民泊オーナーが亡くなったとき、住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊はどうなるか 2026年版|地位承継・廃業届・継続か廃業かの判断フロー
編集: 民泊学校 編集部 | 最終更新日: 2026-06-05
民泊を営んでいたオーナーが亡くなったとき、相続人は悲しみの中でも届出・申請の期限が迫っている状況に直面することがあります。住宅宿泊事業(民泊新法)・旅館業(簡易宿所)・特区民泊の3制度は、それぞれ異なる法律に基づいているため、必要な手続きと期限が大きく異なります。何もしないまま期限を過ぎると、事業の継続がより困難になったり、行政指導の対象になる可能性があります。
本記事では、3制度それぞれについて「死亡後にまずすべきこと」「継続か廃業かの判断軸」「必要書類と手順」を、公式の法令・ガイドラインに基づいて整理します。最終的なご判断は、必ず所轄の自治体・行政書士・税理士にご確認ください。
この記事でわかること
- 住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊、それぞれの死亡後の手続き期限(30日・60日・10日)の違い
- 住宅宿泊事業には「地位承継」制度がなく、継続には新規届出が必要とされている背景
- 旅館業の「みなし許可」制度と、60日以内の承継承認申請の流れ
- 相続人が複数いる場合に全員同意が必要な理由と代表者選定の手順
- 事業継続 vs 廃業の判断軸と、廃業する場合の手続きの順番
- 相続発生から届出期限までの間、営業を続けてよいのかという論点の整理
- 相続税・事業引き継ぎにあたって税理士に相談すべき主なポイント
Contents
- 1 結論:3制度で期限と手続きが異なる——まず「何日以内に何をするか」を確認する
- 2 住宅宿泊事業(民泊新法)の場合——死亡を知った日から30日以内の廃業等届出と、承継制度がないことの意味
- 3 旅館業(簡易宿所)の場合——死亡後60日以内の承継承認申請とみなし許可(旅館業法第3条の3)
- 4 特区民泊の場合——廃止届10日以内と、明示の承継制度が確認できないこと
- 5 相続人が複数いるとき——全員同意での代表者選定の実務
- 6 相続後も民泊を続けられるか、物件条件を無料で診断
- 7 事業を継続する場合に必要な手続きの流れ(制度別)
- 8 廃業を選ぶ場合——廃止届・OTA掲載停止・清算の順番
- 9 相続発生から届出期限まで「営業を続けてよいのか」という論点
- 10 相続税・事業の引き継ぎで税理士に確認すべきこと
- 11 3制度の手続き比較表・必要書類チェックリスト・専門家相談先
- 12 相続・承継手続きの専門家・相談先を確認する
- 13 よくある質問(FAQ)
- 14 まとめ——相続発生時に最初に動くべき3点
結論:3制度で期限と手続きが異なる——まず「何日以内に何をするか」を確認する
民泊オーナーが亡くなった場合、相続人がまず把握しておく必要があるのは「届出・申請の期限」です。3制度の期限は以下のとおりで、いずれも短期間です。
| 制度 | 根拠法 | 主な期限 | 手続きの種類 | 承継制度の有無 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅宿泊事業(民泊新法) | 住宅宿泊事業法 第3条第6項 | 死亡を知った日から30日以内 | 廃業等届出書(第三号様式)の提出 | なし(継続は新規届出が必要とされる) |
| 旅館業(簡易宿所含む) | 旅館業法 第3条の3 | 死亡後60日以内 | 承継承認申請 | あり(みなし許可付き) |
| 特区民泊(国家戦略特別区域) | 国家戦略特別区域法関係規則 第16条 | 廃止日から10日以内 | 廃止届 | 条文上の明示規定は確認できない(自治体へ要確認) |
最も注意が必要なのは、3制度で「届出が必要な起点(死亡を知った日 vs 廃止日)」が異なる点と、住宅宿泊事業には旅館業のような地位承継制度がない点です。以降の章で制度ごとに詳しく解説します。
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第3条の3(相続による地位承継)に、相続人が引き続き営もうとするときの60日以内の承認申請とみなし許可制度が規定されています。令和5年12月13日改正施行後の条文です。

住宅宿泊事業(民泊新法)の場合——死亡を知った日から30日以内の廃業等届出と、承継制度がないことの意味
住宅宿泊事業(住宅宿泊事業法に基づく届出制の民泊、いわゆる「民泊新法」)は、届出をした個人事業者が亡くなった場合、相続人が「死亡を知った日から30日以内」に廃業等届出書(第三号様式)を届出先の自治体に提出することが法律上求められています。
廃業等届出書(第三号様式)の提出先と内容
廃業等届出書は、観光庁が民泊制度ポータルサイトで様式を公開しています。届出事由として「死亡」を選択し、事業者の氏名・届出番号・死亡年月日などを記載します。提出先は、元の届出先と同じ都道府県知事等(一部自治体では市区町村)です。
「承継制度がない」とはどういう意味か
旅館業法には「相続人が引き続き経営する場合に許可を引き継げる」制度(地位承継)が明文化されています。一方、住宅宿泊事業法には現状、これに相当する条文が存在しないとされています。
実務上の解釈としては、相続人が事業を継続する場合でも、亡くなったオーナーの届出番号をそのまま引き継ぐことはできず、相続人自身が新規届出を行うことが原則とされています(届出の要件である「住宅の届出者」が変わるため)。ただし、具体的な手順については所轄の都道府県・自治体の担当窓口に確認されることをお勧めします。
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相続人が死亡を知った日から30日以内に届出が必要とされていること、継続する場合の手続き解釈が示されています。
住宅宿泊事業では、相続人が事業を引き続き行いたい場合でも、亡くなった方の届出をそのまま継続することはできないとされています。廃業等届出書の提出と、相続人による新規届出の両方が必要になる点に注意が必要です。手続きの詳細は所轄自治体の窓口でご確認ください。
30日という期限は短い——早めの動きが現実的
「死亡を知った日から30日」は、葬儀・相続財産の確認・金融機関への連絡など、相続人がさまざまな手続きに追われる中での期限です。事業継続か廃業かの方針がすぐに決まらない場合でも、まず廃業等届出書を提出することで届出者の記録を更新し、並行して継続の可否を自治体に相談するという順序が現実的です。
なお、届出物件が賃貸物件であれば、家主・管理業者への連絡も早めに行う必要があります。
民泊の開業・名義変更に詳しい行政書士に早期に相談することで、必要な書類の準備や自治体との調整をスムーズに進めることができる場合があります。
旅館業(簡易宿所)の場合——死亡後60日以内の承継承認申請とみなし許可(旅館業法第3条の3)
旅館業(旅館業法に基づく許可制。簡易宿所も含む)では、令和5年12月13日改正施行後の旅館業法第3条の3に「相続による地位承継」制度が明文化されています。これは、営業者が死亡した場合に相続人が引き続き営もうとするときの手続きを定めたものです。
みなし許可——申請中は事業を継続できる
旅館業法第3条の3の重要なポイントは「みなし許可」の規定です。現状の条文解釈では、相続人が60日以内に承継承認申請を提出した場合、申請中(死亡日から承認・不承認の通知が届くまで)は、被相続人(亡くなった方)の許可が相続人に対してしたものとみなされます。
つまり、承継申請をしている間は、旅館業の許可が一時的に空白になることなく事業を継続できる仕組みとなっています。これが住宅宿泊事業との大きな違いです。
申請先と必要書類
承継承認申請の提出先は、元の旅館業許可を出した都道府県知事等(保健所設置市・特別区では市区町村長)です。一般的に必要とされる書類は以下のとおりですが、自治体によって異なる場合があるため、所轄の保健所・担当窓口に事前に確認されることをお勧めします。
- 承継承認申請書
- 旅館業許可書(原本)
- 戸籍謄本または法定相続情報一覧図(相続関係を証明するもの)
- 相続人全員の同意書(複数相続人がいる場合)
- 申請手数料(例:川崎市 7,400円、ただし自治体によって異なる)
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川崎市における相続承継申請の提出期限(死亡後60日以内)、必要書類、手数料7,400円などが掲載されています。手数料は自治体によって異なります。
承継後の業務状況調査
令和5年改正後の旅館業法では、地位承継が承認された後6か月以内に、行政による業務状況調査が行われる仕組みが整備されています。承継した相続人は、施設の衛生管理・構造設備・宿泊者の安全確保などについて、引き続き旅館業法上の義務を果たしていく必要があります。
60日という期限は、住宅宿泊事業の30日よりは長いものの、相続手続き全体の中では短期間です。承継を検討する場合は早めに所轄の保健所に相談することが現実的です。なお、期限内に申請が間に合わない場合の対応については、所轄保健所に確認されることをお勧めします(期限超過後の取り扱いについて断定的な解説はできません)。

特区民泊の場合——廃止届10日以内と、明示の承継制度が確認できないこと
特区民泊(国家戦略特別区域法に基づく認定制度)は、住宅宿泊事業や旅館業とは異なる仕組みで運営されています。認定を受けた事業者が廃止する場合、国家戦略特別区域法施行規則の関連条文(第16条)に基づき、廃止日から10日以内に廃止届を提出することが求められています。
特区民泊の実施区域は大田区・大阪市・北九州市など一部の自治体に限られており、各自治体が独自の手続き窓口を設けています。
相続承継の条文上の取り扱い
現状の確認できる範囲では、旅館業法第3条の3のような「相続人が承認申請をすれば許可が引き継がれる」旨の明示的な規定は、特区民泊の関連法令・規則の中に見当たりません。このため、特区民泊のオーナーが亡くなった場合に事業を継続したいときは、相続人が新たに認定申請を行う必要があるかどうかを含め、所轄の区市町村の担当課に直接確認されることが重要です。
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第16条に特区民泊の廃止届について、廃止日から10日以内の届出が規定されています。相続承継に関する直接条文は確認できていません。
特区民泊の承継については、制度の根拠法令上に明示的な規定が確認できないため、自治体担当課(大田区では保健所衛生管理課など)への確認が欠かせません。「他の制度と同じだろう」と推測して動くと、手続きが遅れるリスクがあります。
10日という最短期限に注意
廃止届の期限が「廃止日から10日以内」であることは、3制度の中で最も短い期限です。特区民泊を運営していたオーナーが亡くなり、事業継続が難しい場合は、すみやかに廃止届の準備を行う必要があります。
相続人が複数いるとき——全員同意での代表者選定の実務
民泊オーナーが亡くなった際、相続人が複数いるケースは珍しくありません。旅館業法第3条の3および関連する自治体の手続きでは、複数の相続人がいる場合は「相続人全員の同意」のもとで1名を代表者として選定し、その代表者が承継承認申請を行うことが求められています。
なぜ全員同意が必要か
旅館業のような許可事業は、誰が経営者になるかが許可の実質的な条件に関わってきます。相続人の一部だけが事業を引き継ぐことを主張できる仕組みにしてしまうと、他の相続人の権利が侵害される可能性があるため、全員同意が要件とされています。
住宅宿泊事業の場合も、継続して届出を行う相続人を決める際には、他の相続人との合意形成が実務上必要になることがあります。遺産分割協議の方向性と民泊事業の継続方針を早期に統一しておくことが、手続きをスムーズに進めるうえで重要です。
全員同意書の作成と提出
旅館業の承継承認申請では、相続人全員の署名・捺印が入った同意書(同意証明書)を提出します。離れて暮らす相続人がいる場合や、相続人の間で意見が分かれる場合には、早めに弁護士・行政書士に相談することが現実的です。同意が取れない状態が続くと、60日の期限に間に合わない可能性が出てきます。
法定相続情報一覧図(法務局に申請して取得できる書類)を活用すると、相続関係の証明書類が一本化でき、複数機関への手続きが効率化されます。司法書士または最寄りの法務局に確認してみると、手続きの全体像を把握しやすくなります。
共有名義物件の届出や複数名での民泊運営に関しては、共有名義物件の届出手続きの記事もあわせてご参照ください。
相続後も民泊を続けられるか、物件条件を無料で診断
相続した物件で住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊のいずれかを継続または新規で始められるか、用途地域・管理規約・条例の観点から3分で確認できます。
事業を継続する場合に必要な手続きの流れ(制度別)
事業の継続を選択する場合、制度によって手続きの流れが異なります。以下に制度別の大まかな流れを示します。なお、具体的な手順は所轄の自治体・保健所によって異なるため、必ず事前に担当窓口に確認されることを強くお勧めします。
住宅宿泊事業(民泊新法)で継続する場合
- 死亡を知った日から30日以内に廃業等届出書(第三号様式)を提出
- 相続人(継続希望者)が届出要件を満たしているか確認(管理業者委託の有無、物件の住宅要件など)
- 相続人名義での新規届出書類を準備(届出書・住宅の図面・管理委託契約書など)
- 自治体窓口に新規届出を提出
- 届出番号の交付を受けてからOTAプラットフォームの掲載情報を更新
住宅宿泊事業の届出要件は自治体によって追加条件が設けられている場合もあるため、所轄窓口への事前相談が重要です。届出受理までの間に営業を続けてよいかという点については後述します。
旅館業(簡易宿所)で継続する場合
- 死亡後60日以内に承継承認申請書・許可書・戸籍謄本・相続人全員の同意書を準備
- 所轄の保健所または自治体担当窓口に申請(手数料が必要な場合あり)
- 申請受理後は「みなし許可」の状態が継続(審査中も営業継続が可能とされる)
- 承認通知を受けた後、旅館業許可書の名義が相続人名義に更新される
- OTAプラットフォームの掲載情報・管理業者への通知を行う
旅館業の事業承継(売却・譲渡を含む)の詳細については、旅館業の事業譲渡・承継の手続きの記事もあわせてご参照ください。
特区民泊で継続する場合
- 廃止日から10日以内に廃止届を提出(条文上の義務)
- 所轄区市町村の担当課に「相続人による継続認定の可否」を確認
- 新規認定申請の要件・必要書類を確認して申請
特区民泊の実施自治体は限られているため、それぞれの自治体のフォームと手順に従って手続きを進める必要があります。
廃業を選ぶ場合——廃止届・OTA掲載停止・清算の順番
相続人が民泊事業を継続しないと決めた場合、または継続の見通しが立たない場合には、以下の順番で廃業手続きを進めることが現実的です。
廃業時の主な手順
- 既存予約の確認と対応:OTAプラットフォームに受け付けている予約が残っている場合は、まずゲストへの連絡とキャンセル処理が必要です。突然のキャンセルはゲストへの影響が大きいため、できる限り早めの対応が求められます。
- OTA掲載の停止:Airbnb・楽天トラベル・Booking.comなどの掲載を停止します。各プラットフォームの管理画面から「掲載停止」または「予約受け付け停止」の設定を行います。
- 廃業等届出書・廃止届の提出:制度に応じた期限内(住宅宿泊事業:30日、特区民泊:10日)に届出を行います。旅館業の場合も廃業する場合は廃業届が必要です。
- 管理業者・清掃業者との契約終了:運営代行業者や清掃会社との契約解除通知を行います。契約書の解約条件・違約金の有無を事前に確認しておきましょう。
- 物件の原状回復・家主への連絡:賃貸物件の場合は、家主・管理会社に民泊利用の終了を連絡し、必要であれば原状回復工事の段取りを行います。
- 売上・費用の精算と税務処理:亡くなった方の収入として計上された民泊収益は、相続税の計算における事業財産に含まれる可能性があります。廃業年の確定申告や相続税申告については税理士に相談されることをお勧めします。
廃業の詳細な手順については、民泊廃業・廃止届の手続きガイドの記事もあわせてご参照ください。
民泊に使用していた家財・備品(布団・家電・家具など)は、相続財産に含まれる可能性があります。廃業後の処分方法(売却・廃棄・相続人が引き取るなど)についても、相続財産全体の整理と合わせて弁護士・司法書士と相談されると安心です。
相続発生から届出期限まで「営業を続けてよいのか」という論点
実務上、相続人が最も悩む点の一つが「オーナーが亡くなった後、既存の予約を処理しながら事業を継続しても問題ないか」という点です。これは制度ごとに考え方が異なります。
旅館業:みなし許可が機能する
旅館業法では、60日以内に承継承認申請を行った場合、申請中は「みなし許可」が適用されるとされています。つまり申請手続き中も事業を継続できる法的根拠が条文上整えられています(旅館業法第3条の3)。申請を行わないまま60日が経過した場合の扱いについては、所轄保健所への確認が必要です。
住宅宿泊事業・特区民泊:法令上の「みなし継続」規定は現状確認できない
住宅宿泊事業法には現状、旅館業法のような「みなし許可(届出)」制度が存在しないとされています。そのため、亡くなった方の届出番号で届出後に営業を継続することが適法かどうかについては、所轄の都道府県・自治体に個別に確認が必要です。
既に受け付けている予約のゲストへの影響を考えると、まず自治体窓口に「届出期間中の既存予約の取り扱い」を相談するのが現実的な対応です。
亡くなったオーナーの届出番号・許可証をそのまま利用した状態で新規の受付・集客を続けることは、無届出・無許可営業にあたる可能性があります。すでに入っている予約の取り扱いも含め、速やかに所轄窓口と相談することが重要です。
ゲストへの対応
既存の予約については、事情を率直にゲストに伝え、継続可能かどうかが確定するまでの間は新規の予約受付を停止することが、ゲストへの誠実な対応として現実的です。

相続税・事業の引き継ぎで税理士に確認すべきこと
民泊事業者の相続では、一般的な相続手続きに加えて、事業に関連する財産や収益の取り扱いについて税理士への確認が必要になる場面が多くあります。以下は相談の際に特に重要な主要ポイントです。
相続財産としての民泊関連資産
民泊に使用している不動産(自己所有の場合)は相続税の課税対象となります。事業用小規模宅地等の特例が適用できる可能性もありますが、適用要件は住宅宿泊事業・旅館業など事業の形態や相続人の利用状況によって異なります。この点は必ず税理士に確認してください。
亡くなった方の最後の確定申告(準確定申告)
個人として民泊事業を営んでいた方が亡くなった場合、相続人は死亡の翌日から4か月以内に「準確定申告」を行う義務があります。これは、亡くなった方の1月1日から死亡日までの所得(民泊収益を含む)について、相続人が代わりに確定申告するものです。
事業を廃業した場合の廃業年分の確定申告
廃業を選択した場合、廃業年分の民泊事業所得(または雑所得)について、相続人が準確定申告で申告する必要があります。設備・家財などの廃棄や譲渡に伴う所得についても確認が必要です。
事業を継続する場合の所得区分
相続人が民泊事業を引き継いで継続する場合、新たに事業所得または雑所得として申告が必要になります。税務上の区分や青色申告の適用可否については、税理士にご相談ください。
「課税されない」「経費になる」などの表現は、個別事情によって税務上の取り扱いが異なるため、本記事では断定的な表現をしていません。相続税・準確定申告・廃業に伴う税務処理については、必ず民泊・相続に詳しい税理士にご相談ください。
3制度の手続き比較表・必要書類チェックリスト・専門家相談先
ここまでの内容を表にまとめます。制度ごとの違いを一覧で把握しておくと、相続人として最初に何をすべきかが整理しやすくなります。
3制度の手続き比較表
| 比較項目 | 住宅宿泊事業(民泊新法) | 旅館業(簡易宿所含む) | 特区民泊 |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 住宅宿泊事業法 | 旅館業法 | 国家戦略特別区域法 |
| 許認可の種類 | 届出制 | 許可制 | 認定制 |
| 死亡後の主な手続き | 廃業等届出書(第三号様式)提出 | 承継承認申請 | 廃止届提出(継続は要確認) |
| 届出・申請期限 | 死亡を知った日から30日以内 | 死亡後60日以内 | 廃止日から10日以内 |
| 地位承継制度 | なし(継続は新規届出が原則) | あり(旅館業法第3条の3) | 明示条文は確認できない |
| 申請中の営業継続 | 法令上の根拠確認が必要(自治体へ相談) | みなし許可で継続可能とされる | 自治体担当課へ要確認 |
| 複数相続人の場合 | 合意形成が実務上必要 | 全員同意書(法定要件) | 自治体担当課へ要確認 |
| 主な相談窓口 | 都道府県・市区町村の民泊担当課 | 保健所(保健所設置市は市) | 各特区実施区市町村の担当課 |
必要書類チェックリスト
以下は一般的な目安です。自治体により追加書類が求められる場合があるため、事前に担当窓口で確認してください。
| 書類 | 住宅宿泊事業 | 旅館業(承継時) |
|---|---|---|
| 廃業等届出書・廃止届 | 第三号様式(観光庁ポータルで入手可) | 廃業届(廃業の場合) |
| 承継承認申請書 | (なし) | 各自治体所定の様式 |
| 許可書・届出書(原本) | 届出受理通知書 | 旅館業許可書(原本) |
| 相続関係証明書類 | 戸籍謄本または法定相続情報一覧図 | 戸籍謄本または法定相続情報一覧図 |
| 相続人全員の同意書 | 実務上必要になる場合あり | 複数相続人の場合は必須 |
| 申請手数料 | 不要(届出制のため) | 自治体により異なる(例:川崎市 7,400円) |
専門家相談先の目安
| 相談内容 | 相談先 |
|---|---|
| 廃業等届出・承継申請の書類作成・窓口対応 | 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方) |
| 旅館業許可の承継手続き全般 | 所轄保健所、または行政書士 |
| 住宅宿泊事業の新規届出 | 都道府県・市区町村の民泊担当窓口、または行政書士 |
| 相続税・準確定申告・廃業年の確定申告 | 税理士(相続・事業税務に詳しい方) |
| 相続人間のトラブル・遺産分割 | 弁護士、または司法書士 |
| 物件の名義変更・登記 | 司法書士 |
| 不動産の売却・出口戦略 | 宅地建物取引士・不動産会社 |
民泊の相続・名義変更と生前の事業承継対策との違いについては、生前の名義変更・事業承継との対比の記事もご参照ください。また、物件の売却・出口戦略については民泊物件の売却・出口戦略もあわせてご覧ください。
相続・承継手続きの専門家・相談先を確認する
行政書士・税理士・弁護士など、民泊の相続・承継手続きに詳しい専門家への相談経路をまとめています。書類作成から窓口対応まで、状況に応じた依頼先の選び方を確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 民泊オーナーが亡くなってから何日以内に手続きが必要ですか?
制度によって異なります。住宅宿泊事業(民泊新法)は「死亡を知った日から30日以内」に廃業等届出書を提出することが住宅宿泊事業法第3条第6項で求められています。旅館業(簡易宿所含む)は「死亡後60日以内」に承継承認申請を行うことが旅館業法第3条の3に規定されています。特区民泊は廃止の場合「廃止日から10日以内」の廃止届が必要です。いずれも短期間であるため、相続が発生したら早急に所轄の窓口に確認されることをお勧めします。
Q2. 旅館業の「みなし許可」とはどういう意味ですか?
旅館業法第3条の3の規定に基づき、相続人が死亡後60日以内に承継承認申請を行った場合、申請中(死亡日から承認・不承認通知を受けるまでの間)は、亡くなったオーナーの許可が申請した相続人に対してしたものとみなされる制度です。これにより、審査期間中も事業を継続できる法的根拠が与えられています。ただし、具体的な運用は所轄の保健所・自治体に確認されることを推奨します。
Q3. 住宅宿泊事業(民泊新法)では相続人がそのまま事業を引き継げますか?
現状の住宅宿泊事業法には、旅館業法のような地位承継制度(届出番号をそのまま引き継ぐ仕組み)が条文上確認できないとされています。このため、相続人が事業を継続する場合は、亡くなったオーナーの届出番号を引き継ぐのではなく、相続人自身が新規に届出を行うことが原則とされています。詳細な手順については所轄の都道府県・市区町村の民泊担当窓口にご確認ください。
Q4. 相続人が複数いる場合、誰が手続きをすればよいですか?
旅館業の承継承認申請では、相続人全員の同意書(同意証明書)を添付したうえで、代表となる1名が申請を行う形が求められています(板橋区・川崎市等の手続き例)。住宅宿泊事業では法令上の全員同意規定はないものの、実務上は相続人間で合意を形成したうえで継続者を決め、その方が新規届出を行うことが現実的です。相続人間で意見が分かれる場合は、早めに弁護士・行政書士にご相談ください。
Q5. 相続発生後も既存の予約を受け付けてよいですか?
旅館業については、60日以内に承継承認申請を行っている場合、みなし許可のもとで事業継続が可能とされています。住宅宿泊事業・特区民泊については、法令上の明確な「みなし継続」規定が確認できないため、新規の予約受付を続けることの可否は所轄の担当窓口に確認されることを強くお勧めします。すでに入っている予約については、ゲストへの誠実な対応を最優先に検討してください。
まとめ——相続発生時に最初に動くべき3点
民泊オーナーが亡くなったとき、相続人がまず確認すべきことは「どの制度の民泊だったか」「期限はいつまでか」「継続か廃業か」の3点です。
住宅宿泊事業(30日)・旅館業(60日)・特区民泊(10日)と、手続き期限は制度によって大きく異なります。特に旅館業には「みなし許可」による事業継続の仕組みが整備されており、60日以内に承継承認申請を行うことで審査中も営業を続けられる根拠が法律上与えられています。一方、住宅宿泊事業には地位承継制度がなく、継続する場合は新規届出が必要とされている点は、相続人にとって見落としやすいポイントです。
相続税・準確定申告・廃業に伴う税務処理は、通常の相続手続きと並行して行う必要があり、専門家(税理士・行政書士・弁護士)への早期相談が現実的な対応になります。本記事の情報はいずれも2026年6月時点の制度に基づいており、法改正・条例改正等により変更される可能性があります。最終的なご判断は、必ず所轄の自治体窓口または専門家にご確認ください。
民泊の廃業全般の手続きについては民泊廃業・廃止届の手続きガイドを、旅館業の承継・事業譲渡については旅館業の事業譲渡・承継の手続きをあわせてご参照ください。
⚠️ 本記事は2026-06-05時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)
本記事は 2026-06-05 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。
- 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
- 消防: 物件所在地の所轄消防署
- 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
- 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
- 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士
当サイトでは、上記の専門家・自治体への確認窓口を 運営代行業者の選び方 で案内しています。
収支試算は 収支シミュレーター、物件可否は 無料可否診断 をご利用ください。
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