編集: 民泊学校 編集部 | 公開日: 2026-05-21 | 最終更新日: 2026-05-21

民泊新法(住宅宿泊事業法)の年間180日制限を超えて物件を稼働させたい、あるいはゲストハウス・ドミトリー形式で複数人を同時に受け入れたい場合、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可取得が現実的な選択肢になります。しかし「許可制」という言葉だけを聞いて難しそうと感じ、先へ進めないオーナーも少なくありません。本記事では、旅館業法の定義から施設基準・申請書類・手数料・審査期間・令和5年改正の影響まで、実務に必要な情報を一本に整理しました。民泊新法との違いを表で比較しながら、「自分の物件でどちらを選ぶか」の判断軸も提示します。

この記事でわかること

  • 旅館業法「簡易宿所」の法的定義と旅館・ホテル・下宿との違い
  • 住宅宿泊事業法(民泊新法)との7軸比較と選択基準
  • 許可要件の施設基準(床面積・設備・消防)と欠格事由
  • 申請フロー・必要書類の全リスト(事前相談から許可書交付まで)
  • 申請手数料と審査期間の自治体別目安(京都市・福岡市の実例)
  • 令和5年12月旅館業法改正(カスハラ対応・名簿変更)の実務への影響
  • 民泊新法から旅館業法許可への移行手順と失敗例5件
旅館業 簡易宿所 Step1 旅館業法の要件確認と保健所への事前相談を行う

Contents

簡易宿所とは何か——旅館業法第2条の定義と種別の違い

旅館業法第2条は、「簡易宿所営業」を次のように定義しています。

「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの」(旅館業法第2条第4項)

旅館業法(厚生労働省)(2026-05-21取得)
第2条に各種別の定義、第3条に都道府県知事への許可申請義務が規定されている

「多数人で共用する構造及び設備を主とする」という点がポイントです。ドミトリー(相部屋)やゲストハウスのように、複数の宿泊者がリビング・浴室・トイレなどの共用スペースを共に使う業態が典型例として挙げられます。一方、旅館業法の種別は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種類に整理されており、それぞれ構造・設備基準が異なります。

種別 特徴 主な業態例
旅館・ホテル営業 洋室(ベッド)または和室の個室を主体とする施設。客室床面積など個別基準あり ビジネスホテル、旅館、リゾートホテル
簡易宿所営業 宿泊スペースを多数人で共用する構造が主体。個室型ゲストハウスも含む ゲストハウス、ドミトリー、民泊(旅館業許可型)、カプセルホテル
下宿営業 1か月以上の期間で反復継続して宿泊させる営業 下宿、マンスリー(1か月以上)

民泊として個人が物件を貸し出す場合、簡易宿所営業の許可を取得するケースが最も一般的です。個室タイプであっても、戸建て一棟を丸ごと貸し出すスタイルや、マンションの1室を独立して貸し出すスタイルは、設備構造の実態に合わせて簡易宿所として申請することが多いとされています(最終的な判断は管轄保健所にご確認ください)。

旅館業法第3条では、「営業しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市または特別区の長)の許可を受けなければならない」と規定されています。無許可で営業した場合の罰則は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金です(旅館業法第11条)。許可を取らずに宿泊料を受けて人を泊める行為は、行政指導の対象になるだけでなく刑事罰のリスクも伴います。

注意: 「日数や曜日を限定しても無許可で良い」という解釈は誤りです。厚生労働省のQ&Aでは「反復継続して行われ得る状態であれば許可が必要」と明示されています。短期間の運営であっても、宿泊料を受ける以上は許可取得が前提となります。

厚生労働省「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」(2026-05-21取得)
日数・曜日を限定しても反復継続性があれば許可が必要とされる旨が示されている

はじめ君

はじめ君

個人が1部屋だけ貸す場合でも、旅館業の許可が必要なんですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

宿泊料を受けて反復継続して人を泊める場合、部屋数や物件規模に関わらず許可が必要とされています。ただし1泊だけの単発の場合も「反復継続して行われ得る状態」と判断される可能性があるため、管轄保健所への事前相談が最初のステップです。

住宅宿泊事業法(民泊新法)との7軸比較——どちらを選ぶか

民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の簡易宿所は、同じ「物件を宿泊施設として活用する」行為でも、法的性質・運営条件・許認可コストの面で大きく異なります。自分の物件にどちらが合うかを判断するために、以下の比較表を活用してください。

民泊制度ポータルサイト(観光庁・国土交通省)(2026-05-21取得)
旅館業法と住宅宿泊事業法の制度概要と主要差異が整理されている

比較項目 旅館業法(簡易宿所) 住宅宿泊事業法(民泊新法)
手続き種別 許可制(都道府県知事) 届出制(都道府県知事)
営業日数制限 制限なし(年間365日稼働可) 年間180日以内(条例でさらに制限の場合あり)
住居専用地域 原則不可(用途地域制限あり) 可(ただし条例で制限可)
床面積基準 33㎡以上(最低基準)または3.3㎡×宿泊者数(10人未満の場合) 3.3㎡×宿泊者数(居室全体)
管理者の常駐 規定なし(ただし名簿管理義務あり) 住宅宿泊管理業者への委託または自己管理が必要
申請コスト目安 22,000〜52,800円以上(自治体により大幅に異なる) 届出手数料は原則無料(自治体により異なる場合あり)
主管省庁 厚生労働省(保健所経由) 国土交通省・厚生労働省・観光庁

この比較から、旅館業法の簡易宿所が有利なのは主に次のケースです。

  • 年間180日を超えて稼働させたい(宿泊特化型、ゲストハウス等)
  • ドミトリーや複数室を一体的に運営したい
  • 住居専用地域以外の物件(商業地域・準住居地域等)で最大稼働を目指す
  • 既存の旅館・宿泊施設に移行または統合する場合

一方、民泊新法の方が有利なのは「まずリスクを抑えて試してみたい」「住居専用地域内の物件を活用したい」「届出のハードルを低く始めたい」場合です。どちらが適しているかは物件の所在地の用途地域と将来的な運営規模の計画によって変わりますので、管轄保健所または行政書士への確認を推奨します。

はじめ君

はじめ君

旅館業許可をとれば年中365日営業できるんですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業法上の日数制限は設けられていないため、年間を通じた稼働が可能な構造です。ただし自治体の条例や建築基準法上の用途制限など、別の規制が重なる場合があります。まず用途地域の確認と、管轄保健所への事前相談が先決です。

許可取得の要件——施設基準・設備・欠格事由

施設基準(旅館業法施行令第1条)

簡易宿所の施設基準は旅館業法施行令第1条第2項に定められています。主要な基準を整理すると以下のとおりです。

旅館業法施行令(厚生労働省)(2026-05-21取得)
第1条第2項に簡易宿所の施設基準(床面積・設備等)が規定されている

基準項目 要件の内容 備考・注意点
客室延床面積 33㎡以上(宿泊者数が10人未満の場合は3.3㎡×宿泊者数以上) 全国一律の最低基準。自治体条例で上乗せの場合あり。管轄保健所に要確認
二段ベッドの上下間隔 おおむね1m以上 階層式寝台(二段ベッド)を使用する場合に適用
入浴設備 適当な入浴設備を有すること(近接する公衆浴場がある場合は設置免除可) 「近接する公衆浴場」の距離基準は自治体により異なる
洗面設備 適当な洗面設備を有すること 客室内設置または共用設置の可否は保健所判断
採光・換気 適当な採光・換気設備を有すること 建築基準法の採光規定との整合も確認が必要

33㎡は全国一律の最低基準であり、自治体の条例でさらに上乗せされているケースがあります。実際の申請にあたっては「管轄保健所への事前相談」で物件固有の適用基準を確認することが最優先です。図面を持参して相談する形が一般的です。

消防法令上の要件

旅館業の許可申請に際しては、保健所への書類提出だけでなく、所轄消防署による消防法令適合通知書の取得が必要です。消防設備の設置基準は建物の規模・用途・収容人員によって異なりますが、民泊として新たに旅館業許可を受ける際に一般的に求められる設備として以下が挙げられます(最終的な判断は所轄消防署に要確認)。

  • 自動火災報知設備(収容人員・延床面積に応じて義務付け)
  • 誘導灯・誘導標識
  • 消火器
  • 非常用照明(建築基準法上の要件)
  • 避難経路の確保(直通階段・非常口等)

消防設備の整備費用は物件の状態によって大きく変わります。既存の住宅をそのまま転用する場合、消防設備工事だけで数十万円規模になることもあります。申請前に所轄消防署へ事前相談し、必要な工事範囲を把握しておくと予算計画が立てやすくなります。

欠格事由

旅館業法第3条の2には、許可を受けられない「欠格事由」が定められています。主なものとして、精神機能の障害により旅館業を適正に営む能力を欠く者、旅館業法・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に違反して罰則を受けた者(執行後2年以内)、法人の場合はその役員が欠格事由に該当する場合などが挙げられます。法人で申請する際は役員全員の状況確認が必要です。

はじめ君

はじめ君

一戸建て30㎡の物件では、簡易宿所の許可は取れないということでしょうか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

施行令の最低基準は「宿泊者数を10人未満とする場合は3.3㎡×宿泊者数以上」でも可とされています。例えば宿泊者を最大8名とする場合、3.3㎡×8名=26.4㎡以上であれば施行令上はクリアできる構造です。ただし自治体条例での上乗せがあるため、管轄保健所への事前相談が欠かせません。

旅館業 簡易宿所 Step2 消防設備設置・建築確認・施設基準を整備する

申請フローと必要書類——事前相談から許可書交付まで

簡易宿所の申請は、書類を窓口に持ち込めば終わりではなく、複数のステップを踏む必要があります。京都市の申請フロー(全6段階)を参考に、一般的なプロセスを整理します。

京都市 簡易宿所営業の許可申請について(2026-05-21取得)
申請手数料52,800円、標準処理期間30日(閉庁日・書類補正期間除く)、6段階のフロー

ステップ 内容 目安期間・注意点
STEP 1 管轄保健所への事前相談 図面・物件情報を持参。施設基準への適合確認、消防要件の確認方法を把握する
STEP 2 計画公開(標識掲示) 申請前に20日以上の計画公開(標識掲示)が必要な自治体あり(京都市等)。近隣住民への説明期間
STEP 3 消防署への事前相談・消防法令適合通知書の取得 設備工事が必要な場合は事前に工事を完了させること。通知書の発行まで数週間かかることがある
STEP 4 許可申請書類一式を保健所に提出 書類不備があると補正期間が発生し、処理期間が延長される
STEP 5 保健所による実地調査 担当者が施設に来て施設基準への適合を確認。改善事項がある場合は是正後に再調査
STEP 6 許可書交付・営業開始 許可書受領後に営業開始。許可書は施設内に掲示(義務)

主な申請書類(個人申請の場合)

福岡市の申請要件を参考に、個人申請時の一般的な提出書類を以下に整理します。自治体によって様式や添付書類に差がある場合があるため、事前に管轄保健所のウェブサイトまたは窓口で最新の書類リストを確認してください。

福岡市 旅館業の営業について(2026-05-21取得)
申請手数料22,000円、審査期間14営業日程度、申請書類の詳細リストあり

書類名 内容・注意点
営業許可申請書 保健所の所定様式。申請者氏名・住所・施設の名称・所在地・客室数・定員等を記載
施設付近の見取り図 半径300m以内を含む地図(目印になる施設・道路等を明記)
各階平面図 縮尺・方位・各室の間取り・床面積・用途を明記。宿泊に使用する部屋を明示する
立面図 建物の外観を示す図面
消防法令適合通知書 所轄消防署が発行。事前に消防署で相談し、設備整備後に申請して取得
水質検査成績書 井戸水を使用する場合に必要。水道水のみの場合は不要なことが多い

法人申請の追加書類

法人として申請する場合は、上記に加えて以下の書類が一般的に必要です。

  • 登記事項証明書(法務局発行、発行から3か月以内のものが求められることが多い)
  • 定款の写し
  • 役員全員の名簿(氏名・住所を記載)
  • 役員の住民票(欠格事由確認のため求められる場合がある)
はじめ君

はじめ君

消防法令適合通知書はどこに申請すれば取れますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

物件所在地を管轄する「所轄消防署」に事前相談してください。必要な設備を確認し、工事・整備が完了した後に「消防法令適合通知書」の交付申請を行います。書類の名称や手続きは消防署によって若干異なるため、まず電話で確認するとスムーズです。

申請手数料と審査期間——自治体別比較と目安

旅館業法の許可申請にかかる手数料は自治体(都道府県・政令市・保健所設置市)によって大きく異なります。国税庁の登録免許税とは別の制度であり、保健所窓口に収める「審査手数料」です。代表的な2自治体の比較と、全体像をまとめます。

自治体 申請手数料(簡易宿所) 標準審査期間 備考
京都市 52,800円 30日(閉庁日・補正期間除く) 申請前に標識掲示20日以上が必要
福岡市 22,000円 14営業日程度 書類不備があると延長
その他自治体 5,000円〜80,000円超まで幅がある 14日〜60日程度 管轄保健所に必ず要確認

重要: 申請手数料は管轄保健所ごとに設定されており、同じ都道府県内でも政令市・中核市・一般市では異なる場合があります。ウェブ上で他自治体の事例を見て「○○円」と思い込んだまま準備を進めると、予算が大きく狂うことがあります。必ず申請予定の保健所に確認してください。

総コストで考えると、申請手数料のほかに消防設備工事費・図面作成費・行政書士報酬(依頼する場合)が加わります。物件の状態によって消防工事費は数万〜数十万円の幅があります。行政書士への依頼費用は地域や業務範囲によって異なりますが、書類作成から申請代行まで依頼する場合、実費込みで10〜30万円程度の事例が見られます(各行政書士事務所への直接確認を推奨します)。

審査期間の目安は「書類提出から許可書交付まで」で2週間〜2か月程度と幅があります。消防設備の整備や標識掲示期間(自治体によって申請前20日以上)を含めると、構想から許可取得まで3〜6か月見ておくのが現実的です。早期開業を目指す場合は、事前相談を早めに行い並行して消防要件の整理を進めることが有効です。

申請の複雑さや地域特有の要件が多い場合、民泊・旅館業に詳しい行政書士への相談も選択肢の一つです。専門家に依頼することで書類不備による審査遅延リスクを抑えられる場合があります。最終的な費用・期間の判断は必ず管轄保健所および専門家にご確認ください。

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はじめ君

はじめ君

行政書士に頼まないと申請は難しいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

自力申請も可能ですが、図面の作成・消防要件の確認・書類の揃え方など複数の専門知識が必要です。保健所での事前相談を丁寧に行えば自力でも対応できるケースがある一方、建築士や行政書士と連携する形が書類不備を防ぐ上で現実的な選択肢になることもあります。

令和5年12月旅館業法改正の実務への影響

令和5年(2023年)12月13日に旅館業法の改正が施行されました。既存の許可取得者にも影響がある主要4点を整理します。

旅館業法改正ポータル(厚生労働省)(2026-05-21取得)
令和5年12月13日施行の旅館業法改正内容(カスハラ対応・名簿変更・感染症対応・事業承継)

① カスタマーハラスメント(カスハラ)を宿泊拒否事由に追加

改正旅館業法では、カスタマーハラスメントを宿泊拒否事由として明文化しました。しかし重要な条件があります。

旅館業法改正 宿泊拒否制限の見直し(厚生労働省)(2026-05-21取得)
カスハラ拒否は「繰り返し行われること」が要件。1回の行為だけでは拒否できないケースがある

実務上の注意点: カスハラを理由に宿泊を拒否できるのは「その行為が繰り返し行われること」が要件とされています。1回の不当な要求だけでは拒否事由として成立しないケースがあるという点が、当初の報道と異なる実態です。また、障害があることを理由とした宿泊拒否は旅館業法違反であり、令和6年4月から事業者への合理的配慮提供が義務化されています。宿泊拒否の判断には慎重な対応が求められます。

② 宿泊者名簿の記載事項変更

宿泊者名簿に記載する項目が見直されました。従来の「職業」欄が削除され、「連絡先(電話番号等)」が新たに追加されました。旅館業法第6条に基づく宿泊者名簿の管理は許可取得後の継続的な義務であり、様式が変わった点を運営の実務に反映させる必要があります。

③ 感染症対応の明確化

従来の「伝染性の疾病」という文言が「特定感染症の患者等」に変更されました。感染症法上の特定感染症に該当する患者への対応(宿泊拒否事由の適用範囲・手続き)が整理されました。

④ 事業譲渡手続きの整備(地位承継)

事業譲渡・相続等により旅館業の経営主体が変わる場合、改正前は新規許可申請が必要でした。改正後は一定の手続きを経ることで、新たな許可を取得せずに地位承継が可能となりました。物件の売却・事業承継・相続が生じた際の手続きが大幅に簡略化された点は、実務上のメリットとして注目されています。詳細手続きは管轄保健所に確認してください。

はじめ君

はじめ君

カスハラのゲストを断れると聞いたのですが、どんな場合でも断れるのですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

「繰り返し行われること」が要件です。一度の不当な要求だけでは旅館業法上の拒否事由として認められないケースもあります。対応に迷う場合は弁護士または保健所へ相談することを推奨します。障害を理由にした拒否は法律違反になる点も必ず押さえてください。

住居専用地域・用途地域の確認方法

旅館業法の許可を取得するうえで、物件所在地の用途地域の確認は最初のステップです。建築基準法の用途地域制限によって、旅館業(簡易宿所)の営業ができない地域があるからです。

用途地域 旅館業(簡易宿所)の可否 民泊新法の可否(参考)
第一種低層住居専用地域 原則不可 届出可(条例制限あり)
第二種低層住居専用地域 原則不可 届出可(条例制限あり)
第一種中高層住居専用地域 原則不可 届出可(条例制限あり)
第二種中高層住居専用地域 原則不可 届出可(条例制限あり)
第一種住居地域 床面積3,000㎡以下なら可(客室数・規模による) 届出可(条例制限あり)
準住居地域・近隣商業地域・商業地域 届出可
工業地域・工業専用地域 原則不可 原則不可

用途地域の確認は、物件所在の市区町村の都市計画課または建築指導課への問い合わせ、または各自治体が公開している「都市計画図(用途地域マップ)」のオンライン閲覧で確認できます。多くの市区町村がウェブ上でGISマップを公開しています。

住居専用地域内の物件の場合、旅館業法の許可を取得することが現状の制度では難しい状況です。民泊新法の届出や、特区民泊(国家戦略特別区域法に基づく認定)など別の枠組みを検討することになります。特区民泊が活用できる地域は大阪市・大田区など限られているため、まず用途地域と特区エリアの両方を確認してから方針を決めることが現実的です。

はじめ君

はじめ君

用途地域の調べ方がわかりません。どこを見ればよいですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

「○○市 用途地域マップ」と検索するとGIS地図を公開している自治体が多くあります。また市区町村の都市計画課・建築指導課に電話して住所を伝えると、用途地域を教えてもらえます。当サイトの無料診断ツールでも確認の手がかりになります。

民泊新法届出から旅館業法許可へ移行する場合の手順

住宅宿泊事業法の届出で運営を始めたが「180日制限に引っかかる」「フル稼働したい」という理由で旅館業法許可に移行したいケースがあります。この場合の手順と注意点を整理します。

移行前の確認事項

  • 用途地域の再確認: 住居専用地域の物件は民泊新法では届出可能でも、旅館業法では許可が下りない可能性があります
  • 建築確認上の用途変更の要否: 住宅から宿泊施設(特殊建築物)への用途変更が必要になる場合があります。延床面積や建物の規模によって建築確認申請が必要かどうかが変わります。管轄の建築指導課に事前確認を推奨します
  • 消防設備の適合確認: 住宅として使用していた物件に旅館業法水準の消防設備が整っているかを消防署で確認する
  • 既存の民泊新法届出の廃業届: 旅館業許可取得後は住宅宿泊事業法の届出は不要となります。廃業届を管轄の都道府県へ提出する必要があります

移行の一般的なフロー

移行の一般的な流れは次のとおりです。実際の手順は物件の状況・所在自治体によって異なるため、管轄保健所および建築指導課への事前相談が出発点になります。

  1. 用途地域の確認(都市計画課)
  2. 保健所への事前相談(施設基準・書類の確認)
  3. 消防署への事前相談(消防法令適合に必要な工事の確認)
  4. 建築指導課への用途変更要否の確認
  5. 消防設備工事・建築工事(必要な場合)
  6. 必要書類の収集・作成
  7. 旅館業許可申請書の提出
  8. 実地調査・審査
  9. 旅館業許可取得
  10. 住宅宿泊事業法の廃業届の提出
はじめ君

はじめ君

民泊新法で届出している間は、旅館業許可と並行できますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

同一物件で両方の届出・許可を同時に保持する状況は、実務上は想定されていません。旅館業許可が下りた段階で住宅宿泊事業法の廃業届を提出するのが基本的な流れです。審査中の期間については管轄保健所に確認してください。

よくある失敗例・審査NG事例5件

旅館業法の許可申請では、以下のような理由で審査が通らない・大幅に遅延するケースが報告されています。事前に把握しておくことでリスクを大幅に減らすことができます。

失敗例 1: 用途地域の確認をせずに設備投資してしまった

住居専用地域内の物件にリノベーション工事・消防設備工事を実施した後に保健所相談したところ、旅館業法上の許可が下りないことが判明。民泊新法の届出に切り替えざるを得なくなり、投資回収が遅れた事例。用途地域の確認は工事着手前の最初のステップです。

失敗例 2: 床面積が33㎡に不足していた(計算方法のミス)

壁芯面積と内法面積の違い、バルコニー・収納の算入可否など、「客室延床面積」の計算方法を誤って33㎡をクリアしていると思い込んでいたケース。実地調査で不足が判明し、設備変更が必要になった。床面積の計算方法は保健所で事前に確認しておくことを推奨します。

失敗例 3: 消防署との調整を後回しにした

保健所への書類を先に提出したが、消防法令適合通知書の取得が遅れ、審査が長期化した事例。消防設備の工事に時間がかかる場合、消防署との調整は最初の段階から並行して進めることが重要です。

失敗例 4: 管理規約で旅館業営業が禁止されていた(区分所有マンション)

区分所有マンションの場合、旅館業法の許可が下りても管理組合の管理規約で旅館業の営業を禁じているケースがあります。許可申請の前に管理規約の確認が必要です。規約改正には区分所有者の4分の3以上の同意が必要で、現実的に難しい場合が多いとされています。

失敗例 5: 自治体の計画公開(標識掲示)の期間を把握していなかった

京都市など一部の自治体では、許可申請前に「計画公開(標識掲示を一定期間行うこと)」が義務付けられています。この期間を見落として申請を進めようとし、保健所から申請を受け付けてもらえなかった事例。各自治体固有の追加要件は必ず事前相談で確認してください。

はじめ君

はじめ君

結局、何を一番最初に確認すれば失敗を防げますか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

「用途地域の確認」と「管轄保健所への事前相談」この順が現実的です。工事や費用をかける前に「この物件で旅館業許可が取れるか」を行政に確認することが、最大の失敗予防になります。

許可取得後のランニングコストと継続的な運営義務

旅館業の許可取得はゴールではなく、継続的な義務が発生します。主なランニングコストと運営上の義務を整理します。

継続的な運営義務(主要事項)

義務事項 内容 違反した場合
宿泊者名簿の作成・保管 氏名・住所・職業(削除)・連絡先・宿泊日を記録。3年間保存が必要 行政指導・処分の対象
施設内の許可証掲示 許可書を施設内の見やすい場所に掲示する義務 違反として指摘される
消防設備の定期点検 消防法に基づく定期点検(6か月ごとまたは年1回)。結果報告書を消防署へ提出 消防法違反として指導・罰則の対象になる可能性あり
衛生管理 旅館業法に基づく衛生基準(寝具・清掃・換気等)の維持 改善勧告・許可取消の対象になる可能性あり
変更事項の届出 施設の名称・構造・設備・定員等を変更する場合は事前または事後に保健所へ届出が必要 無断変更は旅館業法違反の対象

主なランニングコストの目安

  • 消防設備点検費用: 年間2〜5万円程度(規模・設備内容による。具体額は点検業者に確認)
  • 清掃費用: 稼働回転数に応じて変動。清掃代行業者を利用する場合は1回あたりの費用を試算する
  • OTA手数料: Airbnb等の場合は宿泊売上の3〜15%程度(各プラットフォームの最新料率を確認)
  • 旅館業保険: 宿泊施設向けの賠償責任保険への加入が実務上推奨される。保険料は物件規模・補償内容による
  • 税務申告: 宿泊業収入は事業所得として申告が必要。帳簿管理の負担が個人では発生する(税理士相談を推奨)

旅館業法の許可取得後は、民泊新法よりも運営上の義務が多くなる面があります。一方で日数制限がないため、稼働率を高められれば収益性は向上します。収支の見通しを立てる際は税理士への相談も含めて実際の数字を確認することを推奨します。

はじめ君

はじめ君

許可後も定期的に保健所の検査が来るのですか?

民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

保健所による立入検査は随時行われる可能性があります。頻度は自治体によって異なりますが、苦情や通報があった場合には優先的に調査が入ることがあります。日常的な衛生管理・名簿管理を適切に行っておくことが重要です。

旅館業 簡易宿所 Step3 保健所検査・許可証取得・開業届と法令遵守管理を完了させる

よくある質問(FAQ)

Q1. 旅館業法の簡易宿所と民泊新法の届出、どちらが開業しやすいですか?

手続きの敷居という点では、民泊新法の届出制の方が書類量が少なく、手数料も低い傾向にあります。ただし年間180日の日数制限があるため、フル稼働を目指す物件には向いていません。住居専用地域内の物件は旅館業法の許可が下りない可能性があるため、まず用途地域の確認と保健所への事前相談が出発点になります。「どちらが合っているか」は物件の所在地と運営目標によって変わります。

Q2. 申請から許可まで何か月かかりますか?

審査期間そのものは自治体によって14日〜30日程度とされていますが、消防設備の整備・計画公開期間(自治体によっては20日以上)・書類不備による補正期間を含めると、構想から許可取得まで3〜6か月程度見ておくことが現実的です。事前相談を早期に行い、消防署との調整を並行して進めることで短縮できる場合があります。

Q3. マンションの1室でも旅館業許可は取れますか?

旅館業法上の施設基準を満たし、用途地域の制限をクリアしている場合、区分所有マンションの1室でも許可申請は可能です。ただし管理組合の管理規約で旅館業の営業を禁じている物件が多く、規約の確認が先決です。規約改正には区分所有者の4分の3以上の同意が必要で、現実的に難しいケースが多いとされています。

Q4. 旅館業許可を取れば宿泊税の納付義務はありますか?

宿泊税(宿泊者から徴収して自治体に納付する税)を導入している自治体では、旅館業法の許可を受けた事業者も宿泊税の徴収・納付義務を負う場合があります。東京都・大阪府・京都市・金沢市など一部の自治体が宿泊税を導入しています。詳細は物件所在の自治体の税務担当課または税理士にご確認ください。

Q5. 法人名義で申請する場合、個人申請と何が違いますか?

申請窓口や施設基準は個人申請と同じですが、法人申請では追加書類(登記事項証明書・定款・役員名簿等)が必要になります。また役員全員が欠格事由に該当しないことが要件となります。法人としての信用が高い一方で、書類準備の手間は個人申請より多くなる傾向があります。

Q6. 無許可で運営してしまっていた場合、自主申告・申請すれば許可を取れますか?

無許可営業は旅館業法第11条の罰則(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象です。まず営業を停止した上で、管轄保健所へ相談することが先決です。行政書士や弁護士に相談しながら正規の申請手続きを進めることを推奨します。自主的な対応が最終的な法的リスクを軽減する可能性があります。詳細は弁護士にご相談ください。

Q7. 令和5年改正で許可の有効期限や更新制度は変わりましたか?

旅館業法の許可は現状「期間の定めのない許可」であり、更新制度は設けられていません(2026年5月時点)。ただし許可後も施設の変更・廃業などの届出義務はあります。令和5年改正では事業承継の手続き整備が主な変更点であり、許可の有効期限・更新制度の新設は改正内容に含まれていません。制度変更があった場合は厚生労働省の公式ページで確認してください。

まとめ——簡易宿所許可取得の優先順序

旅館業法に基づく簡易宿所の許可取得は、民泊新法の180日制限を超えてフル稼働したいオーナーにとって有力な選択肢です。一方で、許可制であるがゆえに施設基準・用途地域・消防要件など複数のハードルが存在します。

現実的な進め方としては「①用途地域の確認 → ②管轄保健所への事前相談 → ③消防署との調整 → ④書類収集・工事 → ⑤申請・審査 → ⑥許可取得」という順が有効です。特に用途地域と保健所への事前相談を工事・投資の前に行うことが、費用のムダを防ぐ最大のポイントになります。

令和5年12月の改正では、カスハラへの対応・名簿の記載事項・事業承継手続きが整備されました。既存の許可取得者も宿泊者名簿の様式が変わっているため、現行の運営に反映されているか確認してください。

申請手数料・審査期間・施設基準の上乗せは自治体によって大きく異なります。最終的な判断は必ず物件所在地の管轄保健所・所轄消防署・必要に応じて行政書士や税理士にご確認ください。

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引用・参考公式ソース一覧

本記事は以下の公式ソース・一次情報をもとに執筆しています(すべて2026-05-21取得)。

  1. 旅館業法(厚生労働省) — 第2条の定義・第3条の許可申請義務・第11条の罰則
  2. 旅館業法施行令(厚生労働省) — 第1条第2項の施設基準(床面積・設備)
  3. 旅館業法改正ポータル(厚生労働省) — 令和5年12月13日施行の改正4点
  4. 旅館業法改正 宿泊拒否制限の見直し(厚生労働省) — カスハラ拒否の要件・障害者差別解消法との関係
  5. 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A(厚生労働省) — 反復継続性の考え方・申請窓口
  6. 民泊制度ポータルサイト(観光庁・国土交通省) — 旅館業法と住宅宿泊事業法の3制度比較
  7. 京都市 簡易宿所営業の許可申請について(京都市) — 申請手数料52,800円・審査期間30日・6段階フロー
  8. 旅館業の営業について(福岡市) — 申請手数料22,000円・審査期間14営業日・必要書類


本記事は2026年5月時点の制度を解説しています。旅館業法・住宅宿泊事業法・消防法の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

ご確認ください(民泊学校 編集部より)

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  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

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