編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-07-08

民泊をやめると決めたとき、あるいは相続した実家を民泊にしていたけれど手放したいとき、多くの方が最初に迷うのが「物件をどうするか」です。売って現金化するのか、運営代行に任せて保有し続けるのか、普通の賃貸に転用するのか。この記事は、そのうち「不動産として物件を売る」場合の実務に絞って、相場の調べ方、売却の流れ、民泊物件ならではの注意点、そして売却でかかる税金までを、公式情報をもとに順を追って整理します。事業ごと譲渡するM&A・事業承継の論点は範囲を分けて、ここでは「宅地建物取引業者に仲介してもらって物件を売る」道筋を中心に扱います。

この記事でわかること
  • 民泊物件を売る前に整理したい「売却・保有継続・賃貸転用」の3つの選択肢
  • 不動産売却の全体の流れ(査定→媒介契約→売り出し→引渡し)
  • 相場の調べ方と、複数社に査定を依頼して比較する意味
  • 媒介契約の3種類(一般・専任・専属専任)と仲介手数料の上限
  • 民泊物件ならではの注意点(廃業等届出・買主が民泊を続ける場合・旅館業との違い)
  • 売却でかかる譲渡所得税の仕組みと、所有期間5年の境界(試算例つき)
  • 相続した空き家・自宅を民泊にしていた場合の3,000万円控除の注意点
minpaku-teppai-baikyaku-2026 Step1 相場を知る

Contents

結論:民泊物件を売るなら「相場を知る → 売り方を選ぶ → 税金と手続きを押さえる」の順で進める

結論から述べます。民泊として使ってきた物件を売却するときは、いきなり不動産会社1社に相談するのではなく、①いまの相場をつかむ、②売り方(媒介契約と依頼先)を選ぶ、③売却でかかる税金と、民泊ならではの手続きを押さえる、という順番で進めるのが現実的です。

この順番が大切なのは、最初に相場観を持たないまま1社の査定額だけを見てしまうと、その額が高いのか安いのか判断できないからです。また、民泊物件は普通の住宅を売るときにはない手続き(住宅宿泊事業の廃業等届出など)が絡むため、売却のタイミングと届出のタイミングを合わせて考える必要があります。売却で利益が出れば譲渡所得税がかかりますが、その税率は物件の所有期間によって大きく変わるため、「いつ売るか」も収支に影響します。

そして、そもそも売るべきかどうか。運営が重いだけなら運営代行に任せて保有を続ける、民泊はやめても賃貸として貸す、という道もあります。まずは選択肢を並べて比べるところから始めましょう。

はじめ君

はじめ君

民泊をやめて物件を売りたいのですが、まず何から始めればいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

まずはいまの相場を調べ、複数の不動産会社に査定を依頼して価格の目安をつかむところから始めるのが現実的です。売り方や税金の整理は、その次の段階で進めていきましょう。

まず決める:売却・運営代行で保有継続・賃貸転用の3つを並べて考える

「民泊をやめたい」という気持ちの中身は、人によって違います。運営の手間が重いのか、収益が思うように出ないのか、資金が必要なのか、相続した物件を管理しきれないのか。理由によって、最適な出口は変わります。まずは代表的な3つの選択肢を並べて、自分の状況に近いものを確かめてください。

選択肢 向いているケース 主なメリット 主な留意点
売却する まとまった資金が必要/管理を続けられない/今後の見通しに不安がある 現金化できる/保有コスト(固定資産税・管理費等)から解放される 売却益に譲渡所得税/仲介手数料・諸費用/売却まで時間がかかる場合がある
運営代行に任せて保有継続 物件は残したいが運営の手間が重い/立地は悪くない 保有を続けられる/清掃・ゲスト対応の負担を外せる 代行手数料が収益を圧迫する場合がある/委託先選びが重要
賃貸に転用する 民泊はやめたいが物件は残したい/安定収入を優先したい 稼働管理の手間が減る/賃料が読みやすい 賃料水準は民泊の繁忙期ほど高くない場合がある/原状回復・入居者募集の手間

この記事では、このうち「売却する」を選んだ場合の実務を掘り下げます。判断に迷う段階であれば、収支の見通しを整理してから決めるのが現実的です。運営を続けた場合の試算は収支シミュレーターで、物件の可否や条件の整理は無料の可否診断で確認できます。

はじめ君

はじめ君

運営の手間が重いだけなのですが、それでも売るしかないのでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

売却のほかに、運営代行に任せて保有を続ける、賃貸に転用するという選択肢もあります。やめたい理由によって向く出口が変わるため、まず3つを並べて比べてみるとよいでしょう。

不動産売却の全体像:査定から引渡しまでの流れ

不動産の売却は、大きく次の流れで進みます。民泊物件でも、物件そのものを不動産として売る場合は、基本の流れは通常の住宅売却と同じです。

  1. 相場の把握・査定依頼:まず相場を調べ、複数の不動産会社に査定を依頼して価格の目安をつかみます。
  2. 媒介契約の締結:仲介を依頼する会社と媒介契約(後述の3種類)を結びます。
  3. 売り出し・販売活動:売り出し価格を決め、広告・レインズ(指定流通機構)への登録などで買主を探します。
  4. 内覧対応:購入希望者の内覧に対応します。民泊運用中の場合は予約状況との調整が必要です。
  5. 売買契約・手付金:買主と条件が合意できたら売買契約を結び、手付金を受け取ります。
  6. 決済・引渡し:残代金の受領と同時に、鍵・書類を引き渡し、所有権移転登記を行います。
  7. 確定申告:売却で利益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡した年の翌年に確定申告をします。

売り出しから成約・引渡しまでにかかる期間は物件や市況によって幅がありますが、内覧や価格交渉を経るため、資金が必要な時期から逆算して余裕をもって動くと、慌てて値下げに応じるといった事態を避けやすくなります。

minpaku-teppai-baikyaku-2026 Step2 売り方を選ぶ

相場の調べ方と、一括査定で複数社を比較する意味

売却で失敗しないための最初の一歩は、1社の査定額を鵜呑みにしないことです。不動産の査定額は会社によって差が出ることがあり、1社だけの提示額では、それが相場に対して高いのか安いのか判断できません。まず自分で相場の当たりをつけ、そのうえで複数社の査定を比べるのが基本です。

相場を自分で調べる方法としては、次のような公的な情報が参考になります。

  • 国土交通省の不動産取引価格情報や公示地価・都道府県地価調査(周辺の取引事例・地価水準)
  • 不動産流通機構(レインズ)の成約事例に基づく市況資料
  • 近隣で売り出されている類似物件の売り出し価格(あくまで売り出しであって成約価格ではない点に注意)

そのうえで、複数の不動産会社に査定を依頼します。査定には、現地を見ずに周辺事例などから算出する机上査定(簡易査定)と、実際に物件を見て精度を高める訪問査定があります。まずは机上査定で複数社の目安を比べ、有力な会社に訪問査定を依頼する、という進め方が一般的です。

複数社へまとめて査定を依頼できる不動産一括査定サービスを使うと、1回の入力で複数社の査定額を比較できます。査定額の根拠(どの事例を参考にしたか、なぜその価格か)まで説明してくれる会社かどうかも、依頼先を選ぶ判断材料になります。

査定額は「売れる価格」の保証ではありません

査定額は、その会社が「この価格なら売れそう」と見込んだ目安です。実際の成約価格は、買主との交渉や売り出しのタイミングによって上下します。査定額が高い会社が必ずしも高く売ってくれるとは限らないため、金額の根拠と販売活動の中身をあわせて確認しましょう。

はじめ君

はじめ君

査定は1社だけに頼むのでは足りないのでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

1社だけだと、その額が相場に対して高いのか安いのか見極めにくいためです。複数社の査定額と、その根拠をあわせて比べると、価格の妥当性を判断しやすくなります。

媒介契約の3種類:一般・専任・専属専任の違い

不動産会社に仲介を依頼するときは、媒介契約を結びます。宅地建物取引業法に基づく媒介契約には3種類があり、他社にも依頼できるか、レインズへの登録義務があるか、報告の頻度はどれくらいか、といった点が異なります。

種類 複数社へ依頼 自分で買主を見つけて直接契約 レインズ登録義務 販売活動の報告頻度
一般媒介 できる できる 義務なし 法律上の定めなし
専任媒介 できない(1社のみ) できる 契約日から7日以内 2週間に1回以上
専属専任媒介 できない(1社のみ) できない 契約日から5日以内 1週間に1回以上

一般媒介は自由度が高い一方で、各社が「他社で決まるかもしれない」と考えて販売活動に力を入れにくい面があるとも言われます。専任・専属専任は1社に絞る分、レインズ登録と定期報告が義務づけられ、販売状況を把握しやすくなります。どれが良いかは物件の売りやすさや売主の希望によって変わるため、各社の販売方針を聞いたうえで選ぶのが現実的です。なお、逆に物件を「買う」側で仲介業者を選ぶ際の注意点は、民泊向け物件の仲介・探し方の記事で解説しています。

はじめ君

はじめ君

媒介契約は3種類あるそうですが、どれを選べばいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

物件の売りやすさや、販売状況をどれくらい把握したいかで変わります。1社に絞る専任・専属専任はレインズ登録と定期報告が義務づけられ、状況を把握しやすい特徴があります。

仲介手数料の上限:宅建業法の速算式と「低廉な空家等」の特例

売却が成立すると、仲介した不動産会社に仲介手数料(媒介報酬)を支払います。この上限は宅地建物取引業法に基づく国土交通省の告示で定められており、業者が法定の上限を超えて仲介手数料を請求することは原則できません。ただし、売主が特別に依頼した広告などの実費は、書面での合意があれば別途請求されることがあるため、見積内容に不明な項目があれば説明を求めましょう。

告示では、売買価格を区分ごとに分けて料率を掛ける方式(税込で、200万円以下の部分5.5%、200万円超400万円以下の部分4.4%、400万円超の部分3.3%)が定められています。実務では、400万円を超える物件について次の速算式がよく使われます。

  • 税抜の速算式:売買価格 × 3% + 6万円
  • 消費税(10%)を加えた税込:売買価格 × 3.3% + 6.6万円

さらに、2024年(令和6年)7月1日に施行された改正で、価格が800万円以下の「低廉な空家等」については、売主・買主から受け取れる仲介手数料の上限が30万円(消費税を加えて33万円)まで認められるようになりました。従来は400万円以下・上限18万円だった対象・金額が拡大されたもので、安く売りにくい空き家などの流通を促す狙いです。売る物件が低価格帯の場合は、この特例の対象になることがあります。

宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額(国土交通省告示)
(2026-07-08取得)

売買・交換の媒介報酬の上限(200万円以下5.5%/200万円超400万円以下4.4%/400万円超3.3%、いずれも税込)と、低廉な空家等(800万円以下)の特例(上限33万円・令和6年7月1日施行)の根拠。

民泊物件ならではの注意点:廃業等届出・買主が民泊を続ける場合・旅館業との違い

物件を不動産として売る場合でも、民泊として運用してきた物件には、普通の住宅にはない手続き上の論点があります。売主・買主のどちらが民泊をやめる/続けるかで、必要な届出が変わります。

売主が民泊をやめる場合:住宅宿泊事業の廃業等届出

住宅宿泊事業(民泊新法)で運用してきた物件を売って事業をやめる場合は、住宅宿泊事業法に基づく廃業等届出が必要です。同法では、事業の廃止などに該当したときは、その日から30日以内に都道府県知事等へ届け出ることとされています。OTA(予約サイト)の掲載停止、既存予約の消化、行政への廃業等届出、という順序を整理して進めると、予約が残ったまま事業をやめてしまうといった行き違いを防ぎやすくなります。

買主が民泊を続ける場合:住宅宿泊事業は「新規届出」が原則

買主がその物件で民泊(住宅宿泊事業)を続けたい場合、注意が必要です。住宅宿泊事業法には、旅館業法のような「事業譲渡で届出者の地位を買主に引き継ぐ」承継の仕組みが条文上置かれていません。実務上も、複数の自治体が「事業者が変わる場合(譲渡・相続・法人変更など)は変更届ではなく、新たに事業を営む旨の届出(新規届出)が必要」と案内しています。つまり、買主は前の事業者の届出をそのまま使えるわけではなく、自分の名義で新規に届け出るのが原則と考えておくと、契約後の認識のずれを避けやすくなります。

旅館業(簡易宿所等)の許可で運用していた場合:2023年改正で事業譲渡の承継が可能に

一方、旅館業の許可(簡易宿所営業など)で運用してきた物件は扱いが異なります。旅館業法は2023年(令和5年)12月13日施行の改正で、事業譲渡による営業者の地位の承継が、都道府県知事等の承認を受けることで可能になりました(旅館業法第3条の2)。従来は許可を取り直す必要がありましたが、譲渡人・譲受人の双方が申請して承認を受ければ、新たな許可取得なしに地位を承継できる建付けです。ただし、譲渡の効力が承認より前に発生する場合はこの制度が使えず新規許可が必要になるなど、手続きの順序に条件があります。

生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部改正について(厚生労働省)
(2026-07-08取得)

旅館業の事業譲渡による営業者の地位の承継(承認手続き)が2023年12月13日から可能になった改正の根拠。

!民泊運用歴の告知・消防の手続きは専門家・所轄窓口に確認を

民泊として使っていたことを買主にどう伝えるか(告知)や、消防法令適合通知書の名義変更の要否については、物件の状況や契約内容によって取扱いが分かれ得ます。トラブルを避けるため、契約や告知の範囲は宅地建物取引業者・弁護士に、消防関係は所轄消防署に、それぞれ確認したうえで進めてください。

minpaku-teppai-baikyaku-2026 Step3 税金と手続き
はじめ君

はじめ君

民泊として使っていた物件を売るとき、普通の家の売却と違う点はありますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

住宅宿泊事業の廃業等届出が必要になるなど、民泊ならではの手続きがあります。買主が民泊を続ける場合は原則として買主の新規届出が必要になる点も、早めに整理しておきたいところです。

売却でかかる税金:譲渡所得税の仕組みと「所有期間5年」の境界

物件を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税がかかります。譲渡所得は次の式で計算します。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

取得費は買ったときの価格や購入諸費用など、譲渡費用は仲介手数料など売るためにかかった費用です。取得費がわからない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます(国税庁 No.3258)。なお、民泊など業務用に使っていた建物は、実際に確定申告で減価償却費を経費に入れていたかどうかにかかわらず、計算上は使用期間に応じた減価償却費相当額を取得費から差し引くことになる点に注意が必要です(国税庁 No.3261)。

税率は所有期間で変わる:長期20.315%/短期39.63%

不動産の譲渡所得税は、売った年の1月1日時点での所有期間で税率が大きく変わります。実際に何年持っていたかではなく、「売った年の1月1日現在で5年を超えているか」で判定する点が要注意です。

区分 所有期間(売った年の1月1日時点) 内訳 合計(通称)
長期譲渡所得 5年超 所得税15% + 復興特別所得税(所得税額の2.1%)+ 住民税5% 約20.315%
短期譲渡所得 5年以下 所得税30% + 復興特別所得税(所得税額の2.1%)+ 住民税9% 約39.63%

「20.315%」「39.63%」という数字は、所得税・復興特別所得税・住民税を合算した通称の合計税率です(国税庁のページ本文に合計値そのものが載っているわけではなく、それぞれの税率を足したものです)。長期と短期では税率が倍近く違うため、売却時期が所有期間5年の境界に近い場合は、いつ売るかで手取りが大きく変わることになります。なお、復興特別所得税は2027年(令和9年)1月以降、防衛特別所得税との組み替えにより内訳の構成が変わる見込みが示されています(合計の負担率自体は据え置かれる方向とされています)。売却時期が先の場合は、最新の税率を税理士・税務署にご確認ください。

たとえば、2020年(令和2年)2月1日に取得した物件を売る場合、2025年12月31日までに売ると「短期」、2026年1月1日以降に売ると「長期」の扱いになります(売った年の1月1日で判定するため)。境界に近いなら、税理士に相談して売却時期を検討する価値があります。

No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(国税庁 タックスアンサー)
(2026-07-08取得)

短期譲渡所得(売った年の1月1日時点で所有期間5年以下)の税率=所得税30%・住民税9%と、復興特別所得税(所得税額の2.1%)の根拠。長期はNo.3208で所得税15%・住民税5%。

試算はあくまで一例です

たとえば譲渡所得が1,000万円の場合、単純計算では長期で約203万円、短期で約396万円が目安になりますが、実際は取得費・譲渡費用・各種特例・他の所得との関係で変わります。税額の正確な計算と特例の適用可否は、必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。

はじめ君

はじめ君

売却でかかる税金は、いつ売っても同じくらいの金額ですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

所有期間によって税率が変わります。売った年の1月1日時点で5年を超えていれば長期、5年以下なら短期の扱いになり、税率は倍近く違うため、売却時期も収支に影響します。

相続空き家・自宅を民泊にしていた場合:3,000万円控除は「使える条件」が限られる

不動産売却の税金でよく話題になるのが「3,000万円特別控除」です。ただし、これはどんな物件でも使えるわけではなく、条件が厳格に定められています。とくに民泊物件では、民泊として運用していたこと自体が控除の可否に関わるため、誤解しやすいポイントを整理します。3,000万円控除には、性格の異なる2つの制度があります。

自宅(マイホーム)を売ったときの3,000万円特別控除(措法35条1項)

現に住んでいる家、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家が対象です。国税庁は、この特例について「住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません」としており(No.3302)、住まなくなった後に民泊などに使っていた場合でも、期限内の売却であれば対象になり得ます(No.3302のページに「民泊」という語が明記されているわけではなく、あくまで用途を問わないという記載に基づく整理です)。一方、まだ住みながら自宅の一部で民泊をしている場合は、居住用に使っている部分に限って対象になり、民泊に使っている部分は対象外と整理されるのが基本です。別荘など趣味・保養のための家屋は対象外とされています。自宅を民泊に転用して売る場合の按分の考え方は、自宅を民泊転用後に売却するときの税金の記事で詳しく解説しています。

相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(措法35条3項)

相続した被相続人の居住用家屋等を、一定の要件で売る場合の特例です。制度としては平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象ですが、それとは別に、案件ごとに相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。相続からすでに数年経っている場合、この3年ルールにより2027年より前に個別の期限が来ていることがあるため注意が必要です。なお令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合の控除額は2,000万円までに調整され、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象に加わりました。

そして民泊物件でとくに重要なのが、この空き家特例には「相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていたことがないこと」という要件がある点です(国税庁 No.3306)。相続した空き家を民泊(住宅宿泊事業・旅館業とも、第三者への有償の宿泊提供)として運用していた場合、これが「貸付けの用・事業の用」に該当し、この空き家特例の対象から外れる可能性が高いと考えられます。「相続した実家を民泊にしていたが、売るときに3,000万円控除が使えるはず」と考えていると、想定と大きく異なる結果になりかねません。相続した空き家を民泊活用するか売却するかの判断は、相続空き家は民泊活用か売却かの記事で詳しく整理しています。

また、投資用に購入して民泊専用で運用してきた物件(一度も自分で住んでいない物件)は、居住用・相続空き家のいずれの3,000万円控除の対象にもならないのが基本です。

!控除が使えるかどうかは自己判断せず、税理士・税務署へ

3,000万円控除は要件が細かく、居住実態・相続・売却時期・その物件を民泊や賃貸に使っていたかどうかなど、複数の条件で可否が変わります。とくに相続した空き家を民泊に使っていた場合は対象外になりやすい点に注意が必要です。「使えるはず」と思い込んで売却を進めると、後から適用外とわかって想定より税負担が重くなることがあります。あなたの物件が対象になるかどうかは、必ず税理士または所轄税務署に確認してください。

No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁 タックスアンサー)
(2026-07-08取得)

相続空き家の3,000万円特別控除の要件(相続の時から譲渡の時まで事業・貸付・居住の用に供されていないこと、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月末までの譲渡)と、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人3人以上は控除額2,000万円までとなる点の根拠(措置法35条3項)。

No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁 タックスアンサー)
(2026-07-08取得)

居住用財産(自宅)を売ったときの3,000万円特別控除(措法35条1項)の要件。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月末までの売却が対象で、住まなくなった後の用途は問わないとされる点の根拠。

はじめ君

はじめ君

不動産を売ると3,000万円の控除が使えると聞きましたが、民泊物件でも使えますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

3,000万円控除は居住用や相続した空き家など、条件を満たす場合に限られます。投資用に民泊専用で使ってきた物件は対象外のことが多いため、使えるかどうかは税理士や税務署にご確認ください。

売り時・保有継続を判断する材料:民泊市場の現況

「いま売るべきか、もう少し運営を続けるか」を考えるうえで、市場全体の状況も判断材料になります。以下は公式統計の最新値です(いずれも取得時点を明記しています)。

  • 住宅宿泊事業(民泊新法)の届出住宅数(稼働中)は40,745件(2026年5月15日時点/観光庁・民泊制度ポータル)。累計届出63,658件に対し廃止22,913件で、届出住宅数自体は緩やかな増加傾向です。
  • 訪日外客数は2026年5月で約356万人(3,559,900人・前年同月比3.6%減/JNTO、2026年6月17日公表)。
  • 宿泊施設全体の客室稼働率は2026年5月で全国60.6%、簡易宿所は28.9%(観光庁 宿泊旅行統計調査 第1次速報、2026年7月6日公表)。

数値は「〜年〜月時点」の値であり、地域・物件・季節によって実感は大きく異なります。全国平均が上向きでも、特定エリアや個別物件では別の傾向になることがあります。売却か保有継続かは、こうしたマクロの数字だけで決めず、自分の物件の稼働実績と収支をあわせて判断してください。

住宅宿泊事業の施行状況(観光庁 民泊制度ポータルサイト)
(2026-07-08取得)

住宅宿泊事業の届出件数・廃止件数・稼働中の届出住宅数、住宅宿泊管理業・仲介業の登録件数の公式統計。

訪日外客数(2026年5月推計値)(日本政府観光局 JNTO)
(2026-07-08取得)

2026年5月の訪日外客数(推計値)3,559,900人・前年同月比3.6%減の出典。

宿泊旅行統計調査(観光庁)
(2026-07-08取得)

2026年5月の客室稼働率(全国60.6%、簡易宿所28.9%)等を含む宿泊旅行統計調査の公表ページ。

よくある失敗5パターン

  1. 1社の査定額だけで売り出し価格を決めてしまう:相場観がないまま提示額を信じると、安すぎ・高すぎに気づけません。複数社を比較しましょう。
  2. 所有期間5年の境界を知らずに売って高い税率になる:売った年の1月1日で判定されるため、あと数か月待てば長期になったのに短期で売ってしまう、という事態が起こり得ます。
  3. 予約が残ったまま事業をやめる/廃業等届出の順序を誤る:OTA掲載停止→予約消化→廃業等届出、という順序を整理しないと、引渡し後にゲストが来てしまうなどの行き違いが起こります。
  4. 買主が民泊を続けられる前提で話を進める:住宅宿泊事業は原則として買主の新規届出が必要です。「そのまま民泊を続けられる」と安易に説明すると、契約後にトラブルになりかねません。
  5. 3,000万円控除が使える前提で資金計画を立てる:投資用の民泊専用物件は対象外のことが多く、想定していた控除が使えず税負担が重くなる場合があります。

売るか、続けるか。まず数字で確かめる

運営を続けた場合の収支見通しと、物件の条件を整理してから判断できます。売却の前に、いまの手元の数字を確認しましょう。

無料の収支シミュレーターを使う

よくある質問(FAQ)

Q1. 民泊として使っていた物件でも、普通の住宅として売れますか?

はい、不動産としての売却自体は可能です。ただし、住宅宿泊事業の廃業等届出など民泊ならではの手続きが絡むため、売却のタイミングと届出のタイミングを整理して進める必要があります。

Q2. 買主がそのまま民泊を続けたい場合、私の届出を引き継げますか?

住宅宿泊事業(民泊新法)には、事業譲渡で届出者の地位を引き継ぐ承継の仕組みが条文上ありません。買主が民泊を続けるなら、原則として買主自身が新規に届出をすることになります。旅館業の許可の場合は、2023年の改正で承認による承継が可能になっています。

Q3. 売却でかかる税金はいくらくらいですか?

売却益(譲渡所得)に対して、所有期間が5年超なら約20.315%、5年以下なら約39.63%が目安です。ただし取得費・譲渡費用・各種特例で変わるため、正確な額は税理士・税務署にご確認ください。

Q4. 所有期間の5年は、いつからいつまでで数えますか?

取得した日から、売った年の1月1日までで判定します。実際の所有年数ではなく「売った年の1月1日時点で5年を超えているか」で長期・短期が決まる点に注意が必要です。

Q5. 相続した実家を民泊にしていました。3,000万円控除は使えますか?

相続した空き家の特例(措法35条3項)には「相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと」という要件があり、民泊として運用していた場合は対象から外れる可能性が高いと考えられます。相続人の人数・売却時期など他の条件も細かく定められているため、使えるかどうかは自己判断せず、必ず税理士または税務署に確認してください。

Q6. 仲介手数料はいくらかかりますか?

400万円を超える物件では、税抜で「売買価格×3%+6万円」(税込は3.3%+6.6万円)が上限です。800万円以下の低廉な空家等は、2024年7月の改正で上限30万円(税込33万円)まで認められるようになりました。

Q7. 売った後、確定申告は必要ですか?

売却で利益が出た場合や特例を使う場合は、譲渡した年の翌年に確定申告が必要です。譲渡所得の計算や特例の適用には書類が必要になるため、契約書・領収書などを保管しておきましょう。

まとめ:順序を守れば、慌てずに売却を進められる

民泊物件の売却は、「相場を知る → 売り方を選ぶ → 税金と手続きを押さえる」の順で進めれば、慌てずに判断できます。査定は複数社を比較し、媒介契約は各社の販売方針を聞いて選び、売却益にかかる譲渡所得税は所有期間5年の境界を意識する。そして民泊ならではの廃業等届出や、買主が事業を続ける場合の新規届出、3,000万円控除の適用条件については、宅地建物取引業者・税理士・所轄窓口に確認しながら進める。この基本を押さえておけば、大きな行き違いは避けやすくなります。

売るか、運営代行に任せて続けるか、賃貸に転用するか。迷う段階なら、まず収支シミュレーターで数字を整理し、無料の可否診断で物件の条件を確認してから、次の一手を決めてください。


⚠️ 本記事の試算は一例です。実際の収支は物件・地域・運営形態・季節により大きく変動します。投資判断は必ず複数の試算と専門家確認の上で行ってください。

📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は 2026-07-08 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

当サイトでは、上記の専門家・自治体への確認窓口を 運営代行業者の選び方 で案内しています。
収支試算は 収支シミュレーター、物件可否は 無料可否診断 をご利用ください。

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minpakugakko
民泊学校 編集部。運営者は2015年からAirbnbでの民泊運用に携わり、複数物件の運営経験をもとに、公式ソースの確認・専門家への確認導線・実務目線の3つを軸に記事を編集しています。