編集:民泊学校 編集部|公開日:2026年6月21日|最終更新日:2026年6月21日

川や海の近く、低地の物件は、立地が良く相場より安いことがあり、民泊・旅館業の投資対象として目に留まります。けれども、そこが浸水想定区域に入っている場合、取得の判断には特別な注意が必要です。水害リスクのある物件は、運営中の浸水対策や保険だけでなく、物件を取得・契約する段階で確認すべき法令上の論点があります。どの区域に指定されているか、家屋が倒壊するおそれのある区域ではないか、重要事項説明で何を確認すべきか——これらは投資の可否を分ける情報です。この記事は、浸水想定区域・水害ハザードのある物件を取得する前のデューデリジェンス(調査)に絞って、水防法・宅地建物取引業法などの公式情報をもとに整理します。運営中の浸水対策設備・水災保険・被災時のゲスト対応などは民泊の水害・浸水・ハザードマップ対応 完全ガイドで扱っています。

この記事でわかること

  • 水防法が定める3つの浸水想定区域(洪水・内水・高潮)の違いと指定権者
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域という、見落としが最も多いレッドゾーン
  • 物件取得前のハザードマップの確認手順
  • 宅建業法の重要事項説明で確認すべきこと(施行規則16条の4の3第3号の2)
  • 浸水深と建物構造から考える民泊適性の判断
  • 水防法15条の3の避難確保計画義務が旅館業に及ぶ条件
  • 浸水想定区域内物件の価格・融資への影響
minpaku-shinsuisotei-bukken-tetsuzuki-2026 Step1 区域を確認

浸水想定区域の物件取得——「取得前のデューデリジェンス」という視点

水害リスクのある物件への向き合い方には、2つの段階があります。一つは、すでに運営している物件で行う「運営中の対策」——止水板などの設備、水災保険、被災時のゲスト対応です。もう一つが、この記事で扱う、物件を取得・契約する前の「デューデリジェンス(調査)」です。安く買えるからと飛びついたものの、後で建て替えができない区域だった、重要事項説明の意味を理解していなかった、という事態は避けたいところです。

取得前のデューデリジェンスでは、「その土地がどの浸水想定区域に、どの深さで入っているか」「家屋倒壊のおそれがある区域ではないか」「重要事項説明で何が示されるか」「浸水深と建物構造から民泊・旅館業として成り立つか」を見極めます。これらは、物件価格の妥当性や、融資の通りやすさにも関わります。以下、水防法の制度から順に見ていきます。

はじめ君

はじめ君

浸水しやすい物件は、何を確認してから買えばいいですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

運営中の浸水対策や保険とは別に、取得前のデューデリジェンスが大切です。その土地がどの浸水想定区域に・どの深さで入っているか、家屋倒壊のおそれがある区域でないか、重要事項説明で何が示されるか、浸水深と建物構造で民泊として成り立つかを見極めます。価格や融資の通りやすさにも関わります。

水防法の3つの浸水想定区域——洪水・内水・高潮

「浸水想定区域」とひとくくりにされがちですが、水防法は、水害の種類ごとに3つの区域を定めています。それぞれ、指定する主体(指定権者)と対象が異なります。

区域 根拠(水防法) 指定権者
洪水浸水想定区域 第14条 国土交通大臣 または 都道府県知事
雨水出水(内水)浸水想定区域 第14条の2 都道府県知事 または 市町村長
高潮浸水想定区域 第14条の3 都道府県知事(水位周知海岸について)

「洪水」は川の氾濫、「内水(雨水出水)」は大量の雨で下水道などが排水しきれずに生じる浸水、「高潮」は台風などで海面が上昇して生じる浸水です。同じ土地でも、洪水のハザードマップでは安全に見えても、内水や高潮では浸水が想定される、ということがあります。3種類すべてを確認しないと、リスクを見落とすのはこのためです。これらの制度は近年の水防法改正で順次整えられてきたもので、対象も拡充されています。最新の指定状況は、国土交通省の水防法のページなどで確認できます。

水防法(浸水想定区域制度)|国土交通省
(2026-06-21取得)

洪水浸水想定区域(水防法第14条・国土交通大臣または都道府県知事が指定)、雨水出水(内水)浸水想定区域(第14条の2・都道府県知事または市町村長が指定)、高潮浸水想定区域(第14条の3・都道府県知事が指定)の3区域の制度の一次情報。条文はe-Gov法令検索の水防法(昭和24年法律第193号)で確認できる。

それぞれの区域の定義も押さえておきましょう。国土交通省の浸水想定区域制度の解説によれば、雨水出水(内水)は「一時的に大量の降雨が生じた場合において、下水道その他の排水施設に雨水を排水できないことによる出水」、高潮は「想定し得る最大規模の高潮」を対象としています。これらの想定区域の対象範囲は、令和3年の改正でも拡充されました。同じ低地でも、川から離れていて洪水の想定はなくても、内水や高潮では深く浸水する想定がある、ということが起こりえます。

高潮の想定は、規模が大きくなりうる点も見落とせません。たとえば千葉県は、令和4年(2022年)に水防法第14条の3にもとづいて東京湾沿岸の高潮浸水想定区域を指定しており、その想定には、最大の浸水深が約10メートル、浸水が継続する時間が1週間以上に及ぶ区域も含まれるとされています。これは、いったん浸水すると長期間にわたって営業も生活もできなくなりうることを意味します。浸水の「深さ」だけでなく「継続時間」も、事業の停止期間に直結する要素として確認しておきたいところです。

浸水想定区域制度|国土交通省 浸水想定区域制度ポータル
(2026-06-21取得)

雨水出水(内水)浸水想定区域(水防法第14条の2)が「下水道その他の排水施設に雨水を排水できないことによる出水」を対象とすること、高潮浸水想定区域が「想定し得る最大規模の高潮」を対象とすること、令和3年改正で対象が拡充されたことの一次情報。

「水防法」に基づく高潮浸水想定区域について|千葉県
(2026-06-21取得)

水防法第14条の3にもとづき千葉県が令和4年に東京湾沿岸の高潮浸水想定区域を指定したこと(想定浸水面積 約23,599ヘクタール・最大浸水深 約10メートル・最長浸水継続時間 1週間以上)の一次情報(自治体の指定例。数値は想定であり個別地点で異なる)。

minpaku-shinsuisotei-bukken-tetsuzuki-2026 Step2 重説で確認
はじめ君

はじめ君

浸水想定区域って、1種類じゃないんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

水防法は3種類を定めています。洪水(第14条・国交大臣または知事)、雨水出水=内水(第14条の2・知事または市町村長)、高潮(第14条の3・知事)です。同じ土地でも洪水では安全に見えても内水や高潮で浸水想定があることも。3種類すべてを重ねて確認しないとリスクを見落とします。

家屋倒壊等氾濫想定区域——見落としが最も多いレッドゾーン

浸水想定区域のなかでも、とくに注意すべきなのが「家屋倒壊等氾濫想定区域」です。これは、平成27年(2015年)の関東・東北豪雨などを踏まえて公表されるようになった区域で、堤防の決壊に伴う激しい氾濫流や、河岸の侵食によって、家屋が倒壊・流失するおそれがあると想定される区域です。大きく、激しい流れで家屋が倒される「氾濫流型」と、川岸が削られて家屋が崩れ落ちる「河岸侵食型」の2類型があります。

この区域が重要なのは、単に床上・床下浸水のリスクではなく、建物そのものが壊れ、人命に関わるおそれがあるゾーンだという点です。民泊・旅館業として不特定多数の宿泊客を受け入れる施設としては、適性を慎重に見極める必要があります。家屋倒壊等氾濫想定区域の指定は河川ごとに進められており、まだ公表されていない河川もあります。「公表されていない=安全」とは限らないことに注意しつつ、対象河川については必ず確認したい区域です。

!注意:家屋倒壊等氾濫想定区域は建物倒壊のおそれ

家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流型・河岸侵食型)は、浸水だけでなく建物の倒壊・流失が想定される区域です。宿泊客の安全に直結するため、民泊・旅館業としての適性は慎重に判断してください。区域指定は河川ごとに進行中で未公表の河川もあり、「指定がない=安全」と即断せず、専門家・自治体に確認を。

洪水浸水想定区域・家屋倒壊等氾濫想定区域|国土交通省
(2026-06-21取得)

水防法第14条にもとづく洪水浸水想定区域の指定と、堤防決壊に伴う激しい氾濫流・河岸侵食が想定される「家屋倒壊等氾濫想定区域」(氾濫流型・河岸侵食型の2類型)の公表に関する一次情報。指定は河川ごとに進行している。

はじめ君

はじめ君

「家屋倒壊等氾濫想定区域」って、普通の浸水区域と何が違うんですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

堤防決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食で、家屋が倒壊・流失するおそれがあると想定される区域です(氾濫流型・河岸侵食型)。床上浸水のリスクではなく建物が壊れるおそれがあるゾーンで、宿泊施設としては適性を慎重に見極める必要があります。指定は河川ごとに進行中で未公表もあります。

物件取得前のハザードマップ確認手順

浸水想定区域の確認は、取得前に誰でも行えます。基本になるのが、国土交通省・国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」です。ここには、洪水・土砂災害・高潮・津波などのリスク情報を地図に重ねて見られる「重ねるハザードマップ」と、市区町村が公開するハザードマップへのリンク集「わがまちハザードマップ」があります。

確認の手順としては、まず重ねるハザードマップで、物件の所在地に洪水・内水・高潮の3種類を重ねて、それぞれの想定浸水深と、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないかを見ます。次に、わがまちハザードマップから、その自治体が公開している最新のハザードマップを確認します。自治体のマップには、避難所や、地域固有の情報が載っていることがあります。1種類のマップだけで「安全」と判断しないこと、そして最新版を見ることが大切です。建物の状態調査とあわせて確認する方法はホームインスペクションの活用もご覧ください。

ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)|国土交通省・国土地理院
(2026-06-21取得)

洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報を地図に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、市区町村公開のハザードマップへのリンク集「わがまちハザードマップ」で構成される公式ポータル。物件所在地のリスクを取得前に確認できる。

minpaku-shinsuisotei-bukken-tetsuzuki-2026 Step3 適性を判断

宅建重要事項説明で確認すべきこと——施行規則16条の4の3第3号の2

中古物件を仲介で取得する場合、水害リスクは重要事項説明にも関わります。令和2年(2020年)8月28日施行の宅地建物取引業法施行規則の改正により、水防法にもとづく水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップ上で、対象物件がどこに位置するかを説明することが義務づけられました。根拠は、宅地建物取引業法第35条第1項第14号イおよび施行規則第16条の4の3第3号の2です。この説明義務は、売買だけでなく賃貸の取引でも発生します

ここで押さえておきたい注意点が2つあります。第一に、この説明義務の対象は水害(洪水・内水・高潮)のハザードマップであり、津波のハザードマップは対象外です。第二に、市町村が水害ハザードマップを作成していない場合や、物件の位置がマップに表示されていない場合は、その旨の説明にとどまり、「浸水リスクがない」ことを意味するわけではありません。重要事項説明で水害ハザードの位置が示されたら、その想定浸水深と、前述の家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないかを、宅地建物取引士に確認してください。説明を受けても内容を理解しないまま契約しないことが大切です。仲介業者の選び方は民泊 不動産仲介・物件紹介業者の選び方もあわせてご覧ください。

不動産取引時における水害ハザードマップの説明義務化(宅地建物取引業法施行規則の改正)|国土交通省
(2026-06-21取得)

令和2年8月28日施行で、水防法にもとづく水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化したことの一次情報。重要事項説明(宅地建物取引業法第35条)に追加された事項であり、売買・貸借いずれの取引も対象。条文根拠は施行規則第16条の4の3第3号の2。

はじめ君

はじめ君

重要事項説明で、水害のことは説明してもらえますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

はい。令和2年8月施行の宅建業法施行規則改正(16条の4の3第3号の2)で、水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップ上の対象物件の位置の説明が義務化されました。売買・賃貸とも対象で、津波は対象外です。マップに位置の記載がなくても浸水リスクがゼロとは限らないので、想定浸水深を宅建士に確認してください。

浸水深×建物構造で考える民泊適性

浸水想定区域だからといって、一律に民泊・旅館業ができないわけではありません。判断の鍵は、想定される浸水の深さ(浸水深)と、建物の構造・階数の組み合わせです。一般に、想定浸水深が浅く、客室を浸水しない上階に配置できる構造であれば、リスクを抑えられる余地があります。逆に、想定浸水深が深い、平屋や1階主体、木造で家屋倒壊等氾濫想定区域に入っている、といった条件が重なると、適性は厳しくなります。

想定浸水深の目安としては、おおむね0.5メートル未満であれば床下から床上の浸水にとどまりやすく、0.5〜3メートルでは1階が水没し、3メートルを超えると2階まで浸水するおそれがある、といった目安が国や自治体の防災情報で示されています。これを踏まえると、客室や、電気の分電盤・給湯器・エアコン室外機といった設備を、想定浸水深より高い位置に配置できるかが、被害の大きさを左右します。また、木造か鉄筋コンクリート造かといった構造は、とくに家屋倒壊等氾濫想定区域での建物の倒壊リスクに関わります。こうした「浸水深・継続時間・構造・階数」の組み合わせを、物件ごとに具体的に見ていくことが、取得判断の核心になります。

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、個別物件の安全性を保証するものではありません。浸水深の想定は、降雨や潮位の前提によって変わり、想定を超える事態も起こりえます。「想定浸水深が浅いから取得して大丈夫」と断定するのではなく、宿泊客の安全確保(垂直避難の可否、避難経路、情報伝達)まで含めて、建築士・宅地建物取引士に相談しながら、慎重に見極めることが大切です。土砂災害のリスクは土砂災害警戒区域で民泊・旅館業を始める前に確認することで別途扱っています。

はじめ君

はじめ君

浸水想定区域でも、民泊できる物件はありますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

あります。想定浸水深が浅く、客室や電気設備を浸水しない上階に配置できる構造ならリスクを抑えられる余地があります。逆に浸水深が深い・平屋・木造で倒壊区域に入る、などが重なると厳しくなります。ただし個別物件の安全保証ではないので、宿泊客の安全確保まで含め建築士・宅建士に相談を。

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水防法15条の3の避難確保計画義務——旅館業に及ぶ条件

浸水想定区域内で施設を運営する場合、追加の義務が課されることがあります。水防法第15条の3は、浸水想定区域内にあり、市町村の地域防災計画に定められた「要配慮者利用施設」について、避難確保計画の作成と市町村長への報告を義務づけています(平成29年の改正で導入)。要配慮者とは、高齢者・障害者・乳幼児など、防災上の配慮を要する人をいいます。

旅館・ホテルがこの義務の対象になるかは、その施設が市町村の地域防災計画に要配慮者利用施設として記載されているかどうかによります。どの施設を要配慮者利用施設とするかは、各市町村が個別に判断するため、旅館業の物件が対象になるか否かは自治体ごとに異なります。対象になった場合は、避難確保計画の作成と市町村長への報告に加え、避難確保計画にもとづく避難訓練の実施も求められます(訓練に関する具体的な扱いは、国土交通省の資料や物件所在地の市町村に確認してください)。浸水想定区域内で旅館業を検討するなら、この義務が及ぶかを、物件所在地の市町村・行政書士に確認しておくことが大切です。

水防法等の一部を改正する法律 よくある質問Q&A|国土交通省
(2026-06-21取得)

水防法第15条の3により、浸水想定区域内にあり市町村地域防災計画に定められた要配慮者利用施設に避難確保計画の作成・市町村長への報告と避難訓練の実施が義務づけられること(平成29年改正)、どの施設を要配慮者利用施設として定めるかは各市町村が個別に判断することの一次情報。

はじめ君

はじめ君

浸水区域で旅館業をすると、避難計画を作る義務がありますか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

水防法15条の3で、浸水想定区域内で市町村の地域防災計画に定められた要配慮者利用施設には避難確保計画の作成・報告義務があります。旅館・ホテルが対象かは地域防災計画への記載次第で自治体ごとに異なります。対象なら避難訓練の実施も求められるので、市町村・行政書士に確認してください。

浸水想定区域内物件の価格・融資への影響

浸水想定区域にあることは、物件の価格や融資にも影響しうる要素です。一般に、水害リスクのある物件は、その分だけ価格に織り込まれている(相場より安い)ことがあります。これは取得側にとってのチャンスにも見えますが、「安さ」が、将来の浸水被害リスク・水災保険料・出口(再売却)での評価減を反映したものでもあることを忘れてはいけません。価格交渉の場面では、想定浸水深や区域の種類を根拠に、リスクに見合った価格かを冷静に判断する材料になります。

融資の面でも、金融機関によっては、担保評価や事業性の審査で水害リスクを考慮することがあります。ただし、その扱いは市場や金融機関によって異なり、一律ではありません。具体的な価格や融資の見通しは、宅地建物取引士・不動産鑑定士・金融機関に確認し、複数の前提で試算することが大切です。水災に備える保険の考え方は民泊の保険 完全ガイドもあわせてご覧ください。

はじめ君

はじめ君

浸水想定区域の物件は安いですが、買ってお得ですか?
民泊学校 編集部

民泊学校 編集部

相場より安いことがありますが、その安さは将来の浸水被害リスク・水災保険料・出口での評価減を反映したものでもあります。融資審査で水害リスクが考慮されることもあり扱いは金融機関で異なります。安さだけで判断せず、想定浸水深・区域の種類を踏まえ不動産鑑定士・金融機関に確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 浸水想定区域の物件でも、民泊・旅館業はできますか?

一律にできないわけではありません。想定浸水深が浅く、客室を浸水しない上階に配置できる構造ならリスクを抑えられる余地があります。一方、浸水深が深い・平屋・木造で家屋倒壊等氾濫想定区域に入る、などの条件が重なると適性は厳しくなります。宿泊客の安全確保まで含め、建築士・宅地建物取引士に相談して慎重に判断してください。

Q2. 浸水想定区域には、どんな種類がありますか?

水防法は、洪水(第14条・国交大臣または都道府県知事が指定)、雨水出水=内水(第14条の2・都道府県知事または市町村長が指定)、高潮(第14条の3・都道府県知事が指定)の3種類の浸水想定区域を定めています。同じ土地でも種類によって想定が異なるため、3種類すべてを重ねて確認することが大切です。

Q3. 「家屋倒壊等氾濫想定区域」とは何ですか?

堤防の決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食によって、家屋が倒壊・流失するおそれがあると想定される区域です(氾濫流型・河岸侵食型の2類型)。浸水だけでなく建物の倒壊が想定されるため、宿泊施設としては適性を慎重に見極める必要があります。指定は河川ごとに進行中で、未公表の河川もあります。

Q4. 重要事項説明で、水害について何を説明してもらえますか?

令和2年8月施行の宅建業法施行規則改正(第16条の4の3第3号の2)により、水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップ上で対象物件がどこに位置するかが説明されます。売買・賃貸とも対象で、津波は対象外です。マップに位置の記載がない場合もありますが、それは「浸水リスクがない」ことを意味しません。想定浸水深を宅地建物取引士に確認してください。

Q5. 浸水想定区域で旅館業をすると、避難計画の義務がありますか?

水防法15条の3により、浸水想定区域内で市町村の地域防災計画に定められた要配慮者利用施設には、避難確保計画の作成・報告義務があります。旅館・ホテルが対象になるかは、市町村の地域防災計画への記載次第で、自治体ごとに異なります。対象なら避難訓練の実施も求められるため、物件所在地の市町村・行政書士に確認してください。

Q6. 浸水想定区域だと、物件は安く買えますか?

相場より安いことがありますが、その安さは将来の浸水被害リスク・水災保険料・出口での評価減を反映したものでもあります。融資の審査で水害リスクが考慮されることもあり、扱いは金融機関によって異なります。安さだけで判断せず、想定浸水深・区域の種類を踏まえ、不動産鑑定士・金融機関に確認して複数の前提で試算してください。

Q7. いったん浸水すると、営業をどれくらい止めることになりますか?

浸水の「深さ」だけでなく「継続時間」が事業の停止期間に直結します。高潮浸水想定区域などでは、想定で浸水が1週間以上続く区域もあります。設備の復旧や清掃・乾燥にも時間がかかるため、長期の営業停止は収支に大きく響きます。想定浸水深に加えて、浸水継続時間も、ハザードマップや自治体の公表資料で確認しておくことをおすすめします。

まとめ——「取得前に、3種類のハザードと倒壊区域まで確認する」

浸水想定区域・水害ハザードのある物件で民泊・旅館業を始めること自体は、できないわけではありません。けれども、取得・契約の段階で確認すべき法令上の論点があります。水防法は、洪水(第14条)・内水(第14条の2)・高潮(第14条の3)の3種類の浸水想定区域を定め、それぞれ指定権者が異なります。なかでも家屋倒壊等氾濫想定区域は、建物の倒壊が想定される最重要ゾーンです。物件取得前には、ハザードマップポータルで3種類を重ねて確認し、宅建業法の重要事項説明(施行規則16条の4の3第3号の2)で水害ハザード上の位置を確認します。浸水深と建物構造から民泊適性を見極め、浸水想定区域内の旅館業では避難確保計画義務(水防法15条の3)が及ぶかも確認が必要です。価格や融資への影響も含め、「安いから」で判断せず、宅地建物取引士・建築士・不動産鑑定士・行政書士、そして物件所在地の自治体・保健所に確認しながら、宿泊客の安全を最優先に、無理のない計画で慎重に進めてください。


⚠️ 本記事は2026-06-21時点の制度を解説しています。住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の制度は改正される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

📋 ご確認ください(民泊学校 編集部より)

本記事は 2026-06-21 時点で公開されている公式情報・一次情報をもとに編集しています。
法律、条例、税制、消防、各種許認可、収支見通しなどは、お住まいの自治体・対象物件の所在地・物件種別・運営形態によって取扱いが異なります。
最終的なご判断は、必ず以下にご確認ください。

  • 制度・条例: 民泊制度ポータルサイト / 物件所在地の自治体(住宅宿泊事業 / 旅館業 / 特区民泊の所管課)
  • 消防: 物件所在地の所轄消防署
  • 税務: 顧問税理士 または 所轄税務署
  • 許認可・届出: 行政書士(民泊・旅館業に詳しい方)
  • 近隣対応・契約: 弁護士・宅地建物取引士

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民泊学校 編集部。運営者は2015年からAirbnbでの民泊運用に携わり、複数物件の運営経験をもとに、公式ソースの確認・専門家への確認導線・実務目線の3つを軸に記事を編集しています。