編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-03

温泉地の物件、あるいは敷地内に源泉を持つ物件で民泊を始めようと考えたとき、「温泉を提供するにはどんな許可が必要か」という疑問は避けて通れません。温泉の利用には温泉法に基づく都道府県知事の許可が原則として必要であり、さらに宿泊客が共同で利用する浴槽を設けるかどうかによっては公衆浴場法の規制も関わってきます。許可を取らずに温泉を提供すると、温泉法上の罰則リスクが生じるだけでなく、旅館業の許可審査においても大きな支障となります。本記事では、源泉を自ら掘削・採取するケース、すでに引湯権のある物件を活用するケース、既存温泉施設に隣接するケースの三択フローを整理しつつ、温泉法上の許可3種(掘削許可・採取許可・利用許可)の内容、公衆浴場法との境界線、旅館業との関係、よくある失敗例を実務目線でまとめます。最終的な判断は必ず所在地の都道府県温泉担当課および行政書士にご確認ください。

この記事でわかること

  • 温泉法が定める許可3種(掘削許可・採取許可・利用許可)の違いと取得の必要性
  • 源泉所有・引湯・既存温泉活用の三択フローと、それぞれに必要な手続き
  • 利用許可の取得手順と、都道府県による審査のポイント
  • 公衆浴場法の適用範囲(共同浴場と個室浴槽の境界線)
  • 旅館業許可(旅館・ホテル営業)と民泊届出(住宅宿泊事業)での温泉提供の違い
  • 温泉民泊で見られる失敗例と事前に防ぐためのポイント
  • 専門家・自治体に確認すべき具体的な範囲
minpaku-onsen-riyokyo-2026 Step1 許可を知る

Contents

温泉法の基本構造:許可3種の概説

まず前提として、温泉法(昭和23年法律第125号)の目的と許可制度の骨格を把握しておきましょう。温泉法は、天然温泉の保護と適正利用を目的として制定されており、温泉の「掘削」「採取」「利用」のそれぞれに対して都道府県知事の許可または届出を要求しています。

温泉法第2条では、温泉とは「地中からゆう出する温水・鉱水および水蒸気、その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温度(摂氏25度以上)またはGH規定の成分を有するもの」と定義されています。つまり、見た目は普通の温水でも成分要件を満たせば温泉と見なされるため、「うちは低温泉だから関係ない」という認識は誤りである可能性があります。

許可1:掘削許可(温泉法第3条)

地中を掘削して新たに温泉を取得しようとする場合、都道府県知事の許可が必要です(温泉法第3条)。許可申請には、掘削位置・深度・目的・周辺既存源泉への影響評価などが求められます。自然湧出の温泉を利用するだけであれば掘削許可は不要ですが、既存の湧出口を拡張したり、新たに試掘を行う場合は原則として申請が必要と解されています。

許可2:採取許可(温泉法第11条)

掘削許可を受けた後、または自然湧出温泉を継続的に採取・利用しようとする場合に必要となるのが採取許可です。採取量・採取方法・用途などについて審査が行われます。都道府県によっては掘削許可と採取許可を一体的に審査するケースもあるため、事前に所在地の担当課に確認することを推奨します。

許可3:利用許可(温泉法第15条)

温泉を公共的に利用させる(宿泊客等に入浴等として提供する)場合には、温泉法第15条に基づく利用許可が必要です。民泊施設での温泉提供はこの「利用許可」が直接関わる区分であり、許可なく宿泊客に温泉を使わせることは温泉法違反となりえます。後述する埼玉県の事例も、この利用許可の取り扱いについて詳細に言及しています。

環境省「温泉法の概要」
(2026-06-03取得)

温泉法の目的・定義・許可制度の基本骨格を環境省が整理したページ。掘削許可・採取許可・利用許可の根拠条文の確認に利用。

e-Gov「温泉法」
(2026-06-03取得)

温泉法の全条文。第2条(定義)・第3条(掘削許可)・第11条(採取許可)・第15条(利用許可)の確認に利用。

はじめ君

はじめ君

温泉って、湧き出してる天然のものでも許可が要るんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

現状の温泉法では、自然湧出であっても宿泊客に提供する場合は利用許可が必要とされています。掘削しないから不要とは言い切れない点が実務上のポイントです。

源泉所有・引湯・既存温泉活用:三択フローと必要な手続き

民泊物件で温泉を提供しようとする際の状況は、大きく3つに分類できます。それぞれで必要となる手続きが異なるため、まず自分の物件がどのパターンに当たるかを確認してください。

パターン 状況 主な必要手続き 難易度目安
① 源泉を自ら掘削・保有 敷地内に新たに源泉を掘削するまたは自噴源泉を新規取得 掘削許可申請 → 採取許可申請 → 利用許可申請 高(数百万円〜の費用・数年単位の期間)
② 引湯(温泉供給業者から温泉を購入・配管で引く) 近隣の源泉保有者または温泉供給事業者と契約して引湯 供給元の採取許可確認 → 利用許可申請(自施設分) 中(供給契約の交渉・自施設の利用許可取得が必要)
③ 既存温泉施設に隣接または温泉付き既存物件を活用 旅館・ホテル廃業物件、または温泉付き古民家などを取得 既存採取許可・利用許可の承継可否確認 → 変更届出または新規利用許可申請 中(許可の承継要件が都道府県により異なる)
!重要:許可は都道府県知事が発行

温泉法上の掘削・採取・利用の各許可は、物件所在地の都道府県知事が発行します。申請窓口・必要書類・審査基準は都道府県により異なるため、「他の都道府県では通った」という事例が自分の物件に当てはまるとは限りません。必ず所在地の都道府県環境・温泉担当課に確認してください。

パターン①(掘削から始める)の場合は、まず掘削許可取得から始める必要があります。掘削の可否は地質条件・周辺源泉への影響・熱源の有無など技術的要素が多く、専門の温泉掘削業者との事前調査が現実的です。許可が下りても必ず温泉が出るとは限らない点も念頭に置く必要があります。

パターン②(引湯)は、すでに温泉供給事業者が近くにある温泉地で現実的な選択肢です。供給元がすでに採取許可を持っていることを確認した上で、自施設としての利用許可申請を行うケースが多く見られます。ただし、温泉供給事業者との契約内容(提供量・温度・成分・価格)は事前に精査が必要です。

パターン③(既存物件の活用)は、廃業した旅館・ホテルを取得する際などに該当します。既存の許可が自動的に承継されるわけではなく、都道府県によっては新たな利用許可申請が必要な場合もあります。物件取得前に必ず許可の承継可否を確認することを推奨します。

はじめ君

はじめ君

温泉付きの古民家を買えば、そのまま温泉を使ってもいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

前所有者の採取許可・利用許可がそのまま引き継がれるかどうかは都道府県により異なります。物件取得前に担当課へ承継可否を確認し、必要なら新規申請の準備をするのが現実的な手順です。

利用許可の取得手順と審査のポイント

民泊施設で宿泊客に温泉を提供する際に最も直接的に関係するのが、温泉法第15条の利用許可です。ここでは利用許可の申請から取得までの一般的な流れと、審査でよく確認される事項を整理します。なお、申請様式・添付書類・手数料は都道府県ごとに定められているため、以下はあくまで一般的な目安です。

minpaku-onsen-riyokyo-2026 Step2 境界を確認

利用許可申請の一般的な流れ

  1. 事前相談(都道府県温泉担当課):物件の所在地・温泉の利用形態・源泉の状況などを事前に相談。必要書類リストと申請様式を入手する。
  2. 申請書類の作成・添付:温泉分析書(成分・温度・湧出量の公的試験機関による分析結果)、利用計画(施設概要・利用目的・利用人数の見込み)、施設図面(浴槽・配管・換気設備の図面)などが一般的に必要。
  3. 申請書の提出:所在地の都道府県の担当窓口に申請書類一式を提出。
  4. 現地確認・審査:担当官による現地確認が行われる場合がある。
  5. 利用許可証の交付:審査通過後、利用許可証が交付される。
i補足:温泉分析書の有効期限

温泉分析書は一般的に10年ごとの更新が必要とされています。古い分析書しかない物件を取得した場合は、最新の温泉分析書の取得費用も見込んでおく必要があります。費用は概ね数万円〜数十万円とされますが、分析機関・成分数・温泉の種類によって幅があります。

審査で特に確認される事項として、硫化水素など有毒ガスを含む温泉の場合は換気設備の適切性が重視されます。浴室内の換気不足による事故は全国で複数報告されており、設備基準を満たしていない場合は許可が下りない、あるいは改善を求められる事例があります。温泉の成分を事前に把握し、必要な換気設備を整えることが前提条件となります。

また、民泊施設(住宅宿泊事業)での温泉提供については、埼玉県が具体的な解釈を公表しています。宿泊客専用で個室内の浴槽に温泉水を引く形態と、複数の宿泊者が共同で利用する形態では、必要な許可・届出の種類や関係する法律が異なる可能性がある点を同ページは示しています。

埼玉県「民泊施設における温泉の利用について」
(2026-06-03取得)

住宅宿泊事業(民泊)における温泉利用の取り扱いについて、埼玉県が自治体として整理した解説ページ。個室浴槽と共同浴場の取り扱いの違いを確認するために参照。

はじめ君

はじめ君

利用許可を申請してから取得できるまで、どのくらいかかりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

都道府県や申請内容により異なりますが、現地確認を含めると数週間〜数か月かかるケースが多いようです。温泉分析書の取得も含めると開業前に相当の準備期間を確保することが現実的です。

公衆浴場法との境界:共同浴場と個室浴槽の違い

温泉を民泊施設で提供する際に温泉法と並んで検討が必要なのが、公衆浴場法です。公衆浴場法は「温湯、潮湯または温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」を規制するものであり、複数のゲストが共同で利用する浴場(大浴場・貸切露天風呂など)が典型的な適用対象と考えられています。

一方、宿泊部屋に付帯している個室浴槽(客室内の温泉風呂)については、公衆浴場法の「公衆を入浴させる施設」には当たらず、附帯設備として旅館業の枠組みで処理するという解釈が実務上は多く見られます。ただし、この取り扱いは都道府県の衛生担当課の判断によるところが大きく、全国一律に「個室浴槽は公衆浴場法不要」と断言できる状況ではありません。

施設形態 公衆浴場法の適用可能性 備考
客室内の個室温泉浴槽(宿泊客専用・同宿泊グループのみ利用) 多くの都道府県で附帯設備として扱われ不要とされる例あり ただし都道府県差あり。事前確認が必要
複数予約グループが共同利用する大浴場または貸切風呂 公衆浴場法の適用対象となる可能性が高い 都道府県への申請または届出が必要になる可能性
時間貸し・入れ替え制の貸切温泉浴槽 運用形態によって判断が分かれる事例あり 衛生担当課への事前確認が強く推奨される

公衆浴場法が適用される場合、都道府県の条例で定められた構造設備基準(浴槽面積・換気・採光・更衣室・トイレ等)を満たす必要があり、また衛生管理規定(水質検査・清掃記録等)への対応も求められます。民泊として小規模な運営を想定しているオーナーにとって、大浴場を設けることが必ずしも現実的ではない理由の一つがここにあります。

なお、サウナや人工温浴設備(人工炭酸泉・シルク風呂等)の設置に関しては、既存記事「民泊施設でサウナ・スパ設備を設置するには」で詳しく解説しています。天然温泉に特有の許可要件(温泉法上の手続き)とは性質が異なるため、本記事との併読を推奨します。

!「個室浴槽は公衆浴場法不要」と安易に判断しない

個室浴槽への公衆浴場法適用不要の解釈は各都道府県の衛生担当課が判断します。A都道府県では不要と言われた形態が、B都道府県では必要と判断される場合もあります。開業前に必ず物件所在地の担当課へ書面または対面で確認し、確認結果を記録として残してください。

はじめ君

はじめ君

客室に温泉の浴槽があるだけなら、公衆浴場の許可はいらないですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

同一予約グループのみが利用する個室浴槽は附帯設備として扱われる例が多いですが、都道府県によって判断が異なります。物件所在地の衛生担当課に確認してから設計・施工に進む順序が現実的です。

旅館業との関係:許可の種類と温泉提供の条件

温泉を宿泊客に提供する施設を運営する場合、宿泊形態に応じて旅館業法または住宅宿泊事業法(民泊法)のどちらの枠組みで運営するかによって、関係する許可・届出の構造が変わります。

旅館業許可(旅館・ホテル営業)の場合

旅館業法上の旅館・ホテル営業の許可を取得して温泉を提供する場合、旅館業許可申請と並行して温泉法の利用許可申請が必要となります。旅館業許可の審査においても、温泉設備に関する衛生・安全基準(換気・浴槽の構造等)が確認されることが多く、温泉利用許可を持っていることが開業条件となる実態があります。

旅館業許可の取得については、「旅館業許可の申請手順と審査ポイント」で詳しく解説しています。温泉提供を前提とした場合の旅館業審査との関係については、そちらも参照してください。

住宅宿泊事業(民泊法)届出の場合

住宅宿泊事業(年間180日制限あり)として届け出て温泉を提供する場合にも、温泉法の利用許可は原則として必要です。「民泊だから温泉の許可は不要」という解釈は通常成立しません。埼玉県が公表している資料では、民泊施設(住宅宿泊事業)においても温泉を利用させる場合は温泉法の手続きが必要である旨が示されています。

住宅宿泊事業の年間180日制限を考慮すると、温泉の掘削・採取・利用許可のために相当の費用と期間を投資することが事業上合理的かどうかは、慎重に試算する必要があります。例えば、年間稼働日数が上限180日に制約される中で、温泉関連の初期投資・維持管理費・更新手続き費用を回収できるかどうかは、収支シミュレーターを活用して具体的に試算することを推奨します。

また、民泊施設に設ける温泉の利用形態が「宿泊客専用・個室」か「共同浴場」かによって関係する手続きが変わる点は前述の通りです。大浴場を設けて複数グループの宿泊客に共同で温泉を提供しようとすると、住宅宿泊事業の枠組みでは対応困難なケースも出てきます。

はじめ君

はじめ君

民泊(住宅宿泊事業)で温泉を提供するなら旅館業にした方がよいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

180日制限の中で温泉投資を回収できるかは物件・エリアによります。温泉を本格的に売りにするなら旅館業も視野に入れるべきケースがあります。事業計画と合わせて専門家に相談することをお勧めします。

温泉民泊でよくある失敗例

minpaku-onsen-riyokyo-2026 Step3 確認する

温泉付き民泊物件の開業相談や事例から見えてくる典型的な失敗パターンを整理します。これらを事前に把握しておくことで、余分なコスト・時間の損失を防ぐ一助となります。

!失敗例1:物件取得後に利用許可が承継できないと判明

廃業した温泉旅館の物件を取得した際、前所有者の利用許可がすでに失効または返還されていたケース。取得前に許可の現状を確認せず、購入後に新規の利用許可申請が必要となり、開業まで数か月〜1年以上かかる事態になった例があります。物件売買の段階で許可の承継可否を必ず確認してください。

!失敗例2:硫化水素対応の換気設備を見落とす

硫化水素を含む泉質(硫黄泉など)の施設で、換気設備が温泉法・建築基準法の要件を満たしていないと判断され、利用許可申請が却下または改修を求められたケース。温泉分析書で成分を事前確認し、浴室の換気設備は設計段階で担当課に事前相談することが重要です。

!失敗例3:引湯契約の終了で突然温泉が使えなくなる

温泉供給業者との引湯契約に解約条項を十分確認せず、供給元の事情(源泉枯渇・業者廃業等)で供給が突然停止したケース。民泊の商品価値が温泉にある場合、収益への打撃が大きいです。供給量・温度・解約条件・代替供給先の確保について契約前に精査してください。

!失敗例4:温泉分析書の期限切れに気づかずに運営

10年ごとの更新が必要な温泉分析書の期限が切れていることに気づかず、利用許可の更新審査で指摘されたケース。物件取得時に分析書の有効期限を確認し、期限が近ければ取得費用を見込んだ事業計画を立ててください。

!失敗例5:「温泉」表示に関する不正確な情報発信

温泉法の要件を満たさない水(基準成分未達・加水過多等)を「天然温泉」として宣伝したケース。温泉法では温泉に関する広告・表示について一定の規制があり、不正確な温泉表示は景品表示法上も問題となりえます。提供する湯の成分・加水・加温・循環ろ過の有無については正確な情報開示が求められます。

はじめ君

はじめ君

温泉付き物件を買う前に、何を一番最初に確認すればいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

まず温泉の利用許可・採取許可が現在も有効か、そして取得者が誰かを確認することが最優先です。許可が失効していれば新規取得が必要で、費用・時間が大きく変わります。

あなたの物件で温泉民泊が可能か確認しよう

物件の民泊可否を無料診断

用途地域・管理規約・条例の3点を3分で確認できます。温泉提供を含む特殊要件は診断後に専門家への相談導線を案内します。

無料で診断を始める

専門家・自治体に確認すべき範囲

温泉を活用した民泊は、温泉法・公衆浴場法・旅館業法・住宅宿泊事業法・建築基準法・消防法など複数の法制度が交差する分野です。個々の判断を誤ると開業遅延・改修コスト・最悪の場合の罰則リスクが生じます。以下の専門家・自治体に相談することで、自分の物件に合った適法な運営スキームを構築することが現実的です。

相談先 確認すべき主な内容
都道府県 温泉担当課(環境・生活衛生担当) 掘削許可・採取許可・利用許可の申請窓口・必要書類・審査基準・許可の承継可否
都道府県 衛生担当課(保健福祉部門) 公衆浴場法の適用判断(個室浴槽 vs 共同浴場)・構造設備基準・衛生管理基準
都道府県 旅館業担当課 旅館業許可の温泉設備に関する審査基準・住宅宿泊事業との選択判断
行政書士(旅館業・民泊専門) 温泉法・旅館業法・住宅宿泊事業法の複数手続きの一括サポート・申請書類作成代行
温泉掘削・分析専門業者 源泉の状態確認・温泉分析書の取得・掘削の技術的可否の調査
消防署(所轄) 浴室の消防設備・避難経路・硫化水素等有毒ガス対応の消防法上の要件

行政書士への相談は、複数の許可を一括してサポートしてもらえる点で費用対効果が高い場合があります。温泉法・旅館業法に精通した行政書士を選ぶ際は、民泊・旅館業の実績と温泉申請の経験があるかどうかを事前に確認することを推奨します。

なお、温泉を利用した隠れ家型宿泊施設の開業事例については「温泉付き隠れ家民泊の開業事例と許可取得の実際」でも補足情報を紹介しています。

環境省「逐条解説 温泉法(PDF)」
(2026-06-03取得)

温泉法の各条文について環境省が逐条解説したPDF。掘削許可・採取許可・利用許可の要件・審査基準の詳細な解釈を確認するために参照。

はじめ君

はじめ君

行政書士に頼むと費用はどのくらいかかりますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

温泉法の利用許可申請のみで数万円〜十数万円、旅館業許可と合わせると幅が広がります。事務所によって料金体系が異なるため、複数の事務所に見積もりを取ることをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 温泉法でいう「温泉」の定義に当てはまるか、どうやって確認しますか?

温泉法第2条では、地中から湧出する温水・鉱水等で「摂氏25度以上」または法定の19種成分のいずれかを一定量含むものを温泉と定義しています。具体的には、公的または都道府県が認定した試験機関による温泉分析書を取得することで確認できます。物件購入前に分析書があれば内容を確認し、ない場合は分析費用を見込んだ上で購入判断をすることが実務上の手順です。

Q2. 住宅宿泊事業(年間180日制限)で温泉を提供することは制度上可能ですか?

住宅宿泊事業法上は温泉提供を明示的に禁止していませんが、温泉法の利用許可は別途取得が必要です。また、共同浴場の設置や公衆浴場法の適用が生じる場合には、旅館業法上の許可が必要になる可能性があり、住宅宿泊事業の枠組みでは対応できないケースが出てきます。所在地の担当課に具体的な運営形態を示して事前確認することを推奨します。

Q3. 既存の旅館が廃業した物件を取得した場合、温泉の許可はそのまま引き継げますか?

温泉法上の許可(掘削・採取・利用)は原則として許可を受けた者に紐付いており、物件の売買だけで自動的に承継されるわけではありません。都道府県によっては承継の届出で対応できる場合もありますが、許可が失効・返還されている場合は新規申請が必要です。物件取得前に都道府県温泉担当課に許可の現状と承継手続きを確認することが重要です。

Q4. 温泉を「加水・加温・循環ろ過」している場合、表示にルールはありますか?

温泉法第18条の2以降で、温泉利用施設における掲示義務が定められており、源泉の泉質・加水・加温・循環ろ過・消毒処理の有無を掲示することが求められています。宿泊施設として温泉を提供する場合にも、正確な情報開示が求められており、不正確な表示は景品表示法の問題にもつながりえます。提供する温泉の処理方法については透明性のある表示を行うことが現実的な対応です。

Q5. 温泉を民泊施設に引いたとき、水道代に加えて何かコストがかかりますか?

引湯の場合は温泉供給業者への引湯料金が発生します。金額は供給量・距離・地域によって大きく異なります。また、浴槽・配管・換気設備の維持管理費、温泉分析書の更新費用(概ね数万円〜数十万円程度・10年ごと)、利用許可の更新手数料なども継続的なコストとして見込む必要があります。事業収支に与える影響を具体的に試算することを推奨します。

Q6. 温泉を提供しても旅館業でなく民泊(住宅宿泊事業)にこだわるメリットはありますか?

住宅宿泊事業は構造設備基準が旅館業より柔軟なケースが多く、戸建て住宅・古民家など旅館業許可が取りにくい物件でも届出が通るケースがあります。ただし年間180日の稼働制限があるため、温泉提供のために高い初期投資をする場合にはビジネスモデルとして成立するかの慎重な検討が必要です。

Q7. 温泉の成分が変化した場合、利用許可の内容を変更する必要がありますか?

温泉は自然のものであり、湧出量・温度・成分が経年変化することがあります。利用許可の内容(泉質・湧出量等)と実際の状態が大きく乖離した場合は、変更届出や再申請が必要になる可能性があります。定期的な温泉分析と都道府県担当課への確認を続けることが適法な運営の維持につながります。

まとめ

温泉付き民泊の開業は、温泉法(掘削・採取・利用の3許可)・公衆浴場法(共同浴場か個室浴槽か)・旅館業法または住宅宿泊事業法の三層構造を理解した上で進める必要があります。源泉所有・引湯・既存物件活用の三択によっても必要な手続きは異なり、許可の承継可否・温泉分析書の有効期限・換気設備の基準など、事前確認を怠ると開業後に大きな追加コストが生じるリスクがあります。

特に、都道府県によって審査基準や解釈が異なる点が温泉民泊の難しさであり、「他地域で通った」という前例が自分の物件に適用されるとは限りません。物件所在地の都道府県温泉担当課・衛生担当課・旅館業担当課への事前確認と、温泉法・旅館業法に詳しい行政書士への相談を起点にすることが、現実的な開業への近道です。

なお、サウナや人工温浴設備(人工炭酸泉・ジェットバス等)を活用する場合は「民泊施設でサウナ・スパ設備を設置するには」、温泉付き隠れ家型宿泊施設の開業事例は「温泉付き隠れ家民泊の開業事例」も合わせてご参照ください。


⚠️ 本記事は2026-06-03時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は 2026-06-03 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

当サイトでは、上記の専門家・自治体への確認窓口を 運営代行業者の選び方 で案内しています。
収支試算は 収支シミュレーター、物件可否は 無料可否診断 をご利用ください。

本記事の情報は予告なく変更される可能性があります。掲載情報の利用により生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。