編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-02

民泊の営業を「いったん止めたい」「思い切って畳みたい」と考えた瞬間、まず頭に浮かぶのは「何か届け出が必要なのか」という疑問ではないでしょうか。結論から言えば、一時的に予約受付を止めるだけの休業なら行政への届出を要しない取扱いが一般的です。一方、事業そのものをなくす廃業(廃止届の提出)や、物件を売却しながら同時に撤退する不動産売却型の撤退は、それぞれ手続きの順番・タイミング・税務処理が大きく異なります。三つを混同したまま動き始めると、OTAのキャンセル対応・届出の漏れ・確定申告のミスが重なって、余計なトラブルを引き起こします。

本記事では、事業縮小・撤退を検討しているホスト向けに、①休業(一時停止)・②廃業・③売却同時撤退の三つのパターンを比較したうえで、それぞれに必要なOTA対応・行政手続き・税務処理の順番と注意点を整理します。廃止届の詳細な様式・提出手続きは別記事「民泊の廃業・廃止届の手順 2026年版」で詳しく解説していますので、本記事では「どのパターンを選ぶか」「何から始めるか」の判断軸に絞って説明します。

この記事でわかること

  • 休業・廃業・売却同時撤退の違いと選び方
  • 一時停止(休業)で届出が不要な条件と注意点
  • 住宅宿泊事業・旅館業それぞれの廃止届の概要
  • OTA掲載停止→行政手続き→税務処理の正しい順番
  • 休業後に再開する際の手続きと180日カウントの扱い
  • 売却と廃業を同時に進める場合の注意事項
  • 各フェーズで専門家に相談すべきタイミング
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Contents

【結論先出し】三つのパターンの違いと選び方

営業を止める方法は大きく三つに分かれます。自分が「何をどのくらいの期間止めたいのか」を先に確定してから動くのが最も効率的です。以下の比較表を参考に、自分の状況に当てはまるパターンを選んでください。

パターン 概要 行政届出 再開の容易さ 主な注意点
①休業(一時停止) OTAの予約受付を止めて一定期間営業を休む 原則不要(届出を要しない取扱いが一般的) 高い(届出なしで再開可) 180日カウント・条例の日数算定・保険の空白期間
②廃業(廃止届) 住宅宿泊事業・旅館業の届出または許可を抹消する 廃止届の提出が必要 低い(再開時は再届出または再許可) 事業廃止後の確定申告・資産の減価償却終了処理
③売却同時撤退 物件売却と廃業を並行して進める 廃止届の提出 + 所有権移転 再開なし(新オーナーが新規届出) 届出の抹消タイミング・家具設備の承継交渉・売却益の申告

判断のポイントは「再開する意思があるかどうか」と「物件を手放すかどうか」の二軸です。一時的な休養・リフォーム・長期不在なら①休業を選ぶのが現実的です。事業継続の見込みがなくなった場合は②廃業、物件ごと売却するなら③売却同時撤退が対応するパターンになります。

はじめ君

はじめ君

一時停止と廃業は何が一番違うんですか?再開できるかどうかでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

最大の違いは「届出・許可が存続するかどうか」です。休業はOTA側の操作だけで済み、届出はそのまま残ります。廃業は届出・許可を抹消するため、再開には新たな手続きが必要になります。

①休業・一時停止:届出なしでどこまで止められるか

住宅宿泊事業(民泊新法)の枠組みでは、届出住宅の一時的な予約停止は、行政への休業届を要しない取扱いが一般的とされています。ただし「届出不要」という文言は法令の条文に明示されているわけではなく、実務上の慣行として定着しているものです。念のため、物件が所在する都道府県・政令指定都市・中核市の所管部署に事前確認することをお勧めします。

!注意

自治体によっては、一定期間以上の休業について「変更届」や「経過報告」を求めるケースがあります。また、条例により「住居として使用しない日数」のカウント方法が異なる場合があるため、長期休業を予定している場合は所管窓口への確認が現実的な判断です。

休業中の180日カウントについて

住宅宿泊事業法では、届出住宅1件あたり年間180日を上限として民泊営業が認められています。OTAの予約をブロックして休業している期間は、宿泊者を受け入れていないため180日カウントには算入されません。この点は実務上広く認識されている扱いですが、各自治体の条例・規則でカウント方法が異なる可能性があります。

年間途中で休業を始めた場合、すでに消化した営業日数 + 再開後の営業日数の合算が180日を超えないよう管理することが必要です。再開後に「残り日数がほとんどない」という事態を避けるため、休業前に残日数を確認してから計画を立てるのがよいでしょう。

住宅宿泊事業法(e-Gov 法令検索)
(2026-06-02取得)

第3条にもとづく届出制度の仕組みと年間180日上限(第8条)の規定を参照。一時停止・休業に関する条文上の定義はなく、実務上の取扱いは所管自治体へ確認することが求められます。

休業中に注意すべき保険・管理の盲点

OTAを通じて契約している民泊向けの損害保険やホスト向け保険は、宿泊者受け入れがない期間でも保険料が発生し続ける場合があります。長期休業を予定しているなら、加入している保険の「空室・空家期間中の補償内容」を確認してください。一部の保険は無人期間が続くと免責事項が発動するケースがあります。

また、住宅宿泊管理業者に管理を委託している場合(家主不在型)、休業中の管理業務の範囲と費用が継続するかどうかを契約書で確認することが大切です。「休業中は管理委託料を減額できるか」という交渉をした方がよいケースもあります。管理業者との変更・解除手続きについては「住宅宿泊管理業者の変更・解除 実務ガイド 2026年版」も参考にしてください。

はじめ君

はじめ君

半年間Airbnbの予約をブロックしておくだけで休業できるんでしょうか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

OTA側の操作だけで実務上は対応できることが多いですが、長期休業の場合は自治体所管窓口へ一報入れておくと安心です。条例による日数ルールの違いがある自治体もあるため、事前確認が現実的な手順です。

②廃業:廃止届の概要と何をいつ止めるか

民泊事業を完全に畳む場合、届出または許可の種類によって廃止の手続きが異なります。以下の三つの制度類型ごとに、廃止手続きの担当窓口と概要を整理します。廃止届の様式・具体的な提出方法・書類の入手先については、「民泊の廃業・廃止届の手順 2026年版」をご覧ください。本記事では廃業のタイミングと順序の判断軸を中心に解説します。

制度類型 根拠法令 廃止手続きの担当窓口 廃止後の再開手続き
住宅宿泊事業(民泊新法) 住宅宿泊事業法 都道府県・政令市・中核市(住宅宿泊事業の所管課) 新規届出(再届出)
旅館業(簡易宿所等) 旅館業法 都道府県・保健所設置市・特別区の保健所 新規許可申請
国家戦略特区民泊 国家戦略特別区域法 特区を指定している市区町村 新規認定申請
国土交通省 民泊制度ポータルサイト
(2026-06-02取得)

住宅宿泊事業法に基づく届出・変更・廃止の手続き概要、各都道府県・指定都市の担当窓口一覧が掲載されています。廃止届の提出先を確認する際の一次情報として参照してください。

廃業時の実務チェックポイント

廃業を決めたら、行政への廃止届を提出する前に、以下の順番で準備を進めることが現実的です。

  1. 既存予約のキャンセル・チェックアウト完了:廃止届を提出する時点に予約が残っていると、「営業中に届出を抹消する」形になります。まずすべての予約をゲストと合意のうえでキャンセルするか、チェックアウトが完了するまで届出提出を待つのが原則です。
  2. OTA掲載停止:Airbnb・楽天・booking.comなどのリスティングを非公開または削除します。削除は取消不可のプラットフォームもあるため、「一時非公開」で対応できる場合は非公開に留める選択もあります。
  3. 廃止届の提出:所管窓口に廃止届を提出し、受理を確認します。
  4. 設備・家具の処分または継続利用の判断:廃業後に物件を普通賃貸や自己利用に切り替える場合、民泊用設備(スマートロック・防災用品・タオル類等)の処分または継続利用を決めます。
  5. 確定申告・税務クロージング:廃業年度の収入・経費を確定させ、廃業後の申告を行います。
厚生労働省 旅館業のページ
(2026-06-02取得)

旅館業法に基づく許可・廃業の手続き概要が掲載されています。旅館業(簡易宿所)として営業していた場合の廃業手続きは、都道府県・保健所設置市・特別区の保健所が窓口です。

廃業後の物件活用を考えておく

廃業した後、物件をどう使うかによって設備の処分方針が変わります。普通賃貸に切り替える場合、民泊用の家具・リネン類は引き払うことが多いですが、スマートロックや防火設備(消火器・煙感知器)は次の入居者にとっても有用な場合があります。また、自己居住に戻す場合は賃貸借契約や管理業者との契約を先行して解除する手続きが必要です。

はじめ君

はじめ君

廃止届を出した後に「やっぱり再開したい」となった場合、前の届出は使えないんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

廃止届を提出した時点で届出は抹消されます。再開する場合は新規届出または新規許可申請から始めることになります。休業と廃業の違いが、この点で大きく出ます。
minpaku-haishi-kyugyo-checklist-2026 Step2 順番を守る

OTA掲載停止の手順と注意事項

休業・廃業いずれの場合も、最初に行う作業はOTA(宿泊予約サイト)の掲載停止です。主要プラットフォームの対応方針を整理します。

プラットフォーム 一時停止(非公開) 廃業時の対応 レビュー・履歴の扱い
Airbnb リスティングを「非公開」に設定可(再公開可能) リスティングを削除(取消不可)またはアカウント削除 非公開中も過去レビューは保持。削除すると消去される
楽天トラベル 管理画面から掲載停止(一時停止)が可能 楽天トラベルのサポートへ連絡し掲載削除を申請 掲載削除後のレビュー扱いは楽天の規約に従う
Booking.com 物件を「非アクティブ」に設定可(再開可能) エクストラネットまたはSupport経由で閉鎖申請 閉鎖後も口コミは一定期間公開される場合あり

既存予約のキャンセル対応

廃業を急ぐ場合でも、予約済みのゲストへのキャンセル対応は誠実に行うことが大切です。OTAによっては「ホスト都合のキャンセル」が繰り返されると、ペナルティ・スーパーホスト資格剥奪・アカウント停止の対象になります。廃業が決まった段階で新規予約受付をまず止め、既存予約については個別にゲストへ事情を説明してキャンセルに合意してもらうのが現実的な手順です。

旅館業として許可を受けている場合、予約済みの宿泊を正当な理由なく拒否することは旅館業法上問題になる可能性があります。既存予約は可能な限り履行するか、ゲストの合意を得てキャンセルすることが重要です。

i補足

キャンセル対応ではゲストへの謝罪と払い戻しを迅速に行うことが基本です。行政手続きの日程に合わせて余裕を持ったキャンセル期限を設定することをお勧めします。

はじめ君

はじめ君

AirbnbとBooking.comを同時に停止したいのですが、先にどちらから作業すべきですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

予約の残数が多いプラットフォームから先に対応するのが現実的です。まず全プラットフォームで新規予約受付を止め(ブロック・非公開)、その後、既存予約を順番に処理する流れをお勧めします。

行政手続きのタイミングと順序

OTAの掲載停止と既存予約の処理が完了したら、次は行政への廃止届です。廃業のみならず、長期休業の場合でも所管窓口への確認連絡を入れておくと安心です。以下に、住宅宿泊事業と旅館業それぞれの廃止届の流れを概説します。

住宅宿泊事業(民泊新法)の廃止届

住宅宿泊事業を廃止する場合、届出事業者は都道府県知事等(政令市・中核市の場合は市長)に廃止届出書を提出する必要があります。廃止届の様式・提出先・添付書類は都道府県・市区町村によって異なりますので、民泊制度ポータルまたは所管窓口で最新の様式を入手してください。

廃止届を提出する前に宿泊者がいないことを確認する点は、どの自治体でも共通して求められる実務的な前提です。廃止届受理後は、民泊制度のオンライン届出システム(民泊ハウスマップ)からも届出情報が削除されます。

旅館業(簡易宿所)の廃業手続き

旅館業法の許可を得て営業していた場合、廃業時には保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)への廃業届が必要です。許可証の返納が求められるケースもあります。廃業届の書式は保健所窓口または自治体ウェブサイトから取得してください。

業務停止命令や行政指導を受けている状態での廃業は手続きが複雑になる場合があります。そのような状況では、行政書士に相談しながら進めることをお勧めします。行政指導と廃業の関係については「民泊 行政指導・業務停止命令 完全ガイド 2026年版」も参考にしてください。

!注意

住宅宿泊管理業者(委託先)を利用している場合、管理委託契約の解除手続きも廃止届と並行して進める必要があります。契約の解約予告期間(通常1〜3ヵ月)を考慮してスケジュールを組むことが現実的な対応です。

はじめ君

はじめ君

廃止届を出してから受理されるまでどのくらい日数がかかりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

自治体や提出方法(窓口・郵送・オンライン)によって異なりますが、受付から数日〜2週間程度が目安として挙げられることが多いです。繁忙期は時間がかかることもあるため、余裕を持ったスケジュールをお勧めします。

税務処理:廃業年度の申告と注意点

民泊事業を廃止した年の確定申告は、通常の年度末処理とは異なるポイントがいくつかあります。以下に、廃業年度の税務で特に確認が必要な事項を整理します。ただし、税務上の取扱いは個別の事情(規模・構造・資産の種類・所得区分等)によって異なるため、最終的な判断は顧問税理士または所轄税務署への確認をお勧めします。

廃業年度の収支の確定

廃業した年の民泊収入は、廃業届を提出した日までの宿泊収入が申告の対象になります。廃業後に返金・精算が発生した場合は、その金額の処理方法も確認が必要です。

減価償却資産の未償却残高

民泊用に取得した家具・家電・設備(エアコン・冷蔵庫・寝具・スマートロック等)は減価償却資産として計上している場合があります。廃業時点で償却が完了していない資産の未償却残高は、廃業年度の経費として一括償却できるケースがあります。ただし、資産を売却した場合は売却代金との差額が譲渡所得として扱われる可能性があるため、税理士への確認が現実的な対応です。

消費税の届出(課税事業者に該当する場合)

民泊収入が課税売上として消費税の納税義務者となっていた場合、廃業届と合わせて「事業廃止届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。インボイス(適格請求書)発行事業者として登録している場合は、登録の抹消手続きも必要になります。

青色申告の特典とその終了

青色申告で申告していた場合、廃業後の赤字(純損失)については一定期間の繰り越し控除が認められる場合があります。廃業翌年以降に他の収入から損失を控除できるかどうかは、所得の種類・規模・申告方法によって変わるため、廃業の翌年の申告前に確認しておくのが現実的です。

廃業・休業の手続きで不安があれば行政書士へ

民泊新法・旅館業法の廃止届の準備から管理業者との契約解除、税務の段取りまで、専門家に一括で相談できます。無料相談窓口を民泊学校の相談フォームからご利用ください。

行政書士に相談する

はじめ君

はじめ君

民泊を廃業した年の確定申告は、普通の年と何が違いますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

未償却残高の一括処理・消費税の廃業届・青色申告特典の扱いなど、通常年度にはない論点が重なります。税務処理の詳細は税理士への確認をお勧めします。

③売却と同時に進める撤退:手続きの順番が重要

物件を売却しながら民泊事業を廃業する「売却同時撤退」は、不動産取引と行政手続きの両方が重なるため、タイミングの管理がもっとも複雑なパターンです。主な論点を整理します。

廃止届と所有権移転の前後関係

住宅宿泊事業の届出は「届出者個人(または法人)」に紐づくものです。物件の所有権が新オーナーに移転しても、旧オーナーの届出は自動的に承継されません。したがって、売却後も旧オーナーが廃止届を提出する責任を持ちます。所有権移転後に廃止届を放置すると、届出上は事業継続中の状態になるため、トラブルの原因になります。

実務的には「売買契約の決済日(所有権移転日)の前後に廃止届を提出する」流れが一般的です。決済日当日または数日前に廃止届を提出し、新オーナーが新規届出を行う手順で進めることが多いとされています。ただし、スケジュールは不動産仲介業者・行政書士・自治体所管窓口と事前に確認して進めることをお勧めします。

家具・設備の売買への組み込み

民泊用家具・家電・スマートロック等を「物件付属品」として新オーナーに引き渡すか、それとも別途処分するかは売買契約時に明確にしておく必要があります。設備を一体として売却する場合は、減価償却済みの資産が「動産売買」として課税対象になる可能性があります。設備承継について検討する場合は税理士・不動産取引の専門家へ確認することが現実的です。

売却益(譲渡所得)の確定申告

民泊運営物件を売却した場合、不動産譲渡所得として確定申告が必要です。民泊用に使用していた期間の経費・減価償却の取扱いが譲渡益の計算に影響する場合があります。売却の年の申告は特に論点が多いため、早めに税理士へ相談することをお勧めします。

!注意

民泊物件を売却する際、物件にAirbnbの予約が入ったまま売買決済を迎えるケースがあります。このような場合、旧オーナー・新オーナーどちらがゲスト対応をするかを事前に売買契約書で明確化しておくことが重要です。

はじめ君

はじめ君

物件を売ったら民泊の届出は自動的に消えるんでしょうか?
民泊学校 編集部</a>” /></p>
<div class=民泊学校 編集部

自動消去はされません。旧オーナーが廃止届を提出する必要があります。所有権移転後に届出が残り続けると、旧オーナーの名義で事業継続状態になるため、速やかに廃止届を提出することが現実的な対応です。