編集:民泊学校 編集部|公開日:2026年6月15日|最終更新日:2026年6月15日

傾斜地や高台にある物件、古い擁壁(ようへき)に囲まれた割安な土地は、眺望や価格の面で民泊・旅館業の投資対象として魅力的に映ります。しかし、こうした物件には「がけ条例」「急傾斜地法」「盛土規制法」という、建物の配置や工事を縛る複数の法令が関わってきます。これらを購入前に確認しないまま取得すると、建物が建てられない・擁壁の造り直しに数百万円かかる・旅館業の許可が前に進まない、といった事態にもなりかねません。この記事では、混同しやすい3つの法律の違いから、都道府県ごとに異なるがけ条例のセットバック距離、擁壁の安全性の確認方法(検査済証)、改修コストの目安、急傾斜地法・盛土規制法の規制、そして旅館業許可との実務的な関係までを、公式情報をもとに整理します。

この記事でわかること

  • がけ条例・急傾斜地法・盛土規制法という「別々の法律」の管轄・窓口・手続きの違い
  • 建築基準法第19条4項と、各都道府県のがけ条例が数値を補完する二層構造
  • 都道府県ごとに異なる「がけからのセットバック距離」(東京都・千葉県・宮崎県の比較)
  • 擁壁の安全性を確認する鍵=検査済証の有無と、工作物確認申請が必要な高さ基準
  • 古い擁壁の種類別の注意点と、改修コストの目安(民間の参考値)
  • 旅館業の許可とがけ条例の実務的な連動、購入前に建築指導課へ確認すべきこと
minpaku-gake-jorei-yoheki-2026 Step1 法律を分ける

がけ条例・急傾斜地法・盛土規制法は「別の法律」——3法の管轄と窓口

傾斜地の物件でまず押さえたいのは、関わる法律が一つではなく、目的も窓口も異なる3つの法律が並んでいるという点です。これらを混同すると、必要な手続きを見落とします。

法律 主な目的 主な窓口
建築基準法のがけ規制+各都道府県のがけ条例 がけに近接する建築物の安全(配置・擁壁) 自治体の建築指導課・建築主事
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法) 急傾斜地崩壊危険区域での行為制限 都道府県(砂防・防災部局)
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法) 危険な盛土・切土の全国一律規制 都道府県等(宅地防災部局)

さらに、土砂災害警戒区域(土砂災害防止法)や水害ハザードは、また別の法的枠組みです。これらは「災害リスク」という点で隣接して見えますが、管轄官庁も手続きも異なります。土砂災害警戒区域については民泊・旅館業を土砂災害警戒区域で始める前に確認すること、浸水リスクについては民泊の水害・浸水・ハザードマップ対応で扱っています。本記事は、このうち「がけ・擁壁・傾斜地の建築規制」に絞って解説します。

はじめ君

はじめ君

傾斜地の物件って、確認する法律はがけ条例だけですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

いいえ、がけ条例(建築基準法を補完する都道府県の条例)に加え、急傾斜地法、盛土規制法という別々の法律が関わります。それぞれ目的も窓口も違うため、混同せず一つずつ確認することが大切です。

建築基準法第19条4項とがけ条例の二層構造

がけ規制の出発点は、建築基準法第19条第4項です。ここでは、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合には、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない、と定められています。ただし、この条文には「がけからどれだけ離すか」といった具体的な数値基準が書かれていません。「安全上適当な措置」とは何かを具体的に定めるのは、各都道府県が定める建築安全条例・建築基準法施行条例——いわゆる「がけ条例」です。

つまり、国の法律(建築基準法)が「安全な措置を講じよ」という原則を示し、都道府県の条例が「がけ高の何倍離す」「高さ何メートル超の擁壁が必要」という数値を補完する、という二層構造になっています。だからこそ、同じような傾斜地の物件でも、所在地の都道府県によって建てられる範囲や必要な対策が変わってきます。購入を検討する物件のがけ規制は、必ずその物件所在地の自治体(建築指導課)で確認する必要があります。

建築基準法(昭和25年法律第201号)第19条|e-Gov法令検索
(2026-06-15取得)

建築物ががけ崩れ等の被害を受けるおそれがある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない(第19条第4項)旨の条文。具体的数値は都道府県条例が補完する。

はじめ君

はじめ君

建築基準法を見れば、がけから離す距離はわかりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

建築基準法第19条4項は「安全上適当な措置を講じよ」と定めるだけで、具体的な距離は書かれていません。実際の数値は各都道府県のがけ条例が決めているので、物件所在地の建築指導課で確認する必要があります。

都道府県ごとに異なる「がけからのセットバック距離」

がけ条例の数値は都道府県ごとに異なります。代表的な例を比較すると、その差がよくわかります。

自治体 がけの定義と主な規制(例)
東京都(建築安全条例第6条) がけ=高さ2メートル超かつ傾斜が約26.6度(2分の1こう配)超。がけ下端からの水平距離が「がけ高の2倍以内」に建築する場合、高さ2メートル超の擁壁の設置が必要(一定の例外あり)
千葉県(建築基準法施行条例第4条) がけ=高さ2メートル超。がけの上では「がけ高の1.5倍」、がけの下では「がけ高の2倍」の距離以内は居室の設置が原則禁止(一定の条件で例外あり)。高さ5メートル超の擁壁は鉄筋コンクリート造が必要
宮崎県(建築基準法施行条例第5条) 高さ2メートル超のがけに近接する建築物に「がけ高の2倍以上」の水平距離を求める

このように、がけの定義(高さ・傾斜角)も、確保すべき距離の比率も、自治体によって異なります。複数のエリアで物件を比較している投資家は、各物件の所在地ごとに条例を確認しなければ、正しい比較ができません。なお、これらは代表例であり、最新かつ正確な規制内容は、必ず物件所在地の自治体・建築指導課で確認してください

東京都建築安全条例第6条(がけ)の解説|東京都北区
(2026-06-15取得)

がけの定義(高さ2メートル超・傾斜26.6度超)、がけ下端からがけ高の2倍以内に建築する場合の擁壁設置義務、安全な擁壁の条件(検査済証等)に関する自治体の解説。

がけについて(建築基準法施行条例第4条)|千葉県
(2026-06-15取得)

千葉県のがけの定義、がけの上(がけ高1.5倍)・下(がけ高2倍)の居室設置制限、高さ5メートル超の擁壁は鉄筋コンクリート造が必要であることなど、都道府県で距離比率が異なることの根拠。

minpaku-gake-jorei-yoheki-2026 Step2 擁壁を確認
はじめ君

はじめ君

がけからの距離の決まりは、全国どこでも同じですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

同じではありません。たとえば東京都はがけ高の2倍、千葉県はがけの上で1.5倍・下で2倍と、定義も比率も自治体で異なります。複数エリアで物件を比べるときは、所在地ごとに条例を確認してください。

擁壁の安全性確認——検査済証の有無がカギ

傾斜地の物件では、既存の擁壁が「安全なもの」として扱えるかどうかが重要です。建築基準法施行令では、高さ2メートルを超える擁壁は「工作物」として確認申請(工作物確認申請)の対象とされています(施行令第138条)。また、擁壁の構造・材料・水抜き穴などの技術基準も定められています(施行令第142条)。

高さ2メートル超の擁壁を新設・改修する場合は、工作物確認申請を行い、確認済証を受け、工事完了時に完了検査を経て検査済証の交付を受ける、という流れになります。検査済証が交付された擁壁であれば、建築基準法上の安全が確認された擁壁として扱われます。逆に、古い擁壁で検査済証や工事記録が残っていない場合は、安全性が確認できず、建て替え時に擁壁の造り直しや、建築士による現況調査報告書が必要になることがあります。検査済証がない物件の扱いは検査済証がない物件で民泊・旅館業を始められるかでも扱っています。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第138条・第142条|e-Gov法令検索
(2026-06-15取得)

高さ2メートルを超える擁壁が工作物として確認申請の対象となること(第138条)、擁壁の構造・水抜き穴等の技術基準(第142条)の条文。

はじめ君

はじめ君

古い擁壁が付いている土地は、そのまま使えますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

検査済証や工事記録があり現行基準を満たす擁壁なら安全なものとして扱える場合がありますが、記録がない古い擁壁は造り直しや補強が必要になることがあります。高さのある擁壁は建築士などの現況調査をおすすめします。

擁壁の種類別の注意点と目視チェック

擁壁にはいくつかの種類があり、安全性の評価が変わります。一般に、鉄筋コンクリート造の擁壁や、コンクリートで一体化された練石積み・重力式コンクリート擁壁は、構造的に評価されやすいとされます。一方で、コンクリートで固められていない空石積みや、古い擁壁の上にさらに積み増した「増積み」、上下に擁壁が連なる「二段擁壁」、コンクリートブロック積みなどは、安全性に注意が必要とされる類型です。

目視でのチェックポイントとしては、水抜き穴が適切に設けられ機能しているか、ひび割れ・ずれ・ふくらみ・傾きがないか、といった点が挙げられます。ただし、擁壁の安全性は目視だけでは十分に判断できません。とくに高さのある擁壁や古い擁壁は、建築士や民間の確認検査機関による現況調査を受けることをおすすめします。建物本体の状態とあわせて確認したい場合は、ホームインスペクション(建物状況調査)の活用も検討できます。

!注意:古い擁壁は「安全とは限らない」前提で見る

検査済証や工事記録がない古い擁壁は、見た目に問題がなさそうでも、現行基準を満たしているとは限りません。造り直しや補強が必要になれば、再生コストに大きく影響します。傾斜地の物件は、擁壁の安全性を専門家に確認したうえで取得を判断してください。

古い擁壁の改修コストの目安

擁壁の造り直しや補強が必要になった場合、その費用は再生コストの大きな要素になります。民間の不動産情報サイトが示す参考事例では、規模(たとえば長さ10メートル・高さ3メートル程度)により、鉄筋コンクリート擁壁の再構築でおよそ320万円、重力式コンクリート擁壁の再構築でおよそ240万円、地山補強工法でおよそ360万円といった試算例が紹介されています。これらはあくまで一例で、実際の費用は擁壁の規模・地盤・工事条件・立地によって大きく変わります。正確な費用は、必ず複数の専門業者に見積もりを取って比較してください

なお、高さ2メートルを超える擁壁は工作物確認申請と検査済証で適法性を確認できますが、高さ2メートル以下の擁壁は、図面・工事記録・工事記録写真などで安全性を確認することになります。記録がない場合は、安全性を慎重に判断する必要があります。割安な傾斜地の物件は、こうした擁壁の改修・確認コストを取得価格に上乗せした「総取得コスト」で利回りを試算するのが現実的です。

安全な擁壁の見分け方・改修費用の参考事例(民間の不動産情報サイト)
(2026-06-15取得)

擁壁の種類別の安全性の整理、水抜き穴などの目視チェックポイント、改修費用の参考事例(民間の参考値であり、実際の費用は条件により変動)。

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minpaku-gake-jorei-yoheki-2026 Step3 専門家へ

急傾斜地崩壊危険区域に指定されていると何ができなくなるか

物件が「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されている場合、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)の行為制限がかかります。この区域は、傾斜度30度以上で、崩壊により相当数の居住者その他の者(人家・官公署・学校・病院・旅館等)に危害が生じるおそれがある急傾斜地について、都道府県知事が指定します。実務上は「高さ5メートル以上・人家5戸以上」などの基準が用いられますが、具体的な指定基準は施行令や各都道府県の運用によるため、対象に当たるかどうかは、物件所在地の都道府県(砂防・防災部局)で確認してください。

区域内では、のり切・切土・掘削・盛土、水の浸透を助長する行為、立竹木の伐採、土石の採取・集積など、崩壊を助長しかねない行為について、都道府県知事の許可が必要とされています(急傾斜地法第7条)。違反には罰則も定められています。傾斜地に建物を建てたり、土地を造成したりする民泊・旅館業の計画では、この区域指定の有無が計画の可否やコストに直結するため、取得前に都道府県の防災・砂防部局で確認しておく必要があります。

急傾斜地崩壊危険区域の解説|国土交通省(砂防部)
(2026-06-15取得)

急傾斜地(傾斜30度以上)の定義、急傾斜地崩壊危険区域では崩壊により相当数の居住者等に被害のおそれがある土地を都道府県知事が指定すること、区域内の行為制限と知事の許可に関する一次情報。

急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第7条|e-Gov法令検索
(2026-06-15取得)

急傾斜地崩壊危険区域の指定(第3条)、区域内での切土・掘削・盛土等の行為に都道府県知事の許可を要すること(第7条)、罰則規定の条文。

はじめ君

はじめ君

急傾斜地崩壊危険区域だと、もう何も建てられないんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

一律に建てられないわけではありませんが、切土・掘削・盛土などに都道府県知事の許可が必要になります。計画によっては制約やコストが生じるため、区域指定の有無を取得前に都道府県の防災・砂防部局へ確認してください。

盛土規制法(令和5年5月施行)で許可が必要な盛土・切土の規模

2023年(令和5年)5月26日に施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛土規制法)は、危険な盛土等による災害から人命を守る観点から、土地の用途や目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する法律です。それまでの宅地造成等規制法から対象を広げ、農地・森林を含むすべての土地用途に規制を及ぼし、土石の仮置きなども対象に加えました。

規制区域には、市街地やその周辺の「宅地造成等工事規制区域」と、市街地から離れた斜面地等の「特定盛土等規制区域」があります。たとえば宅地造成等工事規制区域内では、高さ1メートル超のがけを生じる盛土、高さ2メートル超のがけを生じる切土、一定面積を超える盛土・切土などが許可の対象になります。傾斜地で造成をともなう民泊・旅館業の計画では、この許可の要否が工程とコストに影響します。罰則も強化されているため、造成を計画する場合は、取得前に都道府県等の宅地防災部局へ相談してください。

宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)について|国土交通省(都市局)
(2026-06-15取得)

盛土規制法の公布(令和4年5月27日)・施行(令和5年5月26日)、用途を問わず危険な盛土等を全国一律基準で規制する目的、宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域の区分の一次情報。

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令|e-Gov法令検索
(2026-06-15取得)

許可の対象となる盛土・切土の規模基準(宅地造成等工事規制区域内では高さ1メートル超のがけを生じる盛土、高さ2メートル超のがけを生じる切土など)の条文。

旅館業の許可とがけ条例の実務的な連動

旅館業の許可そのものは、本来「公衆衛生の見地から判断する」ものとされ、建築基準法違反の有無が直接の不許可理由になるわけではない、という古い行政通知(昭和28年9月8日 衛発第706号)があります。ただし、この通知は同時に、建築基準法による確認を受けさせたうえで旅館営業の許可を与えるようにすることが適当としています。実務上は、建築確認・検査済証がないと事実上営業ができないため、がけ・擁壁の安全性(建築基準法上の問題)が整っていることが、旅館業許可へ進むための前提になります。

つまり、傾斜地の物件では「がけ条例をクリアして建築基準法上の確認を得る」ことと「旅館業の許可を取る」ことが、実務的に連動しています。がけ・擁壁の問題を後回しにすると、旅館業許可の段階で立ち止まることになりかねません。取得前に、建築・がけ規制の論点を建築士・自治体に確認しておくことが大切です。

建築基準法による違反建築物の旅館営業許可に関する疑義について(昭和28年9月8日 衛発第706号)|厚生労働省
(2026-06-15取得)

旅館業の許可は公衆衛生の見地から判断すること、建築基準法による確認を受けさせた後に旅館営業の許可を与えるようにするのが適当である旨の行政通知。

はじめ君

はじめ君

がけの問題は、旅館業の許可と関係あるんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

実務的に連動します。旅館業許可は公衆衛生の見地で判断されますが、古い通知でも建築確認を受けさせた後に許可を与えるのが適当とされ、検査済証がないと事実上営業ができません。がけ・擁壁の整備が許可へ進む前提になります。

購入前に建築指導課へ確認すべきチェックリスト

傾斜地・擁壁のある物件を民泊・旅館業用に検討するとき、取得前に確認したい項目を整理します。

  • がけの高さ・傾斜角と、物件所在地のがけ条例のセットバック距離(建築指導課で確認)
  • がけ・擁壁が自分の敷地内にあるのか、隣地にあるのか(権利関係)
  • 既存擁壁に検査済証・工事記録があるか(高さ2メートル超なら工作物確認の有無)
  • 物件が盛土規制法の規制区域内か、造成に許可が必要か
  • 物件が急傾斜地崩壊危険区域に指定されているか(行為制限の有無)
  • 建築確認・旅館業許可へ進むうえで、がけ・擁壁の対策がどこまで必要か

これらは、自治体の建築指導課・砂防防災部局・保健所、そして建築士・行政書士といった専門家に相談しながら、一つずつ確認していくことになります。傾斜地の物件は、価格の安さの裏にこうした確認・改修コストが隠れていることが多いため、総取得コストで判断する姿勢が欠かせません。再建築や接道の論点は再建築不可・旗竿地で民泊はできるか、物件選びの全体像は民泊向け物件購入の判断基準もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. がけ条例と土砂災害防止法は同じものですか?

別の法律です。がけ条例は建築基準法を補完する都道府県の条例で、がけに近接する建築物の配置や擁壁を規制します。土砂災害防止法は土砂災害警戒区域(イエローゾーン・レッドゾーン)の指定や開発規制を扱う、別の枠組みです。管轄も窓口も異なるため、傾斜地の物件では両方を確認する必要があります。

Q2. 古い擁壁があると、必ず造り直しが必要ですか?

一律に造り直しが必要というわけではありません。検査済証や工事記録があり、現行の技術基準を満たし、維持管理が良好な擁壁であれば、安全な擁壁として扱える場合があります。一方、記録がなく安全性が確認できない擁壁は、建て替え時に造り直しや補強が必要になることがあります。判断には建築士などの現況調査が役立ちます。

Q3. がけ条例のセットバック距離は全国共通ですか?

共通ではありません。建築基準法第19条4項は「安全上適当な措置」とだけ定め、具体的な数値は各都道府県のがけ条例が決めています。そのため、がけの定義(高さ・傾斜角)や確保すべき距離の比率は自治体によって異なります。必ず物件所在地の建築指導課で確認してください。

Q4. 急傾斜地崩壊危険区域だと民泊はできませんか?

区域に指定されていると、切土・掘削・盛土などの行為に都道府県知事の許可が必要になります。建物の計画によっては制約やコストが生じますが、一律にできないと決まるわけではありません。区域指定の有無と、計画に必要な許可の範囲を、取得前に都道府県の防災・砂防部局へ確認してください。

Q5. 傾斜地の物件は避けたほうがよいですか?

傾斜地というだけで避ける必要はありません。眺望や価格の面で魅力がある一方、がけ条例・擁壁・急傾斜地法・盛土規制法という確認事項が増えるのも事実です。これらの確認・改修コストを総取得コストに織り込み、専門家に相談したうえで判断すれば、傾斜地の物件も投資の選択肢になります。

Q6. がけや擁壁が隣の土地にある場合はどうなりますか?

がけや擁壁が隣地にある場合でも、がけ条例の制限は「がけに近接して建てる建築物」にかかるため、自分の敷地での建築計画が制約を受けることがあります。隣地の擁壁の安全性を自分でコントロールできない点や、改修が必要になったときの費用負担・所有関係が論点になりやすく、トラブルにつながることもあります。がけ・擁壁が自分の敷地内か隣地かは、登記や現況をもとに取得前に確認し、権利関係や費用負担に不安があるときは、宅地建物取引士・弁護士・土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

まとめ——傾斜地の物件は「3つの法律と擁壁」を購入前に確認する

がけ・擁壁・傾斜地の物件を民泊・旅館業に使うときは、建築基準法のがけ規制(+都道府県のがけ条例)、急傾斜地法、盛土規制法という3つの法律が関わります。これらは目的も窓口も異なり、混同すると手続きを見落とします。とりわけ、がけ条例のセットバック距離は都道府県ごとに違うこと、擁壁の安全性は検査済証の有無がカギになること、そして旅館業の許可は建築基準法上の確認と実務的に連動することを、購入前に押さえておきたいところです。傾斜地の物件は、擁壁の改修費などの確認コストを総取得コストに織り込んで判断するのが現実的です。具体的には、取得価格に加えて、擁壁の造り直しや補強、がけ条例に対応するための設計変更、急傾斜地法・盛土規制法の許可手続きにかかる費用と期間を見積もり、それらを足したうえで想定利回りを試算します。価格の安さだけで判断せず、確認・改修コストを数字に落とし込むことが、傾斜地の物件で失敗を避ける近道です。こうした確認は、物件の調査・設計・許可に時間がかかるため、できるだけ早い段階から専門家と動き始めるのが安全です。最終的な規制内容・許可の可否・費用は、物件所在地の建築指導課・砂防防災部局・保健所、そして建築士・行政書士・税理士などの専門家へ確認しながら進めてください。


⚠️ 本記事は2026-06-15時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

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本記事は 2026-06-15 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
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はじめ君

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傾斜地の物件で、結局いちばん大事なことは何ですか?
民泊学校 編集部

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がけ条例・急傾斜地法・盛土規制法という3つの法律と、擁壁の安全性(検査済証)を購入前に確認することです。改修費を含めた総取得コストで判断し、建築指導課や建築士に相談しながら進めてください。
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民泊学校 編集部。運営者は2015年からAirbnbでの民泊運用に携わり、複数物件の運営経験をもとに、公式ソースの確認・専門家への確認導線・実務目線の3つを軸に記事を編集しています。