民泊事業主のハラスメント防止義務 完全ガイド 2026年版|パワハラ・セクハラ・カスタマーハラスメント対策義務化(2026年10月)と社内規程整備
編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-03
スタッフを雇用する民泊ホスト・管理業者にとって、ハラスメント防止は今や任意の取り組みではなく、法律に基づく「措置義務」です。2019年のパワハラ防止法施行以来、事業主は職場のパワーハラスメント(パワハラ)・セクシャルハラスメント(セクハラ)・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ等)の防止措置を講じることが義務付けられています。さらに2026年10月1日には、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の強化策が施行される予定です。「うちは従業員が少ないから関係ない」という認識は誤りで、措置義務の対象は企業規模を問いません。本記事では、民泊事業主として押さえておくべき措置義務の全体像と、2026年10月施行予定のカスハラ対策義務化の概要、そして社内体制の整備手順を実務目線で解説します。
この記事でわかること
- パワハラ・セクハラ・マタハラに関する事業主の措置義務の全体像
- 2026年10月1日施行予定のカスタマーハラスメント対策義務化の内容
- 民泊ホスト・管理業者が整えるべき社内規程・相談窓口・研修の具体的な進め方
- 「社会通念上許容される範囲を超えた言動」の該当性をどう判断するか(断定せず)
- よくある失敗例と、小規模事業者でも対応できる体制整備の現実的な手順
- 社会保険労務士・弁護士への相談が必要な場面
- 宿泊客の言動を理由とした宿泊拒否の判断は別記事で解説(リンク案内あり)

Contents
- 1 ハラスメント防止措置義務の全体像——パワハラ・セクハラ・マタハラ
- 2 2026年10月1日施行予定:カスタマーハラスメント対策の義務化
- 3 民泊事業主が整えるべき社内体制の4本柱
- 4 社内規程と就業規則の整備——最低限必要な文書
- 5 スタッフへの研修と周知徹底の進め方
- 6 「社会通念上許容される範囲」の考え方——断定せず個別事案で判断
- 7 よくある失敗例——小規模民泊事業者の実務上の落とし穴
- 8 専門家への相談が必要な場面——社会保険労務士・弁護士の活用
- 9 ハラスメント対策の体制整備について専門家に相談する
- 10 専門家確認が必要な範囲——事業主が自己判断しないほうがよい事項
- 11 よくある質問(FAQ)
- 11.1 Q1. 住宅宿泊事業(民泊)はパワハラ防止法の適用対象ですか?
- 11.2 Q2. 業務委託で清掃スタッフを雇っていますが、措置義務の対象になりますか?
- 11.3 Q3. 2026年10月施行予定のカスハラ対策義務化は、現時点でも準備が必要ですか?
- 11.4 Q4. ゲストのカスハラをOTAに報告したら、ホスト側が評価を下げられることはありますか?
- 11.5 Q5. パワハラの相談を受けた後、加害者とされる人が「やっていない」と言ったらどうすればよいですか?
- 11.6 Q6. 民泊の運営代行会社に全面委託していますが、ハラスメント防止義務は代行会社が負いますか?
- 11.7 Q7. 「カスハラを防止するためにゲストを選びたい」という場合、法的にどこまで認められますか?
- 12 まとめ——民泊事業主のハラスメント防止義務、今すぐ確認すべきポイント
- 13 社会保険労務士・弁護士に相談する(専門家紹介窓口)
ハラスメント防止措置義務の全体像——パワハラ・セクハラ・マタハラ
現在、事業主に課されているハラスメント関係の措置義務は大きく3本の柱から成り立っています。それぞれ根拠法と対象が異なるため、まとめて理解しておくことが重要です。
パワーハラスメント(パワハラ)防止措置
労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)第30条の2〜3に基づき、事業主は職場でのパワハラ防止のために必要な措置を講じる義務があります。大企業は2020年6月から、中小企業を含む全ての事業主は2022年4月から義務の適用を受けています。スタッフが1名しかいない民泊ホストも例外ではありません。
措置義務の内容としては、職場のパワーハラスメントの内容・方針の明確化と周知・啓発、相談に応じ適切に対応するための体制の整備、ハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対応、プライバシーの保護と不利益取扱い禁止の周知が求められます。
セクシャルハラスメント(セクハラ)防止措置
男女雇用機会均等法第11条に基づき、職場におけるセクシャルハラスメントの防止措置は全ての事業主に課されています。対象となるのは職場内でのセクシャルハラスメントだけでなく、取引先・顧客・宿泊ゲストとの関係で生じる言動も含まれる点に注意が必要です。
民泊事業では、清掃スタッフや予約管理スタッフがゲストと直接対応する場面が多く、ゲスト側からスタッフへのセクシャルな言動が生じるケースも実務上は報告されています。こうした場合にも、事業主としての対応体制が求められます。
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・パタハラ等)防止措置
男女雇用機会均等法第11条の3、育児・介護休業法第25条に基づき、妊娠・出産・育休取得を理由とした不利益取扱いや嫌がらせに関する防止措置も義務となっています。民泊業界はパートタイムや短時間勤務のスタッフを活用するケースが多く、特に清掃スタッフで妊娠した場合の対応を明文化していない事業者が見受けられます。あらかじめ方針を整備しておくことが実務上の安全策といえます。
(2026-06-03取得)
パワハラ・セクハラ・マタハラそれぞれの根拠法と事業主の措置義務の内容を一覧で確認できます。
| ハラスメント種別 | 根拠法 | 措置義務の対象規模 | 施行時期 |
|---|---|---|---|
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法 第30条の2〜3 | 全事業主(規模問わず) | 中小企業: 2022年4月〜 |
| セクシャルハラスメント | 男女雇用機会均等法 第11条 | 全事業主(規模問わず) | 既施行(2007年〜強化) |
| 妊娠・育休等ハラスメント | 男女雇用機会均等法 第11条の3・育介法 第25条 | 全事業主(規模問わず) | 既施行 |
| カスタマーハラスメント対策 | 労働施策総合推進法(改正・施行予定) | 全事業主(規模問わず) | 2026年10月1日 施行予定 |
「スタッフが2〜3人の小規模な民泊事業者は対象外」という理解は誤りです。労働施策総合推進法のパワハラ防止措置義務は、企業規模を問わず全ての事業主に適用されています。措置を怠った場合、労働局の行政指導を受ける可能性があります。
2026年10月1日施行予定:カスタマーハラスメント対策の義務化
2025年の労働施策総合推進法等の改正により、事業主はカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)への対策も法的な義務として講じることが求められるようになる予定です。施行日は2026年10月1日とされており、本稿執筆時点(2026年6月)では施行前です。最終的な詳細は公式資料および行政の案内でご確認ください。
カスタマーハラスメントとは何か
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先等の立場にある者が行う、社会通念上許容される範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境を害するものとされています。どの言動が「社会通念上許容される範囲を超えている」かは個別事案によって判断が異なり、一概に断言できるものではありません。具体的な該当性については、社会保険労務士や弁護士に相談することをお勧めします。
民泊事業の現場では、宿泊ゲストによる過剰なクレーム・要求、清掃スタッフへの不当な言動、深夜の繰り返し連絡等が、スタッフのメンタルヘルスに影響するケースが報告されています。こうした事例は、カスハラとしての要件を満たす可能性があります。
カスタマーハラスメント対策の措置義務化は、本記事執筆時点(2026年6月3日)で施行前の「2026年10月1日施行予定」の状態です。施行後に求められる具体的な措置内容は、厚生労働省の公式案内および指針・ガイドラインを必ずご確認ください。本記事の情報は予告なく変更される可能性があります。
2026年10月施行後に求められる措置の概要(施行予定)
厚生労働省が公開している改正の概要によれば、2026年10月以降、事業主はカスタマーハラスメントに関する方針の明確化・周知、相談体制の整備、被害を受けた労働者へのフォロー体制、関係機関との連携といった措置を講じることが求められる見込みです。詳細は指針の策定を経て確定するため、随時情報を確認することが重要です。
(2026-06-03取得)
2026年10月1日施行予定のカスタマーハラスメント対策強化に関する概要資料。事業主が講じるべき措置の方向性を確認できます。
ゲストのカスハラ行為を理由に宿泊を断れるかどうか(旅館業法第5条改正に基づく宿泊拒否権の判断)は、本記事の対象外です。詳細は 民泊カスハラ対応:宿泊拒否判断・記録保全・OTA通報ガイド をご参照ください。

民泊事業主が整えるべき社内体制の4本柱
ハラスメント防止措置を法的に「講じた」と評価されるためには、形式的な文書の作成にとどまらず、実際に機能する体制を整えることが必要です。厚生労働省の指針・ガイドラインが示す措置義務の内容を踏まえ、民泊事業者の実情に合った4本柱を整理します。
第1柱:事業主の方針の明確化と周知・啓発
「職場でハラスメントを絶対に許さない」という事業主の方針を明確にし、全スタッフに周知することが出発点です。就業規則・雇用契約書・スタッフハンドブック等に方針を明記し、入社時のオリエンテーションで口頭説明することが実務上の標準的な対応とされています。
民泊業界では、清掃スタッフが外部の清掃会社からの派遣・業務委託である場合も多く、直接雇用でない場合も対応に影響する可能性があります。委託先への方針の共有・協力依頼を検討することが現実的な対応策の一つです。ただし、派遣・業務委託の取扱いは状況によって異なるため、社会保険労務士への確認を推奨します。
第2柱:相談窓口の設置と相談対応の体制整備
スタッフがハラスメントの被害を受けた場合や目撃した場合に相談できる窓口を設けることが求められます。社内の担当者(人事担当・管理責任者)が窓口となる形が基本ですが、小規模な民泊事業者では「事業主本人にしか相談できない」構造になりがちです。この場合、外部の相談機関(社会保険労務士事務所・弁護士事務所)を窓口として指定する方法や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーへの案内を周知する方法が現実的な選択肢の一つとして考えられます。
相談窓口の運用では、プライバシーの保護(相談内容を第三者に漏らさないこと)と、相談者が不利益な取扱いを受けないことの保証(報復禁止の明示)が必須要件とされています。
第3柱:事案発生時の迅速・適切な対応
ハラスメントの相談があった場合や事案が発生した場合に、事業主が迅速に事実関係を確認し、適切な対応を取ることが求められています。対応手順を事前に整備しておくことが、いざという時の判断ブレを防ぎます。
具体的には、以下のような流れが一般的です。
- 相談者からの聴取(プライバシーに配慮した個別面談)
- 行為者・関係者からの事実確認
- 事実確認後の対応方針の決定(注意・指導・配置転換等)
- 被害者・行為者双方へのフォロー
- 再発防止措置の実施
民泊事業では、行為者がゲストである「カスタマーハラスメント」の場合、対応がより複雑になります。ゲストへの対応とスタッフ保護の両立について、社会保険労務士や弁護士に相談したうえで、あらかじめ対応フローを文書化しておくことが現実的な対策です。
第4柱:プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談した事実や関与した内容を理由に、相談者・被害者が不当な扱いを受けないことを明示する必要があります。「相談したら仕事を減らされた」「シフトを外された」といった事態は、法律上の不利益取扱い禁止に違反する可能性があります。
また、事案に関わる全ての関係者のプライバシーを保護することも、事業主の義務として明示されています。相談内容を他のスタッフに漏らすことや、行為者の情報を不必要に開示することも問題となる場合があります。
(2026-06-03取得)
2026年10月1日施行予定の改正内容について、措置義務の対象・具体的措置の内容を確認できます。
社内規程と就業規則の整備——最低限必要な文書
ハラスメント防止措置を「文書で証明できる状態」にすることは、行政指導時や紛争発生時に事業主を守る重要な実務判断です。以下に、民泊事業者が最低限整備しておくべき文書の種類を示します。
就業規則へのハラスメント禁止規定の明記
常時10名以上のスタッフを雇用する場合は、労働基準法により就業規則の作成・届出が義務付けられています。10名未満の場合でも就業規則を作成することが推奨されており、ハラスメントの禁止・相談窓口・不利益取扱いの禁止・違反時の懲戒についての条項を盛り込んでおくことが現実的な対策です。
就業規則の雛形は厚生労働省のモデル就業規則(公式サイトで公開)を参考にしながら、自社の実情に合わせて社会保険労務士の確認のもとで整備することをお勧めします。
ハラスメント防止規程(ポリシー)の策定
就業規則とは別に、ハラスメント防止に特化した規程(ポリシー)を整備することで、スタッフへの周知が容易になります。規程に盛り込む要素としては、以下が一般的です。
- 禁止するハラスメントの定義と具体例
- 相談窓口の名称・連絡先
- 相談があった場合の手続きフロー
- プライバシー保護の約束
- 不利益取扱い禁止の明示
- 違反した場合の懲戒規定
- カスタマーハラスメントへの対応方針(2026年10月施行予定を踏まえて追記)
カスタマーハラスメント対応マニュアルの整備
2026年10月施行予定のカスハラ対策義務化に向けて、今から対応マニュアルの骨格を作っておくことが現実的な準備です。マニュアルには、「社会通念上許容される範囲を超えた言動」の目安となる例示、スタッフが単独で対応するのではなく管理者や上位職者にエスカレーションする手順、記録の残し方(日時・内容・対応者・ゲスト側の言動の概要)を盛り込むことが考えられます。
なお、どの言動が「社会通念上許容される範囲を超えている」かの判断は、個別事案ごとに異なります。マニュアルに「これに該当したら即カスハラ」と断定的に記載することは慎重に避け、「疑わしい場合は管理者に報告し、必要に応じて弁護士に相談する」という判断フローにしておくことが安全策といえます。
| 文書種別 | 対象規模の目安 | 主な記載内容 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 就業規則(ハラスメント禁止条項) | 10名以上(法的義務)/ 10名未満も推奨 | 定義・禁止・懲戒 | 最優先 |
| ハラスメント防止規程 | 全規模 | 相談窓口・手続き・プライバシー保護 | 高 |
| カスハラ対応マニュアル | 全規模(2026年10月以降は特に必須) | エスカレーション手順・記録方法 | 中〜高(2026年9月までに整備推奨) |
| 研修記録 | 全規模 | 実施日・参加者・内容概要 | 中 |
スタッフへの研修と周知徹底の進め方
措置義務のうち「周知・啓発」については、文書の作成だけでは不十分で、スタッフが実際に内容を理解していることが求められます。特に小規模な民泊事業者では、大企業のような集合研修が難しいケースも多いですが、代替手段はいくつかあります。
研修の方法と記録
スタッフ数が少ない場合は、以下のような方法が現実的です。
- 入社時オリエンテーションでのハラスメント防止規程の読み合わせと確認署名
- 厚生労働省「あかるい職場応援団」が公開するeラーニング教材の活用(無料)
- 年1回程度の簡易ミーティングでのハラスメント事例の共有と再確認
- カスハラ対応マニュアルのロールプレイ(対応する側と相談する側を交互に体験)
どの方法を選んでも、「いつ・誰が・何を受講したか」の記録を残しておくことが重要です。行政指導や紛争発生時に「研修を実施していた」という証拠として機能します。
清掃スタッフ・業務委託スタッフへの対応
民泊事業では、清掃スタッフを清掃会社へ業務委託している場合や、予約管理・チェックイン対応を外部の代行業者に依頼している場合が多くあります。直接雇用でない場合、法的に事業主の措置義務がどこまで及ぶかは状況によって異なりますが、委託先が自社スタッフと同一の場所で業務を行う場合は、協力体制を整えることが現実的な対応といえます。
業務委託契約に「委託業務遂行中のハラスメント防止に関する協力義務」を盛り込む形が一般的ですが、契約書の内容については弁護士に確認することをお勧めします。
雇用形態によって適用される法律や義務の範囲が異なる場合があるため、民泊スタッフの雇用形態と労務管理および労働基準法の基本と民泊スタッフへの適用も合わせてご参照ください。
清掃スタッフが清掃会社の雇用であれば、主たる措置義務は清掃会社が負うとされています。ただし、ゲストとのやり取りを調整しているのが民泊ホスト側であれば、事業主として協力体制を整えることが現実的な対応策です。詳細は社会保険労務士にご相談ください。
「社会通念上許容される範囲」の考え方——断定せず個別事案で判断
ハラスメントに関する議論で最も難しいのが、「これはハラスメントに該当するか」という境界線の判断です。本記事では、この判断について断定することを避け、考え方の枠組みを示すにとどめます。
パワハラの類型と境界線の考え方
厚生労働省の指針では、パワーハラスメントの類型として身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6類型が示されています。ただし、業務上の適正な指導との境界線は、「業務上の必要性があるか」「態様が相当か」という観点から個別に判断されるものとされています。
民泊事業では、シフトの急な変更要求・清掃品質に関する厳しいフィードバック・予約管理ミスへの指摘等が「業務上の指導」と「ハラスメント」の境界上に位置するケースがあります。「指導として適切か」の判断に迷う場合は、社会保険労務士または弁護士に相談することが安全策です。
カスハラの「許容される範囲を超えた言動」の判断
カスタマーハラスメントについても、どの言動が「社会通念上許容される範囲を超えた」ものかは、個別の文脈・頻度・態様によって判断が異なります。「一度でも強い口調でクレームを言ったらカスハラ」とは一概に言えず、逆に「法的権利に基づく適切なクレーム」はカスハラには該当しません。
スタッフが不当な言動を受けたと感じた場合に「まず管理者に報告する」という手順を明確にしておくことが、事業主側の現実的な対応です。報告を受けた管理者が対応方針を判断し、必要に応じて弁護士に相談する流れを作っておくことが、個別判断の精度を高めます。
なお、カスハラ行為を理由とした宿泊拒否の判断については、旅館業法第5条の改正内容が関係します。この判断フローは 民泊カスハラ対応:宿泊拒否判断・記録保全・OTA通報ガイド で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。

よくある失敗例——小規模民泊事業者の実務上の落とし穴
ハラスメント防止の措置義務について、小規模な民泊事業者が陥りやすい失敗パターンをまとめます。「自分は当てはまらないか」チェックリストとしてご活用ください。
パートタイムや短時間労働者でも、雇用契約があれば措置義務の対象となります。「本業が別にある」「副業として民泊を運営している」場合でも、雇用している実態があれば義務は免除されません。労働局の調査が入った際に「措置義務を知らなかった」では通らない可能性があります。
「ハラスメントはNGと言ってある」という口頭の周知だけでは、万が一の紛争時に事業主が不利な立場になるケースがあります。方針や手続きを文書化し、スタッフに配布・署名確認を得ておくことが現実的な対策です。
スタッフがゲストからのカスハラ被害を相談したにもかかわらず、「収益が大事だから我慢してほしい」「ゲストに強く言えない」という対応を取ることは、事業主の義務不履行とみなされる可能性があります。相談があれば事実確認し、対応を取ることが求められています。
ハラスメントの相談をしたことを理由(または口実)にシフトを減らしたり、雇い止めにしたりすることは、不利益取扱い禁止に違反する可能性があります。「問題を起こすスタッフ」として扱うことは、二次的なハラスメント(報復)にあたるとされることがあります。
OTAプラットフォームの規約やサポート体制はゲスト管理に関するものであり、自社スタッフのハラスメント防止措置とは別の問題です。OTAへの通報・宿泊拒否の手続きと、社内スタッフ保護の体制整備は並行して進める必要があります。
専門家への相談が必要な場面——社会保険労務士・弁護士の活用
ハラスメント防止措置を正しく整備するうえで、専門家への相談は早い段階で行うことが現実的な判断です。以下に、相談が特に有効な場面を示します。
社会保険労務士への相談が有効な場面
- 就業規則・ハラスメント防止規程の作成・見直し
- 相談窓口の設置方法・運用体制の構築
- スタッフへの研修内容の設計
- 雇用形態(正社員・パート・業務委託)別の措置義務の範囲確認
- 措置義務の充足状況のチェックとアドバイス
- カスタマーハラスメント対策義務化(2026年10月施行予定)への対応準備
弁護士への相談が有効な場面
- スタッフがパワハラ・カスハラ被害を受け、法的対応の検討が必要な場合
- ゲストの言動が「社会通念上許容される範囲を超えた言動」に該当するかの判断
- ゲストへの対応(警告・利用停止等)が法的に問題ないかの確認
- 業務委託契約へのハラスメント防止条項の盛り込み方
- 労働審判・訴訟に発展した場合の対応
民泊業界に詳しい社会保険労務士・弁護士への相談窓口は、以下のCTAからお問い合わせいただけます。最終的な対応方針の決定は、必ず専門家の確認のもとで行うことをお勧めします。
ハラスメント対策の体制整備について専門家に相談する
社会保険労務士・弁護士への相談窓口をご案内します。就業規則の整備から2026年10月のカスハラ義務化対応まで、民泊事業の実情に合わせて確認してみてください。
専門家確認が必要な範囲——事業主が自己判断しないほうがよい事項
本記事では実務上の判断枠組みを提供していますが、以下の事項については事業主の自己判断ではなく、専門家への確認が必要です。
| 確認事項 | 相談先 | 理由 |
|---|---|---|
| 就業規則・規程の法的適正性 | 社会保険労務士 | 労働基準法・均等法との整合が必要 |
| 「パワハラ該当性」の判断 | 社会保険労務士または弁護士 | 個別事案の状況・証拠次第で判断が異なる |
| 「カスハラ該当性」の判断 | 弁護士 | 社会通念上の相当性は法的判断が必要 |
| 解雇・雇い止めの妥当性 | 弁護士 | 不当解雇リスクへの対応 |
| 業務委託契約へのハラスメント条項追加 | 弁護士 | 偽装請負リスク・条項の有効性確認 |
| 2026年10月施行予定の措置義務詳細 | 社会保険労務士 または 厚生労働省窓口 | 施行後の指針・ガイドラインを確認する必要がある |
また、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」では、ハラスメントに関する相談・紛争解決の援助を無料で提供しています。費用をかけずに初歩的な確認を行いたい場合に活用する方法もあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 住宅宿泊事業(民泊)はパワハラ防止法の適用対象ですか?
住宅宿泊事業法に基づく民泊ホストであっても、スタッフを1名以上雇用していれば労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の適用を受けます。民泊に特有の適用除外規定はなく、業種を問わず全事業主が対象とされています。
Q2. 業務委託で清掃スタッフを雇っていますが、措置義務の対象になりますか?
業務委託(請負)契約であれば、形式上は清掃会社との間の契約であり、清掃スタッフは民泊ホストの直接雇用ではありません。ただし、実態として指揮命令関係があると判断された場合は「偽装請負」とみなされるリスクがあります。また、清掃スタッフがゲストと接触する場でのカスハラへの対応は、業務発注者として協力義務が生じる可能性があります。社会保険労務士への確認を推奨します。
Q3. 2026年10月施行予定のカスハラ対策義務化は、現時点でも準備が必要ですか?
施行前ではありますが、2026年10月に向けた準備を今から進めることは現実的かつ推奨される対応です。特に就業規則へのカスハラ対応方針の追記、相談手順の整備、スタッフへの周知は施行前でも着手可能です。施行後の指針・ガイドラインが公表されたタイミングで内容を確認・補強する二段階アプローチが現実的といえます。
Q4. ゲストのカスハラをOTAに報告したら、ホスト側が評価を下げられることはありますか?
OTAプラットフォームの評価制度・通報対応の詳細は各プラットフォームの規約・ポリシーによって異なり、本記事での断定は避けます。カスハラ対応とOTA通報の実務については、民泊カスハラ対応:宿泊拒否判断・記録保全・OTA通報ガイドをご参照ください。
Q5. パワハラの相談を受けた後、加害者とされる人が「やっていない」と言ったらどうすればよいですか?
当事者の主張が対立する場合、事業主単独で事実認定を行うことは難しく、第三者(社会保険労務士・弁護士)の関与を検討することが現実的な対応です。都道府県労働局の紛争解決援助制度を利用する方法もあります。いずれの場合も、相談者・被申告者双方のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止を徹底することが前提です。
Q6. 民泊の運営代行会社に全面委託していますが、ハラスメント防止義務は代行会社が負いますか?
運営代行会社の雇用するスタッフに対する措置義務は、原則として運営代行会社が負います。ただし、物件オーナーが別途アルバイトや清掃スタッフを直接雇用している場合は、物件オーナー側にも義務が生じます。また、運営代行会社が適切なハラスメント対策を取っているかを委託契約上で確認しておくことが、物件オーナーとしての現実的なリスク管理といえます。
Q7. 「カスハラを防止するためにゲストを選びたい」という場合、法的にどこまで認められますか?
宿泊客の選別・宿泊拒否の判断については、旅館業法・住宅宿泊事業法の規定が関係し、本記事の範囲を超えます。この点については 民泊カスハラ対応:宿泊拒否判断・記録保全・OTA通報ガイド で詳しく解説しています。宿泊拒否の適法性については必ず専門家に確認してください。
まとめ——民泊事業主のハラスメント防止義務、今すぐ確認すべきポイント
本記事で解説したポイントを整理します。
- パワハラ・セクハラ・マタハラの防止措置義務は、規模を問わず全ての事業主に既に課されています
- 2026年10月1日施行予定のカスタマーハラスメント対策義務化は、民泊事業者にも適用される見込みです(施行前)
- 措置義務の4本柱は「方針の明確化・相談体制・事案対応・プライバシー保護と不利益取扱い禁止」です
- 就業規則・ハラスメント防止規程・カスハラ対応マニュアルの整備を優先的に進めることが実務上の第一歩です
- 「どの言動がハラスメントに該当するか」の判断は個別事案・専門家確認が原則です。事業主が単独で断定することは避けてください
- 宿泊拒否の判断は本記事の範囲外です。カスハラ対応の別記事をご参照ください
スタッフを守る体制を整えることは、事業継続リスクの低減と人材確保の両面で民泊事業者の競争力に直結します。2026年10月の施行予定を一つの契機として、まずは方針の文書化と相談窓口の設置から着手することをお勧めします。社会保険労務士・弁護士への確認を早めに行うことで、対応コストを抑えながら実効性のある体制を整えることが現実的な進め方です。
社会保険労務士・弁護士に相談する(専門家紹介窓口)
ハラスメント防止規程の整備・2026年10月のカスハラ義務化対応・個別事案の判断まで、民泊事業に詳しい専門家をご案内します。
⚠️ 本記事は2026-06-03時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)
本記事は 2026-06-03 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。
- 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
- 消防: 物件所在地の所轄消防署
- 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
- 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
- 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士
当サイトでは、上記の専門家・自治体への確認窓口を 運営代行業者の選び方 で案内しています。
収支試算は 収支シミュレーター、物件可否は 無料可否診断 をご利用ください。
本記事の情報は予告なく変更される可能性があります。掲載情報の利用により生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。










