ写真や宿泊体験の印象に影響することもあります。取得時の安さだけでなく、保有中の使い勝手と出口での売りやすさまで見込んで判断することが大切です。
まとめ——「線下地の安さは、権利・補償・建築制限を確かめてから」
送電線の下の土地(線下地)で民泊・旅館業を始めること自体は、できないわけではありません。けれども、取得・契約の段階で確認すべき、線下地に特有の論点があります。送電線の下の土地には、電力会社との間に地役権(民法第280条以下)や区分地上権(民法第269条の2)が設定され、登記簿の乙区に登記されていることがあります。建物の高さは、送電線との離隔距離(電気設備に関する技術基準を定める省令など)によって制限されます。線下補償料は、前の所有者が一括で受領済みだと、買主は受けられないことがあります。相続税の評価では、建築の制限に応じて50%または30%が控除されるなど、線下地は減価しています。電磁界は規制値の範囲内に管理されていますが、心理的な敬遠が出口(売却)の流動性に影響することもあります。取得前には、登記簿の乙区・地役権図面、送電線の電圧と離隔距離、線下補償の契約と承継、相続税評価を、土地家屋調査士・司法書士・電力会社・建築士・税理士に確認してください。とくに、線下補償を前所有者がすでに一括で受領済みだと買主は補償を受けられないことがあり、また高さ制限で将来の増築・建て替えの余地が限られる点は、見落とすと取得後に効いてきます。「送電線の下だから安い」という表面だけで判断せず、権利・補償・建築制限・出口まで見込んで、無理のない計画で慎重に進めることをおすすめします。
⚠️ 本記事は2026-06-21時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)
本記事は 2026-06-21 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
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- 消防: 物件所在地の所轄消防署
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