編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-20

民泊制度ポータルサイトの施行状況データ(令和8年3月13日時点)によると、住宅宿泊事業の累積届出件数61,605件に対して廃止届件数は22,030件、廃止率は35.8%に達しています。3件に1件超が廃業しているという実態は、民泊運営の厳しさを如実に示しています。廃業そのものは珍しいことではありませんが、手続きを誤ると無届け運営の状態が続いてしまうリスクや、税務上の申告漏れが生じるおそれがあります。本記事では、住宅宿泊事業の廃止届から旅館業許可の廃業届、OTAリスティングの削除、税務クロージングまで、廃業に必要な7ステップを公式ソースを基に解説します。最終的なご判断は各自治体・専門家にご確認ください。

この記事でわかること

  • 民泊廃業の現状と廃止率35.8%が示す市場の実態
  • 住宅宿泊事業「廃業等届出書(第三号様式)」の書き方と30日以内の提出ルール
  • 旅館業(簡易宿所)廃業届と保健所への10日以内届出の手順
  • AirbnbほかOTAのリスティング非公開化・削除の3択と手順
  • 管理業者との委託契約解除時に必要な追加届出
  • 廃業年の確定申告・消費税廃業届・事業用資産の税務上の取扱い
  • 廃業後の物件活用3パターン(賃貸転用・旅館業切替・売却)

結論:廃業手続きは「行政届出 → OTA停止 → 税務クロージング」の順で進めるのが現実的です。住宅宿泊事業は廃止から30日以内に都道府県知事へ届出。旅館業は10日以内に保健所へ届出・許可書返納。いずれも期限を過ぎると法令上の問題が生じる可能性があります。税務手続きは廃業年の翌年2月〜3月の確定申告が中心です。不明点は行政書士・税理士への相談を検討してください。

民泊制度ポータル 施行状況(2026-05-20取得)
令和8年3月13日時点:届出件数61,605件・廃止22,030件・廃止率35.8%

民泊制度ポータル 廃業等届出書(第三号様式)(2026-05-20取得)
住宅宿泊事業法第3条第6項:廃止から30日以内に都道府県知事へ届出が必要

国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(2026-05-20取得)
廃業の場合、廃業の日から1か月以内に廃業届提出。廃業年は翌年の確定申告で処理

民泊廃業の現状|廃止率35.8%が示す実態

2018年6月の住宅宿泊事業法施行から8年が経過し、民泊市場は大きな変容を遂げています。民泊制度ポータルサイトが公開している施行状況データ(令和8年3月13日時点)によると、累積届出件数は61,605件に達した一方、廃止届出件数は22,030件となっており、廃止率は35.8%という高い水準です。

廃業が多い背景には複数の要因があります。住宅宿泊事業は年間180日の運営日数上限があり、収益性の限界を感じるオーナーが通年運営可能な旅館業許可の取得に切り替えるケース、転勤・売却・家族の事情による物件処分、近隣トラブルや管理の負担増加による撤退などが代表的です。また、旅館業(簡易宿所)として運営していたオーナーが保健所の指導強化や建物の老朽化を機に廃業するケースも見られます。

重要なのは、廃業自体は珍しいことではなく、正規の手続きを踏めば問題なく撤退できるという点です。ただし、手続きを怠ったままOTAのリスティングを停止しただけでは、行政上は「届出有効な状態」が続くケースがあります。また、廃業の翌年に確定申告が必要であるにもかかわらず、その処理を失念するオーナーも少なくありません。本記事では、実務上のよくある漏れを踏まえた7ステップで廃業手続きを解説します。

民泊制度ポータル 施行状況(2026-05-20取得)
届出件数・廃止件数・地域別内訳などの統計情報が掲載されています

廃業の主な理由 該当する手続き 期限の目安
運営上限(180日)に限界を感じた 住宅宿泊事業 廃止届 → 旅館業許可申請へ切替 廃止から30日以内
物件の売却または転用 廃止届 + OTA削除 + 税務クロージング 売却日を廃業日に設定
旅館業(簡易宿所)の廃業 廃業届(第4号様式)+ 許可書返納 廃業から10日以内(京都市例)
管理業者との契約解除のみ 管理業務委託変更届(30日以内) 変更日から30日以内

はじめ君

はじめ君

廃止率35.8%というのは思ったより高いですね。廃業手続きをしないままリスティングだけ止めている人も多いのでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

実務上は「リスティングを止めただけで廃業手続き未了」のケースも散見されます。都道府県への廃止届提出が正式なクロージングとなります。期限(30日以内)もあるため、まずは自治体への届出から進めることをお勧めします。

廃業前に決めること|廃業時期と残存予約の処理

廃業の意思が固まったら、具体的な手続きに入る前に「廃業日をいつに設定するか」と「既存の予約をどう処理するか」を先に決める必要があります。この2点を曖昧にしたまま進めると、OTAでの新規予約受け付けを止めるタイミングがずれたり、廃止届の提出期限(廃業日の翌日から30日以内)を誤って計算してしまうことがあります。

廃業日の決め方(予約カレンダーからの逆算)

廃業日は「最後のゲストがチェックアウトした日」を基準に設定するのが実務上の一般的な考え方です。ただし、廃止届の提出は「廃業の事実が生じた日の翌日から30日以内」とされているため、最後のチェックアウト日が確定してから逆算して届出期限を把握しておく必要があります。

廃業日を決める際の手順としては、以下の流れが現実的です。まずOTAのカレンダーで最遠の確定予約日を確認します。その日以降に新規予約が入らないよう、OTA側でリスティングを「非公開」に設定します(削除ではなく非公開にすることで、既存予約に影響を与えずに新規予約だけをブロックできます)。最後のゲストのチェックアウト後、清掃・精算が完了したタイミングを「廃業日」とし、その翌日から30日以内に都道府県知事への廃止届を提出します。

廃業日と届出期限の例:最後のゲストが2026年6月30日にチェックアウト → 廃業日を2026年6月30日に設定 → 廃止届の提出期限は2026年7月30日。この日付を手帳またはカレンダーに必ず書き留めておきましょう。

OTAのリスティング非公開化 → 新規予約ブロック

廃業日が決まったら、まずOTAのリスティングを「非公開(非表示)」状態に切り替えて新規予約の受付を止めます。この操作は「削除」とは異なり、既存の確定済み予約に影響を与えないため、廃業日直前まで確定予約が残っている場合に特に有効です。

Airbnbの場合、ヘルプセンター(article/476)によると、リスティングを削除した後も既存の予約は継続されます。ただし、「予約がすべて完了した後にリスティングを削除することを推奨」しています。手順としては、①リスティング管理画面から「リスティングを非公開にする」を選択 → ②全予約のチェックアウトを確認 → ③最終的に「リスティングを削除」の順が適切です。

Airbnb ヘルプセンター article/476(2026-05-20取得)
既存予約はリスティング削除後も有効。予約完了後の削除が推奨されています

はじめ君

はじめ君

廃業日を設定する前にOTAを閉めるべきですか?それとも廃業日を先に決めてからOTAを止めるのが正しい順序ですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

現実的な順序は「まずOTAを非公開にして新規予約を止める → 既存予約を消化 → 廃業日を確定 → 廃止届提出」です。OTAを先に止めることで、廃業日のコントロールがしやすくなります。

STEP 1|住宅宿泊事業の廃止届を提出する

住宅宿泊事業法第3条第6項は、「届出住宅において住宅宿泊事業を廃止したときは、その日から30日以内に、都道府県知事に届け出なければならない」と定めています。この届出が廃業手続きの中で最も基本となるステップです。

廃業等届出書(第三号様式)の書き方

提出する書類は「廃業等届出書(第三号様式)」です。民泊制度ポータルサイトの「法令・様式等」ページからダウンロードできます。記載事項は比較的シンプルで、以下の内容を記入します。

記載項目 内容・注意点
届出者の氏名(法人は名称・代表者名) 開業届と一致させること
届出住宅の所在地 住宅宿泊事業として届け出た住所を記載
廃業の理由 「物件売却」「転勤による管理困難」「事業継続断念」などを具体的に記載
廃業年月日 最後のゲストがチェックアウトした日、または清掃・精算完了日
届出番号 開業時に交付された届出番号(受理通知書を確認)

記載の際に注意すべきポイントは「廃業年月日」の設定です。ここには実際に事業を終了した日付を記載します。最後のゲストのチェックアウト日と清掃完了日が異なる場合は、実態に即した日付を選択してください。届出書に記載した廃業日が税務上の廃業日のベースにもなるため、税理士や行政書士に確認しながら決めることを検討してください。

提出先・提出方法・受理後の流れ

提出先は「届出住宅の所在地を管轄する都道府県の窓口」です。東京都の場合は東京都観光部観光振興課(ただし自治体ごとに担当課が異なります)、大阪府は府庁の担当課、京都市・大阪市などの中核市・政令市は市の担当窓口となるケースが多いため、事前に所在地の都道府県・市区のウェブサイトで確認してください。

提出方法は自治体によって異なりますが、①窓口持参、②郵送、③電子申請(一部自治体)の選択肢があります。郵送の場合は「簡易書留」など追跡可能な方法を使い、送付日と受理確認日を記録しておくことをお勧めします。受理後は受理通知書または受理印付きの控えが返却されますので、保管してください。

民泊制度ポータル 廃業等届出書(第三号様式)(2026-05-20取得)
様式のダウンロードおよび提出先の一覧(都道府県リンク)が掲載されています

管理業者に委託していた場合の追加手続き

住宅宿泊管理業者(いわゆる運営代行業者)に管理業務を委託していた場合、廃業に際して追加の届出が必要です。民泊制度ポータルサイトの「管理業務の委託」ページによると、管理業者との契約を解除または変更した場合も、変更日から30日以内に都道府県知事へ変更届を提出する必要があります。

実務上は、廃業等届出書の提出と管理業者の変更届をほぼ同時に処理するケースが多いです。管理業者側が届出書類の作成を代行してくれる場合もありますが、最終的な提出義務は届出事業者(オーナー)にあります。事前に管理業者に連絡して、契約解除日・手続きの役割分担・精算タイミングを確認しておくことをお勧めします。

民泊制度ポータル 管理業務の委託(2026-05-20取得)
管理業者の変更・解除時の届出要件および提出先の説明が記載されています

民泊廃業 Step1 廃止届(第三号様式)を提出する

はじめ君

はじめ君

廃止届の30日以内という期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

住宅宿泊事業法では届出義務違反に対して行政上の対応が規定されています。期限を過ぎた場合もできるだけ早く提出するのが現実的な対応です。事情がある場合は、提出前に所轄の都道府県担当課に相談することをお勧めします。

STEP 2|旅館業(簡易宿所)を廃業する場合

旅館業法の許可を取得して運営していた場合(簡易宿所・旅館・ホテル)は、住宅宿泊事業法の廃止届とは別の手続きが必要です。旅館業の廃業は保健所が所轄となり、許可書の原本返納を伴う点が大きな特徴です。

廃業届(第4号様式)と許可書返納

旅館業法に基づく廃業届は「第4号様式」が用いられます。様式の名称や書式は自治体によって若干異なる場合がありますので、所轄保健所のウェブサイトで最新の様式を確認することをお勧めします。

廃業届には、①旅館業の種類(簡易宿所・旅館・ホテル等)、②施設の名称・所在地、③許可番号、④廃業年月日、⑤廃業の理由を記載します。加えて、開業時に保健所から交付された旅館業許可書の原本を返却する必要があります。許可書を紛失している場合は、事前に保健所に連絡して対応方法を確認してください。

京都市 旅館業廃業届(2026-05-20取得)
旅館業廃業届(第4号様式)・許可書原本返却・10日以内の届出要件が記載されています(京都市の事例)

保健所への10日以内届出

旅館業の廃業届の提出期限は、住宅宿泊事業の30日よりも短く、廃業日から10日以内が求められる場合があります(京都市の例では10日以内と規定)。自治体によって期限が異なるため、所轄保健所に事前確認することをお勧めします。

提出先は「施設所在地を管轄する保健所」です。持参または郵送で提出し、受理印が押された控えを保管してください。廃業後は旅館業として宿泊者を受け入れることはできません。廃業日以降も宿泊受け入れを続けると旅館業法違反となるおそれがありますので、廃業日の設定には注意が必要です。

注意:旅館業と住宅宿泊事業(民泊新法)の両方の許可・届出を持っていたケースでは、それぞれの廃業手続きを個別に行う必要があります。保健所への旅館業廃業届と、都道府県への住宅宿泊事業廃止届の提出先が異なりますので、混同しないよう管理してください。

はじめ君

はじめ君

旅館業の廃業届は保健所に出すのですね。許可書を紛失してしまった場合は廃業できないのでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

許可書を紛失した場合も、事前に保健所に連絡することで紛失届を提出して廃業手続きを進められる場合があります。まず所轄保健所に電話で状況を説明して対応方法を確認してください。廃業自体ができなくなるわけではありません。

STEP 3|OTAリスティングの完全削除

行政への届出が完了したら、OTAのリスティングを完全に削除します。「非公開」状態のままでは、アカウント上にリスティングが残り続けるため、完全削除まで進めることが後々のトラブル防止につながります。

Airbnb — 非公開化と削除の3択

Airbnbでは、廃業に際して以下の3つの状態を使い分けることが可能です。廃業のシナリオに応じた選択が適切です。

操作 内容 既存予約への影響 推奨タイミング
カレンダーをブロック 特定期間の予約受付を停止 なし 廃業日までの期間をブロック
リスティングを非公開 検索から非表示・新規予約不可 なし(既存予約は継続) 廃業意思決定直後
リスティングを削除 完全削除(復元不可) 既存予約は継続される 全予約チェックアウト後

Airbnbの場合、リスティング削除後も既存の確定済み予約は有効なため、ゲストに対するキャンセルなしで廃業プロセスを進めることができます。ただし、リスティング削除は原則として復元できないため、将来的に再開業の可能性がある場合は削除前に慎重に判断してください。写真・説明文・設定情報はあらかじめ手元に保存しておくことを検討してください。

Booking.com・楽天ほか

Booking.comでは、エクストラネット(管理画面)から「プロパティを閉鎖する」または「リスティングを削除する」の手続きが必要です。閉鎖日を設定すると、その日以降の予約受付が停止されます。既存予約については、原則としてキャンセルせずにそのまま消化してから閉鎖処理を完了させてください。

楽天トラベル・じゃらんnetなど国内OTAも同様に、管理画面から「掲載停止」または「退会・削除」手続きを行います。掲載停止と完全退会(データ削除)は別の操作であることが多いため、各OTAのサポートページで確認してください。複数OTAに掲載している場合は、見落としがないよう、掲載しているOTAのリストを作成してから順番に処理することをお勧めします。

はじめ君

はじめ君

Airbnbのリスティングを削除すると、ゲストのレビューも消えてしまうのでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

リスティングを削除するとレビューも含めたリスティング情報は消去されます。過去のレビューが記録として必要な場合は、削除前にスクリーンショットの保存などを検討してください。

STEP 4|管理業者との委託契約の解除

住宅宿泊管理業者(運営代行業者)に管理を委託していた場合、廃業にあたって委託契約の解除手続きが必要です。契約解除には一定の解約予告期間が定められている場合が多く(通常30〜90日)、廃業日から逆算して早めに連絡することが重要です。

委託契約を解除する際の主な確認事項は以下のとおりです。

確認事項 内容
解約予告期間 契約書の解除条項を確認。30〜90日の予告期間が多い
違約金・解約手数料 期間中途解約の場合に発生するケースがある。契約書で確認
既存予約の処理 解約日時点で残っている予約はどちらが対応するかを確認
売上精算のタイミング 精算月・振込日を確認。最終精算の手続きを確認
鍵・備品・アクセス権の返却 スマートロックの解除、マスターキー・備品の返却
変更届の作成・提出 管理業者解除の変更届(都道府県宛)。提出義務は事業者(オーナー)にある

管理業者によっては、廃業手続きに関する相談・代行サービスを提供している場合があります。廃止届の書類作成補助や提出代行まで対応してくれるケースもあるため、まず担当者に廃業の意思を伝えてサポート範囲を確認することを検討してください。

なお、管理業者と廃業の時期について見解が相違したり、精算で争いが生じた場合は、早期に行政書士または弁護士に相談することが現実的な対応です。後述の税務クロージングとも関連するため、廃業の意思を固めたら早めに専門家への相談を検討してください。

民泊廃業 Step2 OTAリスティング削除・管理業者解除

はじめ君

はじめ君

管理業者に委託している場合、廃業届も業者が代わりに出してくれるのでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

書類作成を補助してくれる業者もいますが、提出義務はオーナー(届出事業者)にあります。業者任せにせず、自ら提出を確認することが重要です。行政書士に代行依頼する方法もあります。

STEP 5|廃業の税務クロージング

廃業において見落とされやすいのが税務上の手続きです。行政への届出を終えた後も、税務署への廃業届や確定申告が残っています。税務クロージングを適切に処理しないと、翌年以降に余計な問い合わせや加算税のリスクが生じるおそれがあります。税務上の手続きは個別事情によって取扱いが異なるため、不明点は必ず税理士に相談することをお勧めします

個人事業の廃業届(税務署)

民泊事業を個人事業として届け出ている場合(開業届を提出している場合)、廃業に際して税務署に「個人事業の廃業届出書」を提出する必要があります。国税庁の案内(A1-5)によると、廃業届の提出期限は廃業の日から1か月以内です。

提出先は「納税地(自宅住所等)を管轄する税務署」です。e-Tax(電子申告)での提出、または窓口持参・郵送で対応できます。提出書類は「個人事業の廃業届出書」のほか、青色申告の承認を受けていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税の課税事業者であった場合は「事業廃止届出書(消費税)」の提出も別途必要になります。

給与等を支払っていた(アルバイト・スタッフを雇用していた)場合はさらに「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も提出が必要となります。これらを一括で確認できる国税庁のページを参照することをお勧めします。

国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(2026-05-20取得)
廃業届の提出期限(廃業から1か月以内)・様式・提出先の詳細が記載されています

廃業年の確定申告(翌年2月15日〜3月15日)

廃業した年(廃業年)の事業所得は、翌年の2月16日〜3月15日の確定申告期間に申告します。廃業年の確定申告では、通常の事業所得の集計に加えて、以下の点に注意が必要です。

廃業年の収入と経費の計上は廃業日まで行います。廃業後に受け取った精算金(OTAからの最終振込等)も収入として計上する必要があります。逆に廃業後に支払った経費(OTA手数料・清掃費・管理業者への最終精算等)も廃業年の経費として計上できるかどうかは、税務上の処理方法によって異なる場合があります。これらの取扱いは個別事情によって異なるため、税理士への相談を検討してください

青色申告をしていた場合、廃業年も青色申告で確定申告できます(「青色申告の取りやめ届出書」を提出していても、廃業年の申告は青色申告が可能なケースがあります)。ただしこの点も税理士・税務署に確認してください。

消費税課税事業者の廃業届

民泊事業の売上が課税期間(暦年または事業年度)において一定額を超えていた場合、消費税の課税事業者となっている可能性があります。課税事業者の場合、廃業に際して「事業廃止届出書」(消費税)を所轄税務署に提出する必要があります。

国税庁のタックスアンサー No.6603 によると、事業を廃止したときは、速やかに「事業廃止届出書」を提出することとされています。また、廃業時点で残っていた事業用資産(家具・家電・設備等)は、廃業日において「みなし譲渡」として課税売上に含める必要がある場合があります。これは税務上の落とし穴になりやすい点であり、詳細は次の節で説明します。

国税庁 タックスアンサー No.6603(2026-05-20取得)
消費税の事業廃止届・廃業時における事業用資産の課税関係について記載されています

事業用資産(家具・家電)の取扱い

民泊事業では、ベッド・布団・テレビ・調理器具・エアコンなど多くの家具・家電を「事業用資産」として購入・減価償却してきたケースがあります。廃業時にこれらをどう処理するかは、所得税および消費税の両方に影響します。

主な選択肢は以下の3パターンです。

  • 私的に転用(自宅で使う):廃業日時点の「帳簿価額」を確認し、消費税の課税事業者であれば「みなし譲渡」として申告処理が必要な場合があります。所得税上は家事転用として処理します。
  • 売却(フリマ・中古業者へ):売却益が生じる場合は譲渡所得または事業所得として計上します。個人の家財道具レベルの売却は非課税となるケースもありますが、事業用資産の場合は扱いが異なることがあります。
  • 廃棄・処分:廃棄の場合、残存帳簿価額を廃業年の経費(廃棄損)として計上できる場合があります。

これらの取扱いは購入価格・取得時期・償却方法・消費税区分などによって個別に異なります。廃業前後の資産リストを作成した上で、税理士に確認することを強くお勧めします。専門家への相談窓口については、当サイトの運営代行業者の選び方に民泊専門の税理士情報を掲載しています。

はじめ君

はじめ君

廃業届を税務署に出すのを忘れていても、確定申告をすれば問題ないでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

廃業届と確定申告は別の書類です。廃業届を提出せず確定申告のみというケースも散見されますが、廃業届は提出義務があります。なお廃業届が未提出でも翌年の確定申告は通常どおり必要です。税務署への相談を推奨します。

廃業後の物件の選択肢

民泊事業から撤退した後、物件の扱いをどうするかは廃業と並行して検討しておくことが重要です。選択肢は大きく「通常賃貸転用」「旅館業許可取得による通年運営への切替」「完全売却」の3パターンです。

通常の賃貸転用

住宅宿泊事業を廃止した後、同じ物件を通常の賃貸借契約(普通借家または定期借家)に転用する方法です。安定収入への切替という観点から、廃業後の選択肢として多くのオーナーが選んでいます。

注意点として、民泊仕様(ベッドが複数・シーツ類・調理器具充実等)にカスタマイズされていた物件をそのまま長期賃貸に出すと、入居希望者のニーズとのミスマッチが生じる場合があります。長期入居者向けに室内を整理し、不要な備品の処分・保管を行ってから入居者募集に入るのが現実的な手順です。

なお、マンションで民泊を行っていた場合(管理規約上の民泊可物件)、廃業後に賃貸転用することについて管理組合への報告・確認が必要なケースがあります。賃貸転用時の注意事項については宅地建物取引士または不動産管理会社に確認してください。

旅館業許可取得で通年運営へ切替

住宅宿泊事業の180日上限に限界を感じて廃業する場合、旅館業(簡易宿所)の許可を取得することで年間365日の宿泊受け入れが可能になります。旅館業許可は消防・建築基準法・旅館業法の各要件を満たす必要があり、物件の構造・設備の改修が必要になることもあります。

住宅宿泊事業を廃止してから旅館業許可を申請するまでの間は宿泊受け入れができませんので、廃止と申請のタイミングには注意が必要です。保健所での事前相談(無料)を活用し、物件がどの改修で許可基準を満たせるかを事前に確認してから廃止届を出す順序が現実的です。

完全売却

物件そのものを売却する場合は、民泊廃止届・税務クロージングを済ませてから売却活動に入るのが一般的です。廃業済みの物件として査定を受けると、買主側の民泊利用目的の期待値がある場合に「民泊可物件」として割増査定されることがあります一方、民泊設備(ベッド・ロック等)の撤去費用を売主負担とするかどうかは買主との交渉によります。

また、税務上は廃業後の物件売却による譲渡所得が発生する場合があります。短期(5年以内保有)と長期(5年超保有)で税率が異なるほか、自宅兼用だった場合の特別控除の適用可否も確認が必要です。売却前に税理士または不動産鑑定士への相談をお勧めします。

はじめ君

はじめ君

住宅宿泊事業を廃止してから旅館業許可に切り替える場合、空白期間が生じますよね?どのくらい見込むべきでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業許可の審査期間は自治体・物件条件によりますが、保健所での事前相談から許可証交付まで2〜6か月程度が目安です。廃止届を出す前に保健所で事前相談を済ませておくと空白期間を最小化できる場合があります。

廃業でよくある失敗・注意点

廃業手続きを進める中で、実務上よく見られる失敗パターンをまとめます。事前に把握しておくことでリスクを減らすことができます。

失敗例1|廃止届を提出せずにリスティングを止めた

OTAのリスティングを削除しただけで廃業が完了したと思い込んでいるケースです。行政上は届出が有効なままであり、自治体の定期報告義務(年間宿泊日数等)が発生し続ける可能性があります。廃止届の提出まで手続きを完了させてください。

失敗例2|管理業者の解約予告を忘れて違約金が発生

運営代行業者との契約に「解約予告は○○日前まで」という条項があるにもかかわらず、直前に解約を申し出て違約金を請求されるケースがあります。廃業を決めたら早い段階で契約書を確認し、解約予告期間を逆算した上で連絡してください。

失敗例3|廃業年の確定申告を「収入ゼロ」で申告

廃業した年の途中まで収入があったにもかかわらず、「どうせ廃業したから」と確定申告を未申告または収入ゼロで申告するケースがあります。廃業年の収入・経費は廃業日までの分を正確に計上する義務があります。無申告加算税・延滞税のリスクがあります。

失敗例4|事業用資産の「みなし譲渡」を未申告

消費税の課税事業者であったにもかかわらず、廃業時に家具・家電を私的に転用した際の「みなし譲渡」を未申告にしていたケースがあります。国税庁タックスアンサー No.6603 では、事業廃止時の資産課税について明示しています。税理士に相談の上、適切に処理してください。

失敗例5|複数のOTAに掲載していたが1サービスの削除を失念

Airbnbは削除したがBooking.comや楽天トラベルのリスティングが残ったまま、廃業後に新規予約が入ってしまうケースがあります。廃業前に掲載しているOTAを全てリスト化し、順番に非公開・削除処理を行ってください。

はじめ君

はじめ君

廃業の手続き全体を一人でやり切れるか不安です。専門家に頼める部分はありますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

行政書士は廃止届・廃業届の書類作成・提出代行が得意です。税務クロージングは税理士が担当します。管理業者の契約トラブルがあれば弁護士も選択肢です。「まず行政書士に相談」が入口として現実的です。

廃業後の物件活用を再検討したい方へ

廃業後に通常賃貸に転用した場合と旅館業に切り替えた場合の収支差を試算できます。民泊収支シミュレーターをご活用ください。

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まとめ|廃業チェックリスト(7ステップ)

民泊(住宅宿泊事業・旅館業)の廃業は、行政への届出・OTA削除・管理業者の契約解除・税務クロージングの4本柱を漏れなく処理することが求められます。以下の7ステップチェックリストを活用して、手続きの漏れを防いでください。

民泊廃業 Step3 廃業の税務クロージングを完了する
ステップ 内容 期限の目安 担当窓口
1 廃業日・残存予約を確定する 廃業意思決定直後 オーナー自身
2 OTA非公開化 → 新規予約ブロック 廃業日の設定直後 各OTA管理画面
3 住宅宿泊事業 廃止届(第三号様式)提出 廃業日から30日以内 都道府県担当課
4 旅館業廃業届(第4号様式)+ 許可書返納 廃業日から10日以内(自治体により異なる) 所轄保健所
5 管理業者との委託契約解除・精算 解約予告期間を確認の上、早期着手 管理業者 + 行政書士
6 税務署へ廃業届(個人事業・消費税)提出 廃業日から1か月以内 所轄税務署
7 廃業年の確定申告(事業資産の処理含む) 翌年2月16日〜3月15日 税理士 または 税務署

廃業は「終わりの手続き」ですが、進め方によって次のステップ(賃貸転用・旅館業切替・売却)への移行がスムーズになります。手続きの不安がある場合は、行政書士(届出・許認可)税理士(税務)に早い段階で相談することをお勧めします。専門家への相談窓口は当サイトの運営代行業者の選び方を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 住宅宿泊事業の廃止届の期限(30日以内)を過ぎてしまいました。今から提出できますか?
期限を過ぎた場合でも、できるだけ早く廃止届を提出してください。提出前に所轄の都道府県担当課に電話で状況を説明し、対応方法を確認することをお勧めします。期限超過の経緯・理由を明記した上で提出することが実務上の対応として現実的です。
Q2. 廃業等届出書(第三号様式)はどこからダウンロードできますか?
民泊制度ポータルサイト(mlit.go.jp/kankocho/minpaku/regulation.html)の「法令・様式等」ページから第三号様式をダウンロードできます。都道府県の担当窓口ページにも同様の様式が用意されていることがあります(2026-05-20時点)。
Q3. 旅館業の廃業届と住宅宿泊事業の廃止届の両方が必要な場合、どちらを先に出すべきですか?
提出先が異なる(旅館業は保健所、住宅宿泊事業は都道府県)ため、どちらを先に提出しても法令上の優先順位はありません。現実的には、それぞれの提出期限(旅館業は10日以内が多い、住宅宿泊事業は30日以内)を確認した上で、期限の短い旅館業廃業届を先に処理する流れになるケースが多いです。
Q4. 廃業年に赤字だった場合でも確定申告は必要ですか?
廃業年に事業所得が赤字であっても、他の所得(給与所得・不動産所得など)と損益通算できる場合や、翌年以降への繰越控除(青色申告の場合)を受けるために確定申告が必要なケースがあります。個別の状況によって対応が異なるため、税理士または所轄税務署への確認をお勧めします。
Q5. 廃業届を出した後、再度民泊を始めることはできますか?
廃止届を提出した後も、同じ物件で再び住宅宿泊事業を行う場合は改めて届出(第一号様式)を提出する必要があります。旅館業の場合も廃業後に再開するには新たに旅館業許可の申請が必要です。以前の届出・許可は廃業によって失効しています。
Q6. 管理業者に任せていた場合、廃業届はオーナーと管理業者どちらが提出しますか?
廃止届の提出義務は届出事業者(オーナー)にあります。管理業者が書類作成を補助することはありますが、最終的な提出責任はオーナーにあります。管理業者に代行を依頼する場合も、受理通知の確認はオーナー自身が行うことをお勧めします。
Q7. 廃業手続き全体を行政書士・税理士に任せる場合、費用の目安はどのくらいですか?
行政書士への廃止届代行は事務所によって異なりますが、住宅宿泊事業の廃止届単体であれば2〜5万円程度が参考値として挙げられることがあります。税理士への廃業年確定申告は事業規模・帳簿の状態によりますが5〜20万円程度の範囲が多いとされています。ただし料金は事務所によって大きく異なるため、複数の事務所に見積もりを取ることをお勧めします。

この記事のまとめ

民泊廃業は「廃業日の設定 → 行政届出(30日・10日以内)→ OTA完全削除 → 管理業者契約解除 → 税務クロージング(廃業年の確定申告)」の7ステップで完結します。届出件数の35.8%が廃止している現状では、廃業は珍しいことではなく、正規の手続きを踏めば問題なく撤退できます。ただし、期限のある手続き(廃止届30日・旅館業10日・税務署廃業届1か月)を見落とすとリスクが生じる可能性があるため、廃業の意思を固めた段階で行政書士・税理士への相談を検討してください。

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📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

⚠️ 本記事は2026年5月時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・税制の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

本記事は 2026-05-20 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。法律、条例、税制、各種許認可の手続きは、自治体・物件所在地によって取扱いが異なります。最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 廃止届・廃業手続き: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の都道府県担当課
  • 旅館業廃業届: 物件所在地の所轄保健所
  • 税務手続き: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 届出・許認可手続き: 民泊専門の行政書士

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