編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-10-15

この記事でわかること

  • 2023年12月13日施行の改正旅館業法で新設された「事業譲渡・地位承継の承認制度」の概要
  • 改正前後の手続きの違いと、承認申請が必要になった背景
  • 都道府県知事への承認申請に必要な書類と手続きの順序
  • 承認は譲渡効力発生前に取得しなければならない点と、実務上の注意事項
  • 承継後に求められる現地調査・設備確認・報告義務
  • 住宅宿泊事業(届出制)と旅館業(許可制・承認制)の手続き差異
  • よくある失敗例と行政書士・所管保健所への相談タイミング
ryokan-jigyo-jouto-shoukei-2026 Step1 改正を知る

結論:2023年12月改正で旅館業の事業譲渡に「承認制度」が新設された

旅館業(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)の許可は、改正前の制度では原則として他者への譲渡・引き継ぎができませんでした。事業を買いたい側は、新規に許可を取り直す必要があり、施設の設備調査・消防確認・届出書類の再整備など、開業と同水準の手続きコストが発生していました。

この状況が、2023年12月13日に施行された改正旅館業法によって変わりました。現在の制度では、都道府県知事(または保健所設置市・特別区の長)の承認を受けることで、旅館業法上の営業者の地位を承継者に引き継げる仕組みが整備されています(厚生労働省のリーフレットでは、承継の前後で許可の内容は原則として変わらず、許可の条件も原則として承継されるとされています)。ただし、事業の一部(複数棟のうち一棟など)だけを譲渡する場合は承認制度の対象外とされています。また、旅館業法以外の許可・登録は別の手続です。施設内の飲食提供で食品衛生法の営業許可を受けている場合は、承継後に遅滞なく届出が必要です。温泉を公共の浴用に供している場合、温泉法の温泉利用許可には事業譲渡による承継の規定がないため、許可申請の要否を都道府県に確認してください。国際観光ホテル整備法の登録を受けている場合は、承継の日から30日以内に登録実施機関への届出が必要です。承認が認められれば、買い手側は原則として新規許可取得を経ずに旅館業を継続運営できるとされています(最終確認は所管保健所・専門家へ)。

本記事では、改正の背景・改正前後の手続き比較・承認申請の具体的な手順・必要書類・失敗例・住宅宿泊事業との違いを実務目線で解説します。手続きの最終判断は必ず所管の保健所または旅館業に詳しい行政書士にご確認ください。

なお、旅館業全体の売却・M&A・事業売却の上位概念については 民泊・旅館業の事業売却・出口戦略 完全ガイド も参照してください。名義変更・事業承継の一般的な手続きは 民泊の名義変更・事業承継 手続きガイド で、民泊から旅館業への切り替えは 民泊から旅館業への切り替えガイド で取り上げています。本記事はそれらと重複させず、「改正旅館業法の承認申請による事業譲渡・地位承継の実務手続き」に特化した内容です。

はじめ君

はじめ君

改正前は旅館業の許可を引き継げなかったんですか?買い取っても許可は別に取り直す必要があったということでしょうか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

改正前の制度では旅館業の許可は「人に帰属する」性質とされており、事業を引き継いでも許可は自動的に移りませんでした。2023年12月の改正で承認制度が新設され、条件を満たせば地位を承継できる仕組みになったとされています。詳細は所管保健所へご確認ください。

なぜ改正で事業譲渡が容易になったか:2023年12月改正の背景

旅館業法は1948年(昭和23年)に制定された歴史ある法律で、長らく許可の「一身専属性」が強く、事業そのものを売買する際の承継手続きが明確に整備されていませんでした。結果として、旅館・ホテル・簡易宿所の経営者交代は「廃業 → 新規許可申請」という形を取らざるを得ず、地域の宿泊施設が廃業するケースも少なくなかったとされています。

観光立国推進の観点から、既存の旅館施設・旅館文化を次の世代に繋ぐ手段として事業承継の円滑化が求められるようになりました。また、地方の温泉地・観光地における旅館の廃業・休業増加が社会問題として取り上げられる中、2023年6月に成立した「旅館業法の一部を改正する法律」において、事業譲渡に係る承認制度が新設されました。施行日は2023年12月13日です。

この改正では、合併・分割・相続の場合にすでにあった承認による地位承継の仕組み(改正前の第3条の2・第3条の3)に、事業譲渡(売買)が新たに加えられました。現在の制度の位置付けとしては、以下のように整理できます。

  • 事業譲渡(売買):都道府県知事等の「承認」が必要
  • 会社の合併・分割:都道府県知事等の「承認」が必要(第3条の3。改正前から承認制)
  • 相続(死亡による承継):都道府県知事等への「届出」が必要

本記事が対象とするのは、このうち「事業譲渡(売買)」に係る承認申請の手続きです。

厚生労働省「旅館業法改正(事業譲渡)」
(2026-06-03取得)

2023年12月13日施行の改正旅館業法第3条の2(事業譲渡による営業者の地位の承継)の概要、譲渡人による都道府県知事等への事前相談、承継日から6か月以内に都道府県知事等が行う業務状況調査(改正法附則)を掲載。合併・分割・相続の手続き(承認)は旅館業法第3条の3・第3条の4の条文で確認。

はじめ君

はじめ君

合併・分割・相続も「承認」で、事業譲渡はそこに加わったということですか。事業譲渡の承認では何が審査されるのでしょうか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

合併・分割(第3条の3)と相続(第3条の4。死亡後60日以内に申請)は改正前から承認制で、2023年12月の改正で事業譲渡(第3条の2)が加わりました。事業譲渡では、譲渡人と譲受人が譲渡の効力発生前に承認を受ける仕組みで、主に譲受人の欠格事由が確認されるとされています。詳細は所管保健所へ確認してください。

改正前後の手続き比較:何が変わり何が同じか

旅館業の事業譲渡において、改正前と改正後でどこが変わったかを把握することは、実務上の誤解を避けるうえで重要です。下の比較表で整理します。

項目 改正前(2023年12月12日以前) 改正後(2023年12月13日施行)
許可の承継 原則不可。買い手は新規許可申請が必要 都道府県知事等の承認により承継可能
申請窓口 新規許可として所管保健所 事業譲渡承認申請として所管保健所・都道府県等
申請タイミング 譲渡(売買)後に買い手が新規申請 譲渡の効力発生前に承認を得る必要がある(効力が承認より前に発生すると承認制度は適用されず新規許可が必要。厚生労働省 旅館業版リーフレット)
施設の適合審査 新規申請と同水準の現地調査が原則必要 承認審査は欠格事由と学校等の周囲おおむね100mの環境要件が中心。施設・設備の基準は承継日から6か月以内に行われる都道府県等の調査(少なくとも1回)で確認
買い手の欠格事由確認 新規申請書類の中で確認 承認申請書類で確認(欠格事由に該当すると承認されない)
許可番号 新たに付番 現在の制度の扱いは所管保健所へ確認が必要
合併・分割・相続の場合 手続きが明確でなかった 承認制のまま(条番号が第3条の3・第3条の4へ移動)
!
「承認前に売買を完了させてしまう」事故に注意

現在の制度では、承認は事業譲渡の効力が発生する前に取得していることが原則とされています。譲渡の効力が承認より前に発生した場合は承認制度の対象外となり、譲受人は新規の許可を受け直す必要があるとされています。新規の許可がないまま営業すると無許可営業となるおそれもあるため、契約で定める譲渡の効力発生日が承認後になるよう調整してください。売買のスケジュールと承認申請のタイムラインを必ず事前に専門家(行政書士)と所管保健所に確認してください。

はじめ君

はじめ君

改正後でも、施設の審査が完全になくなったわけではないんですね。どんな審査が残っているんでしょうか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

承認申請の審査では、譲受人が欠格事由(旅館業法第3条第2項各号)に該当しないか、施設の設置場所が学校等の周囲おおむね100mに関する要件(同条第3項)に抵触しないかが確認されるとされています。施設・設備の基準は、承継日から6か月以内に都道府県知事等が少なくとも1回行う業務状況調査で確認されます。施設の改修・用途変更がある場合は追加の手続きが必要なこともあるため、事前相談が重要です。

自分のケースは承認申請で足りるか:別の手続になりやすいケース

ケース 扱いの目安 次の行動・関連記事
複数棟を1つの許可で一体的に営む施設のうち、一方の棟だけを譲渡する(一部譲渡) 事業譲渡の承認制度の対象外とされています。譲り受ける棟で旅館業を営むには、別の手続(新規の許可申請など)が必要になる場合があります 所管保健所に譲渡範囲を伝えて手続を確認。新規申請の流れは旅館業(簡易宿所)許可申請完全ガイド
個人で営む旅館業を、自分が設立した法人へ移す(法人成り) 厚生労働省の通知では、法人成りの場合の譲渡を証する書類として、個人事業主と法人成り後の法人との譲渡契約書等の写しが想定されています 法人設立と譲渡の効力発生日の順番を、事前相談で保健所に確認
承継後に施設を増設・改築する予定がある 事業譲渡の手続とは別に、通常の変更届等が必要です。同一性が認められないほどの大幅な変更は、新規と同様の取扱いとされています 改修計画を事前相談の段階で伝える。新規扱いになる場合は旅館業(簡易宿所)許可申請完全ガイド
売り手がすでに廃業届を出した旧旅館を買う 承継の対象となる許可が残っているかを所管保健所に確認する必要があります。残っていない場合は新規の許可申請を検討することになります 廃業した旧旅館・空きホテルの居抜き再生ガイド

出典: 厚生労働省「旅館業法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について」(令和5年8月3日 生食発0803第1号)第3、同「事業譲渡に関する手続が整備されます(旅館業版)」(いずれも2026-10-15確認)。個別のケースがどれに当たるかは、所管の保健所と旅館業に詳しい行政書士に確認してください。

承認申請の手順と必要書類:ステップごとに確認する

実務上、旅館業の事業譲渡に係る承認申請は以下のような順序で進めることが現実的とされています(最終的な手続き順序・必要書類は所管の都道府県・保健所に確認してください)。

ステップ1:所管保健所への事前相談

まずは物件所在地の所管保健所(または都道府県の旅館業担当窓口)に事前相談を行います。各都道府県・保健所設置市・特別区によって申請様式・添付書類の詳細が異なるため、この段階で確認することが出発点になります。事前相談では以下の点を確認するとよいでしょう。

  • 承認申請の提出先(保健所・都道府県・政令市等の別)
  • 申請書の様式(都道府県独自様式の有無)
  • 必要添付書類のリスト(地域ごとの差分を確認)
  • 審査に要する標準的な期間の目安
  • 施設現地調査が行われるかどうか
  • 承認前に売買契約を締結することの可否(タイミングの確認)

ステップ2:承認申請書類の準備

国の省令(旅館業法施行規則第1条の3)が定める添付書類は「旅館業の譲渡を証する書類」と「譲受人が法人の場合の定款又は寄附行為の写し」です。下表のうち本人確認書類・図面・消防関係書類などは、自治体が独自に求める場合がある書類の例です。要否は事前相談で確認してください。また、経営者(管理権原者)が替わる場合は、消防法第8条に基づく防火管理者の選任届が必要かどうかも所轄消防署に確認してください。

書類名 概要・ポイント
事業譲渡承認申請書 譲渡人(売り手)と譲受人(買い手)の双方が申請者となる(連名の申請書を一方が提出する形も考えられるとされる)。記載事項は譲受人・譲渡人の住所氏名、譲渡の予定年月日、施設の名称・所在地、欠格事由の該当の有無(旅館業法施行規則第1条の3)。様式は自治体所定のものを確認
事業譲渡契約書(の写しまたは案) 譲渡完了を証する書類ではなく、今後譲渡する旨を証する書類(基本的には譲渡契約書等の写し)。当事者の譲渡の意思・譲渡の事実・譲渡の効力発生日が確認できる内容が必要とされる(厚生労働省 旅館業版リーフレット。様式・受付可否は所管保健所に確認)
承継者の欠格事由に関する誓約書または宣誓書 旅館業法第3条第2項各号の欠格事由(心身の故障により旅館業を適正に行うことができない者として省令で定めるもの、破産して復権を得ない者、拘禁刑以上の刑や旅館業法違反の罰金刑の執行終了等から3年を経過しない者、許可取消しから3年を経過しない者、暴力団員等など)に非該当であることを確認
承継者の身分確認書類 個人の場合は住民票・運転免許証等。法人の場合は登記事項証明書・役員名簿等
施設の平面図・構造設備の概要 既存の許可申請時の書類が流用できる場合もあるが、増改築・用途変更がある場合は更新が必要
消防法令適合通知書(または消防検査済証) 最新の消防設備の状況を確認。所轄消防署への事前確認が必要な場合あり
その他所管保健所が求める書類 自治体の条例・規則により追加書類が求められる場合がある。必ず事前相談で確認
厚生労働省「旅館業の営業者の皆さまへ 事業譲渡に関する手続が整備されます」(PDF)
(2026-10-15取得)

旅館業の営業者向けリーフレット。譲渡人と譲受人の双方が申請者となること、添付する「旅館業の譲渡を証する書類」は効力発生日を確認できる譲渡契約書等の写しであること、譲渡の効力が承認より前に発生すると新規許可が必要になること、一部譲渡は対象外であることなどを掲載。

厚生労働省「合併・事業譲渡等マニュアル(PDF)」
(2026-06-03取得)

旅館業の営業者向けリーフレット(2026-10-15確認)。譲渡人と譲受人が申請すること、添付する「旅館業の譲渡を証する書類」は今後譲渡する旨と効力発生日が確認できる契約書等の写しであること、譲渡の効力が承認より前に発生すると承認制度は適用されず新規許可が必要になること、一部譲渡は対象外であることなどを掲載。

ステップ3:承認申請の提出と審査

書類が揃ったら所管保健所等に提出します。審査では、譲受人の欠格事由(旅館業法第3条第2項各号)の有無と、施設の設置場所が同条第3項(学校等の周囲おおむね100m)の要件に抵触しないかが確認されるとされています(施設・設備の基準適合は承継後の調査で確認されます)。審査期間の目安は保健所によって異なりますが、事前相談の段階で確認しておくことが実務上の標準的な流れとされています。審査中に追加書類の提出を求められる場合もあります。

ステップ4:承認の取得と売買契約の完了

承認が下りた後、事業譲渡(売買)の効力を発生させる手続きに進みます。承認申請書には、当事者の譲渡の意思・譲渡の事実・譲渡の効力発生日が確認できる譲渡契約書等の写しを添付することとされています。そのため、契約書は申請前に締結し、効力発生日(代金決済・施設の引き渡し)を承認取得後に設定するスケジュール設計が考えられます。売買契約書の内容と承認申請のタイムラインは、行政書士・不動産の専門家と事前にすり合わせることをお勧めします。

はじめ君

はじめ君

消防法令適合通知書も必要なんですか。施設を買う前に消防の手続きも準備しておかないといけないですか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

消防設備の適合状況は旅館業許可の維持に関わるため、所管保健所によっては消防法令適合通知書等の提出を求める場合があります。所轄消防署への事前確認を早めに行い、必要な設備改修のスケジュールを承認申請に組み込んでおく対応が現実的です。
ryokan-jigyo-jouto-shoukei-2026 Step2 申請する
i申請書類をそろえる前に確認しておきたい3点
  • 許可の内容と条件は原則そのまま引き継がれます。承継の前後で許可の内容は原則として変わらず、許可に付された条件も原則として承継されるとされています。施設名などを変える予定があれば、承認申請の際に変更の届出を併せて行うこともできるとされているため、事前相談で出し方を確認してください。
  • 譲受人が法人で定款を変える場合は、変更後の正式な定款が必要です。申請書に添付する定款の写しは、事業譲渡に伴い定款等を変更する場合、その変更手続を経た正式なものでなければならないとされています。事業目的の追加などは申請前に済ませておく段取りが必要です。
  • 施設が学校等の周囲おおむね100mの区域内にある場合は、意見照会の手続が入ります。承認を与える場合、行政は教育委員会など学校等の所管庁の意見を求めることとされています(旅館業法第3条第4項を第3条の2第2項で準用)。審査期間の目安は事前相談で確認し、売買の日程に余裕を持たせてください。
旅館業法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について(厚生労働省・令和5年8月3日 生食発0803第1号)
(2026-10-15確認)

第3の(2)①で許可の内容・条件の承継、(3)①で承認時の審査事項と意見聴取、(3)③で定款の写しの扱いを記載。条文は旅館業法(e-Gov法令検索)第3条・第3条の2で確認。

都道府県知事への事前相談:窓口と相談内容の実務ポイント

旅館業の承認申請の窓口は、「都道府県知事」「保健所設置市の市長」「特別区の区長」のいずれかになります。実際の窓口は物件所在地の保健所(健康福祉センター等)であることが多いですが、政令市・中核市・特別区では市区の担当部署が窓口になる場合があります。

実務上、事前相談を行う際に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。

  • 申請様式:都道府県・市区が独自様式を作成している場合があるため、ウェブサイトまたは窓口で取得する
  • 標準的な審査期間:スケジュール設計の基礎情報として必ず確認する
  • 現地調査の有無・時期:承認前か承認後かで準備内容が変わる
  • 消防設備の最新確認が必要かどうか:施設の現況によっては所轄消防署との調整が先行する
  • 既存の許可証の取り扱い:名義・許可番号の扱いについて窓口に確認する
  • 売買契約書の提出形式:「案」で受け付けるか、正式契約締結済みが必要かを確認

事前相談はできる限り売り手・買い手の双方が揃って行うことを検討してください。承認申請は譲渡人(売り手)と譲受人(買い手)の双方が申請者となる仕組みで(連名の申請書を一方が提出する形も想定されています)、事前相談も譲渡人が行うよう求められているため、売り手の協力が欠かせません。また、施設の現況(増改築・設備の変更等)についても売り手側が詳細を把握しているため、情報共有の観点からも双方が揃っていると手続きがスムーズになることがあります。

観光庁「事業の承継に関する手続き」
(2026-06-03取得)

観光庁「承継手続きについて」(国際観光ホテル整備法)は、登録ホテル・旅館の承継届(営業の全部譲渡・全部賃貸、相続、合併等)の案内ページです(2026-10-15確認)。旅館業法の承認とは別の手続で、国際観光ホテル整備法の登録を受けた施設を譲り受ける場合に確認が必要です。旅館業法の承認の窓口は所管の保健所等です。

はじめ君

はじめ君

窓口は都道府県・保健所・市区によって変わるんですね。自分の物件はどこに申請すればいいか、どうやって調べますか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

物件所在地の市区町村サイトや都道府県の旅館業担当ページで「旅館業 許可申請 窓口」と検索すると、担当保健所の連絡先が確認できる場合が多いです。不明な場合は観光庁の案内ページや旅館業に詳しい行政書士に相談する方法もあります。
i事前相談の前に手元にそろえておくもの
  • 現在の営業許可証の写し(営業の種別・施設の名称と所在地が分かるもの)
  • 売り手が許可を受けた際(変更があれば変更届の際)に提出した図面その他の書類の控え。厚生労働省は、譲受人がこれらの控えを適切に管理するよう求めています
  • 譲渡の範囲(施設の全部か、一部の棟か)と、譲渡の効力発生日の予定
  • 譲受人の住所・氏名・生年月日(法人なら名称・事務所所在地・代表者の氏名と定款)と、欠格事由(旅館業法第3条第2項各号)の自己確認の結果
  • 承継後に予定している施設名の変更や改修の内容
  • 消防法令適合通知書など消防関係書類の控え(提出を求められるかは窓口によって異なります)

あわせて、承認申請の手数料額(自治体ごとに異なります)と、国際観光ホテル整備法の登録ホテル・旅館に当たるかどうかも確認しておくと、1回の相談で日程を組み立てやすくなります。消防署への事前相談の進め方は民泊の消防署 事前相談・検査 完全ガイドを参照してください(2026-10-15確認)。

承継後の対応:現地調査・変更届・継続報告義務

承認が下りて事業譲渡が完了した後も、旅館業法上の義務は続きます。承継者が引き続き旅館業を適法に運営するためには、以下の対応が現実的な流れとされています。

承継後の現地調査への対応

事業譲渡で地位を承継した場合、都道府県知事等は当分の間、承継の日から6か月以内に少なくとも1回、承継者の業務の状況を調査することとされています(令和5年法律第52号附則第3条第1項)。調査では、事業が続いているか、施設・設備が旅館業法の基準を満たしているか、衛生管理が適切かなどが確認され、図面の提出を求められたり実地検査が行われたりする場合があります。調査日程についての連絡があった際は速やかに対応できる体制を整えておくことが重要です。

変更届の提出

承継後に施設の構造設備を変更した場合・施設名を変更した場合・管理者を変更した場合などは、改めて変更届の提出が必要になる場合があります。変更の内容によっては新たな許可申請に相当する手続きが求められることもあるため、変更を検討する際は事前に所管保健所に確認することをお勧めします。

旅館業法に基づく継続的な義務

承継後も、旅館業法が定める以下のような義務は引き続き適用されます。

  • 宿泊者名簿の記載・備え付け
  • 宿泊の拒否規定の遵守(感染症患者への対応等)
  • 衛生管理の実施(清潔保持・消毒・ねずみ・害虫の駆除等)
  • 都道府県条例による追加要件(地域ごとに異なる)への対応
  • 消防設備の定期点検・報告
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承継後の条例上の義務も確認が必要

旅館業法本体の義務に加え、物件所在地の都道府県・市区町村の条例により、追加の届出・報告・衛生管理義務が定められている場合があります。地域によって内容が異なるため、所管保健所または旅館業に詳しい行政書士に確認してください。

はじめ君

はじめ君

施設を引き継いだ後、すぐに小さな改修をしたい場合でも変更届が必要になりますか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

変更届が必要かどうかは改修の内容・規模によって異なります。構造設備の変更(客室の増減・浴室の変更等)は届出が必要とされる場合があります。内装の軽微な模様替えであれば届出不要の場合もありますが、判断は所管保健所に確認するのが安全です。

住宅宿泊事業(届出制)との手続き比較:混同しやすいポイントを整理する

旅館業(許可制・承認制)と住宅宿泊事業(いわゆる民泊・届出制)は、根拠法・管轄官庁・手続きが大きく異なります。既に民泊(住宅宿泊事業)を運営している方が旅館業物件の承継を検討する場合、あるいは旅館業の事業者が民泊への転換を検討する場合に、手続きを混同するケースが見受けられます。

比較項目 旅館業(旅館業法) 住宅宿泊事業(住宅宿泊事業法)
根拠法 旅館業法(厚生労働省) 住宅宿泊事業法(国土交通省・観光庁)
事業開始の形式 都道府県知事等の「許可」が必要 都道府県知事等への「届出」で開始可能(条例制限あり)
年間営業日数 制限なし(許可の範囲内で運営) 年間180日以内(地域によって条例でさらに制限)
事業承継の手続き 事業譲渡(2023年12月改正で新設)・合併・分割:都道府県知事等の承認が必要。相続:死亡後60日以内に申請して承認 届出の名義変更・廃止届・新規届出が必要。承認制度なし
主な申請窓口 所管保健所(または都道府県・政令市・特別区の担当窓口) 観光庁の民泊制度運営システム(オンライン)または都道府県
施設要件 旅館業法の構造設備基準(床面積・採光・換気等)を満たす施設が対象 台所・浴室・便所・洗面設備があり、現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、または随時所有者等の居住の用に供されている家屋が対象(住宅宿泊事業法第2条第1項、同法施行規則第1条・第2条)。過去に住宅として使われていたことだけでは要件を満たさないとされる
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住宅宿泊事業の届出で旅館業の施設を引き継ぐことはできない

旅館業の許可を受けた施設(ホテル・旅館・簡易宿所)は、住宅宿泊事業(民泊)の届出制の対象外です。旅館業許可施設を事業譲渡で引き継ぐ場合は旅館業法に基づく承認申請が必要で、住宅宿泊事業の届出で代替することはできません。手続きを混同すると無許可営業になるリスクがあります。最終確認は所管の保健所・専門家へ。

はじめ君

はじめ君

旅館業の施設を引き継いだ後、民泊(住宅宿泊事業)に切り替えることはできますか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

旅館業許可施設を住宅宿泊事業に切り替えるには、旅館業の廃業届を出してから住宅宿泊事業の届出を行う手順が現実的とされています。ただし建物用途・構造・所在地の条例によって可否が変わるため、先に所管の保健所・都道府県への確認が必要です。詳しくは民泊から旅館業への切り替えガイドも参照してください。

よくある失敗例:承認申請でつまずくパターン

旅館業の事業譲渡・承認申請は2023年12月13日施行の比較的新しい制度であるため、情報が不足したまま手続きを進めることで生じるトラブルも報告されています。実務上で見受けられる失敗パターンを整理します。

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失敗例1:承認前に売買契約を完了させてしまった

事業譲渡の承認は効力発生前に取得することが原則とされています。「承認申請は後でできる」と思い込んで譲渡の効力を先に発生させると、承認制度は使えず、新規許可の取得が必要になるとされています。売買スケジュールと承認申請のタイムラインは必ず事前に整合させてください。

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失敗例2:自治体の独自様式を確認せずに国の標準様式のみで申請した

承認申請の様式は都道府県・保健所設置市・特別区ごとに異なる場合があります。厚生労働省のリーフレット・マニュアルはあくまで標準的な枠組みであり、実際の申請は窓口の様式を使用する必要があります。事前相談なしに書類を揃えてしまうと差し戻しになることがあります。

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失敗例3:消防設備の未更新を見落とした

旅館業の施設では消防設備(自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー等)の維持が義務付けられています。施設の経年劣化や設備更新の遅れがある場合、承認申請前に所轄消防署への確認が必要になることがあります。設備改修が必要な場合は承認申請のスケジュールに余裕を持たせてください。

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失敗例4:欠格事由の確認を後回しにした

旅館業法第3条第2項各号に定める欠格事由(拘禁刑以上の刑や旅館業法違反による罰金刑の執行終了等から3年を経過しない者、許可取消しから3年を経過しない者、暴力団員等など)に承継者が該当すると、承認されないことがあります。このチェックは申請書類の準備段階で行うべきですが、後から判明すると手続き全体が止まります。旅館業に詳しい行政書士と事前に確認することが現実的な対応です。

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失敗例5:住宅宿泊事業の承継手続きと混同した

住宅宿泊事業法には地位承継の規定がなく、届出の名義変更で事業を引き継ぐ仕組みもありません。新たな事業者が新規に届出を行い、旧事業者側は廃業等の届出(廃止日等から30日以内。住宅宿泊事業法第3条第6項)を行う流れになります。旅館業の承認申請とは根拠法も窓口も異なります。両者を混同して、旅館業施設を民泊の届出で引き継ごうとするケースは無許可営業のリスクがあります。

はじめ君

はじめ君

失敗を避けるには、どのタイミングで行政書士に相談するのが現実的ですか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

売買の意向が固まった段階、できれば覚書や基本合意書を締結する前に相談するのが現実的です。その時点で承認申請のスケジュール・必要書類・欠格事由の有無を確認しておくと、その後の手続きをスムーズに進めやすくなります。

行政書士・専門家への相談:確認すべき範囲と依頼のポイント

旅館業の事業譲渡・承認申請は、2023年12月施行の比較的新しい制度であり、専門家でも手続きの詳細を把握しているケースと把握していないケースがあります。依頼先を選ぶ際は、旅館業の許認可に実績がある行政書士を探すことが重要です。

行政書士に依頼する主な範囲は以下の通りです。

  • 所管保健所・都道府県への事前相談の代行(または同行)
  • 承認申請書の作成・添付書類の整備
  • 売買契約書の旅館業法上の記載事項の確認(弁護士・司法書士との連携が必要な場合あり)
  • 欠格事由チェックの補助
  • 消防設備確認の調整(所轄消防署への同行・書類取得)
  • 承継後の変更届・継続報告の管理

また、旅館業の事業売買は不動産取引を伴うことが多いため、宅地建物取引士・司法書士・税理士との連携も視野に入れてください。特に法人間の売買では、法人格の変更・消費税の取り扱い・固定資産税の調整などが複合的に絡むため、各専門家の役割分担を明確にしておくことが現実的です。

旅館業の事業譲渡・承認申請について行政書士に相談する

所管保健所への事前相談・申請書類の準備・売買スケジュールの調整など、旅館業に詳しい行政書士への相談を検討してください。民泊学校では無料相談窓口を案内しています。

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はじめ君

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行政書士と弁護士、どちらに相談すればいいか迷います。役割分担はどう考えればよいですか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

許認可の申請書類・役所対応は行政書士、売買契約書の法的リスク・契約交渉・トラブル対応は弁護士の担当範囲とされています。実務では双方が連携するケースが多く、行政書士への最初の相談で弁護士や司法書士へのつなぎを依頼する流れが現実的です。
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よくある質問(FAQ)

Q1. 旅館業の事業譲渡の承認申請はオンラインでできますか。

現在の制度では、承認申請の手続きは所管の保健所・都道府県・保健所設置市・特別区の窓口への書面による提出が基本とされています。オンライン申請への対応状況は自治体によって異なるため、申請先の窓口に確認してください。住宅宿泊事業の届出(民泊制度運営システム)とは手続きが異なる点にご注意ください(2026-06-03時点)。

Q2. 承認申請から承認が下りるまで、どのくらいの期間がかかりますか。

審査期間は所管の保健所・都道府県によって異なり、公式に標準期間が統一されているわけではありません。事前相談の段階で目安を確認することが現実的な対応です。施設の現地調査が入る場合や追加書類が求められる場合は期間が延びることがあります。売買スケジュールには余裕を持たせてください(2026-06-03時点の一般的な情報。詳細は所管保健所へ確認してください)。

Q3. 簡易宿所と旅館・ホテル・下宿では、事業譲渡の承認申請の手続きに違いがありますか。

旅館業法の改正は旅館業の全業態(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)に適用されます。ただし施設の構造設備基準は業態によって異なるため、承認申請に添付する書類の詳細は業態ごとに異なる可能性があります。所管保健所への事前相談で業態に応じた必要書類を確認してください(2026-06-03時点)。

Q4. 相続で旅館業を引き継ぐ場合も「承認」が必要ですか。

旅館業法第3条の4により、相続人(複数いる場合は全員の同意で選定した1人)が旅館業を続けるには、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事等へ申請して「承認」を受ける必要があるとされています。申請中は従前の許可が相続人に対してしたものとみなされますが、期限内に申請しないまま営業を続けると無許可営業(同法第10条)とされるおそれがあります。添付書類は戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し、相続人が複数の場合は全員の同意書など(同法施行規則第3条)で、様式は所管保健所で確認してください。相続が発生した場合は速やかに所管保健所に連絡し、手続きの詳細を確認してください(2026-06-03時点。詳細は所管保健所へ)。

Q5. 法人が旅館業を承継する場合、個人が承継する場合と手続きが違いますか。

承継者が法人の場合は、個人の身分確認書類に加え、法人の登記事項証明書・定款・役員名簿・旅館業に関する業務執行権者の確認書類などが求められる場合があります。法人格ごとの欠格事由確認も必要です。法人間の売買は税務・登記・旅館業許可の三つが絡むため、行政書士・税理士・司法書士の連携体制で準備することをお勧めします(2026-06-03時点)。

Q6. 旅館業の施設を買った後、すぐに施設名や屋号を変えたい場合はどうすればよいですか。

施設名・屋号の変更は所管保健所への変更届が必要になる場合があります。旅館業法施行規則第4条により、申請書に記載した事項(施設の名称等)に変更があったときは10日以内に届け出ることとされています。様式は保健所によって異なる場合があります。承継後の名称変更を計画している場合は、承認申請の事前相談時に合わせて確認しておくと手続きが効率的です(2026-06-03時点)。

Q7. 旅館業の事業譲渡の際に、既存の従業員の雇用はどうなりますか。

従業員の雇用の取り扱いは旅館業法ではなく、労働法規(労働契約法・労働基準法)の適用範囲です。事業譲渡では原則として既存の雇用契約は自動的には引き継がれず、個々の従業員との間で改めて雇用契約を締結することが必要です。ただし事業の実態・譲渡の形態によって扱いが異なるため、労働問題に詳しい弁護士・社会保険労務士に確認することをお勧めします(2026-06-03時点)。

まとめ:旅館業事業譲渡・承継 実務のポイント

2023年12月13日施行の改正旅館業法によって、旅館業(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)の事業譲渡(売買)に係る地位承継の承認制度が新設されました。これにより、都道府県知事等の承認を得ることで、買い手が既存の許可を承継して旅館業を継続する道が整備されたとされています。

実務上の核心は3点です。第一に、承認は譲渡の効力発生前に得る必要があるとされ、効力が先に発生すると承認制度は使えず新規許可が必要になります(厚生労働省 旅館業版リーフレット)。事後申請による承継は想定されていない前提で売買スケジュールを組むことが重要です。第二に、申請様式・必要書類・審査期間は都道府県・保健所設置市・特別区によって異なるため、所管保健所への事前相談が欠かせません。第三に、住宅宿泊事業(届出制・民泊)の承継手続きとは根拠法も窓口も制度の枠組みも異なるため、混同しないよう注意が必要です。

手続きの最終的な判断は所管の保健所・旅館業に詳しい行政書士に確認してください。本記事の内容は2026年6月3日時点の公式情報をもとに執筆していますが、制度の細部は改正・更新される場合があります。

はじめ君

はじめ君

旅館業の事業譲渡、まず何から始めるのが現実的ですか。
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

売買の意向が固まったら、まず所管保健所への事前相談と旅館業に詳しい行政書士への相談を並行して進めるのが現実的な出発点です。承認申請のスケジュール・必要書類・欠格事由を早めに把握することで、売買交渉と手続きを整合させやすくなります。

⚠️ 本記事は2026-06-03時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は 2026-06-03 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

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民泊学校 編集部。運営者は2015年からAirbnbでの民泊運用に携わり、複数物件の運営経験をもとに、公式ソースの確認・専門家への確認導線・実務目線の3つを軸に記事を編集しています。