編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-05-27

民泊を始めたものの、年齢・本業の多忙化・他事業への集中などを理由に「そろそろやめたい」「別の人に引き継いでもらいたい」「物件ごと売りたい」と考えるホストは少なくありません。しかし、一口に「やめる・譲る・売る」と言っても、住宅宿泊事業法上の届出、旅館業許可の承継、事業価値の評価、税務処理まで、複数の制度が絡み合っています。手順を誤ると許可が失効する、売却後も申告が必要になる、買い手が見つからないまま営業継続義務だけが残る、といった事態に陥ることがあります。本記事では、民泊の出口戦略を「廃業」「個人承継」「第三者承継・M&A」の3パターンに整理し、それぞれの手順・費用・税務・専門家選定まで実務目線で解説します。

この記事でわかること

  • 住宅宿泊事業の届出は「譲渡」できない理由と廃業との違い
  • 旅館業許可を相続・事業譲渡で承継する手続きの流れ(2023年法改正対応)
  • 株式譲渡と事業譲渡、どちらが売り手・買い手に有利かの判断軸
  • 民泊事業の売却価格を試算するEBITDA倍率と物件価値の合算方法
  • 売却前に整えるべき書類リストと買い手が重視する資料
  • 譲渡所得・消費税の基本的な課税ルールと税理士確認が必要なポイント
  • 行政書士・税理士・M&A仲介・宅建士の役割分担と探し方

Contents

出口戦略は3パターン:廃業・個人承継・法人売却M&Aの違いを理解する

民泊事業の「出口」は大きく3つのパターンに分類できます。読者の状況によって最適解は異なりますが、まずこの3分類を頭に入れておくことが、次のステップを考える出発点になります。

民泊の出口戦略を廃業、個人承継、法人売却M&Aの3パターンで比較した図
廃業、個人承継、法人売却M&Aは、制度手続き・税務・引継ぎ資料を分けて比較します。
パターン 概要 対象制度 主な手続き 事業価値の移転
①廃業 運営を完全停止し、届出または許可を失効させる 住宅宿泊事業法 / 旅館業法 廃業等届出書(第三号様式)または廃止の届出 なし(物件は所有継続または別途売却)
②個人承継 親族や後継者に事業を引き継ぐ(相続・贈与) 旅館業法(相続承認) / 住宅宿泊事業法(再届出) 相続承認申請(旅館業) / 廃業+新規届出(住宅宿泊) 事業の継続性を維持しつつ経営権を移転
③第三者承継・M&A 外部の買い手に事業または法人を売却する 中小M&Aガイドライン / 旅館業法改正(事業譲渡承認) 株式譲渡または事業譲渡 + 旅館業許可の承継手続き 営業権・OTAアカウント・物件を含む包括譲渡が理想

住宅宿泊事業と旅館業では、承継のルールが根本的に異なります。旅館業は2023年12月の法改正により事業譲渡でも許可承継が可能になりましたが、住宅宿泊事業の届出は「届出者本人」に紐づく行政上の届出であるため、第三者への名義変更という概念が制度上存在しません。この違いを理解せずに「買い手が見つかったので届出を名義変更すればいい」と思い込むと、手続きの詰まりが生じます。最終的なご判断は、必ず自治体の民泊担当窓口・行政書士にご確認ください。

民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業法(関連法令・様式集)
(2026-05-27取得)

廃業等届出書(第三号様式)など届出変更・廃業に関する様式一覧が掲載。届出事項変更届出書(第二号様式)も確認できる。

!注意

住宅宿泊事業の届出は「届出者本人」の届出であり、第三者への名義変更(届出の譲渡)は制度上認められていません。買い手が事業を引き継ぐ場合は、現届出者が廃業届を提出し、買い手が新規届出を行う形になります。具体的な手順は各自治体の住宅宿泊事業担当窓口にご確認ください。

はじめ君

はじめ君

廃業・承継・M&Aって、どれが自分に向いているかどうやって判断すればいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

「事業を続けてほしい人がいるか」と「収益を回収したいか」の2軸で考えるのが現実的です。後継者がいて引き継いでほしいなら個人承継、事業価値をキャッシュで回収したいなら第三者承継・M&Aが候補になります。どちらにも当てはまらない場合、廃業が最もシンプルな選択肢です。

廃業届出と承継の違い:住宅宿泊事業と旅館業で制度が異なる

出口戦略を検討するにあたって、まず「自分が運営しているのは住宅宿泊事業(民泊届出)なのか、それとも旅館業(簡易宿所・旅館・ホテル)なのか」を確認することが不可欠です。両者では承継のルールが大きく異なるからです。

住宅宿泊事業法の届出と廃業

住宅宿泊事業の届出は、都道府県知事(または特定の政令指定都市の市長)に対して「この物件で民泊を営む」と届け出る行為です。届出者の氏名・住所・物件所在地が記載された届出であり、いわばその人物の「民泊許可証」に相当します。

重要なのは、この届出が「届出者個人(または法人)」に帰属するという点です。旅館業の許可のように「第三者への承継」という手続きが住宅宿泊事業法には設けられていないため、事業を第三者に引き継ぐ場合には次の手順を踏む必要があります。

  1. 現届出者が廃業等届出書(第三号様式)を提出して届出を廃止する
  2. 買い手(引き継ぎ者)が改めて同じ物件で新規届出を行う
  3. 新規届出の審査期間(標準処理期間:各自治体で異なるが概ね30日程度)の空白が生じる

この「空白期間」に既存予約のゲストが残っている場合は、キャンセルまたは引き継ぎ者への対応移管が必要になります。売却交渉と並行して、OTAのブッキング状況を早期に整理しておくことが実務上の鍵です。

i補足

届出には管理業者の変更も含む「届出事項変更届出書(第二号様式)」が使われます。売却後に物件所有者が変わる場合は、変更届と廃業届のどちらが先になるかを自治体担当者に確認してください。変更届の受理後に廃業届を出す流れが一般的とされています。

旅館業法の許可承継(2023年12月改正後)

旅館業法は2023年(令和5年)12月13日の改正施行により、事業譲渡においても「新たな許可の取得を行うことなく、あらかじめ承認手続を行うことにより、営業者の地位を承継できる」制度が設けられました。改正前は合併・分割・相続に限って承継が認められていましたが、改正後は事業譲渡でも同様の手続きが可能になっています。

旅館業許可の地位承継が認められているケースを整理します。

承継の種類 根拠 手続き 条件・注意点
相続 旅館業法 第3条の2 死亡後60日以内に都道府県知事へ相続承認申請 60日を過ぎると承継できず、新規許可が必要になる場合がある
合併 旅館業法 第3条の3 合併前に承認申請、知事が審査 消滅会社の許可を存続会社が引き継ぐ
分割 旅館業法 第3条の3 分割前に承認申請 分割により事業が移転する場合に適用
事業譲渡(2023年改正) 旅館業法 第3条の3(改正) 譲渡前に都道府県知事へ承認申請、承認後に地位承継 承継後6か月間、知事等が少なくとも1回の調査を実施
厚生労働省 旅館業法改正(令和5年12月13日施行)
(2026-05-27取得)

事業譲渡による地位承継の新設を含む旅館業法改正の概要。承継後6か月間の調査義務についても記載されている。

「旅館業許可を持つ民泊(簡易宿所)を第三者に売りたい」という場合は、改正旅館業法の事業譲渡承認手続きを利用することで、買い手が1から許可取得をしなくて済みます。これは民泊M&Aにおける大きなメリットです。ただし、都道府県の審査期間や、承継後の調査義務についても事前に確認した上で売却スケジュールを組む必要があります。行政書士(旅館業に詳しい専門家)へのご相談を推奨します。

はじめ君

はじめ君

住宅宿泊事業と旅館業で承継の仕組みがこんなに違うとは知りませんでした。どちらも「届出や許可を引き継げる」と思っていました。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業は2023年改正で事業譲渡でも承継可能になりましたが、住宅宿泊事業は「再届出」が原則です。この違いが売却スキームに直結するため、自分の運営形態を確認することが第一歩です。

個人承継パターン:相続・贈与・親族内承継の実務

家族や親族への事業承継は、第三者への売却よりも手続きが複雑に見えますが、事業の継続性を保ちやすいという特徴があります。民泊の個人承継では、主に「相続(死亡)」「生前贈与」「親族内売買」の3つのシナリオが考えられます。

旅館業許可の相続承認申請

旅館業を営む者が死亡した場合、相続人が引き続き旅館業を営もうとするときは、旅館業法第3条の2の規定に基づき、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事に相続承認申請を行う必要があります。この60日という期限は非常に重要で、期限を過ぎると相続による承継が認められず、相続人が一から許可申請をやり直す必要が生じる可能性があります(各自治体の判断による部分があるため、必ず所管保健所にご確認ください)。

また、相続人が旅館業法上の欠格要件(精神機能の障害により旅館業を適正に行うために必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者、など)に該当する場合は承認されないため、相続開始後すぐに相続人の資格を確認することが実務上の優先事項です。

住宅宿泊事業の相続時の対応

住宅宿泊事業の届出者が死亡した場合、届出は失効します。相続人が同じ物件で民泊を続けたい場合は、相続人名義で新規届出を行う必要があります。この間、既存の予約への対応は法的グレーゾーンが生じるため、OTAとの個別確認、および自治体への事前相談を行うことが現実的なアプローチです。

生前贈与・親族内売買と税務上の注意

経営者が存命のうちに後継者(子・配偶者等)に事業を引き継ぐ場合、物件(不動産)の移転が伴う場合は不動産取得税・登録免許税・贈与税または譲渡所得税がかかります。事業用資産の贈与には「事業承継税制(贈与税の納税猶予・免除)」が中小企業向けに設けられていますが、民泊事業が制度の対象となるかどうかは事業形態(法人か個人か、事業規模など)によります。詳細は税理士への確認が不可欠です。

!注意

事業承継税制(中小企業庁)は主として「中小企業者」の株式等を対象としており、個人事業主の民泊届出者への適用は制度設計上限定的です。また、贈与税の計算は受贈者の所得・他の財産との関係で大きく変わるため、専門家(税理士・行政書士)への確認なしに手続きを進めないことを推奨します。

中小企業庁 事業承継ガイドライン(第3版)令和4年3月改訂
(2026-05-27取得)

親族内承継・第三者承継・M&Aの3形態を網羅した中小企業庁の公式ガイドライン。事業承継税制・株式移転・M&Aマッチングの活用まで解説されている。

はじめ君

はじめ君

旅館業の相続では60日以内に手続きが必要とのことですが、遺産整理が忙しい時期にそんな期限があるのですね。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業の相続は期限が厳しく、事業継続の意思があれば死亡後できるだけ早く所管保健所と行政書士に相談することを推奨します。遺産整理と並行して動く必要があるため、事前に「承継計画書」を家族間で共有しておくと安心です。

第三者承継・M&A:株式譲渡と事業譲渡の選択

民泊事業を外部の第三者(他のホスト・不動産会社・民泊運営代行業者・宿泊業参入を目指す投資家など)に売却する「第三者承継」は、近年の民泊市場の成熟とともに現実的な選択肢として注目されています。特に、旅館業許可を取得した物件は2023年改正以降、許可ごと譲渡できるため、買い手にとっても魅力的です。

株式譲渡と事業譲渡の違い

法人(株式会社・合同会社)で民泊を運営している場合、売却の方法として「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つが主な選択肢となります。それぞれの特徴を整理します。

比較項目 株式譲渡 事業譲渡
手続きの概要 会社の株式を売り手から買い手に移転する 事業(資産・契約・許可)を個別に買い手に移転する
許可・届出の扱い 会社ごと移転するため、許可は原則そのまま(旅館業は株主変更でも許可失効しない場合が多いが要確認) 旅館業は2023年改正で事業譲渡承認申請による承継が可能。住宅宿泊は廃業+再届出
OTAアカウントの扱い 法人のアカウントはそのまま継続できる場合が多い(各OTAの利用規約確認が必要) 個人アカウントまたは法人変更が必要になる場合がある(OTAに事前確認必須)
簿外債務のリスク 買い手が会社ごと引き継ぐため、隠れた債務も承継するリスクがある 引き継ぐ資産を個別特定できるため、簿外債務リスクを限定しやすい
税務(売り手) 株式の譲渡所得として申告分離課税(税率約20.315%) 資産種別により事業所得または譲渡所得として総合課税または分離課税
買い手の印象 シンプルで手続きが少ない。許可承継コストが低い 必要な資産だけ取得できる。ただし手続きが多い

一般的に、民泊事業のM&Aにおいては「株式譲渡」が選ばれるケースが多い傾向があります。手続きが比較的シンプルで、旅館業許可・OTAアカウント・既存予約をまとめて引き継ぎやすいからです。ただし、株式譲渡では買い手が「会社の過去のリスク(未払い税金・訴訟リスク・近隣トラブルの履歴)」も引き継ぐため、デューデリジェンス(事前調査)が重要になります。

民泊M&Aで買い手はどこにいるのか

民泊のM&A案件を扱う仲介業者は、一般的なM&A仲介(バトンズ、トランビ、M&AクラウドなどのWEBマッチング型)から、不動産専門のM&A会社、民泊・宿泊業特化の仲介者まで多様です。中小企業庁は「M&A支援機関登録制度」を設けており、登録を受けた仲介業者・FAが公開されています。売却額が小さい場合はWEBマッチング型で費用を抑え、物件価値が大きい場合は専門家(M&Aアドバイザー)を使う選択が現実的です。

中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)令和6年8月改訂
(2026-05-27取得)

第三者への円滑な事業引継ぎに向けて、株式譲渡・事業譲渡のスキーム、M&A支援機関の選び方、手数料の目安(レーマン方式)などが解説されている。

はじめ君

はじめ君

株式譲渡と事業譲渡、どちらが民泊事業の売却に向いていますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業許可を持つ法人の場合、株式譲渡が手続き面でシンプルです。住宅宿泊事業だけの場合は事業譲渡+再届出の組み合わせになります。ただし税務上の有利不利は個別の状況で変わるため、M&A仲介業者と税理士の両方に相談することを推奨します。

売却価格の試算方法:EBITDA倍率・物件価値・営業権

「自分の民泊事業はいくらで売れるのか」は、多くのホストが最初に知りたいことです。民泊事業の売却価格は「事業としての収益力(EBITDA)の評価」と「不動産としての物件価値」の2軸で考えるのが基本です。

EBITDA倍率による事業価値評価

EBITDA(税引前・利息前・減価償却前・償却前利益)は、事業が生み出すキャッシュフローの近似値として使われます。民泊M&Aの場合、年間EBITDAに倍率(マルチプル)をかけた額が「事業価値の目安」となります。

民泊・宿泊業の中小規模M&Aでは、一般にEBITDA倍率は2〜5倍程度で取引されるケースが多いとされています(案件規模・収益安定性・市場環境によって大きく変動します。あくまで参考値であり、実際の評価は専門家による査定が必要です)。

評価要素 プラス要因 マイナス要因
稼働率 年間平均70%以上 閑散期の稼働率が30%を下回る
OTA評価 Airbnb 4.8以上 / スーパーホスト歴2年以上 3.0台のレビュー・高キャンセル率
旅館業許可の有無 許可あり(365日営業可) 住宅宿泊事業のみ(年180日制限)
物件の権利形態 自己所有(売却価値も含む) 賃貸物件(大家の許諾・転貸の問題あり)
管理の自立性 運営代行契約が整備されている オーナー自身による属人的な管理
財務透明性 3年分の収支記録・確定申告済み 記録なし・現金主体の収支

物件(不動産)価値との合算

物件を所有している場合、不動産としての市場価値(路線価・近隣取引事例・収益還元法などで算定)を事業価値に加算します。物件価値が大きい場合(都市部の区分所有マンション・一棟建て物件など)、売却価格の大半を不動産価値が占めることになり、宅建士・不動産会社の査定が不可欠です。

売却価格の前提となる収支を整理してみましょう

月次・年次の収入・費用・OTA手数料を入力するだけで、民泊の収支が試算できます。売却前の数字整理にご活用ください。

収支シミュレーターを使う

はじめ君

はじめ君

稼働率や旅館業許可の有無が価格に影響するのですね。賃貸物件で民泊している場合、事業価値はかなり低くなりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

賃貸物件の場合、売却時に大家の転貸許諾が引き継ぎ先にも必要になるため、交渉コストが増します。ただし、OTA評価・稼働率が高ければ「運営ノウハウ」としての営業権価値が評価されることもあります。不動産価値を含めた総合評価は専門家に依頼するのが現実的です。

売却前に整えるべき資料リスト

民泊事業のM&Aでは、買い手のデューデリジェンス(事前調査)に対応できる資料を事前に整備することが、スムーズな売却の鍵です。資料が揃っていない場合、買い手の信頼が下がり、価格交渉で不利になることがあります。以下に「売り手が準備すべき基本資料リスト」を示します。

民泊売却前に整える資料を月次収支、稼働実績、予約台帳、許可届出、契約書、修繕履歴、備品一覧、引継ぎ手順で整理した図
売却前は、月次収支・契約・許可届出・修繕履歴などを先に整理しておきます。

財務・収支関連

  • 過去3期分の確定申告書(または法人の決算書)
  • OTA(Airbnb・Booking.com等)の月別収入明細(エクスポートデータ)
  • 月次収支表(収入・OTA手数料・清掃費・管理費・水道光熱費・保険料)
  • 現預金残高・借入残高一覧

許認可・届出関連

  • 住宅宿泊事業の届出番号・届出書のコピー(または旅館業許可証)
  • 消防法令適合通知書(または旅館業の許可申請時の消防確認書)
  • 管理業者との委託契約書(住宅宿泊管理業者登録番号の確認も)
  • 自治体への条例届出(地域によっては上乗せ条例あり)

物件・設備関連

  • 物件登記事項証明書(所有権・担保権の確認)
  • 賃貸物件の場合:賃貸借契約書・大家の民泊許諾書
  • マンションの場合:管理規約・使用細則(民泊可否の条文確認)
  • 設備一覧(スマートロック・洗濯機・空調・ベッド等の型番・購入日)
  • 直近の修繕履歴・設備点検記録

OTA・ゲスト関連

  • OTAアカウントのレビュー数・評価スコアのスクリーンショット
  • スーパーホスト認定証(Airbnb)等の実績証明
  • リピーターゲストの数・比率(プラットフォームの分析データ)
  • 現在の予約確定一覧(引き継ぎ後の対応が必要な予約の確認)

近隣・法務関連

  • 近隣説明済みの記録・苦情対応履歴(あれば開示)
  • 訴訟・係争中の案件がないことの確認書(売り手の自己申告 + 弁護士確認)
i補足

買い手が最も重視するのは「OTAレビューと収支の透明性」です。3年分の収支データが揃っていると、査定のスピードが上がり、交渉がしやすくなります。確定申告書と収支表の数字が一致していることを事前に確認しておきましょう。

はじめ君

はじめ君

消防法令適合通知書って売却時にも必要になるのですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

買い手が引き継ぎ後も旅館業を継続する場合、消防法令適合通知書は許可条件の一部です。証明書の有効期限・消防設備の点検状況が事業価値に影響するため、売却前に最新の状態に整えておくことが推奨されます。

税務:譲渡所得・消費税・退職金スキームの基本

民泊事業の売却に伴う税務は、売却の形態(株式譲渡・事業譲渡・個人承継)や売り手の立場(個人・法人)によって適用される税金と計算方法が異なります。ここでは基本的な考え方を整理しますが、税務上の最終判断は必ず税理士にご確認ください。

株式譲渡の場合(個人が株式を売る場合)

個人が保有する株式を譲渡する場合、その利益は「株式等の譲渡所得」として申告分離課税の対象となります。税率は所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%を合わせて合計約20.315%です。譲渡益 = 売却価格 − 取得費(株式の取得価格 + 手数料等)で計算します。法人が株式を売る場合は、法人の売却益として法人税の課税対象となります。

事業譲渡の場合(資産を個別に売る場合)

事業譲渡では、譲渡する資産の種類によって課税方式が異なります。国税庁の案内によると、機械・器具・備品等の事業用動産および営業権(のれん)の譲渡所得は「土地・建物・株式以外の資産」として扱われ、保有期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」として、利益の50%が他の所得と合算されて累進税率で課税される総合課税の仕組みが適用される場合があります。また、棚卸資産を含む場合は事業所得として扱われることもあります(国税庁No.3105参照)。

不動産(物件)を同時に売却する場合は、不動産の譲渡所得が加わり、所有期間(5年超か否か)によって長期・短期の申告分離課税が適用されます。また、物件が事業用資産であれば「事業用資産の買換え特例」の適用可能性もありますが、要件が複雑なため、税理士への確認が必須です。

国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
(2026-05-27取得)

土地・建物・株式以外の資産(機械器具・営業権等)の譲渡所得の課税区分・計算方法が解説されている。

消費税の課税事業者への影響

売り手が消費税の課税事業者(前々年の課税売上が1,000万円超など)の場合、建物部分の譲渡には消費税が課税される可能性があります。事業譲渡において課税資産を譲渡する際の消費税の扱い(課税・非課税・免税の区分)は複雑で、特に「包括的な事業の移転」にあたるかどうかで取扱いが変わる場合があります。売買契約の設計段階で税理士と確認しておくことが重要です。

法人の役員退職金スキーム

民泊事業を法人で運営していた場合、M&A実行前に創業者・代表者に退職金を支払うスキームが節税手法として検討されることがあります。役員退職金は法人の損金に算入できるため、法人の課税所得を圧縮でき、かつ受け取り側は「退職所得」として優遇税率の適用が受けられる場合があります。ただし、不相当に高額な退職金は損金不算入となるリスクもあるため、顧問税理士の確認の上で設計することが求められます。

!注意

本節の税務情報は制度の概要を示すものであり、個別の課税判断を保証するものではありません。売却に伴う税務処理は、必ず顧問税理士または所轄税務署にご相談の上、最終判断を行ってください。

はじめ君

はじめ君

株式譲渡と事業譲渡では税率が違うとのことですが、どちらが節税になりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

株式譲渡は約20%の申告分離課税で税率がシンプルですが、事業譲渡は資産種別・保有期間・他の所得との合算で税率が変わります。どちらが有利かは個別状況次第のため、税理士との試算なしには判断が難しいポイントです。

専門家の選び方:行政書士・税理士・M&A仲介・宅建士の役割分担

民泊事業の出口戦略では、行政手続き・法務・税務・不動産・M&A仲介と、複数の専門分野が絡み合います。それぞれの専門家が担当する領域を把握し、適切に組み合わせることが、スムーズな売却・承継の鍵です。自治体の相談窓口や事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談を活用することも、最初のステップとして有効です。

民泊の売却・事業承継で相談する専門家の役割を行政書士、税理士、M&A仲介、宅建士に分けて示した図
制度、税務、買い手探索、物件確認は、専門家ごとに役割を分けると抜け漏れを減らせます。
専門家 担当領域 民泊承継での具体的な業務 探す方法の例
行政書士(民泊・旅館業専門) 行政手続き・許認可 住宅宿泊事業の廃業届・旅館業許可の相続承認申請・事業譲渡承認申請の書類作成 日本行政書士会連合会の検索、または自治体の民泊相談窓口での紹介
税理士 税務申告・節税設計 譲渡所得の試算・退職金スキームの設計・消費税の確認・売却後の確定申告 日本税理士会連合会の税理士検索、または中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センター
M&A仲介業者(FA) マッチング・交渉支援 売り手のバリュエーション(価値評価)・買い手のソーシング・LOI(意向表明書)交渉・最終契約サポート 中小企業庁M&A支援機関登録制度の公表リスト・WEBマッチングサービス
宅地建物取引士・不動産会社 物件売買・賃貸整理 物件の売却査定・大家への交渉(賃貸物件の場合)・売買契約書の作成 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会(全宅連)・不動産仲介会社
弁護士 法的リスク対応 近隣トラブルの係争整理・売買契約書の法務確認・表明保証条項の設計 日本弁護士連合会・弁護士ドットコム・法テラス
中小企業診断士 経営評価・事業計画 事業価値の中立的評価・事業承継計画書の作成支援 中小企業診断士協会・事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁が各都道府県に設置している無料の相談機関です。M&A仲介業者への紹介、後継者マッチング、事業承継計画書の作成支援など、出口戦略の初期相談から実行支援まで広くカバーしています。費用をかける前の最初の相談先として活用価値があります。

国土交通省 民泊制度ポータルサイト「minpaku」
(2026-05-27取得)

住宅宿泊事業の届出・変更・廃業に関する様式集・制度解説が掲載。コールセンター(0570-550-240)への相談も案内されている。

出口戦略の最初の一歩:専門家への相談フォームを使う

行政書士・税理士・M&A仲介など、民泊の承継に詳しい専門家への相談窓口をご案内しています。まずはお気軽にご連絡ください。

専門家に相談する

はじめ君

はじめ君

専門家が多くて誰にまず相談すればいいか迷います。最初の一手はどこがおすすめですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

まずは都道府県の「事業承継・引継ぎ支援センター」への無料相談が現実的な最初のステップです。売却規模・運営形態(住宅宿泊/旅館業)・物件の権利形態を整理してから相談すると、次のアドバイスが具体的になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 住宅宿泊事業の届出は買い手の名義に変更できますか?

住宅宿泊事業の届出は届出者本人に帰属するものであり、制度上「第三者への名義変更(届出の譲渡)」という手続きは設けられていません。買い手が同じ物件で民泊を続けたい場合は、現届出者が廃業等届出書を提出し、買い手が新たに届出を行う流れになります。この間に審査期間(概ね数週間〜1か月程度)が生じるため、既存予約への対応を含めて売却スケジュールを調整することが重要です。詳細は自治体の住宅宿泊事業担当窓口にご確認ください。

Q2. 株式譲渡と事業譲渡、民泊M&Aではどちらが多いですか?

旅館業許可を持つ法人の売却では株式譲渡が選ばれるケースが多い傾向にあります。株式譲渡であれば、旅館業の許可はそのまま引き継げる場合が多く(株主変更のみのため許可者(法人)は変わらない)、OTAアカウントや既存予約もまとめて移転しやすいためです。一方、住宅宿泊事業のみの場合や、賃貸物件で運営している場合は、事業譲渡+買い手による新規届出という形になることが多いとされています。最適なスキームは個別の状況によるため、M&A仲介業者および税理士との協議を推奨します。

Q3. OTAアカウント(Airbnb等)は買い手に引き継げますか?

Airbnbの利用規約上、アカウントは「アカウント登録者個人」に帰属するものとされており、原則として第三者への譲渡は禁止されています。法人名義のアカウントであれば、株式譲渡によって法人の所有者が変わる形での引き継ぎが認められる可能性がありますが、法人情報の変更届がOTA側で求められる場合もあります。事前にAirbnbのサポートに確認した上で、売買契約の表明保証条項にOTAアカウントの扱いを明記しておくことを推奨します。

Q4. 買い手はどうやって探せばいいですか?

民泊事業の買い手を探す主な方法として、(1)中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センターへの無料登録(後継者マッチングサービス)、(2)M&Aマッチングサービス(バトンズ・トランビ等)への案件登録、(3)民泊・宿泊業に詳しいM&A仲介会社への依頼、(4)知人ネットワーク(民泊コミュニティ・ホスト交流会)の活用、などが挙げられます。売却規模が小さい場合はマッチングサービス、物件価値が高い・旅館業許可を含む場合は専門仲介業者の利用が現実的です。

Q5. 旅館業許可は相続で引き継げますか?具体的な手順を教えてください。

旅館業法第3条の2の規定により、旅館業を営む者が死亡した場合、相続人が引き続き旅館業を営もうとするときは、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事(政令市・中核市では市長)に申請して承認を受ける必要があります。申請に必要な書類・欠格要件・審査期間は都道府県によって異なります。死亡後すぐに所管の保健所に連絡し、手続き方法を確認することを推奨します。60日を過ぎると承継が認められない場合があるため、早期対応が重要です。

Q6. 売却益にかかる譲渡所得税には特例がありますか?

不動産を売却する場合、事業用資産を別の事業用資産に買い換える「事業用資産の買換え特例(租税特別措置法第37条)」の適用が検討できる場合があります。また、居住用財産を売却する場合の3,000万円特別控除(ただし民泊用として使用していた期間は居住用として認められない可能性があります)なども、個別状況によって検討の余地があります。株式譲渡の場合は特別措置の適用が限定されるため、いずれも税理士による個別確認が不可欠です。「現状の税制ルールでは〜の適用が考えられる」という提示は可能ですが、適用の是非は税理士・税務署にご確認ください。

Q7. 減価償却の途中で物件を売却した場合、どうなりますか?

事業用の建物・設備を減価償却の途中で売却した場合、売却時点での未償却残高(帳簿価額)が取得費の計算に使われます(売却価格 − 帳簿価額 − 売却費用 = 譲渡所得の概算)。また、売却した年の減価償却費は月割りで計上できます。売却前に帳簿の整理と減価償却スケジュールの確認を行い、税理士と譲渡所得の試算をしておくことが推奨されます。

まとめ:民泊の出口戦略は「制度の確認」と「専門家チームの組成」から

民泊の出口戦略は、廃業・個人承継・第三者承継(M&A)の3パターンに分類され、それぞれで住宅宿泊事業法・旅館業法・中小企業M&Aの制度が異なります。特に「住宅宿泊事業の届出は名義変更できない」「旅館業は2023年改正で事業譲渡承継が可能になった」という2点は、出口戦略の設計において基本となる制度理解です。

売却価格の試算には収支の透明性が不可欠です。3年分の確定申告・OTA明細・月次収支表を整備し、事業価値(EBITDA倍率)と物件価値を合算して評価することが現実的なアプローチです。税務面では、株式譲渡・事業譲渡・不動産売却でそれぞれ異なる課税が生じるため、早い段階での税理士確認が節税設計のポイントになります。

専門家は「行政書士(届出・許可手続き)」「税理士(税務設計)」「M&A仲介業者(マッチング・交渉)」「宅建士(不動産)」「弁護士(法務リスク)」の5役が関わる可能性があります。まずは都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターへの無料相談を活用し、自分のケースに必要な専門家を組み合わせることが、最初の現実的なステップです。最終的なご判断は、必ず各専門家・自治体担当窓口にご確認ください。


ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は2026年5月時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・中小企業M&A関連制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

本記事は 2026-05-27 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士
  • 事業承継・M&A: 中小企業診断士・M&A仲介業者・都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター

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